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書籍と雑誌の要約と解説

痛風予防のA・B・C

A(アルコール)B(美味)C(カロリー)を控えて痛風を予防しよう!

装丁
痛風予防のA・B・C 痛風予防のA・B・C
日本薬学会
薬事日報社
ISBN4-8408-1031-9
2008/07/23
¥1000
解説
本書は,痛風を予防するためにはどんなことに気をつけたらよいかを,
『痛風予防のA・B・C』として書いてみました。
はじめに第1部として,痛風と高尿酸血症の全体像を説明し,
まずこの病気を予防するためにできる日常生活での注意点を,
特に私達が測定しているプリン体について詳しく書きました。
目次
  1. 痛風と高尿酸血症のはなし
    1. 痛風とは
    2. 痛風の歴史
    3. 痛風発作の機序
      1. 尿酸は水に溶けにくい
      2. 何がMSU結晶を作りやすくする?
      3. 血液と関節液での尿酸の濃度
      4. 結晶の形
    4. 高尿酸血症とは
      1. 健常人での尿酸の濃度
      2. 高尿酸血症
      3. 飽和に近い濃度の尿酸を持つ理由は?
    5. 尿酸について
      1. プリン体と尿酸
      2. 種差
      3. 尿酸の抗酸化作用
      4. 活性酸素と消去機構
      5. 尿酸はラジカルスキャベンジャー
      6. キサンチンオキシダーゼ
      7. 尿酸の測定
      8. 尿酸の生理的変動と性差
      9. 尿酸トランスポーター
    6. 尿酸と心血管障害の関係
    7. 痛風・高尿酸血症の治療
      1. 治療の方針
      2. 薬物治療
        1. 痛府発作の薬
        2. 血中の尿酸値を下げる薬
      3. 尿路管理
      4. 生活指導
  2. 痛風を予防するには
    1. 尿酸の適正値
    2. 尿酸の変化
      1. お酒の影響
      2. お酒により尿酸が上がる理由
      3. 長期間の飲酒では?
      4. プリン体カットビール
      5. 個人差
      6. 激しい運動
      7. 食べ過ぎ
      8. ストレス
    3. 生活改善の基本
    4. プリン体
      1. プリン体とは
      2. 食品に含まれるプリン体
      3. プリン体は旨味の素
      4. プリン体の測定方法
    5. 酒類のプリン体
      1. 酒類中のプリン体
      2. お酒の適量は?
    6. 食品中のプリン体
      1. プリン体の前身はプリン体窒素
      2. 食事で摂るプリン体
      3. 食品中のプリン体含量
      4. 乾燥品は軽くなっている
      5. 乾燥しいたけを戻すと?
      6. プリンリッチ野菜
      7. 部位による違い
      8. ほうれん草は量に注意して
      9. 調理方法
      10. 健康食品
      11. 1日400mgのプリン体を目安に
      12. 実際の食事について
    7. 尿酸値に影響する食品
      1. 尿酸値を上げる食品
      2. 尿酸値を下げる食品
    8. 適度な運動の奨め
    9. ストレスの解消
文献
  • R J Johnson and B A Rideout : Uric Acid and Diet. New Engl J Med,350:1071-1073,2004.[P.2]
  • 最新医学・別冊『新しい診断と治療のABC 37 代謝4 高い尿酸血症・痛風』
    「尿酸は生理的抗酸化物質か(金子希代子)」190,2006.
    [P.20]
  • 日本痛風・核酸代謝学会『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』[P.33]
校正
  • 作用があること示しています。→脱字:を[P.101]

内容

  • 尿酸ナトリウム(正確には尿酸ナトリウム1水和物,monosodiu urate monohydrate : MSUと略す)[P.3]
  • コルチカムとはイヌサフランの根部で,今も痛風の薬として使われているコルヒチンを含んでいます。[P.4]
  • ギリシャやローマの哲学者によって「病気の王」,「王の病気」などといわれ,「歩けなくなる病気」とも記述されていました。[P.5]
  • 尿酸が結晶化する理由[P.6]
  • 尿酸の溶解能[P.8]
  • MSU結晶は針状の結晶で,長さ5~50μm,幅0.5~7μm,厚さ0.1~3μmの大きさです。[P.8]
  • MSU結晶が作られるには,関節液内の尿酸値の変動,温度,pH,イオン強度,アルブミン,グロブリン濃度などが関与することがわかっています。[P.9]
  • 血清と関節液には濃度勾配があり,血清尿酸値を下げると関節液内の尿酸塩結晶が溶けることが確かめられています。[P.10]
  • 低温酸性状態で結晶化しやすくなる[P.10]
  • 尿酸塩結晶のプロモーター[P.11]
  • 痛風患者さんの血液中の尿酸の濃度を正常に近づけることにより,発作を起こしていない別の関節にあるMSU結晶の量が減ることが確かめられています。[P.11]
  • 炎症の起こりやすさは結晶によって違い,痛風発作のときに関節液内で見られる大きさと形の結晶が最も好中球と反応しやすいことが示されました。[P.13]
  • 尿酸値の測定誤差はあまりないとはいえ0.2mg/dL程度,生理的変動は0.5mg/dL程度です。[P.15]
  • 健常な女性がさくらんぼ(280g)を食べると,5時間後に血中尿酸値が3.6から3.1mg/dLに下がり,それに対応して血液中の抗酸化能も454から414μmol/Lに下がったことが報告されています。[P.22]
  • 尿酸の抗酸化能[P.24-25]
  • URAT1[P.28-29]
  • イヌサフラン球茎100g中にはコルヒチンが157mg含まれており,ヒトの致死量は65mg/50kgといわれていますから,誤ってこれを食べてしまうことは大変危険です。[P.36]
  • BMI(Body Mass Index の略,図20)が20.0から2.0増加する毎に尿酸値が約0.2mg/dL程度上がっています。[P.46-47]
    疋田美穂,細谷龍男:高尿酸血症と痛風,10,134-139,2002.
  • 飲酒と尿酸値の諸研究[P.56-62]
  • 女性では尿酸プールは摂取量の25%程度増加するだけなのに対し,男性では摂取量のほとんどが体内プールに入るため1.5~2倍に増大することが報告されています。[P.64]
  • 痛風と精神活動との関連については,18世紀半ばに,痛風発作は賢者に多く起こる,という記述があります。[P.65]
  • 躁うつ病に関しては,躁状態のとき尿酸値が高く,うつ状態では低い傾向にあることなどが示されています。[P.65]
  • 1970年代には,摂取したプリン体は尿中に排泄されてしまうので,血清尿酸値を上げる要因としてあまり問題にならないと考えられていたようです。[P.69-70]
  • 週に2回は休肝日として,お酒を飲まずに肝臓を休めることが痛風の予防につながります。[P.76]
  • 乾燥シイタケの戻し汁[P.87]
  • 一部に100gあたり50mg以上のプリン体を含む野菜があり,プリンリッチ野菜と呼ばれています。[P.88]
  • ほうれん草[P.89-90]
  • プリン体は水に溶けやすい性質を持つため,食材を煮たり,茹でたりすることで約3分の1が減り,煮汁やゆで汁に移ります。[P.90]
  • プリン体にもいろいろな種類がありますが,特にモノヌクレオチドに強い尿酸上昇作用があり,また,アデニン類のほうがグアニン類よりも尿酸値を上げることなどがわかっています。[P.95]
  • 血清尿酸値の上がり方はRNAの方がDNAより大きく,摂取した量が多くなればなるほど血中尿酸,尿中尿酸排泄量とも増加しました。[P.97]
  • モノヌクレオチドでは,5′-AMPまたは5′-GMP(4gRNA中の量)の負荷により,尿酸値は4.0から5.3mg/dL(AMP),4.5mg/dL(GMP)と変化し,AMPの方がGMPより影響が大きいことがわかっています。[P.97]
  • 蛋白質[P.98-99]
  • 低脂肪の乳製品は痛風のリスクを下げるのに対し,高脂肪の乳製品では変化がないようです(図40)。[P.100]
    New Eng J Med,350,1093,2004.
  • ビタミンC[P.100]
  • チェリー[P.100-101]
  • ルチンとプロアニジン[P.101]
  • ラットを使って,食物繊維(セルロース,キチン,キトサン,イヌリン,キサンタンガム)の影響を調べたところ,食物繊維は食事に由来するプリン体(RNA)を便へより多く排泄させることにより,血中および尿中の尿酸が増えるのを抑えました。[P.101]

尿酸が結晶化する理由[P.6]

体の中に結晶ができる,と聞くと不思議な気がするかもしれません。
しかし体の中には,結晶構造を持つことで役割を果たしている組織があります。
それは骨や歯です。
骨や歯はヒドロキシアパタイトというリン酸カルシウムをもとにした硬い組織として作られています。

尿酸の溶解能[P.8]

砂糖の溶解度が200g以上であるのに対して,
尿酸ナトリウムのそれは0.0064gと耳かき一杯程度の量であり,
とても水に溶けにくい物質であることがわかると思います。

低温酸性状態で結晶化しやすくなる[P.10]

体内のナトリウムイオン濃度(140mM)での尿酸の溶解度は,
温度が37℃から30℃に下がるだけで,6.8mg/100mLから 4.5mg/100mLと3分の2に下がります。
また,25℃では3.3mg/100mLと半分以下になります。
このことから,手足の冷えなど局所での温度変化によって
尿酸ナトリウムが結晶になりやすくなると考えられます。

*   *   *

私達は,尿酸の過飽和溶液(pH7.4)を作り,
それに尿酸を加えたときに生成される尿酸ナトリウムの結晶量を
フローサイトメーターを使って測りました。
乳酸を加えてpHが中性から酸性に近づくほど
尿酸ナトリウムの結晶が多く作られました。
濃い乳酸溶液を加えたときには,
乳酸は,過飽和溶液のpHが酸性となり,一瞬にして結晶が作られます。

尿酸塩結晶のプロモーター[P.11]

血清の成分であるアルブミンやγ-グロブリン,
関節液の成分であるコンドロイチン硫酸,フォスファチジルコリン,ヒアルロン酸,
そしてプリン体などが尿酸ナトリウムの結晶化と関係があることがわかっています。
特に,γ-グロブリンは結晶生成を助長することや,
痛風患者さんの関節液の免疫グロブリン画分には
結晶化を早める働きがあることが確認されています。
さらに,MSU結晶をウサギに注射した後に
ウサギから集めた免疫グロブリンが結晶化を早めることもわかりました。
これらのことから,
体の中で尿酸ナトリウム結晶の表面構造を記憶した抗体が作られ,
その抗体が結晶化を早める役割をしていると考えられています。

尿酸の抗酸化能[P.24-25]

尿酸はpH7.0でリノール酸の酸化を抑制します。
また,尿酸二はキレート作用により重金属イオンを除去するとともにラジカルを捕える作用がある
(ラジカルスキャベンジャーである)ことが示されています。
ここで興味深いのは,尿酸濃度が50~500μM(0.9~9.0mg/100mL)
で最も高い抗酸化能が認められていることです。
ヒトにおける血清尿酸値がちょうどこのくらいの値であり,
生理的濃度で高い抗酸化能が示されるのは,
血中における尿酸の意義に繋がるものと考えられます。

このように,尿酸にはin vivo(生体内),invitro(生体外)
の両方において抗酸化作用が確認されています。
血中の尿酸は,激しい運動,鉛中毒,アルコール過剰摂取,
肥満などにより増加しますが,これらの条件下では,
脂質の過酸化も増えていることが知られています。
尿酸濃度が上がるのは合目的なのかもしれません。

URAT1[P.28-29]

日本人により発見された尿酸トランスポーター,
URAT1(urate transporter in the human kidney)は,
2,642bpにコードされる533残基のアミノ酸からなる12回膜貫通構造を持つタンパク質です。
URAT1は成人・胎児とも腎臓のみに発現し,
近位尿細管上皮細胞の管腔側に存在することが確認されています(図15)。
トランスポーターとしての尿酸の取り込み実験から,
URAT1は近位尿細管の管腔(細胞外)から細胞内へ尿酸を輸送することがわかりました。
また,尿酸の排泄を促進する薬として使われている
ベンズブロマロン,プロベネシド,ロサルタン等がこの輸送を阻害します。
そのために尿酸が体内に再吸収されにくくなり,血中の尿酸が下がります。
さらに,日本人に多い特発性腎性低尿酸血症の患者では,
DNAレベルでURAT1に突然変異(650C→T,894G→T)が認められました。

これらの分子クローニングに始まる種々の機能解析の成果から,
URAT1という尿酸トランスポーターは,既に報告されている他のトランスポーターと共同して,
尿酸を尿細管から毛細血管へ輸送(再吸収)していると考えられます。

飲酒と尿酸値の諸研究[P.56-62]

  • 低アルコール,ノンアルコールビール,
    アルコールを含まない凍結乾燥ビールを使って調べた研究では,
    いずれのビールでも飲酒後,血清尿酸値が上がっています。[P.57]
  • 蒸留酒では,まったく飲まない人(図24の0の値)と比べて,飲む量が多い人ほど6年後の尿酸値が上がっています(図24)。[P.58]
    Hyon K. Choi et al.: Arthritis & Rheumatism, 51(6),1023-1029,2004.
  • ワインでも適量を超す飲酒では尿酸値が上がります。[P.59]
  • プリン体カットビールでは,通常の発泡酒と比べて,尿酸値の上がり方が3分の1になることが報告されています。[P.61]

健常人に適量のアルコールを静注すると尿中オキシプリン排泄量と酢酸が上昇しました。
アルコールの代謝によって作られた酢酸がATPと反応してアセチルCoAとなるため,
アデニンヌクレオチドの代謝回転が早まり,プリン分解が亢進して尿酸が作られると考えられています。

このときのアルコール量は体重65kgに換算してアルコール18~45gで,
日本酒120~300mL(0.5~1.5合)またはビール360~900mL(大ビン0.5~1.5本)にあたります。
アルコール量41gを含むビール,ウィスキー,焼酎を飲んだときの変化を調べた報告では,
ビールでのみ血清尿酸値が上がり,ウィスキー,焼酎では血清尿酸値は上がりませんでした。

<中略>

大量に飲酒したときには,お酒の種類にかかわらず,
ATPの分解と同時に乳酸による尿酸排泄の低下が起こり,血清尿酸値が上がります。
尿酸の増加は大量の飲酒のときに起こる変化です。
その理由は,アルコールが代謝されるとき,
NADから過剰のNADHが作られ,乳酸脱水素酵素(LDH)の反応が乳酸産生に傾きます。
増加した乳酸は尿細管において尿酸の排泄を抑えます(図23)。
そのため,日本酒,ウィスキー,ワイン,ビールのどれでも,大量に飲むと血清尿酸値が上がります。
尿中尿酸排泄量はビールでは増加し,日本酒,ウィスキーでは減少すると報告されています。

大量飲酒のアルコール量は,体重65kgあたり120gが使われています。
日本酒なら780mL(4.3合),ビールなら2340mL(大ビン3.7本),焼酎なら400mL(2.2合),
ウィスキーなら300mL(グラス7.5杯)にあたります。

*   *   *

飲酒による尿酸値への影響には,個人差があります。
性別では女性の方が男性よりも血清尿酸値が上がりやすく,
体型では太っている人より痩せている人の方が尿酸値は上がりやすいようです。

毎日お酒を飲む人とあまり飲まない人を比べると,日本酒1合強,またはビール大瓶1本で,
毎日飲む人は結成尿酸値が平均0.8mg/dL上がったのに対して,
飲まない人では上がらなかったことが示されています。
また,毎日お酒を飲む人ではあまり飲まない人に比べて,
痛風発作がより低い尿酸値で起きやすいことが報告されています。

乾燥シイタケの戻し汁[P.87]

もどしたしいたけとその戻し汁についてプリン体量を測定しました。
その結果,乾燥しいたけに含まれるプリン体の72%が戻し汁に移行することがわかりました。
しいたけの旨味成分は主にグアニル酸で,水に溶けやすいプリン体のひとつです。

ほうれん草[P.89-90]

ほうれん草はプリンリッチ野菜の代表であり,鉄,葉酸,ビタミンなども多く含む栄養価の高い食品です。
16世紀頃からヨーロッパに広がり,痛風に罹患していたルイ18世が食べたいと話したところ
主治医に止められたというエピソードが残っています。
痛風患者がほうれん草を大量に食べて痛府発作を起こしたという症例報告があり,
ほうれん草で血清尿酸値が上がったということも報告されています。

蛋白質[P.98-99]

健常人男性にプリン体の少ない食事と0~75gのタンパク質を同時に食べてもらった結果,
タンパク質により尿酸の排泄量が増えて,血中尿酸値が下がったという報告があります。
ミルク由来と大豆由来のタンパク質で比べると,
どちらのタンパク質も尿酸の排泄を増やすことが報告されています。
ただし,大豆では大豆自身に含まれるプリン体の影響を受けるため,
血清中の尿酸値はあまり変わりません。
それに対し,乳製品のタンパク質は血清尿酸値を下げます。
また,アミノ酸を静脈内投与しても,
尿中尿酸排泄量が増えて血清尿酸値が下がることから,
タンパク質の作用は分解・吸収されたアミノ酸に由来するものと考えられています。

ビタミンC[P.100]

ボランティアを無作為に2グループに分け,
ビタミンC(500mg/日,2ヵ月)群とプラセボ群で比べた報告があります。
それによると,ビタミンC群では,尿酸の腎臓からの排泄が増え平均0.5mg/dL血清尿酸値が下がりました。

チェリー[P.100-101]

白人女性10人にポリフェノールを含むチェリー(ビング種)280g(約45個)を
10分で食べてもらい調べたところ,
尿酸の排泄量が増えるとともに血中の尿酸値が5時間後に0.53mg/dL下がりました。
ぶどう,イチゴ,キウイフルーツではこのような変化は見られなかったことから,
チェリーに含まれるポリフェノールには,尿酸の排泄を増やす作用があると考えられています。

ルチンとプロアニジン[P.101]

高尿酸血症モデルマウスを使って,
フラボノイド成分(ケルセチン,ルチン)が尿酸を下げる作用があるかどうかを調べた報告があります。
その結果,ケルセチン,ルチンとも大量に投与すると(50mg/kg以上または100mg/kg以上),
マウスの尿酸値を下げました。
また,ブドウの種子に含まれるプロシアニジンを投与すると,
血清尿酸値と肝臓のキサンチンオキシダーゼの活性が下がります。
このことは,フラボノイド成分やプロシアニジンに,血中の尿酸値を下げる作用があること示しています。

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