バベルの図書館

書籍と雑誌の要約と解説

水道水『複合』汚染

水道水の汚染は、あなたの“生命”を縮めている

装丁
水道水『複合』汚染 水道水『複合』汚染
大城護
宝島社(宝島社新書680)
ISBN4-7966-1755-8
2000/03/24
¥680
目次
  1. 日本の水道水はなぜまずくなったのか
    1. ふくらむ水道水への不安
    2. カルキ臭の正体
    3. 生活排水がカビ臭の原因
    4. 水源の汚染と水処理(急速ろ過法)の限界
    5. 水道水の塩素くささは、浄水場からの距離に反比例する
    6. 消毒だけではない、もう一つの塩素の役割
    7. トリハロメタンの恐怖――川は有機化合物まみれ
    8. 『ハリスレポート』の衝撃
    9. トリハロメタンはなぜできる?
    10. トリハロメタンの濃度は、浄水場からの距離に比例する
    11. あとを絶たない有機塩素化合物の恐怖
    12. トリハロメタンはなくせるのか
    13. 河川を水源とする水道水には高濃度の農薬が含まれている
    14. ゴルフ場の芝に使用される除草剤が問題
  2. 生物汚染――クリプトスポリジウム集団感染事件
    1. 日本の水道行政を震撼させて、越生町の集団感染
    2. 異常なまでの感染力
    3. 見向きもされなかった「クリプトスポリジウム感染症」
    4. “神出鬼没”のクリプトスポリジウム騒動
    5. ミルウォーキーの大惨事
    6. 塩素消毒はまったく歯がたたない原虫
    7. 生物汚染の危険性
  3. 広がる地下水汚染
    1. 横田基地ジェット燃料漏洩事件
    2. 米軍の三度の汚染事故
    3. 「浅層地下水」が汚染されれば、必然的に「深層地下水」も汚染される
    4. ハイテク汚染
    5. 高濃度の「トリクロロエチレン」が井戸から検出
    6. 地下水は有機溶剤に汚染されやすい
    7. 汚染土壌を修復させるための法律
    8. 廃棄物処理に伴う地下水汚染
  4. 家庭内汚染
    1. 何でも溶かす「日本の水」
    2. 溶ける鉛管
    3. 水道水一Lにつき百八十万本のアスベスト
    4. 溶ける鉄管――その腐食を促す河川水の汚濁
    5. 銅管は使われていないはずだが
    6. ビル・マンションの受水槽汚染
  5. 環境ホルモン・ダイオキシン汚染
    1. メス化する多摩川
    2. ノニルフェノールの発ガン性
    3. 未知の有害物質「環境ホルモン」
    4. 「環境ホルモン」という危険のシグナル
    5. 最も警戒すべき物質・ダイオキシン
    6. コプラナPCBの毒性
    7. ダイオキシンの地下水汚染
    8. 水道水の水質基準は汚染の実態に追いついていない
  6. 水道水をおいしく飲む方法 Q&A
文献
  • 小島貞男『おいしい水の探求』
  • 鈴木静夫『水の環境科学』
  • 市民のシンプルライフセミナー『水――こうして飲めば心配ない』
  • 中西準子『いのちの水』
  • 中西準子『日本の水道はよくなりますか』
  • 小島貞男『水道水をおいしく飲む』
  • 小島貞男『水道水の水はこうして飲めば安心だ』
  • 中西準子『水の環境戦略』
  • 吉田文和『ハイテク汚染』
  • 中西準子『飲み水が危ない』
  • 葛原慎二『もう自衛するしかない水道水』
  • 日本水質研究会『いま水が危ない』
  • 松下和弘『いい水飲もう』
  • 川畑愛義『水を飲む健康法』
  • アクア研究会『くらしと飲み水』
  • 安藤毅・小林勇『よくわかる水 一問一答』
  • 志村武『ひと目でわかる「環境ホルモン」ハンドブック』
  • 宮田秀明『ダイオキシン』
  • 藤縄克之『地下水汚染』
  • 日本水道新聞社『水道水水質ハンドブック』
  • 池谷真二『心が豊かになる水の話』
  • 丹保憲仁『水道とトリハロメタン』
  • 石井勲・山田國廣『下水道革命』
  • 山本荘毅『新版地下水調査法』[P.91/92]
  • NHK『雑学読本 NHKためしてガッテン』

内容

  1. 実はこのカルキ臭というのは、水中のアンモニアと塩素が反応してできる臭いなのだ。
    正式には「トリクロラミン」という。[P.22]
  2. カビ臭というのは、文字どおり、
    水道水がカビくさい臭いを発することだが、その犯人はカビではない。
    それは、藍藻類というコケのようなものが発する「ジェオスミン」や
    「2-メチルイソボルネオール」という微量の物質であることが現在分かっている。[P.25]
  3. 水道水の塩素投入は赤水防止のためでもある[P.34-35]
  4. 水道水の農薬汚染[P.52-53]
  5. クリプトスポリジウム集団感染事件[P.60-62_68-69_71-72]
  6. 横田基地ジェット燃料漏洩事件[P.82-83_90-91]
  7. 有機溶剤漏洩事件[P.97-99]
  8. 硬水は、鉛菅の中に被膜を作り、鉛が溶け出すのを防ぐが、
    日本の軟水は、そうではない。[P.119]
  9. 塩ビ管には鉛系の安定剤が使われており、使いはじめの約一週間は、
    〇・〇五mg/lくらいの鉛が溶け出すといわれている。[P.121]
  10. 鉄管の歴史は、まさに腐食との闘いであったことがわかる。
    現在、全国の水道管は約一〇%が鋳鉄管、三〇%がダクタイル鋳鉄管、
    三%が鋼管となっており、[P.128]
  11. 水道水で炊飯するとビタミンB1が減少する[P.169]
  12. 紅茶も、ダージリンは日本製のミネラルウォーターのほうが、
    セイロンやアッサムは外国製の水のほうが、おいしく飲めるようです。[P.178]
  13. 女子栄養大学の研究グループがミネラルウォーター三十銘柄を調査したところ、
    その半分にあたる十五銘柄からトリハロメタンが微量検出されました。[P.179]

水道水の塩素投入は赤水防止のためでもある[P.34-35]

塩素は消毒だけにしか使われないのかというと、そうではない。
実は塩素には、もう一つの別の顔があるのだ。
これが、水道水に塩素を入れるもう一つの大きな理由である。
水源が汚染された今日では、消毒よりもこちらの理由で使われている塩素のほうが多いのだが、
このへんの事情や理由を、水道局はなぜかあまり説明したがらない。

塩素は強力な殺菌力とともに、酸化力を持っている。
この酸化力を利用して、水道原水中の鉄、マンガン、アンモニアなどの除去に使われているのだ。

鉄やマンガンは、かつて水源がきれいなときには問題にならなかった。
しかし、河川などの汚濁が進むと、微生物により水中の酸素が多く消費されるようになり、
その結果、鉄やマンガンが水中に溶け出すようになったのだ。
その水をそのまま処理しないで供給すると、「赤水」といわれる赤や茶色い水が蛇口から出てくる。

≪中略≫

鉄、マンガン、アンモニアを除去するために最初に加える塩素を「前塩素」、
あとで消毒のために加える塩素を「後塩素」と呼んでいる。

水道水の農薬汚染[P.52-53]

東京都水道局は一九八四年七月に水道水から最高〇・〇七四ppbのCNPを検出したと報告している。

≪中略≫

日本農村医学研究所が一九八二年に行なった調査によると、長野県の千曲水系の水道水中のCNPは、
調査地点十六ヵ所中六ヵ所で検出され、濃度は〇・〇〇一一~〇・〇〇五一ppbであった。

クリプトスポリジウム集団感染事件[P.60-62_68-69_71-72]

その事件は、一九九六年六月七日の梅雨の最中に起きた。
事件が起きたのは、埼玉県入間郡越生町。人口一万四千人ほどの小さな町だ。

この日、同市にある市川病院の市川正之院長は、
「今日はやけに下痢患者が多いなあ」とつぶやいていた。
彼は朝から飛び込んでくる、多数の下痢患者の診察に追われていた。
この時点では、何が原因なのか市川院長にも、サッパリ分かっていなかった。
しかし、市内の小・中学校の欠席者は、ふだんの三倍となっていた。

≪中略≫

十日午後、病院からの報告を受けて事態の悪化を懸念した町の保健所や保険センター、
教育委員会の三者は、町民の被害状況を把握するために、
埼玉県衛生研究所に調査を依頼し、全住民を対象としたアンケート調査を実施した。

アンケートの回答があった。
一万二千二百四人のうち、実に八千七百五人、
つまり、七一・三%もの人が、下痢や腹痛を訴えていることが判明した。
さらに、そのうちの三二・六%にあたる二千八百三十七人が職場や学校を休み、
三二・二%にあたる二千八百四人が医療機関の治療を受けていた。

*   *   *

一九九四年の八月末、クリプトスポリジウム感染症は、神奈川県平塚市ですでに発生していた。
この平塚市の事件では、雑居ビルの貯水槽がクリプトスポリジウムに汚染され、
ここでも四百六十一人にも及ぶ多数の感染者を出している。

≪中略≫

一九九九年七月十五日に、
山形県の赤川の上流域にある朝日村でクリプトスポリジウムの発生が確認され、
村の給水地区の三百四十九世帯が、事実上の断水状態に陥ったケースがある。

*   *   *

クリプトスポリジウムによる“大災害”が、ある日突然発生した。
それは一九九三年の三月から四月にかけてのことだった。
場所はウイスコンシン州ミルウォーキーである。

ここでは、百六十万人もの地域住民が被害にあい、
実にそのうちの二五・二%にあたる四十万三千人もの人が感染し発症した。
しかも、約四千四百人が入院し、
その約一割にあたる四百人あまりの人が死亡するという、大惨事を引き起こしたのだった。
だが、このミルウォーキーの大惨事は、その原因についてはいまだに解明されておらず、
まさに悪夢としか言いようがない。

≪中略≫

アメリカでは、ミルウォーキーのほかにも、
大規模なクリプトスポリジウム感染例が報告されている。
一九八七年ジョージア州キャロルトンで一万二千九百六十人が、
さらには、オレゴン州ジャクソン・カントリーで約一万五千人が、それぞれ被害にあっている。

横田基地ジェット燃料漏洩事件[P.82-83_90-91]

一九九三年、十一月五日の朝刊、新聞各紙はこぞって、一つの事件を報道した。

≪中略≫

それは、東京都多摩地区の福生市、昭島市など五市一町にまたがる米軍横田基地で、
航空燃料地下貯油タンクから、大量の航空燃料が消失していた事件だった。

≪中略≫

米軍側の発表によると漏れたのは「JP-4」という燃料で、流失推定量は六八キロ。
ざっとドラム缶三百四十本分というすごい量である。
しかも、地下タンクの燃料漏洩したのがいつから始まっていたのか分からないという。

*   *   *

米軍による地下水汚染事故は、戦後まもない一九四七年(昭和二十二)年に、
当時の立川基地東側周辺の井戸がガソリン臭を発したことから始まった。
その四年後の一九五一(昭和二十六)年から一九五二(昭和二十七)年にかけて、
今度は基地の南側にある立川市西部から昭島市東部にわたる井戸がガソリンに汚染され、
それはやがて昭島市中央部にまで広がった。

≪中略≫

米軍による第三回目の汚染事故は
一九六四(昭和三十九)年から一九六七(昭和四十二)年にかけて起こった。
被害を受けたのは、前回と同様、横田基地南に位置する昭島市であった。
民間のいくつもの浅井戸が、基地のガソリンタンクから漏れた燃料油で汚染された。

有機溶剤漏洩事件[P.97-99]

サンゼノ市のトリクロロエタン汚染[P.97-98]

「水道の蛇口から水に溶け込んだ油(有機溶剤)が出てくる」と言うと、
大半の人は、油は水に溶けることはないのに、と意外に思うことだろう。
しかし、そんな常識を破る事件が、一九八二年、アメリカのカリフォルニア州サンゼノ市で起きた。
フェアチャイルド社の半導体工場の貯蔵地下タンクから、
使用済みの有機溶剤「1、1、1-トリクロロエタン」が漏れ、
水道用の水源井戸を汚染したのである。

この事件の恐ろしいところは、半導体工場で事故が起きたとき、
住民の誰一人としてその異常に、気がつかなかったことだ。
事件が明るみに出たのは数年後、汚染された水源井戸の水道を飲んでいた母親たちから、
心臓病や奇形などの異常のある子どもが、
事故後に多く生まれていると指摘されたことがきっかけだった。

同州の保険部が行なった疫学調査によると、
汚染されていた水道水が供給されていた地区の住民から生まれた子どもの心臓病の発生率は、
通常の二・六倍。自然流産率は二倍。先天性奇形の発生率は、なんと三倍にも達していたのである。
それだけではない。成人でも、ガンや肝臓障害、皮膚障害などの患者が数多く報告されていた。

この地区の住民は、事件の真相を知ると、
この汚染水と人体への影響の因果関係の解明を求めて訴訟を起こした。
しかし、はっきりとした因果関係は明かされず、問題はウヤムヤにされてしまったのだった。

その中で唯一明らかな事実があった。
それは、汚染井戸が閉鎖されてからは、被害者がまったく出なくなったことだ。
この事件は、まさに有機溶剤による地下水汚染の恐ろしさを、
世界じゅうにまざまざと教えてくれた。

ウォーバンのクロロエチレン汚染[P.98-99]

アメリカにはもう一つ、著名な地下水汚染事件がある。
それは、マサチューセッツ州のウォーバンで起きた、水道用井戸の汚染事件である。

一九七九年、ウォーバンで水道用の井戸が「トリクロロエチレン」や
「テトラクロロエチレン」などの有機溶剤に汚染されていることが発見された。
八本中二本の井戸から有機溶剤トリクロロエチレンが二六七ppb、
テトラクロロエチレンが二一ppb、クロロホルムが一二ppbの濃度で検出された。
これはトリクロロエチレンが日本の基準値の九倍、テトラクロロエチレンが二倍に当たる濃度である。

一九八六年、
この井戸に関してハーバード大学の研究グループは、次のようなショッキングな報告をした。
汚染された井戸の水を飲んでいた地区の子どもは、
一九六四~一九八三年にかけて白血病の発生率が国内平均の約二倍、
先天性の中枢神経の異常は、同じウォーバンで汚染井戸の水を飲んでいない
地区に比べて二・七倍もの発症率であることが判明したのである。
そしてここでも、汚染された井戸が閉鎖されたところ汚染地区でのみ、
これらの異常の発症が明らかに減少したという……。

日本の半導体工場周辺はトリクロロエチレンで汚染されている[P.99-102]

一九八三年のことである。
兵庫県損保郡太町で、水道水の水源として使用されている井戸で、
有機溶剤トリクロロエチレンの濃度が四〇七ppbにものぼることが判明した事件があった。
当時、厚生省は、トリクロロエチレンの基準を三〇ppbと暫定的に定めていた。
太子町の数字は、ざっとみても、基準の十三倍以上である。
この井戸のトリクロロエチレンの濃度がいかに高かったかが分かるだろう。

さらに調査の結果、汚染は水源の井戸だけではなく、民家の井戸にも及んでいたことが分かった。
民家の井戸四百二十七ヵ所を調べると、
トリクロロエチレンの濃度が一〇〇〇〇ppb以上もあった井戸が五ヵ所、
五〇〇ppb以上が四ヵ所など、基準の三〇ppbを超えるところが百二十八ヵ所もあったのである。
最高値一〇〇〇〇ppbは、なんと基準値の三百倍以上の汚染ということになる。

追跡調査の結果、発生源をたどると東芝姫路太子工場の敷地内に行き当たった。
そこでは、土壌が四四〇〇〇ppb、井戸水が四二〇〇〇ppbのトリクロロエチレンに汚染されていたのだ。

汚染源とされた東芝姫路太子工場では、
一九七〇年から半導体などの洗浄剤としてトリクロロエチレンを使っていた。
事件後、東芝姫路太子工場では汚染土壌の一部除去を行なった。
しかし、周辺井戸では相変わらず高い濃度のトリクロロエチレンが検出されているという。

一九八五年に環境省が行なった全国調査では、
三〇ppbの水質基準を超えるトリクロロエチレンが検出された
飲用井戸が一六・一%もあったことが分かっている。

≪中略≫

トリクロロエチレンによる汚染事件は、
太子町のほかに千葉県君津市、東京都府中市、熊本市など全国で発生している。
それらについては、アメリカで報告されたような疫学的調査などの報告はないが、
千葉県君津市のトリクロロエチレンで汚染されたある民間井戸
(基準値の九十倍の二七〇ppbが検出されている)では、
汚染が発覚する五年くらい前から飼猫が死産や難産をするようになったばかりか、
五匹ほどいる雌猫がどれも足や目に奇形のある子猫を産んでいたことが報告されている。

さらには半導体関係の企業がある市町村でも、地下汚染を調査してみたところ、
すべての井戸からトリクロロエチレンが検出されたのだ。

水道水で炊飯するとビタミンB1が減少する[P.169]

京都大学医学部の糸川教授(現:福井県立大学看護福祉学部)が、一九七八年、
水道水で米を炊くとビタミンB1が半減するというショッキングな報告をしています。
実際のテストでは、米を水道水で洗うことによって流出するビタミンB1は四〇%、
さらに水道水で米を炊くと三〇%ほどが失われるという結果が出ました。

大阪市立大学の村田希久教授(栄養学)も、水道水で米を炊くと、
米の中のビタミンB1が三分の一に減少することを確かめています。
一方、塩素を取り除いた水で米を炊くと、B1が失われることはなかったと報告しています。

≪中略≫

糸川教授は「最近、子どもに脚気が増えているといわれる背景には、
水道水にも原因があるのかもしれない」と述べています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です