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書籍と雑誌の要約と解説

コラーゲンと美容・健康を語る

コラーゲンの手引書

装丁
コラーゲンと美容・健康を語る コラーゲンと美容・健康を語る
白井邦郎(東京農工大学名誉教授)
樹芸書房
ISBN4-915245-57-8
C0077
2002/12/25
¥1000
解説

これだけコラーゲン製品の普及がすすんでいるにもかかわらず、
コラーゲンの性質についての最も基本的な知識でも一般には殆ど理解されていないのが現状である。
コラーゲンの特性を効果的に利用するには、
その性質と製品についての基本的な知識の普及が不可欠である。

本書はこのような考え方で、コラーゲンが体にとってなぜ重要な存在であるか、
体の中に入ってどのような効果を発揮できるのか、
実際のコラーゲン製品とはどのようなものなのか、
日常生活の中でコラーゲンを上手に利用する方法について、
何らの専門知識なしでも内容が理解できるようにまとめた解説書である。

また本書は最初から最後まで読み通さずとも、
関心の強い事項を言わば拾い読みをしてもある程度理解できるように、
したがって手引書としても使用できることを目標として記述した。

[P.ⅲ-ⅳ]

目次
  1. コラーゲンは体と皮膚をつくる
  2. 細胞の活性が健康と美容の基礎
  3. コラーゲンは細胞を活性化する
  4. 細胞がコラーゲンをつくる
  5. コラーゲンは老化と若返りにどんな関係がある
  6. コラーゲンは健康を体の内側から改善する
  7. コラーゲンは健康を体の外側からも改善する
  8. コラーゲン製品にはどんなものがあるか
  9. 水溶性コラーゲンのすべて
  10. ゼラチンのすべて
  11. コラーゲンペプチドとは
  12. 海洋性コラーゲンとは
  13. コラーゲンを効果的に食べるために
  14. 塗るタイプのコラーゲン製品
  15. 飲むコラーゲンのいろいろ
  16. 飲むコラーゲンを効果的に利用する生活
校正
  1. 可食性のソーセージケーシングとして利用する。、→句読点が多い[P.72]
  2. 数日間塩酸に侵してから、→漬してから、[P.94]

内容

骨のコラーゲン[P.6_12_19]

骨の硬い外側はコラーゲン線維が層状に積み重なっているため強い

*

骨(軟骨はべつ)はコラーゲン線維の網目にカルシウムが結合してできている。
骨の重量の半分以上をカルシウム塩(ヒドロキシアパタイト)が占めるので、
カルシウムが骨の強さの主役のように思われがちであるが、
組み立ての主役はむしろコラーゲンである。
その証拠に、骨からカルシウムだけを溶かしだすと、
元の骨よりは弱いがまだしっかりした固さのあるコラーゲン組織が残るが、
逆に骨からコラーゲンを溶かしだすと、
カルシウムの錠剤のようなぼろぼろのもろい残骸
(長時間煮た魚や鳥の骨、あるいはサケ缶詰の中にある骨にあたる)
が残るだけである。

*

骨のコラーゲンは、薄い平面的な網目が、
線維の角度(おおむね直角)を変えて幾重にも積み重ねた層状構造になっている。
このため骨が引っ張り、圧縮、ずれなど、あらゆる外力に対して伸びたり、
凹んだり、亀裂などの損傷を受けない丈夫な構造となっている。
このような層状構造は、ちょうど花火の尺玉の外壁をつくるとき、
薄い和紙を何枚も向きを変えて張り重ねていくのと似ている。
同じ材質で、同じ厚さの一枚板でも、
一層構造よりも何層か積み重ねた層状構造の方がはるかに強い。

歳を取ると架橋が増える[P.20-21]

歳とともにコラーゲンの内部にどんな変化が起きているのだろう。
分析してみると、線維のもとになるコラーゲンの粒子
(実は細長い棒のような形をしている)の間に、
ちょうどいかだを組むときに丸太の間に打ち込む連結フックのようなもの
(架橋という)、が増えていることがわかる。
もし架橋がまったくないと、
連結フックのないいかだがばらばらの丸太にもどりやすいように、
線維はばらばらのコラーゲン粒子になりやすく、
ちょっとした力や温度がかかるだけで線維が壊れたり、
溶けたり、ゼラチンに変わったりする。
このような弱いコラーゲン線維は体の役にたたない。
だからコラーゲンの架橋が歳とともに増加するのは、
丈夫な線維をつくるための自然な変化なのである。

細胞増殖に対するコラーゲンの影響[P.28]

体から生きたまま分離した細胞は、
アミノ酸をはじめ細胞の生育に必要なすべての成分を含む液体中
またはゼリー上で人工的に培養することができる。
このとき培養容器(ガラス製など)の内側にコラーゲンをコーティングしておくと、
細胞の増殖が圧倒的に速く、増殖できる細胞の数も多い。

中略

なぜコラーゲンが細胞の増殖を促すのか。
細胞を構成し、細胞が生育するのに必要な成分の多くは血液から供給される。
しかしそれのみでは細胞は生育できない。
人間は毎秒数百万の細胞を作らないと生きていけない。
必要な数の細胞は既存の細胞の分裂増殖によって与えられる。

しかし正常な細胞は本来ガン細胞とは異なり、むやみやたらに分裂しない。
必要な時期に、必要な場所で分裂増殖するように仕組まれている。
この時と所は、隣りの細胞からの情報と細胞の外で細胞間に詰め込まれた物質
(細胞外マトリックス)からの情報により大きな影響を受ける。

乳腺細胞に対するコラーゲンの影響[P.30-31]

乳腺細胞は、ガラスの容器の中で人工的に増やすことができる。
そして細胞は、乳腺細胞としての特徴を完全に備えている。
しかしこの人工培養した乳腺細胞はかんじんの乳タンパク質をつくって分泌しない。

ところがこの乳腺細胞をコラーゲンの膜またはゼリー上で培養すると、
乳タンパク質を分泌するようになる。
これは乳腺細胞は乳タンパク質をつくって分泌する能力をもっているのだが、
環境条件によっては隠されており、
コラーゲンがあるとその能力が表に引き出される
(能力が発現される)ことを意味する。

線維芽細胞に対するコラーゲンの影響[P.35_42]

コラーゲンは繊維芽細胞によってつくられる。
しかしこの細胞の中でいきなり線維ができるわけではない。
細胞の中ではまずコラーゲンのもとになるタンパク質(コラーゲン前駆体)がつくられる。
このタンパク質は線維ではないので、
水に溶解した状態で細胞の活性が強いとコラーゲン前駆体が多くつくられ、
分泌する量も多くなる。
結果的に完成したコラーゲンの量も多くなる。
すなわちコラーゲン合成量が増える。
従って線維芽細胞の生きの良さが、コラーゲンづくりを主に支配しているといえる。

*

ヒト線維芽細胞の培養実験で、消化したコラーゲン(コラーゲンペプチド)
を与えると細胞によるコラーゲン合成量が増加することがわかっている。
これはコラーゲンが線維芽細胞を活性化するためである。

人間による実験でも、コラーゲンペプチドを飲ませると容易に血液中に取り込まれ、
コラーゲンペプチドを皮膚から吸収させるとその部分の真皮コラーゲンの層が厚くなり、
表皮のしわの状態が改善させることが明らかにされている。
同様に食べたり飲んだりすると骨密度の改善に効果があることもわかっている。

これらの効果はコラーゲンペプチドが、
体の中で実際に線維芽細胞を活性化するために生ずるのである。

塗るコラーゲン[P.42-44_48_61-64]

コラーゲンを皮膚に塗ると、表皮の角質層
(皮膚の一番外側で、直接目でみえる肌の状態を決める層)
の表面にコラーゲンの膜が形成され、角質層からの水分の蒸発を抑える。
コラーゲン膜自身も保湿効果が強いので、
合わせて角質層の水分が高いレベルに保持され、
年齢の若い人特有のしっとりした弾力性のある肌が保てる。

コラーゲンそのものは皮膚に塗っても表面に留まるだけで、
皮膚の奥深く浸透することはないが、
ある種のコラーゲンを消化してできるペプチドは、
皮膚の深くまでしみ込んで表皮細胞を活性化し、
表皮のターンオーバーを速めて角質層を若返らせる
(水分保持量を高く保ち弾力性を回復させる)。
さらに深くしみ込むと、
真皮層の線維芽細胞を活性化してコラーゲン合成を盛んにし、
真皮層を充実させることになる。

*

特殊なコラーゲンペプチドを皮膚に塗って皮膚から吸収させる実験
(通常のコラーゲンペプチドは皮膚から吸収できないが、
実験的に加工したコラーゲンペプチドを使用している)でも、
二十八日間毎日塗った後、塗った部分の皮膚の厚さ=
真皮の厚さを超音波エコー法で測ってみると、明らかに厚くなっていた。

*

皮膚にコラーゲンを塗って直接効果が期待できるのは、
原則として表皮の角質層と場合によってその下のか粒層までで、
さらに下の細胞層には影響を及ぼすことはできない。
それはコラーゲンは表皮の表層に留まり、下までしみ込めないからである。

したがってコラーゲンを塗って改善できるのは主に角質層の状態であるといえる。

中略

皮膚の表面にコラーゲンを塗って薄い保湿性のある皮膜で覆うと、
水分の蒸散と外界からの汚染を防ぐので、角質層の働きを補強することができる。

中略

コラーゲン由来であっても、
ゼラチンやコラーゲンペプチドではこの条件を完全には満足できない。
もっともだいじな点は、
ゼラチンもコラーゲンペプチドも皮膚上で薄い皮膜を形成しにくいことである。

豚皮などから、セ氏二十五度以下で、酵素などを使用して抽出した、
コラーゲンの天然のラセン構造が損傷していない、
粘性の強い水溶性コラーゲンがこの条件を満足する。

中略

通常洗い物の後はハンドクリームを使用して角質層の脂質と水分を補給して乾燥を防ぐ。
この意味の皮膚の手入れには保湿性のよいコラーゲンの皮膜で覆うことが最も効果的といえる。

潰瘍を治療・予防するコラーゲン[P.55-56]

胃や小腸には消化液(酸や消化酵素を含む)が分泌され、
胃腸の内面の細胞(上皮細胞)は絶えず消化液の攻撃にさらされている。
このため胃腸の内面の防護のために粘液が分泌されたり、
細胞自体が絶えず速く新しいものに入れ替わっている(一週間で細胞が入れ替わる)。
しかし血行が衰えたり細胞の活性が低下すると、この防護が不十分になり、
胃腸の壁が消化されて傷がつき、進行すると潰瘍となる。
ひどくなると大量の出血を起こす。

コラーゲンペプチドを摂取すると潰瘍の治癒が促進され、
予防にも役立つことが知られている。
効果のメカニズムは明らかでないが、
コラーゲンペプチドが胃腸の内面の上皮細胞や周辺の細胞を活性化し、
毛細管の活動を活発にして胃腸壁の防護や潰瘍部分の修復が加速されるものと考えられる。

また胃腸を外から支えるコラーゲンが充実することも、潰瘍修復に役立つと考えられる。

コラーゲン原料[P.65-67_88-89]

牛や豚などの家畜から食肉を生産するときに副産物として皮や骨が産出する。
この皮の真皮層部分(毛を含む上層の表皮と皮下組織=
皮膚が筋肉と接合している部分=を除いた皮膚の中心層)
が原料として使われることが多い。
これはコラーゲン含有量が多く、不純物が比較的少ないからである。

皮のほかに骨もコラーゲン原料として使われるが、
無機質(カルシウムとリン酸)を多く含むのでこの処理に特別な手間がかかり、
そのコラーゲンは酸やアルカリによる前処理をしないと溶けにくい。
そのため水溶性コラーゲンの原料としては使用されず、
ゼラチン(コラーゲンが熱により変化したもの)
原料としてはよく使用される。

動物の年齢によりコラーゲンの性質が異なるので、
得られるコラーゲン製品にも違いが生ずる。
例えば豚は通常六か月齢でありその皮は、
三年齢以上になる牛とくらべると線維が細く、軟らかく、保水性が高く、溶けやすい。
しかし牛皮は厚いので真皮の割合が多く、従来工業的には主にこれが使用されていた。
近年は牛のBSE問題をきっかけとして、
豚由来の若いコラーゲンが多く使われるようになっている。

山羊、羊も使用できるが、一般に小動物は皮が薄いので工業的に使いにくい。

魚類の皮とウロコ

魚類のうちサメ、サケ、マグロなどは漁獲量のかなりの部分が水揚げ港、
または加工工場で集中処理される。
サメは中華料理の食材であるふかひれ採取のため、
サケ、マグロは缶詰工場で解体される。
このときに副産物として産出する皮の真皮部分は、
家畜の場合と同様にコラーゲン原料として使用できる。
家畜のコラーゲンとくらべ、熱に弱いが非常に溶けやすく、固まりにくい。
魚類のコラーゲンは生物学的に家畜(哺乳動物)とは違ったコラーゲンであるため、
近年新しいタイプのコラーゲン原料として注目を集めている。
ただし一般に不純物(特に臭気成分)を完全に除くのに手間がかかる。

イワシのウロコは水揚げ後の洗浄中に多くが脱落して洗浄槽にたまる。
このウロコは骨とやや似た性質があり、
コラーゲンにカルシウムが結合している。
したがってウロコの無機質を除けばコラーゲン原料として利用できる。
完全に無機質を除けば魚類真皮コラーゲンに近い性質
(真皮よりやや溶けにくい)のものが得られる。

クラゲやカエルの皮膚も特殊なコラーゲン原料として使用可能であるが、
市場には現われていない。

家禽(鶏)の皮

鶏の皮は原則として食肉の一部として消費されるので、
コラーゲン原料としては注目されなかった。
しかし最近は魚類コラーゲンの場合と似た背景で、
新種のコラーゲンを探索するという動きが活発で、
製品が市場に現われはじめた。
技術的には魚類原料と似て、不純物の除去にやや問題がある。

*

牛皮からの製品

食肉工場にまわる牛は年齢が三歳以上であり、
原料真皮は豚に比較して若いコラーゲンがそれだけ少ない。
すなわち架橋が多いコラーゲン線維からできている。
牛皮の場合は酵素による溶解を助けるため、
前処理としてアルカリ処理や軽微な過熱が必要である。
これらの処理条件が強いと得られる製品コラーゲンの性質が劣化しやすい。
また溶解したコラーゲン中にも架橋されたコラーゲンが多くなる。

豚皮からの製品

豚は六か月齢で若いので、その真皮も若く、架橋の少ないコラーゲン線維が多い。
酵素による溶解を助けるためのアルカリや熱による前処理は原則として必要ない。
そのため牛皮の場合より性質劣化の恐れが少なく、
溶解したコラーゲン中にも架橋されたコラーゲンが少ない。
この性質はコラーゲンの消化性に影響する。
豚皮由来水溶性コラーゲンの方が消化よく、
消化により生ずるペプチド中に生体に異質の架橋が少ないから、
特に呑むコラーゲンとしての重要な特徴をもっている。

魚皮からの製品

魚類真皮のコラーゲンは、
もともとの成り立ちが哺乳動物(牛や豚)と似ているが違いもある。
タンパク質をつくるアミノ酸の種類とつながり方が若干違うのである。
このため魚類系水溶性コラーゲンは粘性がやや低く、
保湿性や弾力性の優れた皮膜を形成するが、
熱に弱い(牛や豚のコラーゲンよりも十度以上低い温度でゼラチンに変わる)。
また架橋が少ないコラーゲンが多いので消化しやすいが、
消化によりできるペプチドが牛や豚由来のものとかなり違う。

コラーゲン製品[P.69-74]

コラーゲン(純正コラーゲン)製品のいろいろ

学術的な定義に合うコラーゲンの製品であり、いろいろの形態の製品がある。
主に牛皮と豚皮を原料とし、
一貫してセ氏二十五度以下の低温でかつ温和な条件を用いて
コラーゲンのラセン構造が壊れないようにしてつくる。
不純物を除いてから、線維を細かく砕くかまたは溶解し、いろいろの形態に加工する。
水分を多く含む製品はセ氏三十五度以上ではゼラチンに変わるので、
これを避けるため低温流通が必要である。

コラーゲン水溶液

非常に粘性があり、主に塗る化粧品として使用され、濃度は一~ニ%程度である。
コラーゲン以外の成分を含まないことを強調するため、
ピュアコラーゲンと称することがある。
またコラーゲンのラセン構造を壊さないような特別な方法で
線維から溶解してつくる点を強調して、水溶性コラーゲンと称することがある。
飲むコラーゲンの原料として使用しているものもある。

コラーゲンゼリーまたはペースト

コラーゲン水溶液より濃度が高く、半溶解の、吸水して膨らんだ線維を含んでいる。
生体とのなじみがよいので、医用材料(人工皮膚、充填剤など)など特殊な使い方をする。

コラーゲンビーズ

コラーゲンゼリーをビーズ状の形態にしたもので、
細胞の生育を促進するための細胞培養材料に用いる。

コラーゲンスラリー

コラーゲン溶液から線維を沈殿させて圧搾したまま、
または凍結したもので、主に中間原料として使用する。

コラーゲンスポンジ・パウダー

コラーゲン水溶液またはゼリーを凍結乾燥して得られるもので、
発泡スチロールのような外観をもち、水や液体のを吸う能力がつよく、
手術時の出血を吸収したり、止血剤などに使用する。

コラーゲン糸

コラーゲンペーストを糸状に紡糸して乾燥したもので、
手術時の縫合糸などに使用する。
コラーゲン糸は手術後、体内で自然に徐々に分解吸収されるので抜糸の必要がない。

コラーゲンフィルム

コラーゲンペーストからフィルム状に整形乾燥したものである。
円筒状に整形したものは、丈夫であるうえにそのまま食べられるので、
可食性のソーセージケーシングとして利用する。、
また生体になじみやすいことから人工皮膚のような医用材料などに使用される。

コーティング材料

ガラスやプラスチックシートのような支持体にコーティングして、
細胞培養や生化学診断などに用いる。

中略

食用ゼラチン

か粒状、板状、フレーク状、粉末状のものがあるが、
食品としての性能規格はおおむね共通で、主に溶解方法に違いがある。
ゼリーをはじめ非常に多くの食品に利用される。

写真用ゼラチン

写真のフィルムや印画紙の感光層の材料として使う。
不純物が少なく、低温で適度の吸水性をもつゼラチン膜を形成する。

カプセル用ゼラチン

濃厚なゼラチン溶液を乾燥しながらカプセル状に整形したものである。
医薬などを詰めるのに用いる。
口から入ったカプセルは胃で溶解し内容物が出てくる。

コラーゲン(サプリメント)

近年急速に需要が増大している
健康補助材料(サプリメント)として市販されているコラーゲンは、
主にゼラチン由来のものである。
粉末状、粉末を圧縮して錠剤としたもの、
水に溶解してドリンク剤またはゼリーとしたものなどがある。

コラーゲンの製造方法[P.84-88_93-96]

  1. 酵素を使う水溶性コラーゲンの製造方法[P.84-87]
  2. 酵素を使わない水溶性コラーゲンの製造方法[P.87-88]
  3. ゼラチンの製造方法[P.93-96]
酵素を使う水溶性コラーゲンの製造方法[P.84-87]

原料(動物の真皮)の精製

牛や豚などの動物の皮から真皮層を切り出し、
これを低温(セ氏二十五度以下)で水や温和な作用の塩の水溶液で洗浄することにより、
真皮中に含まれる不純物(コラーゲン以外のタンパク質)、
プロテオグリカンなど炭水化物を含む成分、色素など)を除去する。
多くの場合脂質性の成分(油脂、臭気成分、油性の色素など)を
有機溶剤などを用いて除去する。
これらの洗浄による精製が不十分であると製品に不純物が残り、
濁り、臭気、着色の原因になる。

精製した真皮(コラーゲン線維)の溶解と分離

精製したコラーゲン線維をクエン酸や酢酸のような
温和な酸の薄い水溶液(弱酸性)に浸してじゅうぶんに吸水、
軟化、膨化させてからロールやミキサーなどを用いて線維を細かく砕いて
泥状の分散液またはペースト状にする。
これにタンパク質分解酵素(消化酵素)を加え、
セ氏二十五度以下でゆっくりかくはんしながら
四十八時間以上処理して線維をじゅうぶん溶解する。

酵素はコラーゲン線維中の架橋
(これがコラーゲンを溶けにくくしている)で結ばれた部分を分解除去するので、
コラーゲン粒子(分子)がバラバラに解けて溶解するのである。
ちょうど丸太をいかだに組むときに使用した連結フックを切り離して、
丸太をばらばらにする作業に似ている。

酵素はコラーゲン線維を溶解するだけでなく、
コラーゲン線維に強く結合した不純物や生体拒否成分も分解除去する効果がある。
溶解後液性を中性にもどして酵素の作用を停止させ、
それ以上酵素が働かないように失活させる。
溶けない繊維を除去するために特殊なろ過や遠心分離をおこなって、
透明で粘性の強いコラーゲン水溶液を分離する。

コラーゲン水溶液の再精製

分離したコラーゲン水溶液にアルコールや酸と塩を加えて沈殿させると、
なお残る不純物は溶液にとどまり、
純度の高い水溶性コラーゲンが沈殿として得られる。
この沈殿を再度水に溶解し、特殊なろ過を行って混在する塩などを除いたり、
濃縮して最終製品が得られる。
これらの作業はすべて低温(セ氏二十五度以下)で行う。

製品は無味、無臭、透明で粘性の強い一~ニ%のコラーゲン水溶液である。
このようにして得られた製品は、酵素法による水溶性コラーゲンの特徴をすべて備えている。

水溶性コラーゲンは主に化粧品や医用材料として使用するものであるから、
いろいろな汚染物質の混在を完璧に避けねばならない。
特に微生物の混入防止が最も重要である。
そのため原料の精製から溶解、分離、再精製の工程を通じて微生物の混入の恐れのない、
クローズド系の工場システムが必要である。

酵素を使わない水溶性コラーゲンの製造方法[P.87-88]

精製した原料真皮を低温で非常に強いアルカリ(苛性ソーダを使う)に浸すと、
酵素を使用せずにコラーゲン線維を溶解することができる。
非常に強いアルカリを使用するため、コラーゲンのアミノ酸が損傷を受け、
コラーゲン特有のラセン構造も部分的に破損する傾向があり、
結果として酵素法のものより性質、性能が劣化する傾向がある。

一方魚類の真皮を原料とすると、弱酸性で、
牛皮や豚皮の場合よりさらに低い温度の水溶液中で、
酵素なしにコラーゲン線維のかなりの部分を溶解することができる。
したがってアルカリ法より損傷、
劣化の少ない水溶性コラーゲンをつくることができる。
しかし酵素による不純物の除去という作業が含まれないので、
製品の純度が低いことや生体拒否反応が残るという点で、
酵素法より性質性能が劣る。

ゼラチンの製造方法[P.93-96]

前処理方法により製品タイプが区別される

ゼラチンは、コラーゲンをセ氏六十五度以上の熱水に浸している間に
ゼラチン化して溶解してくるものである。
熱水による処理の温度が高く時間が長いほどゼラチンの収量は多くなるが、
逆に製品の品質は低下する傾向がある
(例えばゼラチン溶液を冷却してできるゼリーの強度が弱い)。
より低温で、より短時間でゼラチンが溶け出るように、
原料を酸またはアルカリにより前処理してから、熱水で抽出する。

前処理に用いたアルカリや酸がコラーゲン中の架橋
(これがコラーゲンを溶けにくくしている)の一部を分解除去する。
このような前処理の方法によりゼラチンの性質が変化するので、
製品タイプがこれにより区別される。

アルカリ処理ゼラチン

アルカリ処理ゼラチンは前処理として原料コラーゲンを低温(二十五度前後)
で最長数か月アルカリ溶液(石灰水)に漬してから、
洗浄後熱水抽出して得られたものである。
主に牛皮や牛骨コラーゲンのように架橋が多くゼラチン化しにくい原料で採用される。
アルカリによる前処理は架橋を減らすだけでなく、
コラーゲンと結合した不純物(コラーゲン以外のタンパク質など)
を除去する効果が強いので、純度の高いゼラチンを得るのに適している。
ただしアルカリ処理が長いとコラーゲンのアミノ酸が損傷を受ける傾向がある。

酸処理ゼラチン

酸処理ゼラチンは、原料コラーゲンを低温(二十五度前後)で
数日間塩酸に侵してから、洗浄後熱水抽出して得られるものである。
主に豚皮のような若いコラーゲンを多く含み、
もともとゼラチン化しやすい原料で採用される。

熱水抽出の温度でも区別がある

ゼラチンの品質劣化を避けるため、熱水抽出の温度を段階的に上げて
(例えば六十度、七十五度、九十五度のように)抽出し、
各抽出液を直ちにべつべつに冷却して溶け出たゼラチンが
その後長く熱にさらされないようにする。
このため低温抽出ゼラチン、中温抽出ゼラチン、
高温抽出ゼラチンのように製品タイプが抽出温度により区別がある。
この抽出原理はちょうど煎茶の煎じ方とよく似ている
(一煎めは注ぐ湯の温度を低くし、この一煎液の汁を完全に切ってから、
やや温度の高い湯を注いで二煎めに入る)。
段階抽出の方がトータルとして品質のよいゼラチンが得られるのである。

品質管理

ゼラチンの性質は、このように製造方法または製造条件により大きな変動があるので、
市販の製品は品質を一定にするため原則として用途に合わせてこれらをブレンドする。

フカヒレ[P.114]

長時間加熱するとゼラチンが軟化することに例外はないが、
なかには軟化しても溶解してこないゼラチンがある。
たとえば中華料理の食材であるふかひれはどんなに長い時間煮ても溶けない。
そのためこの食材の独特な食感は長時間加熱しても変わることがない。
それはふかひれのコラーゲンには、
加熱しても溶解しない特殊なタンパク質が結合していて、
これがゼラチン同士をばらばらにならないようにつなぎとめているからである。
近年通常のゼラチンに特殊な加工をして軟化しても溶けないようにしたものが、
ふかひれのイミテーションとして製品化されている。

脂身の中にはコラーゲンがある[P.118]

ばら肉や魚のはら身は脂がのって美味な部分であるが、
高カロリー食材を嫌う人は嫌がるかもしれない。
しかし脂身の中に実は良質なコラーゲンが多いのである。
もともと体の中で脂肪をつくる脂肪細胞は、
コラーゲンをつくる線維芽細胞と親類同士のような関係があり、
脂の多いところには、脂肪組織を支えるためにかならず豊富なコラーゲン線維がある。
そしてこれが脂身独特の食感と食味の決め手の一つとなっている。

ぼたん鍋[P.119]

丹波名物のしし鍋用いのしし肉は、赤肉部分の食味もさることながら、
しし鍋の別名であるぼたん鍋という言葉が示すように、
赤肉にそって見事な脂身が特徴的である。
この脂身は豚の脂身とはよほど違い、鍋で煮てもあまり軟化せず、
こりこりした歯ごたえが残っている。
これがしし鍋の特徴の一つとなっている。
これは脂身の脂肪組織に入り込んでいるコラーゲン線維がしっかりしているからである。

コラーゲンの液汁分離防止作用[P.121-122]

ハムやソーセージなどの肉加工品は、過熱して肉が収縮するときに、
多かれ少なかれ液汁やとけた油が分離する傾向がある。
特に原料生肉の塩漬け期間が短いとか、
冷凍で保水性の低下した原料でこの傾向が強い。
このような肉の保水力を補うために、
ハムやソーセージにゼラチンを添加することがある。
ゼラチンは液汁分離を防止するとともに味成分の保持や、軟らかい食感にも役立つ。

生肉の保水性改善や冷凍による保水性低下を防止するために、
水溶性コラーゲンを応用する試みがある。
魚肉のすり身に水溶性コラーゲンを混合してから冷凍すると、
解凍後の液汁分離が少ない。

コラーゲンペーストをソーセージのすり身に混合すると、
加熱による液汁分離を抑制するだけでなく、
結果的にソーセージの弾力性(噛んだときの歯ごたえ)を増す。

コラーゲンの減塩作用[P.125]

ハム・ソーセージの減塩を補う目的でコラーゲンペプチドを配合すると、
食味に減塩感がなく、保存性も低下しない。
これはコラーゲンペプチドには温和な抗菌効果がある
(アミノ酸グリシンが多いことも一因)ためと、味覚への効果
(コラーゲンペプチド自身は塩味はないが、
塩味が淡くても不満感を与えないように調和させる効果、
つまり塩味加減の許容範囲が広くなる)があるからだ。

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