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書籍と雑誌の要約と解説

人の体は再生できるか

コラーゲンからさぐる細胞の設計・組立のメカニズム

装丁
人の体は再生できるか 人の体は再生できるか
林利彦(東京大学教養学部教授)
マグロウヒル出版
ISBN4-89501-423-1
C0045
1991/09/12
¥1800
帯紙

全体重の1/15を占めるコラーゲンタンパク質
その働きから知る若さの意味!

○「しわ」そして「老化」のコラーゲン的解釈
○がん,膠原病,糖尿病のコラーゲン的解釈
○傷の修復についてのコラーゲン的解釈

目次
  1. 遠くて近きタンパク質
    1. 日常生活のなかのコラーゲン
    2. 動物とコラーゲンおよびその進化
    3. 植物とコラーゲン
    4. 微生物とコラーゲンおよびコラゲナーゼ
    5. 体のなかのどこにコラーゲンはあるのか
    6. 細胞を支えるコラーゲン
    7. 生体組織の三次元構造を設計する
    8. 宇宙生物学――無重力状態とコラーゲン
  2. コラーゲンの構造と機能
    1. 遺伝情報とタンパク質の多様性
    2. 硬さとしなやかさの秘密
    3. コラーゲン研究の方向と位置づけ
    4. コラーゲンの生合成から分解まで
    5. コラーゲン分子の全体像とその性質
    6. 構造と性質の相関関係
    7. 分子間相互作用による会合体の形成
    8. コラーゲンの分類
    9. コラーゲンと類似構造を持つ物質
    10. コラーゲンを主成分とする生体要素
    11. 生体機能の調節――体温、血圧、重力
    12. 細胞活性への寄与
    13. どのようにして細胞骨格を形成しているか
  3. かぎりなく広がる用途
    1. コラーゲン研究の未来
    2. 機能性材料としての可能性
    3. コラーゲン入り化粧品は本当に効くのか
    4. 皮膚陥没治療用注入剤――「にきび」と「しわ」
    5. コンタクトレンズから人工の皮膚・血管・臓器まで
    6. 皮膚の創傷および炎症に対する効果
    7. 体内のゴミや異物の掃除屋
    8. 老化のカギを握るコラーゲン
    9. コラーゲンと病気
文献
  • 東京化学同人『現代化学』1981年3月号[P.60_66]
  • 東京化学同人『現代化学』1989年3月号[P.106]
校正
  1. C-プロペロチドもった→C-プロペロチドをもった[P.69]
  2. ヒトロネクチンなど知られている。→ヒトロネクチンなどが知られている。[P.101]
  3. かなりの量含まれている→かなりの量が含まれている[P.102]
  4. 外傷や潰瘍に対しては創傷治療剤や抗炎症剤あるいは抗生物質を用いることにより、今まで以上に治癒を促進することが期待される。[P.132]

内容

  • エラスチンの場合は熱をかけてもあまり硬さに変化がない。[P.12]
  • アビテン[P.19-20]
  • コラーゲンの原料[P.24]
  • 線虫や回虫、ミミズなどの体の表面の部分はクチクラという透明なうすい丈夫な層からできている。[P.32]
  • 最近、明らかになったところによると、ロケットで無重力の世界へ連れていかれたカエルは、筋肉や骨だけでなく、皮膚のコラーゲンも減少しているとのことである。[P.43-44]
  • ビタミンC[P.65]
  • BMP(骨形成タンパク)[P.117-118]
  • 鼓膜の主成分はコラーゲンである[P.128]
  • コラーゲン化粧品考[P.129-131]
  • グリセリンのようなポリオールをまぜておくと線維にならない。[P.131]
  • 線維ゲルに薬を加えてやれば、有効成分をじょじょに拡散させることができるので、薬の効果は高まるはずである。[P.131]
  • ヒアルロン酸とコラーゲンの相乗効果[P.132-133]
  • コラーゲン溶液に高濃度のヒアルロン酸を混入して投与してみたところ、コラーゲンだけの溶液の場合に比べて組織によく浸透し、細胞の方にも入ってきやすく、より長期間に渡って残存する可能性もあることが判明した。[P.133]

  • 目の角膜の主成分はコラーゲンである。[P.134]
  • コラーゲンは一%の濃度でも充分ゲルをつくるが、ゲルになると透明度が下がる。[P.134]
  • コラーゲンは三七度Cでゲルを形成する。[P.135]
  • 出血多量が外科手術の失敗例の遠因になっていることが従来多かったが、コラーゲン止血剤の開発により、初歩的な手術ミスは大幅に減ったのではないかと言われている。[P.148]
  • コラーゲンの溶けやすさ[P.158-159]
  • 健常者の血液中にはコラーゲンが〇・一μg/ml(一千万分の一グラム)以上することはめったにない。[P.162]

アビテン[P.19-20]

アビテン(コラーゲン線維粉末の商品名)と呼ばれる外科手術用の止血粉末がある。
外科手術を行なうときはどうしても血管を切る必要があるし、また切れてしまうことがある。
比較的太い血管は血が流れ出さないようにカンシで止めるが、
細い血管になるとそのまま放置しておいて、血が自然に止まるのを待つしかなかった。
しかし、このアビテン粉末をまいておくと、血液が凝固して、むだな出血が抑えられる。
このアビテンは何からできているかというと、それがなんとほぼ純粋なコラーゲンなのである。

コラーゲンの原料[P.24]

コラーゲンを実験室規模で調製するにはネズミの尾からとるのがやさしく、また回収率も高い。
幼若な動物の皮膚からも酢酸などにより多量に抽出可能である。
ウシのアキレス腱から酸抽出している企業もある。
変わったところでは、卵の殻、エビやカニの殻にはりついている薄い膜からも得られる。
量的にもっとも多いコラーゲン調製材料は成牛の皮膚であるが、
酸抽出では溶けだしてくる量が少ない。
大量にコラーゲンを得るには酸性でペプシンなど
プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)を用いて可溶化するか、
アルカリで処理して溶かし出すかである。

ビタミンC[P.65]

コラーゲンのm-RNAの場合、
分子機構は明らかではないがアスコルビン酸(ビタミンC)の存在により、
コラーゲンのm-RNAの分解が抑制される、すなわちm-RNAの安定化が起こる。
この面でも、ビタミンCは細胞のコラーゲン合成を促す。

BMP(骨形成タンパク)[P.117-118]

BMPは骨形成の妙薬といえる。
しかし、よく研究のやり方を見てみると、BMPを単に投与するのではなく、
必ず生体の、それも骨からとってきた不溶性の物質
(不溶性コラーゲンを主体とする)と一緒に投与している。
この不溶性物質の役割は何なのであろうか。
よくわかってはいないが、どうもコラーゲンがそのカギを握っていることは確からしい。
今のところ想像に頼るしかないが、不溶性のコラーゲンにより、
BMPの拡散が抑えられるあるいはもっと積極的にBMPを結合して、
骨形成に必要な細胞増殖、タンパク合成の場を形成しているのかもしれない。

コラーゲン化粧品考[P.129-131]

コラーゲン入りの化粧品が種々の企業で生産・販売されている。
コラーゲンは皮膚の真皮の主要成分で、
しかも、「しわ」などの原因がコラーゲンの量的、質的変化による可能性があるので、
皮膚の健康状態を保つ上で重要な働きをしている。
このように重要な成分を外から与えて悪いはずはないというのが使用の根拠であろうか。
実際、使用してみた人からの評判も大変よいという。

「ほんとうですか。」「なぜきくのですか。」といった質問をよくされる。
コラーゲンのことや皮膚のことを少し知っている人ならば科学的根拠はないと考えるだろう。
表皮にはコラーゲンはないし、コラーゲンが表皮細胞に有効ということもないし、
真皮にまで吸収されるとは考えにくい。
生化学者や細胞学者ならたとえ吸収されても、
そんな微量のコラーゲンが有効に作用するはずがない、と言うであろう。
では完全なまやかしであろうか。

純粋に科学的な実証主義の立場からいうと、その通り根拠はない。
すなわち有効であるという科学的な証拠はない。
でもひょっとしたら現在の生化学、
生物学が未熟なためにその有効性が確認できないのではないか、
という可能性も残されている。
そこで、少なくとも害はなさそうなので、どのような効果がありうるのか、
ということを空想してみよう。

第一は皮膚表面というのは外部からの刺激をうけたり、摩擦などにより傷をうけやすい。
例えば皮膚の弱い人はひげそりなどのあとに目に見えない傷をうけていることがありうる。
このような目に見えない傷を被覆し、
かつ細胞などに傷の治癒へ向けて活動を促すのに有効であるかもしれない。

第二に表皮は一定の湿気を帯びる必要がある。
水分などを保つため、表皮には保湿に効果的な成分が存在すると言われている。
そのような成分が不足気味の場合、その成分の代用となったり、
あるいはそのような成分を補うような刺激を与えるという効果が考えられる。

第三はもっとも空想的であるが、与えられたコラーゲンが皮膚中の細胞により、
あるいは細胞が分泌した酵素により、
さらには皮膚に常在する有用な微生物などにより分解、あるいは修飾され、
これが何らかの刺激として細胞に影響を与えるという考えである。

ヒアルロン酸とコラーゲンの相乗効果[P.132-133]

架橋したコラーゲンは長持ちはするが、
コラーゲンが不足していると思われる組織のすみずみにまでは浸み込んでいかないため、
かなり長期間を経た後でも注入部位とそうでない部位との組織がはっきりと区別できる。
一方、溶液タイプのものはしだいに細胞が遊走してきて、組織上の区別がつかなくなっていく。

著者らは両方の欠点を補うべく、
コラーゲン溶液に高濃度のヒアルロン酸を混入して投与してみたところ、
コラーゲンだけの溶液の場合に比べて組織によく浸透し、細胞の方にも入ってきやすく、
より長期間に渡って残存する可能性もあることが判明した。

コラーゲンの溶けやすさ[P.158-159]

皮膚からコラーゲンを抽出しようとすると、
子ウシならある程度の量のコラーゲンを抽出できるが、
成牛だとほとんど抽出されてこない。
ということは、ウシ胎児の皮からはもっとも多くのコラーゲンが抽出できる。
一般に年齢を重ねた個体ほどコラーゲンの抽出量が少なくなることから、
年を重ねるすなわち加齢とともにコラーゲンが溶けにくくなってくることが推定される。
その原因はコラーゲン分子間に架橋結合ができるためであろうと考えられている。

しかし、ヒトでは、生まれた直後でもほとんどコラーゲンは溶け出してこないし、
他の動物でも消化器(小腸など)や肺などからはコラーゲンが抽出されてこない。
もちろんペプシンなどで限定分解すると子ウシの皮膚などからは
ほとんどすべてのコラーゲンが溶け出してくるが、
骨のコラーゲンはまったく溶け出してこない。
どうもコラーゲンの溶けやすさだけを老化と関係づけるのは無理があるらしい。

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