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書籍と雑誌の要約と解説

水道水にまつわる怪しい人々

夢の浄水器が教えてくれた生命のこと

装丁
水道水にまつわる怪しい人々 水道水にまつわる怪しい人々
湯坐博子(元裁判官/現弁護士)
三五館
ISBN4-88320-253-4
2002/09/06
¥1400
目次
  1. 哀しい水道水
    1. 危ない日本の水道水
      1. 日本の水道は公営独占企業
      2. ヨーロッパ諸国にみる水源の保護
      3. アメリカの水道水源
      4. 日本の水源は無防備
      5. 悲鳴をあげる水源・水脈の、ほんの一例
      6. 淀川に代表される河川水のひどさ
      7. 緩速ろ過
      8. 急速ろ過
      9. 急速ろ過による二次公害
      10. 水道水の塩素量には上限がない
      11. なぜ日本は塩素に頼る浄化方法にしたのか
      12. 水道行政の失敗
    2. 塩素の量が増えていく
      1. 私たちが飲む水道水の塩素量はどのくらいか
      2. 残留塩素の毒性に関する調査結果
      3. 塩素で免疫力が低下する
      4. 1ppmの塩素量を安全という学者
      5. だれも塩素の使用量をはっきり言わない
      6. 塩素量を手軽に調べる方法
      7. 塩素は「毒素」である
      8. 浄水器の有効性
    3. 利用者のための浄水器情報
      1. 浄水器の役割
      2. 浄水器の基礎知識
      3. 中空糸膜とは
      4. 中空糸膜の化学薬剤
      5. 殺菌剤として銀を添加した浄水器
      6. 銀は有毒化学物質である
    4. 一般細菌と病原菌のちがい
      1. みどりの地球
      2. 人間は細菌から進化した
      3. 人間と共生する細菌
      4. 食品にはどのくらいの細菌がいるか
      5. 食品衛生法の細菌の扱い
      6. 一般細菌がいる食品だから安全
  2. 独裁者のターゲット
    1. テレビに映った「夢の浄水器」
      1. 詐欺商品!?
      2. 雑菌の出る浄水器?
      3. そんなはずはない
      4. 国民生活センターからの呼び出し
    2. 国民生活センターと三菱レイヨンの関係
      1. 不審な出席者
      2. 浄水器テストは一人だけで行われた
      3. 騒然、騒然、騒然の質疑応答
      4. ウソがポロッと見え出した
      5. 「いくらもらっているんだ!」
      6. 国民生活センターは業者に謝った
      7. 国民生活センターは業者をだました
      8. 訂正文書をさらに撤回していた
      9. 国民生活センターは訂正文書の存在すらも否定した
    3. 国民生活センターの品性
      1. 商品テストとは、中傷が目的
      2. 倒産に追い込まれた浄水器メーカー
      3. 見えてきたターゲット
  3. 国民生活センターはウソをつく
    1. 訴えを提起する
      1. 「誇り」を守るための裁判
      2. 訴えの内容
    2. 水道法に「雑菌」という言葉はない
      1. 水道法四条は決して「雑菌」を許さない
      2. 一般細菌は無害というのが法律上の解釈
      3. なぜ大腸菌群を指標にするのか
      4. 一般細菌、集落数一〇〇個とは、どういう意味か
      5. 水質基準での一般細菌のとらえかた
      6. 一般細菌を問題にする国は世界にない
      7. 大腸菌のテストをしていなかった
      8. トイレのあとは手を洗うこと!
      9. 「夢の浄水器」は大腸菌に強いはず
    3. ミネラルは増加していた
      1. 石から溶け出すミネラルについての曲解
      2. センターのデータではミネラルが10%増加
      3. 「カルシウム」評価のミスリード
      4. カルシウムの過剰摂取は危険
      5. 水のおいしさはミネラルバランス
    4. 水質基準や細菌についての大誤解
      1. 水質基準に滞留水の規定はない
      2. 抗菌志向は誤導である
      3. 細菌は自然界のパイオニア
      4. センターは知っていた、厚生省は放置していた
  4. 元凶は厚生省の「歪み」
    1. 苦情どころか問い合わせもなかった
      1. 「夢の浄水器」は納得して買ってもらっている
      2. すべて渡辺多加子氏の独断でできた
      3. だれも渡辺多加子氏には口出しできない
      4. 浄水器テストは商品テストの花形
      5. このテストは一般商品テストである
    2. 常識はずれなテストの実態
      1. 水質基準のテストには決まりがあるのに
      2. 水質試験は経験が重要視されるもの
      3. センターの水は塩素反応を起こさない水だった
      4. センターには水質検査のための設備はない
      5. 業者には本当のテストデータとはちがうデータを渡す
      6. 一般細菌をゼロにした原水で行うのが細菌テスト
      7. 渡辺氏は火炎滅菌を知らなかった
      8. 「希釈」というのは10倍で行うこと
      9. データのバラツキは許されない
    3. 怠慢・おもねり・ビジネスチャンス
      1. 厚生省の浄水器批判
      2. 国民の安全よりメンツ!
      3. なぜ厚生省は浄水器を非難したか
      4. 厚生省の目論見は成功した
      5. 国民生活センターとはなんなのか
      6. 厚生省の過失は大きい
      7. 鮮やかなる厚生省の二面性
      8. 厚生省への内容証明
      9. 三菱クリンスイは狙っていた
      10. 「いつか三菱にやられるぞ」
      11. 目ざわりなもうひとつの理由
  5. こっけいな裁判官
    1. 一審東京地方裁判所
      1. 裁判官の恥は法律の解釈を間違えること
      2. 裁判の経過
      3. 東京地方裁判所の判決
      4. 判決要旨「一般細菌は有害」?
      5. 判決要旨「権威ある証言だって信用しない」?
      6. 判決要旨「センターのテスト方法に矛盾はない」?
      7. なんと裁判官はセンターの主張を全部認めた
      8. 判決の矛盾
      9. なぜこのような判断が出てくるのか
      10. 官が民の上に君臨する風潮
    2. 二審東京高等裁判所
      1. 要約書をつくって仕切り直し
      2. またもや負けた
      3. 判決は言い渡し寸前に書き換えられたのか?
      4. 強きをたすけ弱きをくじく
      5. 上告審は門前ばらい
  6. もしや銀を飲んでませんか?
    1. 浄水器テストはもうできない
      1. センターはもう国民をあおれない
      2. 厚生省は浄水器から病原菌は出ないと発表
      3. 平成九年三月の省令の意味
      4. それでも残るセンター誤導の危険要素
    2. 大問題となる「銀と中空糸膜」
      1. 浄水器協議会とは
      2. 銀の使用を隠す申し合わせ
      3. 銀は人体に蓄積する有害化学物質
      4. 家庭用品品質表示法
      5. 表示が消えただけで実態は同じ
      6. 浄水器協議会の苦悶
      7. 中空糸膜の存在理由
      8. 殺菌剤の使用は構造上不可欠
      9. センターも銀の使用を推奨していた三者の思惑と利益
    3. 御用団体は出直せるのか
      1. 不健全なスタート
      2. 浄水器協議会の排他性
      3. 三菱レイヨンの誤算
      4. 厚生省も銀の使用を黙認
      5. JIS規格の制定
文献
  • 厚生省『上水試験方法・解説』
  • 真柄泰基『水道水質ハンドブック』
  • 福井作蔵『生活微生物学』
  • 池田清彦『新しい生物学の教科書』
  • 服部勉『微生物を探る』
  • 松下和弘『命にいい水悪い水』
  • 厚生省『解説給水装置の構造及び材質の基準』
  • 小島貞男『水道水 – 安心しておいしく飲む最新常識』
  • 菱田昌孝『日本の水と世界の水』
  • 暮らしを守る会調査部『水道の水は飲んではいけない』
  • 鯖田豊之『水道の思想』
  • 藤田紘一郎『空飛ぶ寄生虫』
  • 小林康彦『水道の水源水質の保全』
  • 安井昌之『水とミネラル新常識』
  • 水上勉『精進百撰』
  • アンドルー・ワイル『ナチュラル・メディスン』
  • 吉田邦久『好きになる生物学』
  • 科学技術庁資源調査会『環境と微生物』

概要

浄水器の中空糸膜に添加された親水化剤および活性炭に添加された銀の有害性について。
そして親水化剤も銀も含まない国内最高の「夢の浄水器」を潰すために図られた、
国民生活センターと三菱レイヨンの癒着によるデマ報道とそれに対する裁判について。

要約

常々水道水の安全性に疑問を持っていた著者の弁護士・湯坐博子は、
顧客の鉱石研究家・久保力が開発した鉱石製浄水器に魅かれ、
株式会社淀エンタープライズを設立してその監査役に就任した。

「夢の浄水器」は国内の浄水器の中で唯一トリハロメタンも除去できたが、
この優れた性能が仇となり、業界最大手の三菱レイヨンに目を付けられた。
1994年11月7日、三菱レイヨンは国民生活センターを取り込み、
「夢の浄水器」を欠陥製品としてテレビ番組で報道させた。

国民生活センターは雑菌が存在すると主張したがこれには裏があった。
「夢の浄水器」は一般的な浄水器とは異なり抗菌剤を使用していない。
このため人体の口腔や胃腸などにも生息している一般細菌が存在する。
国センはこの無害な一般細菌を雑菌とすりかえて「夢の浄水器」を批判したのである。

根も葉もない批判で誇りと売り上げを損なわれた著者は、
国民生活センターに謝罪広告と損害賠償を求める裁判を起こした。
被告に非があることは明白だが、地方裁判所の不可解な判決により敗訴した。
控訴先の高等裁判所でも直前に判決文を書き換えられた形跡があって敗訴した。
上告先の最高裁判所に至っては訳の分からない理由で裁判自体を却下された。

結局勝訴することは出来なかったが、傷を負ったのは「夢の浄水器」だけではなかった。
「夢の浄水器事件」がきっかけで浄水器業界全体のイメージが悪くなり、
倒産する浄水器メーカーが続出したのである。
消費者は浄水器に背を向けてミネラルウォーターに走った。
最後に笑ったのは三菱レイヨンではなくミネラルウォーター業界だった。

内容

  1. 私は常々、「厚生省は日本人を絶滅させる気か」と思っている。[P.5]
  2. 朝霞浄水場の残留塩素濃度[P.42]
  3. ミュンヘンはアメリカ軍の撤退と同時に塩素消毒をやめた。[P.43]
  4. 「浄水器って効きますか」シンポジウム[P.45-46]
  5. 水道添加剤の許容量に関する研究[P.47-48]
  6. 塩素浄化と免疫疾患[P.49]
  7. 広島の異様な水[P.54]
  8. 浄水場を見学すればわかるが、
    浄化するために用意されている塩素が入った大型のタンクには
    「毒薬」という表示がなされている。[P.55]
  9. 私は猫を二匹飼っているが、鮮度保持剤のかかった干物は、
    干物が大好物であるはずの猫も食べない。[P.80]
  10. 夢の浄水器事件[P.82-226]
  11. 国民生活センターの正体[P.163]
  12. 高等裁判所の和解の席で、裁判官から直接、
    「当裁判所は行政に対する損害賠償を認めないことを建前にしている」
    と言われたことがある。[P.191]
  13. 裁判長に逆らえない裁判官[P.200]
  14. 浄水器協議会[P.211/221]
  15. 浄水器の偽装表示[P.211-213]
  16. 無意味で有害な中空糸膜[P.216/66]
  17. 水道協会と三菱レイヨンの癒着[P.224]
  18. 数年前、日本で貿易の仕事をしている隣国の友人から言われたことがある。
    「日本に来ていちばん困ったのは水道水です。飲むと下痢をする。
    韓国の水道水ではこんなことはない」[P.229]

朝霞浄水場の残留塩素濃度[P.42]

東京都水道局の平成一四(二〇〇二)年二月の水道ニュースによれば、
前年一一月の朝霞浄水場から出た水を上野で採水した結果が出ている。
これによると蛇口段階の塩素量は0・6ppmと記載している。
一一月で0・6ppmならば、夏場の高温で、
大腸菌などの細菌の繁殖しやすい時期は1ppm以上は入っているであろうと推測できる。

「浄水器って効きますか」シンポジウム[P.45-46]

平成三(一九九一)年五月のことだが、東京大学工学部都市工学科が
「五月祭」の特別企画として「浄水器って効きますか」というシンポジウムを開催した。

このシンポジウムに先立ち五月の八、九、一四、一五日に、
都内四九ヵ所の浄水器使用中の水道蛇口から水道水と浄水器の水を採水して調査を行った。
そして蛇口の水道水中の塩素、トリハロメタン、全有機ハロゲン化合物などの測定と、
さらに浄水器を通した場合の塩素、トリハロメタンなどの除去率を測定した結果を載せた
「浄水器って効きますか」という小冊子を発行し、同時にその結果を五月祭シンポジウムで発表した。

調査結果のうち塩素については、家庭など都内四九ヵ所の蛇口の水道水の塩素量は、
調査した水道蛇口三二ヵ所から1ppm以上の塩素が検出され、
世田谷区の家庭の蛇口からは2ppmの塩素が検出された例もあった。
調査時は五月であり、夏場とは異なり、塩素量の使用がそう多くない時期である。

水道添加剤の許容量に関する研究[P.47-48]

厚生省は昭和四五(一九七〇)年、水道水中の残留塩素が直接人体に及ぼす影響について、
東大教授四名に国立衛生試験所研究員と
日本大学教授も加えた専門家六名で構成された研究班に調査を依頼した。
その調査結果の研究報告書「水道添加剤の許容量に関する研究」を
昭和四六年六月一日厚生省環境衛生局水道課長通知として公表した(235頁に全文掲載)

研究目的は「本研究は最近原水汚染増大への対策、
配管設備不完全が原因となる浄水汚染への防禦的方策として、
水道水の過剰塩素化の傾向が大きくなっていることにかんがみ、
水道水中有効塩素の安全性を指向した衛生科学的研究である」と明確にされている。

結論を要約すれば次のとおりである。

昭和四五年当時、すでに蛇口における塩素濃度は無制限に増大する傾向が
現れているとしたうえ、水道水中の塩素最低濃度1ppmで、

  1. ヒト赤血球の表面構造を変化させると同時にこれを溶血しやすくする。
  2. 塩素はヒト末梢リンパ球に対する作用として、
    その代謝系に影響を与えると同時に死亡率を高める。
  3. 細胞の増殖に対する塩素の影響は塩素処理後の細胞中、核酸合成阻害が観察された。
  4. 結論としてヒト赤血球、リンパ球、Hela細胞(ガン細胞の一種)などは
    その1ppm以上の濃度で致死的影響が増大する。

以上をもう少しわかりやすくいうと、
水道水の塩素1ppmで免疫力に関するリンパ球の再生を妨げ、
死滅させるなどの影響を与え、血液の代謝(再生)を低下させ、
細胞を破壊させるということである。

塩素浄化と免疫疾患[P.49]

東京の淀橋浄水場が廃止され、水道水の塩素による浄化が始まったのは昭和四〇年である。
アレルギー性疾患が出はじめた年と水道水の塩素による浄水が始まった年とがピッタリ一致する。
このことから私は、水道水の塩素がこれら免疫性の病気のもっとも重要な原因と確信している。

広島の異様な水[P.54]

平成二年の夏に広島市に出張したさい、
泊まったホテルや友人宅の水道水の塩素量を調べたことがある。
コップにとった水道水にオートトリジンを二滴落とすと塩素に反応して着色したが、
同時にコップの水は上層がやや黒く、下層がオレンジ色の二層に分かれ、
異なった色に着色したうえ、コップをゆすっても上下の色が交じり合わない。
コップの水に油を入れたような状態である。
いったい広島の水道水には何が入っていたのか、異様な水道水と思った。
ほかでは見たことのない反応である。

当時、広島市の人に水道水のことを尋ねると太田川は鮎もとれるし、
水道水も悪くないはずといっていた。

夢の浄水器事件[P.82-226]

  1. テレビ局の浄水器批判報道[P.82-83]
  2. 癒着を匂わす業者説明会[P.85-94]
  3. 地方裁判所の意味不明な判決文[P.177-180]
  4. 高等裁判所の不自然な判決文[P.192-196]
  5. 最高裁判所の不可解な上告却下[P.201]
  6. 夢の浄水器批判で墓穴を掘って浄水器業界全体が破滅[P.225-226]
テレビ局の浄水器批判報道[P.82-83]

平成六(一九九四)年一一月七日夕方七時すぎ、私は台所で夕食の支度をしていた。

そこにふと、NHKのニュースから「浄水器の不当表示」という言葉が耳に入った。
はっとして後ろをふりかえると「夢の浄水器」がテレビ画面に映っているではないか。

画面には浄水器に不当表示の疑いもあり、
「国民生活センター 業界に改善要求」との文字が流れていた。

アナウンサーが読み上げた要旨は次のようなものであった(237頁のニュース原稿)。

  1. 消費者から苦情のあった四種類の浄水器についてテストした。
  2. 四種類ともミネラルを含んだおいしい水が作れるといっているが、
    ミネラル類のうちカルシウムは水道水と全く変わらず、
    そのほかのミネラルも水道水と同じで不当表示である。
  3. 雑菌の発生を抑える効果を謳ったニ機種に、
    水をそのままおいておくと水道法水質基準を上回る細菌が発生する。
  4. これらの浄水器は期待した効果が認められないとして、
    これまでも消費者や団体から問題が提起されていた。
    また雑菌の発生も見られたことから、衛生面でも問題があるとして、
    厚生省に改善を指導するよう要請する。

右のような報道に引き続き、国民生活センターのテスト担当者渡辺多加子氏が取材に応じて出演し
「表示どおりの効果は認められないし、消費者が期待するようなミネラルの増加は認められないので、
このような表現はやめてほしい」とNHKの報道を強調し、
「夢の浄水器」を含むテスト品が詐欺商品であると発表した。

癒着を匂わす業者説明会[P.85-94]

国民生活センターから、商品テスト部・瀬尾宏介の名前で、
「商品比較テスト説明会の開催について」という呼び出しの通知が会社に届いた。
そこには次のように書かれていた。

日時――平成6年11月8日 14時30分~15時30分
場所――国民生活センター(神奈川県相模原市弥3-1-1)
対象者――当テスト対象品の製造または販売者(対象者として関係する業界団体を含ませて頂きます。)

(中略)

相模原市の国民生活センターに着くと、すでに「クリンスイ」のメーカーである
三菱レイヨンの伊神生雄ほか三名の社員が、会場の最前列に座っていた。

私はなぜテスト対象以外の三菱レイヨン「クリンスイ」事業部の社員が四人もいるのか、
疑問に思った。呼び出し通知にはテスト対象業者と明記してあった。
ほかの業者も不審に思ったのか、「なんで三菱が来てるのか」といっていた。

テスト対象のメーカーは、淀エンタープライズ、セコム、
三菱電機、エムビージーの各社の浄水器と、松下電器産業、
日本インテックの二社のイオン整水器の合計六社で、
ほかに中空糸膜の業者が中心となっている任意団体の浄水器協議会から二人出席していた。

(中略)

センター側からテストを担当したという梶原義弘、遠山美知子、
渡辺多加子の三氏が出席して、二時半から業者説明会が始まった。

(中略)

渡辺氏は「雑菌に汚染されていた。
衛生的でない。飲み水として好ましくない」と、浄水器の細菌の有害なことを強調し、
業者に対する説明でも「雑菌」「汚染」という言葉を強調した。
終始浄水器を非難する内容だった。

水の衛生判断は、水道法上では大腸菌テストで確認することが義務づけられているので、
ここまで渡辺氏が言うからには大腸菌テストも行ったうえでの発表と思ったが、
念のため、主人が大腸菌テストをやったかどうか質問した。

これに対し渡辺氏は「大腸菌のテストは難しいし、設備もないのでやらなかった」と答えた。

この答えに会場は騒然となり、
他の業者から「大腸菌テストをやらないで衛生的でないとはなんだ」という声が出た。

「俺たちは何十回となくテストをやっているんだ。
汚染、雑菌とはなんだ、不当表示とはなんだ。
われわれは生活がかかっているんだ、これで飯を食っているんだ、
いままでどんなテストをしたってこんなデータは出ない」と机をたたいてどなる業者もいた。

おとなしかった松下電器産業の社員も「このままでは会社に帰れない」といった。
「これで商品は決定的なダメージを受けた。返品の責任はどうやってとるんだ」
というようなことを、セコムを除く業者は口々にいっていた。
セコムはすでに半年前から製造を中止しており、
いまさら報道による影響はないためか、あまり発言しなかった。

「こんなデータはない。データの改ざんか、捏造だ」という声も出た。
「データが違っている、おかしい」という話はすべての業者から出た。

≪中略≫

そのうちテスト対象業者のセコムの社員が、
センターの配ったセンターの機関誌「たしかな目」の翌日発売予定の101号のゲラ刷りに、
「テストはすべて新品を購入して行なった」との記載があることを問題にしはじめた。

セコムは需要者に直販しており、おまけに半年前から浄水器の製造販売を中止している、
一般市場で新品が手に入るはずがない、だから「たしかな目」の記載はウソである、と言い出した。

≪中略≫

また、「たしかな目」のゲラ刷りには、参考品として「クリンスイLX」の写真があげられ、
まずい成分を除去する性能は価格の安い浄水器で十分と、三菱レイヨンの商品を推奨していた。

センターが糾弾されても、渡辺氏は業者の質問に対し、
国民生活センターという権力のもとに何をしてもいいのだというような傲慢不遜な態度だった。

ついに主人が激怒して、
「これでは蛙をいたぶる蛇じゃないか。いったい三菱からいくらもらっているんだ」といった。

騒然としていた会場は一瞬空気が止まった。
シーンと静まりかえり、渡辺氏らの反応を待った。

私は当然渡辺氏や会場最前列に座っている三菱レイヨンの伊神氏を含む四人から
「ふざけるな」とか、「無礼だ」とか、「何をいうか」といった強い反撃を予想した。
しかし渡辺氏ら三人は黙って下を向いてしまい、三菱の伊神氏らも何もいわなかった。

私は、ああやっぱりうわさは本当なのだと思った。

地方裁判所の意味不明な判決文[P.177-180]

平成九年八月二九日判決言い渡し。
裁判長裁判官・飯田敏彦、裁判官・端二三彦、同・古谷健二郎。

≪中略≫

判決文をそのまま引用する。
一つの文章としてつながっているが、説明の便宜上、前段・後段にわける。

(前段)「一般細菌は一般的には、無害な菌が多いが、
排泄物中の細菌や伝染菌が混入していることがあり、
汚染されている水ほど一般細菌数が多い傾向にあることから、
一般細菌数が多い場合、水が汚染され、人間に有害な菌が存在する可能性が高いと考えられている。
そして水道法においては、水道水中に大腸菌群よりも一般細菌の侵入する機会のほうが
はるかに多くそれだけ汚染の検出も容易であるから一般細菌をもって一般的な汚染の指標とし、
水道法の水質基準において水道水中の一般細菌数が100個以下と定めている。」

(後段)「他方大腸菌群は、糞便との関連性が強いことから糞便性汚染の指標とされ、
右水質基準では検出されてはならないと定めている。」

この判決文は意味が不明である。

しかし『排泄物中の細菌』を本来の意味である「大腸菌群」とおきかえ、
『伝染菌』を「病原菌」とおきかえると支離滅裂な判決文であることがはっきりする。

前段で、一般細菌数一〇〇個の中に排泄中の細菌である大腸菌や伝染菌である
病原菌が入っている、しかし水道法上では一〇〇個存在してもよい、という。

後段では、大腸菌群は検出されてはならない、という。

判決の前段と後段ではまったく反対のことを言っている。
結局、言いたいことは一般細菌も有害ということである。

そして次のように結論した。

「前記認定にかかる一般細菌の定義によれば、一般細菌から病原菌は除外されていない」
「消費者は浄水器の滞留水についても
水道水と同様の安全性をもとめていると考えられることに照らすと、
浄水器についても水道法の水質基準との比較において衛生面の性能を判断することも相当であって、
右水質基準以上の一般細菌が検出されたことから浄水が汚染されており、
衛生的ではない旨の表現を用いて発表することも、
なお相当性の範囲内にあるというべきである」

としてセンターの発表を認容した。

一般細菌は病原菌を含む概念とする判決の考え方によれば、
水道法四条は「病原生物(病原菌)は存在しないこと」
と病原菌を一個も認めないのであるから、省令で一〇〇個の一般細菌を許容する水質基準は、
水道法に違反することになってしまう。

高等裁判所の不自然な判決文[P.192-196]

淀エンタープライズは、平成九(一九九七)年九月三日、東京高等裁判所に控訴した。

裁判長裁判官・奥山興悦、裁判官・都築弘、同・佐藤陽一であった。

高裁の第三回の裁判で裁判長は、一審の判決を暗に非難し、
一審判決にこだわらず、あらためて双方の主張を整理するために、
左陪席の佐藤陽一裁判官による準備手続きにまわした。

準備手続きとは、
判決の対象となる双方の主張を明確に整理するために、法廷外で行われる手続きである。

一審の判決は淀エンタープライズの主張していないことが主張したことになっており、
また主張したことが抜け落ちているなど問題が多すぎた。

≪中略≫

高等裁判所の審理は平成一一年一月二八日に終わり、判決言い渡し日は三月三〇日と指定された。
しかし言い渡し期日はのちに変更になった。
五月一三日に判決の言い渡しがあった。

判決書には、裁判長裁判官奥山興悦、裁判官佐藤陽一の二人のみの名前が印刷されていた。

右陪席裁判官はすでに異動しており、
署名ができないという裁判長奥山興悦の断り書きが記載されていた。

さらに判決言い渡しに立ち会った裁判官は、裁判長奥山興悦以外は新しい裁判官であった。
判決言い渡し事典では準備手続きの担当者・佐藤裁判官はすでに他に異動しており、
言い渡しに立ち会わなかった。

裁判の結果は控訴棄却となり、
淀エンタープライズの名誉回復のための謝罪広告、損害賠償請求は棄却された。

高等裁判所の判決は要約書の主張をまったく無視し、
要約書記載の淀エンタープライズの主張についての判断はなされなかった。
要約書は当事者の主張として、別紙として末尾につけてあるだけであった。

そして判決の理由として次のように記載されている。

「次に、公表された本件テスト結果の真実性及び真実と信じたことの相当性について検討する、
当裁判所も、本件テスト結果は真実であると認められ、
すくなくとも被控訴人国民生活センターが真実と信じたことについては
相当の理由があると判断するものであり、
その理由は、次に訂正、付加するほか原判決説示のとおりであるから、これを引用する」

右にいう「公表された本件テスト結果の真実性及び真実と信じたことの相当性」
というのは一審の裁判官が勝手に作った主張で、センターは主張していない。
だから、高等裁判所の準備手続きの終了と同時に要約書の記載だけに限ることになり、
「公表された本件テスト結果の真実性及び信じたことの相当性」
なんていう主張はなくなっていたものである。

結局、高等裁判所の判決は、撤回され存在しないはずの一審の判決に書いてある主張を、
そのまま高等裁判所の判決の段階になっても存在するかのように引用し、
一部の字句を訂正したのみで一審の判断をそのまま認めた。

最高裁判所の不可解な上告却下[P.201]

最高裁判所に上告した。
「本件上告の理由は、違憲及び理由の不備・食い違いをいうが、
その実質は事実誤認または単なる法令違反を主張するものであって上告理由に該当しない」
として却下された。

夢の浄水器批判で墓穴を掘って浄水器業界全体が破滅

センターによる苦情処理テストの二年後の平成八年ごろ、
取引のある某部品メーカーが来たとき、つぎのような話をきいた。

三菱レイヨンと癒着したセンターの苦情処理テストは「夢の浄水器」がターゲットであったが、
渡辺氏によるセンターの発表の仕方があまりにもひどかったというか、
公的機関として商品を滅多打ちにした発表であったため、
浄水器業界全体に決定的なダメージをあたえてしまい、
かなりのメーカーの倒産や製造中止が続出した。

そのため協議会の会員も激減した。

国民生活センターの正体[P.163]

国民生活センターは旧経済企画庁の唯一の外郭団体で、
国民生活の安定および向上に寄与するため、
総合的見地から国民生活に関する情報の提供および調査研究を目的とする
(国民生活センター法一条)特殊法人である。

旧経済企画庁の外郭団体であることからわかるように、
国民の経済的な面での国民生活の安定と向上に関わる情報の提供調査が本来の事業目的である。

しかし実態は現在問題となっている他省庁の特殊法人となんら変わるところがない。

裁判長に逆らえない裁判官[P.200]

力関係からいっても判決の内容だって裁判長は自分の意のままにできる。

裁判長は同時に裁判所の機構のうえでは各部の行政上の統括者でもある。
自分の部の裁判官の監督官でもある。

部長の勤務評価は裁判官の三年ごとの転勤や将来の栄進に直接影響する。
いったんついた悪い評価はずっとついてまわる。
刑事部や民事部で陪席裁判官にしてもらえず、
長く簡易裁判所の判事のままおかれたりすることもある。

将来を考えると恐ろしくて、若い裁判官は抵抗できないのである。

浄水器協議会[P.211/221]

浄水器協議会という団体がある。
中空糸膜を使用している業者が中心になって作っている浄水器の任意団体である。
平成四(一九九二)年から浄水器協議会という名称になったが、
その前身は全国家庭用浄水器協議会である。

センターが苦情処理テストをした平成六年一一月ころ、三菱レイヨンが代表幹事をやっており、
幹事として九州松下電器、ゼンケン、松下電工、日立製作所、東レなど、
中空糸膜を使用して国産の浄水器を作っているほとんどのメーカー七三社が参加していた。
中空糸膜を開発した三菱レイヨンが圧倒的な支配力をもっているといわれている。

*   *   *

浄水器協議会は昭和四七年四月発足し、翌五月には次のような申し合わせを行なっている。

(1)広告に関する禁句

  1. 水道水を否定する表現は直接間接を問わず一切使わない。
    水道水は安心できない、汚れている、危険である、人体に害がある、などは記載しない。
    なお、水道水がまずいと断定するような表現はしない。
  2. 「水道水中に含まれる異臭、濁り等」において
    「水道水中に」の表現は使わない
    「水の中に含まれる……」は良い
  3. カルキ(残留塩素)による危険感を表現しない。
  4. 除去できる物質中、次のものは水道水に関しては、記載しないようにする。
    カシンベック病の要因物質、中性洗剤、放射能物質、フッ素
  5. 浄水器の効用につき誇大不当な表現をしない。

浄水器の偽装表示[P.211-213]

浄水器協議会は、昭和五〇(一九七五)年九月一〇日、
家庭用浄水器の広報に関する申し合わせに一部追加として、次のことを定めた。

衛生対策商品の開発に際し、広報に関し下記項目を追加する。

(6)衛生対策商品に関する件

  1. 衛生対策の方法及び効果についての表現はさける。
  2. 銀による衛生対策を実施した場合は銀、Ag銀化合物、
    金属イオン等銀を連想するような表現は避ける。
  3. 「細菌問題を解決」に類する表現は避ける。
    細菌問題からはなれ「衛生的」等別の面からの表現を使用する。
  4. 対策商品の安全性に対する誹謗及び
    既存方式の浄水器に対する誹謗はいずれも避けるようにする。

銀についての浄水協議会のこの申し合わせは、こういうことである。

  • 有害でない一般細菌の殺菌のために毒物である銀を使用しても、
    銀の使用を隠し、いっさい銀を使用していることを表示しない
  • 会員が他の会員の銀の安全性を問題にすると誹謗になるからお互いに秘密を守る

という業界としての正式な申し合わせである。
殺菌剤としての塩素をとるかわりに、
殺菌剤として有害な銀を使うことを前提にした申し合わせなのである。

私ははじめてこの申し合わせの存在を知ったとき、
これが日本を代表するメーカーのやることなのかとガクゼンとした。
すでに書いたように、銀は有害化学物質である。
人体に蓄積され、しかも容易に排出されない。
銀は近代にいたるまで殺人の毒薬として使用されてきたぐらいだ。
飲料水に使用するのは一過性の塩素よりもっと危険なのである。

これらのメーカーは銀の危険を知っているからこそ、このような申し合わせを行なった。
また会員は他の会員が銀を使用していることを問題にすれば、
中傷になると脅しており、銀の使用が外にもれないようにガードしている。

この申し合わせが効を奏し、中空糸膜の浄水器には
銀をコーティングした活性炭が使用されていても一般の人は知らない。

無意味で有害な中空糸膜[p.216/66]

中空糸膜は昭和五九(一九八四)年、三菱レイヨンによって開発された。
開発担当者は伊神生雄氏である。

昭和五九年といえば、
厚生省が家庭用浄水器の一般細菌を非難する水道整備課長通知を出した年でもある。

中空糸膜は本来、一般細菌の除去を目的に開発された。
厚生省は水道水の危険から国民の目をそらすため、
有害でもない浄水器の一般細菌を問題にしたからである。

センターは昭和五九年の厚生省の通知により、
厚生省が水道水の危機感に根ざし出現した浄水器を
おもしろく思っていない意図を察知した。

この通知以後、センターは、浄水器に水質基準が適用にならないのに、
消毒効果判定のための水質基準の数値を浄水器にあてはめて中傷するようになった。
しかも浄水器の一般細菌を雑菌とすりかえ、汚染とあおってきたのである。

中空糸膜はこれらの指摘にこたえて一般細菌の除去を目的として開発されたものである。

素材はポリエチレンなどで、
0・1ミクロンの穴のあいた中が空洞になった化学繊維のフルイである。
一般細菌と鉄サビやにごりなどの物理的なものをこしとるだけのものである。

≪中略≫

一般細菌の除去をいうのでなければ中空糸膜の存在理由はない。

また中空糸膜使用の据置型や小型のアンダーシンクに使用されている
白っぽいやわらかいホースは、なぜか一般細菌が繁殖しやすく、
ここに溜まった一般細菌が中空糸膜の微細な穴をふさぐ。

第一章の3節にも書いたように、
中空糸膜はそのままでは水が通りにくいため親水化剤を使用している。

*   *   *

親水化剤は化学薬剤である。
石油系の界面活性剤だとか、環境ホルモンであるという人もいるが、
企業秘密とやらで実態はまったくわからない。

水がスムーズに流れないのだから親水化剤は必要なのであろうが、
いずれにしても化学薬品を使用したものが飲み水に使われることは必要である。

じっさいに、親水化剤の影響なのか、
溜まった細菌が変性し毒素を出すことが指摘されている。
無害であった大腸菌がO-157に変性するのと同じである。

そのためにさらに殺菌剤としての「銀」を添加する
必要が出てくるという、本末転倒の事態が起きている。

東レの「トレビーノ」は中空糸膜と活性炭の使用を表示している。
そしてパンフレットに「養魚用には使用しないでください」との注意書がある。

水道協会と三菱レイヨンの癒着[P.224]

かつて厚生省の外郭団体である財団法人水道協会が定めた
浄水器の型式審査基準というのがあった。
形式審査基準とは浄水器に関する日本水道協会の自主基準である。

この水道審査基準を定めるための平成元年一一月九日の給水器具委員会などにも、
学識経験者のほか厚生省の課長補佐などともに、
浄水器協議会から三菱レイヨンの伊神氏が出席している。

この第二回給水器具委員会では、ろ材を中空糸膜に限ろうとする意見が出ており、
新規のろ材についてはデータを積み重ねた後でしか形式審査基準の承認はしないと決め、
中空糸膜以外の浄水器を事実上排除することを決めた。

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