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書籍と雑誌の要約と解説

ファストフードと狂牛病

狂牛病問題の根幹はファストフード精神にある

装丁
ファストフードと狂牛病 ファストフードと狂牛病
FAST FOOD,MAD COW AND GREED
エリック・シュローサー(ジャーナリスト)
Eric Schlosser
楡井浩一
草思社
ISBN4-7942-1163-5
2002/10/18
¥950
2001年、欧州から始まった狂牛病禍は、ついに日本に到った。
相次ぐ感染牛の発見、政府の対応の遅れ、その後の食肉偽造、隠蔽工作……
この事態を招いた真の原因、これらすべての問題の背景にあるのは、
社会に蔓延する「ファストフード精神」だ。

狂牛病発生の事態に、ファストフード業界はいかに対応したか。
各国政府はどう対処し、日本政府の過ちはどこにあったか。
この事態にわれわれには何ができるのか。
そして、雪印からエンロンにまで共通する「ファストフード精神」とはいかなるものか。

狂牛病が明るみに出した現代社会の病理に鋭く迫る!

目次
  1. 事の起こり
    1. 致死の病もグローバル化している
    2. 時代の変化
  2. ファストフード精神とは
    1. 大半が衝動買い
    2. アイデアの誕生
    3. 自宅では作れないわけ
    4. 食べるほどに腹膨れ
  3. ちがう、ちがう、まちがっている
    1. 子供じみた非難
    2. 「世界じゅうどこでも同じ味」か?
  4. 反芻動物に食べさせるな
    1. 禁止された飼料はどこへ行ったか
    2. 政府以上の力をもつのは
  5. 凋落が始まる
    1. ついに見え始めた翳り
    2. 労働者は牛以下か
  6. 犬が犬を食う事態
    1. 現在の被害、将来の懸念
    2. 日本のアグリビジネス企業の問題
    3. アメリカ牛安全神話は疑問だ
    4. 画期的なドイツの取り組み
  7. 貪欲さが減り、思いやりが増える
    1. ケネディが説いた消費者の四つの権利
    2. ファストフードに替わるものとは
  8. 出典、参考文献および補足説明

内容

  • マクドナルドの創業者=レイ・クロックの言葉[P.28]
  • 日本マクドナルドの指導者=藤田田の言葉[P.38]
  • 米国政府と精肉業界の癒着[P.43-45]
  • 狂牛病のための飼料規制方針に猛反発する業界[P.54-55]
  • 豚と鶏に転用された反芻動物製肉骨粉は巡り巡って牛に与えられた[P.55]
  • マクドナルドの狂牛病に対する的確な対応[P.60-61]
  • ファストフードチェーンは売上-2%で株価が暴落する[P.65]
  • マクドナルドのアニマル・ライツ[P.68-69]
  • 仏農業省は食品関連産業に悪影響を及ぼしかねない厚生官僚の意見を黙殺[P.75]
    “Le Monde,Time to Make Some Radical Reforms in the Food Industry”,Manchester Guardian Weekly,May 30,2001
  • 仏・独・伊・丁・西の政府は自国の牛肉産業を守りたい一身でEUの対策を妨害[P.75]
  • デンマークでは牛の死骸を燃料とする発電施設を建設中[P.75]
    Philip Pullela,”Mad cow scare on front burner around Europe”,Reuters,January 22,2001
  • 英畜産局・農漁食糧省と国際獣疫事務局が日本農林水産省に狂牛病を警告するが無視[P.76]
  • EU科学運営委員会に日本で狂牛病が発生する可能性が高いという報告書の破棄を要求[P.77]
    “Britain warned farm ministry about BSE in 1990,” Japan Economic Newswire,February 26,2002,”Farm Ministry slow to act on BSE bonemeal warnings”,Mainichi Daily News,February 26,2002
  • 狂牛病発見時に日本農水省は適切に処分したと請合ったが実際には手違いで飼料に加工されていた[P.77]
    Yumiko Ono and Steve Secklow,”Mad-Cow Disease Finds Japan Unprepared as Tokyo Fumbles Bid to Reassure Public”,Wall Street Journal,November 30,2001
  • 協和香料化学の食品犯罪[P.78]
  • 狂牛病について武部勤農水大臣曰く「感染源の究明がそんなに大きな問題か」[P.80]
    Miwa Suzuki,”Japan’s farm ministry slammed for blunder over mad-cow disease”,Agence France Presse,April 2,2002
  • 英国狂牛病諮問委員会ジョン・コリンジ「共食い型の再利用はことごとく危険性をはらんでいる」[P.81]
    Jonathon Leake,”New BSE outbreak linked to blood in feed”,Sunday Times,September 24,2001
  • アメリカでは牛全体の0.01%しか狂牛病の検査をしていない[P.82]
  • 独農業栄養消費者保護省レナーテ・キュナスト「我が国の牛には、水、穀物、牧草しか与えてはならない」[P.87]
    “Germany plans radical farm reform – food must be as pure as beer,says government”,Deutsche Presse-Agentur,February 8,2001

マクドナルドの創業者=レイ・クロックの言葉[P.28]

いいですか、これを産業と呼ぶなんて、ばかげてますよ。
そんなものじゃありません。これは鼠が鼠を食い、犬が犬を食う争いです。
殺られる前に、相手を殺る。アメリカは適者生存の社会ですからね。

Boas and Chain,Big Mac,pp.15-16

日本マクドナルドの指導者=藤田田の言葉[P.38]

事業では、勝てば官軍だ。金にきれいも汚いもない。
資本主義の社会では、金儲けの手段はすべてよしとされるのだ。

James Terngold, “Den Fujita,Japan’s Mr.Joint Venture”,New York Times,March 22,1992

米国政府と精肉業界の癒着[P.43-45]

ジョージ・W・ブッシュが大統領に就任してまず行なったことのひとつは、新しい人間工学基準の廃止だ。
この基準は労働安全衛生局(OSHA)が提案したもので、
何百万人ものアメリカ人労働者を累積性外傷障害から守るはずだった。

それを廃止するという決定に、全米レストラン協会とアメリカ食肉協会は拍手喝采した。
さらに、OSHA関連の法律すべてを監督する下院労働者保護小委員会の委員長には、
ジョージア州選出の共和党議員チャールズ・ノーウッドが新しく任命された。

ノーウッドは90年代、危険な職場を考察したり、
管理不行届きな雇用者を罰したりする権限をOSHAから奪う法案を提出した。
また、公の場で、累積性外傷障害を負う労働者の中には、
仕事ではなく、スキーやテニスのしすぎが原因のものもいるとほのめかしたこともある。

ブッシュ政権が最初にくだした食品の安全に関する決定のひとつは、
全国学校給食プログラムで使われる挽肉のサルモネラ検査の廃止だ。
精肉業界のロビイストたちは歓迎した。
業界はこの検査を、やっかいで費用のかかる不必要なものとみなしていたので、
廃止に向けて精力的に働きかけていたのだ。

2001年12月、ある連邦裁判所が、
サルモネラ菌汚染が高いという理由で挽肉工場を閉鎖させる権限は、農務省にはないと裁定した。
その根拠は精肉業界の言い分に沿ったもので、サルモネラ菌は適切な調理法で殺せるのだから、
挽肉の危険な不純物ではないという。

また、民主党が下院で、
高サルモネラ菌濃度の挽肉を出荷した精肉会社への懲罰権限を農務省に与えようとしたところ、
ブッシュ政権がこれを阻止した。
毎年百万人以上のアメリカ人がサルモネラ菌による食中毒の害を受けているのに、
現在のアメリカでは、サルモネラ菌まみれの挽肉を売ってもなんら罪に問われない。
しかも、その汚染挽肉を、農務省の認証ラベルつきで販売できるのだ。

狂牛病のための飼料規制方針に猛反発する業界[P.54-55]

全米レンダリング業協会、アメリカ飼料産業協会、脂肪タンパク研究財団、動物性タンパク製造業界が、
こぞって食品医薬品局の禁止令に反対した。
レンダリング業界のスポークスマンは、
狂牛病と人間の病気との関連は「科学的証拠によって何ひとつ実証されてはいない」と断言した。

死んだ牛を畜牛に与えるのを禁止することは、
「実現不可能かつ非現実的かつ強制不可能」であり、
飼料を変えるか否かは今後も個々の自由に任せるべきだ、と。
全米牧畜業者牛肉組合は動物性タンパクの全面禁止に異を唱え、
代案として、狂牛病を媒介するとされる特定部位、
すなわち脳、脊髄、眼球の規制に限定するべきだと提言した。

アメリカ食肉協会は、赤身、脂肪、血液、血液製品、腸を禁止部位から除外するように求めた。
また、全米豚肉生産者評議会は、死んだ豚を牛に与えてもなんら害はないと主張した。

“Rendering Industry Supports Voluntary Guidelines for Cattle with Suspected CNS Disease”,Food Chemical News,July 29,1996

マクドナルドの狂牛病に対する的確な対応[P.60-61]

畜牛を禁止飼料から遠ざける力がアメリカ政府にないのを見て取ると、
マクドナルド社はすみやかに行動を起こした。
イリノイ州オークブルックにあるマクドナルド本社に、食品医薬品局と農務省の官僚が、
大手の精肉業者やレンダリング業者の代表とともにひそかに招かれて、飼料問題を話し合った。

2001年03月13日、マクドナルド社は、同社に挽肉を納入する業者は、
食品医薬品局の規則厳守を誓約した書類を提出しなくてはならないと発表した――
さもなくば、納入を差し止める、と。

IBP、エクセル、コナグラはすぐさまマクドナルドの通達を支持し、
所定の証明のない牛はいっさい購入しないと宣言した。
牧場主や肥育場主はみな、
畜牛に禁止飼料を与えていないとする著名入り完誓書を提出しなくてはならない。
政府の提案する強制的な食品安全措置にはことごとく反対していたアメリカ食肉協会が、
この新しいルールにはまったく異を唱えなかった。

「マクドナルドが納入業者に何かを要求したら、その要求は大きな強制力を持ちます」と、
食肉協会のスポークスウーマンは語った。
食品医薬品局が――5年近くにおよぶ業界との話し合いや生ぬるい規制によって――
実現できなかったことを、マクドナルドはものの数週間で成し遂げたのだ。

マクドナルドのアニマル・ライツ[P.68-69]

マクドナルドが人道的な解体処理という新しい方針を打ち出したのには、それなりの背景がある。
“動物の倫理的扱いを求める人々の会”をはじめとする動物保護団体が、
マクドナルドへの抗議運動を展開して、納入業者の行為を改めさせろと求めていたのだ。

本当の動機はなんであれ、マクドナルドは断固たる姿勢を示し、
動物の福祉および家畜の適切な扱いに関して
国内でも指折りの専門家であるテンプル・グランディンを雇って、
同チェーンに牛や豚を納める食肉処理場の検査システムを確立させた。
グランディンによれば、家畜を虐待した会社からは肉を買わないとマクドナルドが脅したため、
一年もしないうちに、業界の慣行が大きく変わった。

マクドナルドの検査員たちは、
ほかならぬハンバーガーパティ製造会社に雇われているものの、
新しい方針に心から忠実で、食肉処理場を抜打ち訪問し、
動物が適切に扱われて適切に気絶させられているか監視しているという。

こうした検査プログラムは、動物保護団体の主張だけではとうてい実現しそうになかったが、
マクドナルドが求めたとたん、精肉業界やアメリカ食肉協会の熱烈な支持を得たのだ。

協和香料化学の食品犯罪[P.78]

おそらく日本の法律と公衆衛生を最もないがしろにしたのは、協和香料化学だろう。
この会社は、少なくとも175の食品会社に香料添加物を納入していた。
その添加物はクッキー、キャンディー、アイスクリーム、清涼飲料など、
子どもたちの口に入る製品に使われていたのに、同社は、発癌性が疑われ、
使用が禁じられている化学原料を、それと承知のうえで、30年以上にもわたって用いていたのだ。
信じられない行為だが、会社の説明も驚くほど率直だった。
「原料を変えると品質を保てず、顧客離れにつながる恐れがあった」と、
協和香料化学の社長は述べている。

“Scandals Give Food for Thought”,The Daily Yomiuri,February 11,2002

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