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書籍と雑誌の要約と解説

死の水道

もう水道の水は飲めない

装丁
死の水道 死の水道
藤田修司
燈社
ISBN4-87357-019-0
1992/04/25
¥1165
目次
  1. 水道水に発ガン性物質アスベスト繊維!
    1. 水道水に三種の発ガン性物質
    2. 東京の水道水をフィリップス社で分析
    3. アスベストとは
    4. 学会・マスコミで次々と事実を発表
  2. 死の水道水にした責任はダレ?
    1. 国際都市が恥ずかしい都の水道
    2. 首都圏の水源地はどこ?
    3. 現在の水道は「水道法」に違反?!
  3. なぜ?アスベストが入ったか
    1. 犯人は水道管
    2. 国際的責任問題に発展も
  4. トリハロメタンと変異原性物質MX!
    1. 塩素は毒ガスとしても使用
    2. アメリカが最初に発表
    3. 塩素がトリハロメタンを作る
    4. 変異原性物質MXも発見!
    5. 塩素消毒の功罪
  5. 発ガン性物質は除去できるか
    恐ろしい発ガン性物質を水道水から取り除くことが、はたしてできるだろうか。
    1. 煮沸で除去する方法
    2. 家庭用浄水器で除去する方法
    3. 除去が無理なら深い地下水で
  6. おいしい水とは
    1. お酒にもアスベスト繊維が入っている
    2. おいしい水の条件
    3. 人気が出た市販の「おいしい水」
  7. まだある水道の汚れ
    1. 水道から赤水が出る
    2. 受水槽にゴキブリやネズミが
    3. 水道水がカビ臭い
    4. ガンは治ったが、患者は死んだ
  8. こんなにある水汚染
    河川、湖沼、海水、地下水を汚染する原因をさぐってみます。
    1. 細菌・ウイルスによる水汚染
    2. 生活排水による水汚染
    3. 工場排水による水汚染
    4. 農薬による水汚染
    5. 塩素消毒の水汚染
    6. アスベストによる水汚染
    7. 産業廃棄物の水汚染
  9. きれいで安全な水を飲むための七つの提案
    1. 安いミネラルウォーターの製造販売
    2. 地下二百メートルのきれいで安全な地下水を活用
    3. アスベスト繊維をろ過できる家庭用浄水器の開発
    4. 古いダクタイル配水管の再生工事の実施を
    5. 使用中のアスベスト・セメント管の敷設替工事を急ぐこと
    6. パイプ イン パイプ工法の実施
    7. 安全な飲み水のビン詰を水道局が配給する
  10. 実験・研究報告とデータ
    1. 東京地域における水道水中のアスベスト繊維について
      実験方法、結果および考察、まとめ、結語
  11. あとがき
    1. 石綿繊維の経口摂取による生体への影響(第一報)
    2. アルコール飲料中のアスベスト繊維の分析
    3. 飲料水中のアスベストとサンフランシスコ湾地区のガンについて
文献
  • 市民のシンプルライフセミナー『水こうして飲めば心配ない』
  • 小林勇『恐るべき水汚染』
  • 北野大『いま、飲み水が恐ろしい』
  • 暮らしを守る会調査部『水道の水は飲んではいけない』
  • 中西準子『飲み水が危ない』[P.58]
  • 国土庁『日本の水資源』
  • 中西準子・小島貞男『日本の水道はよくなりますか』[P.33]
  • 貝原益軒『養生訓』[P.39]

解説

『死の水道』は水道水のアスベスト問題に関する嚆矢である。
著者は独自の調査により民間組織としては初めて水道水からアスベストを検出。
それを機に収集した経口発癌のデータと海外の状況が簡潔にまとめられている。

内容

  1. 藤田水質研究所[P.16]
  2. 東京都江東区の水道水からアスベスト[P.18-19_31]
  3. アスベストがもたらす消化器癌[P.24_27-29_130]
  4. 水道局は「一リットル中に百万本、百八十万本のアスベストがあっても心配はない、
    都の水道水の安全性については、特に問題はない」と、
    とんでもない政治的発言をしています。[P.32]
  5. 厚生省の国立公衆衛生院の入江建築物衛生室長は
    「アスベストのように、人体の臓器に蓄積されて引き起こされる発ガン性物質には
    許容濃度はない」とも言っております。[P.33]
  6. アメリカの環境保護局(EPA)のトーマス局長は
    「アスベストの危険については論議の余地がない。
    いかなる量であっても、人体に影響がある」と言い切っています。[P.34]
  7. アスベスト汚染の元凶は水道管[P.44-46]
  8. 水道局の天下り[P.46]
  9. アスベストセメント管の分布状況[P.48-49]
  10. 米国ではろ過プラントシステムでアスベストを除去[P.49-50]
  11. 『淀川・水問題を考える連絡会』も関西を中心に東京、
    横浜の水道水を調査したところ、冬場で二五~三〇ppb、
    夏で四〇~九五ppbと想像を上まわるトリハロメタンの検出量でした。[P.57]
  12. MXの毒性=変異原性の強さは、昭和四十年代に豆腐と魚肉ソーセージの殺菌、防腐に使われていた「AF2」並みだという。[P.60]
  13. ろ過剤のアスベスト繊維が酒に溶出[P.84]
  14. オランダではプラスチック水道管が使用されている[P.123]
  15. 日本ダクタイル鉄管協会に潰されたポリブデンパイプ[P.123-124]

藤田水質研究所[P.16]

「住民の福祉を守る」を社是とするわが社は、一九八六年一二月に藤田水質研究所を設立しました。

設立の目的は、住民が毎日飲んでいる「生命の源泉」である水道水汚染の実体と、
その原因を科学的に調査、分析、解明し、
本当に住民がきれいで安全な水を飲めるための具体的対策を提言することにあります。

東京都江東区の水道水からアスベストを検出[P.18-19_31]

一九八七年九月七日、私は東京の江東区地域の水道水を持って、
空路はるばるオランダのフィリップス社の応用研究所を訪ねました。
そして、フィリップス社の協力を得て分析のスペシャリストのオトン博士に会うことができました。

オトン博士は研究室に私と通訳を招き入れ、
走査透過型電子顕微鏡とX線マイクロアナライザーによって約二時間、
持参した江東区地域の一リットルの水の試料を検査・分析してくれました。

その結果百万本から二百万本ものアスベスト繊維が検出されたのです。
それはクリソタイル・アスベストとアモサイト・アスベストとトレモライト・アスベストの三種でした。
特にアモサイト・アスベストとトレモライト・アスベストは
極めて高い発ガン毒性の強いアスベストなのです。

*   *   *

昭和女子大学の長沢弘明前教授の研究グループは、
孔径〇・二二ミクロンのきめ細かいフィルターを使用して、
一リットル中に最高値、一千八百万本(江東区)のアスベスト繊維を検出しています。

アスベストがもたらす消化器癌[P.24_27-29_130]

トレモライト・アスベストから作られた滑石(タルク)は微粉末にして化粧品の白粉、
食品添加物、農薬の増量剤としても使われているため、
日本人に胃ガンが多いのはこのせいだという学者もいるくらいです。

*   *   *

大西義久新潟大学教授(病理学)は、一九八七年四月八日、
日本病理学会で「石綿小体が肺の中に入っている人は、同時に内臓の各臓器にも石綿小体が蓄積し、
特に食道ガンは三倍も高い確率で多発している」と学会発表されました。

病理学における石綿小体の研究では先駆者であり、
第一人者と思われる大西教授に学会発表の翌年(一九八八年)にお聞きしました。
「食堂ガン・胃ガン・腸ガンなどの消化器ガンで死亡した人を病理解剖してみますと、
まったく外科医としゃ断され、外との接触がないのに、
腎臓、膀胱、膵臓、骨髄などの内臓の臓器から石綿小体が出るということは、
明らかに血液に入った石綿小体が、全身をぐるぐる回って各臓器に蓄積されたものです。

血液に入った石綿小体は溶けません。
私のいう石綿小体というのは、
石綿(アスベスト)の繊維がタンパクと結びついてタンパクをかぶったもので、
その上でいろいろ害をするのです。
私もあなたも内臓の臓器に石綿小体が蓄積されつつありますよ。

石綿は長いのも短いのも、発ガン性には変わりはなく、
長さ五ミクロン(μm)の石綿は、一〇ミクロンの石綿が半分に折れたもので、
一ミクロンの石綿は、二ミクロンの石綿が半分に折れたものであり、
発ガン性にはまったく変わりありません」と言われました。

≪中略≫

米国のニューヨーク市立、マウントサイナイ大学の鈴木康之教授(病理学)が、
一九八八年十一月に来日した折にお聞きしました。
「水道の水の中のアスベスト繊維は、腸の内壁を貫通して血液に入り、
石綿小体として内臓の臓器に蓄積されます。
長いアスベストも短いアスベストも発ガン性には変わらない」と言われました。

≪中略≫

東京都衛生研究所でも、一九八五年にラットを使って動物実験をしています。
ラットの口から飲ませたアスベストの繊維が腸の内壁に突きささり、
さらにはそれが腸の内壁を貫通して、血液中に移行して全身を回り、
膀胱、腎臓、膵臓、大網膜脳など他の臓器に蓄積されることが、
動物実験によっても明らかにされています。

アスベスト汚染の元凶は水道管[P.44-46]

なぜ、発ガン性物質のアスベスト繊維が大量に水道水に入ったのでしょうか。

その元凶は送水管、配水管に使われている
アスベスト・セメント管(石綿管)とダクタイル水道管にあります。

アスベスト・セメント管の配水管は、
昭和二十七、八年ころから、都内の新興住宅地が急増したために、
従来の鉄管の代わりに金額の安いアスベストとセメントで製造した水道管として、
都内の各地に大量に埋設したのです。
ただ、この管の欠点は強度が弱いことです。
したがって、交通量が多く強度を必要とする地域では使わないのが普通ですが、
新興住宅地の急増に合わせるために、大量に使われました。
ましてや強度の心配の少ない、そして財性的にはひっぱくしている地方の水道管には、
より多くのアスベスト・セメント管が使われたはずです。

それまで、明治、大正時代から昭和二十八年ころまでの水道管は、
鉄で製造した鋳鉄管だったので、アスベストは使っていなかったのです。

さらに、昭和三十五年から強い鉄管の内壁に、砂とセメントとアスベストを混ぜて作った、
モルタルを内壁塗装(ライニング)したダクタイル管を開発して、
古い鋳鉄管の敷設替えや新設工事に大量に埋設して、水道の配水管として使用したのです。

特に、この古いダクタイル水道管の重大欠点は、内壁塗装するモルタルに密着力を強くさせ、
耐久性を持たせるためと、メーカーの利益のために、日本工業規格の製造規格上から、
混入してはいけないアスベストを混ぜて八ミリから一〇ミリの厚さに内装塗装したのです。

その後、塗装技術が進歩したので、十数年前から内装のモルタルに
アスベストを混入しないダクタイル管ができるようになりました。

ところが耐久性があり、百年はもつ水道管だと評価されたダクタイル水道管の内壁のモルタルが、
随所ではく離(はげ落ちる)し始めるという重大な事実が発見されたのです。

横浜市、川崎市で古い水道管の更正工事施行中に、その事実は確かめられました。
S・T工法という水道管の更正工事機械に装着されたテレビカメラがとらえたのです。

水道局の天下り[P.46]

㈱クボタ、栗本鉄工所㈱には、元水道局長であった人が常任顧問に、
また、数多くの水道局患部がおさまってきました。
高級公務員の天下り人事は、社会問題にもしばしば取り上げられていますが、
発ガン性物質を含んだダクタイル配水管の製造会社に、
かっての水道局高官が関与しているとあって、
製造物責任はないのかと激昂する良識人の声もあります。

アスベストセメント管の分布状況[P.48-49]

現在、日本の水道管の二〇%(約十万キロメートル)がアスベスト・セメント管です。
地方に行くほどアスベスト・セメント管の比率が多くなり、
東京でも、三多摩地域ではまだ給水管の一〇%がアスベスト管です。
都水道局も古くなった水道管を順次取り換えていますが、
東京の地下には約二万キロメートルの水道管が埋設されており、
交通規制などの問題もからみ、あと何年かかるのか分かりません。

さらに重大なことは、東南アジアの国に、
アスベスト・セメント水道管とダクタイル水道管を過去に大量に輸出して、
現地で水道管として使用していることです。

そしてマレーシアの水道水の中にも、
相当量の発ガン性物質のアスベスト繊維が入っている事実もわかっています。

米国ではろ過プラントシステムでアスベストを除去[P.49-50]

ミネソタ州のダルーヌやツーハーバーの水処理施設、
ワシントン州のシャトル、エヴェレットなどのろ過施設では、
蛇紋石系、角閃石系のアスベストも共に凝集法とろ過によって、アスベスト除去が行なわれています。
また、ダラス市でも数年前に水道管中のアスベスト繊維を除去するろ過プラントを建設しています。

アメリカ水道協会の研究財団の委員会は、
「飲料水中のアスベスト繊維を除去するろ過プラントシステムの使用により
健康被害が生じる確率はわずかで、ほとんどゼロに近いことが示される」といっている。

ろ過剤のアスベスト繊維が酒に溶出[P.84]

東京都立衛生研究所は一九八三年に、アルコール飲料水に含まれる
アスベスト繊維の含有量および長さの測定の調査を行いました。
透過型電子顕微鏡(TEM)で測定した結果、
ろ過工程にアスベストをろ過工程にアスベストをろ過に用いている酒には、
一リットル中にアスベストの繊維が三百四十万本から五百七十万本も入っていることが測定されました。
これは、使用されたアスベスト繊維がろ過工程のろ材を通過し、製品中に混入したものと考えられます。

また、アスベストの代わりに、セルローズ・パウダーもしくはろ紙を用いてろ過、
製造された酒と輸入ワイン、輸入シェリー酒から、
一リットル中に十六万本から五二万本のアスベスト繊維が検出されましたが、
ろ過工程にアスベストをろ過に用いている酒に比べると、その量は百分の一以下にしかすぎません。

この結果、EPAがアメリカ国内のアスベストによる汚染の可能性がない地域と
ほぼ同程度であることから、原料の水の中にもともと含まれていたものと考えられます。

オランダではプラスチック水道管が使用されている[P.123]

アムステルダム市の水道局からオランダの水道管と水質について色々たずねたところ、
驚いたことには、オランダの水道局は利権にからまない、住民本位の水道行政のせいか、
日本の水道管のようにモルタルを内壁に塗装したダクタイル配水管は、
昔から埋設使用していないそうです。
一部の大口径の鋼管以外は銅製の水道管と、
安全で丈夫なプラスチック水道管を使用しているから、
アスベスト繊維混入の心配は一切ないと説明してくれました。

日本ダクタイル鉄管協会に潰されたポリブデンパイプ[P.123-124]

日本でも二十五、六年前に、ポリブデンパイプという石油を原料とした安全・無公害で、
従来の水道管より安く、つなぎ目が少なくてすむ、
しかも腐食しない優秀なパイプが、某社によって発明されたことがありました。

これを水道管に利用すればよいと、識者間、業界で話題になりましたが、
不思議なことに実用化されず、水道管には利用されませんでした。
その理由は、この素晴しいポリブデンパイプが従来の水道管に代わって製造販売されると、
水道局に独占的にダクタイル配水管を納入してきた
K製工所などの利益に重大な影響をおよぼすことを恐れてか、
日本ダクタイル鉄管協会が約五十億円で、
このポリブデンパイプを開発した某社からパテントを買いとり、
製造、販売を押さえたという話も聞きました。

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