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書籍と雑誌の要約と解説

医者が患者をだますとき

あなた、病院に行くと病気になりますよ!

装丁
医者が患者をだますとき 医者が患者をだますとき
Confessions of a Medical Heretic
ロバート・メンデルソン
Robert S.Mendelsohn
訳・弓場隆
草思社
ISBN4-7942-0854-5
1999/02/17
¥1800
健康とは何かをいちばんわかっていないのが医者だ――。
現場の医師が現代医学を厳しく批判して全米ベストセラーとなったのが本書。
診察から各種の検査、薬の処方、手術、入院、医者の習性から医学教育にいたるまで、
患者の知らない、知らされていない問題点が痛烈なユーモアをこめて明かされる。

現在の医療の九割がそもそも不要だ。健康診断を受けると具合が悪くなる。
病気の基準は医者が発明している。医者が仕事をしないと病人が減る。
病院に行くと病気になる……などなど、患者の立場に立った貴重な指摘が満載の一冊。

目次
  1. 医者が患者を診察するとき
    1. 健康診断は儀式である
    2. いいかげんな機器
    3. レントゲンによる被爆の儀式
    4. 医療検査は神のお告げ
    5. 数字に振り回される医者
    6. 教材としての患者たち
    7. 病気は医者が作り出す
    8. 医者は過激な治療が好き
    9. 健康診断にまつわる幻想
    10. 医者の基準、患者の基準
    11. とにかく医者に質問を
    12. 医者からわが身を守るには
  2. 医者が薬を処方するとき
    1. 抗生物質のウソ
    2. 抗生物質が細菌を鍛える
    3. 医者と薬の危険な関係
    4. 副作用で死んだ人々
    5. ステロイドの苦しみ
    6. DES訴訟事件
    7. ピルは病気を呼び寄せる
    8. 医者は降圧剤を飲むか?
    9. 新薬の怪しいカラクリ
    10. 薬漬けにされる子供たち
    11. 医者と患者と製薬会社
    12. 医者が薬にこだわるわけ
    13. 「毒性のない薬は薬ではない」
    14. 薬の作用、副作用
    15. 薬と仲よくつきあう前に
    16. 薬害からわが子を守るために
    17. 医者の倫理、世間の常識
  3. 医者がメスを握るとき
    1. 意味のない手術
    2. 出産に医者がかかわる理由
    3. 出産は「9時から5時まで」?
    4. 「医学の進歩」という幻想
    5. 医者の都合と手術
    6. 儀式としての手術
    7. 手術からわが身を守るには
  4. 病院にいると病気になる
    1. 子供はなぜ病院が嫌いか
    2. 病原菌だらけの病院
    3. 清潔という落とし穴
    4. 院内感染を生み出すもの
    5. 取り違えられる患者たち
    6. 栄養失調の患者たち
    7. 病院にいると病気になる
    8. 患者の権利はどうなっている
    9. 病院のほんとうの姿
    10. 病院からわが身を守るために
    11. 大学病院をめぐる迷信
    12. わが子を入院させたとき
    13. 患者と付き添いの絆
  5. 医者が家庭にかかわるとき
    1. 家庭に攻撃をしかけるもの
    2. 出産に介入する産科医
    3. 母乳とミルクと小児科医
    4. 小児科式二重思考
    5. 育児ノイローゼになる母親たち
    6. 保育所と早すぎる独立
    7. 学校と子供と精神科医
    8. われわれが失ってきたもの
    9. 医者から家庭を守るには
    10. かけがえのない家族
  6. 死のための医学
    1. 医者が仕事をしないと病人が減る
    2. 現代医学は生命に関心がない
    3. 死を奨励する医者たち
    4. 老いは病ではない
    5. 慈悲による殺人
    6. クオリティー・オブ・ライフとは
  7. 医者というものの正体
    1. あきれた聖職者たち
    2. いんちきな医学研究
    3. 自分を治せない医者たち
    4. 恐るべき医学部教育
    5. 悲しき医学生
    6. なぜ医者は不正を行なうのか
    7. 医者がかかえる2つの病理
    8. 「医者は失敗を棺桶のなかに葬る」
    9. 「患者に何がわかるというのか」
    10. 自分の体は自分で守る
  8. 予防医学が予防しているもの
    1. 病院の倒産を予防する医学
    2. 予防接種に警戒せよ
    3. 集団接種はひとつのバクチ
    4. 乳がんの集団検診の危険
    5. 医者は健康とは何かを考えない
    6. 決まり文句は「手遅れ」
    7. 真の予防医学とは
    8. いま望まれる医学
  9. 私の考える新しい医学
    1. 「生命」の確信に向きあう
    2. 生命を祝福する医学
    3. 豊かな人生を送るために
    4. すべては家族から始まる
    5. まわりの人々とともに
    6. 新しい医学の手応え
  10. おわりに 新しい医者を求めて
  11. 訳者あとがき
  12. 解説 – 新田國夫(新田クリニック院長)
文献
  • 『アメリカ医師会雑誌』JAMA,1975/11/03[P.79]
  • 『育児学』「不要な帝王切開の蔓延」1993年秋季号[P.107]

内容

  1. インポテンツは心理的な原因よりもむしろこうした降圧剤などの薬の副作用によるものが多いのだ。[P.17]
  2. 医療のうち少なくとも九割は不必要であり、その不必要な医療には人を死に至らしめる危険性すらあるという事実である。[P.19]
  3. ある研究者がマネキンの頭にゼリーを詰めて脳波計を接続してみた。すると「生きている」という結果が出たという。[P.27-28]
  4. レントゲンと白血病[P.29]
  5. 無意味なレントゲン検査[P.30]
  6. マンモグラフィーと乳癌[P.30-31]
  7. 二〇〇人の患者のほぼ九九%に相当する一九七人に、検査を繰り返しただけで「異常が完治した」という検査結果が出たという研究もある。私はこれを「傑作」と評価している。[P.32]
  8. 医者の判断を信用してはいけない。そもそも、健康とは何かということをいちばんわかっていないのが医者のなのである。[P.39]
  9. 境界型高血圧[P.39-40]
  10. 白衣高血圧[P.43]
  11. 抗生物質を投与された患者は、発疹ほっしん嘔吐おうと、下痢、発熱、アナフィラキシーショック(激しいアレルギー反応を伴う薬物ショック)などで苦しむ。しかも、発疹だけで済む患者はわずか七~八パーセントにすぎない。[P.54-55]
  12. テトラサイクリン系抗生物質は歯のエナメル質を変質させる[P.56-57]
  13. アメリカでは、毎年数千万もの人々が風邪で通院しており、そのほとんどに薬が処方されているが、その薬の半分は抗生物質である。[P.58]
  14. 全米医療調査は、薬物乱用死の割合は、麻薬・覚醒剤によるものが二六パーセント、精神安定剤とバルビツール酸系睡眠鎮静剤などの処方薬によるものが二三パーセントだと報告している。[P.62]
  15. アメリカとイギリスの入院患者のうち、少なくとも五パーセントの患者は薬の副作用が原因で入院していると推定されている。[P.63]
  16. 医者が添付文書に目を通すことはめったにないし、たとえ読んでもほとんど気にも留めないからである。[P.57]
  17. 生理不順と子宮内出血を起したステロイド禍例[P.64-65]
  18. DESにおけるアーサー・ハーブスト博士の裏切り[P.66-67]
  19. ピル服用者は、非服用者と比べると、心筋梗塞で死亡する確率が四十歳以上で五倍、三十代で三倍、それ以外の病気の発症率を年齢を問わずに比較してみても脳卒中四倍、血栓塞栓症五倍以上、高血圧が六倍である。[P.68]
  20. エストロゲンは胆嚢炎と子宮癌のリスクを跳ね上げる[P.68-69]
  21. 鎮痛消炎剤ブダゾリジンの副作用[P.72]
  22. アメリカ食品医薬品局の臨床試験抜き打ち検査[P.79-80]
  23. 世界有数の製薬会社イーライ・リリーの創業者イーライ・リリー自身が、「毒性のない薬はもはや薬ではない」と語っている。[P.85]
  24. 効果と副作用が同じ精神安定剤ジアゼパム[P.87]
  25. 子供のあつかいにくさが病的な症状を示すまでになっているなら、「ファインゴールド式食事法」を試してみることを勧めたい。[P.93]
  26. 不要な手術[P.97-98]
  27. 不要な会陰切開[P.104-105]
  28. 帝王切開の諸問題[P.107-109]
  29. 冠動脈バイパス手術[P.110-111]
  30. 「医療による大量虐殺」という言葉がある。クェンティン・ヤング博士が唱えたもので、医者が組織的に大量の人間破壊を行っているという意味である。[P.186]
  31. 医者のストライキで死亡率減少[P.186-187]
  32. 有名大学と製薬会社スクイブの癒着[P.203]
  33. 食品添加物の不正審査[P.203-204]
  34. 麻薬中毒の双子医師[P.217]
  35. 私は乳がんには医学的に四つの原因があると考えている。未出産あるいは出産回数の減少、人工乳育児、ピルの使用、更年期障害治療剤プレマリン(結合型エストロゲン*)などの卵胞ホルモン剤の使用である。[P.236]
  36. ジョンズ・ホプキンス大学医学部の研究で、レントゲン検査で医療被曝ひばくを経験した女性は、レントゲン未経験の同年齢の女性に比べると、ダウン症児が生まれる確率が七倍も高いことが明らかになっている。[P.236]

レントゲンと白血病[P.29]

小児白血病が胎児のときの医療被曝、
つまりレントゲンと深い関連があることはすでに実証されていることだが、
医者はそれには無頓着を決め込む。
2、30年前に頭部、首、胸の上部に放射線を浴びた人たちの間で、
甲状腺機能低下症が何千、何万という単位で発症しているし、
甲状腺がんは、歯科医のレントゲン検査10回で浴びる
放射線量を下回る線量の被爆でも発症することがある。

無意味なレントゲン検査[P.30]

放射線科医による重症患者の胸部レントゲン写真の読影について、ある調査はこんな報告をしている。
医師の24%の読影がほかの医師の読影と食い違い、そして、同じ写真を読影再度すると、
医師の31%が以前とは異なる結論を出したというのだ。

マンモグラフィーと乳癌[P.30-31]

毎年数十万人の女性が胸部レントゲン検査を受けるために順番待ちをしているのは皮肉な状況だ。
マンモグラフィーが乳がんを発見する以上に乳がんを引き起こしているという科学的な証拠は、
活字となっていくらでも出版されているというのに。

境界型高血圧[P.39-40]

高血圧の診断をくだすとき、医者は、
高いとはいえ正常値の範囲にあるものも含めて境界型項血圧としてひとくくりにしている。
こうして、かなりの量の強い薬が高血圧の治療と称して使われることになる。

白衣高血圧[P.43]

血圧が上がったのは、診察室で白衣の医者を前にして緊張したためかもしれない。
いわゆる「白衣高血圧」が原因で血圧が上がることはよくある。
これは一過性の現象にすぎないのだが、医者はそんなことはお構いなく、
必ずと言っていいほど降圧剤を処方する。

テトラサイクリン系抗生物質は歯のエナメル質を変質させる[P.56-57]

この抗生物質の重大な副作用のひとつに、骨と歯に沈着物を形成することがあげられる。
骨におよぼす影響を正確に指摘することはできないが、
子供の場合、歯に黄色や黄緑色のしみを永久に残してしまう。
経験的にそれに気がついている親は数十万人、おそらく数百万人はいるだろう。
いくら風邪の症状を軽くしてくれるからといっても、
こんな代償を払うのかと思えば、多くの人は服用する気にもなるまい。
しかし、ほどんどの医者はそうは考えてはいない。

<中略>

アメリカ食品医薬品局(FDA)は、テトラサイクリンの過剰投与に気がつき、
この薬の医師向け添付文書に次のような警告を必ず明記するよう製薬会社に要請した。
「歯の発育期(乳幼児期から八歳までの間)にある子供がテトラサイクリン系抗生物質を服用すると、
歯が黄色、茶色、または灰色に永久に変色するおそれがあります。
この副作用は長期服用によって起こりますが、
短期間でも繰り返し服用することで生じることが確認され、
歯のエナメル質が変質することも報告されています。
したがって、テトラサイクリンは、ほかの薬では効果がないと予想される場合、
またはほかの薬の服用が禁じられている場合を除いて、
歯の発育期にある子供に処方してはいけません」

生理不順と子宮内出血を起したステロイド禍例[P.64-65]

先日、アトランタ在住の婦人から、私のもとに一通の手紙が届いた。
この人の二十歳になるお嬢さんに、まだ生理がないというのである。
お嬢さんが十一歳のときに爪先に発疹ができたことがあった。
皮膚科に連れて行ったところ、医者からプレドニゾンの投与を受け、
その後三年間にわたってこの薬を服用したという。婦人はこう書いている。
「何か娘にしてやれることはないものでしょうか。
あのとき、皮膚科の医者が、
プレドニゾンは生殖機能に変調をきたすおそれがあると説明してくれていたら、
私たちは発疹をそのまま放っておいたでしょう」

また、オハイオ州の若い女性が寄こした手紙には、次のような体験が書かれていた。
「うるしにかぶれて皮膚科に行ったところ、プレドニゾンの投与を受け、
その後ケナログという別のステロイド剤を注射されました。
激しい頭痛、筋肉のけいれん、胸部の腫れ、子宮内出血に二十五日間も苦しみました。
ぞこで今度は婦人科に行くと、
『子宮内出血はかぶれを抑える薬で起きたものだから、子宮内掻爬術を行なう必要がある』
と言われました」

DES告発におけるアーサー・ハーブスト博士の裏切り[P.66-67]

一九七一年、ハーバード大学医学部のアーサー・ハーブスト博士は、
DES処置を受けた母親から生まれた女の子に
膣がんが恐るべき高確率で発症していることを初めて発表した。
その後、男の子にも生殖器の異常が高確率で発見された。
さらにかなりの数の母親ががんに侵され、死の床で苦しんでいることが明らかになった。

<中略>

その後、DESについて警鐘を鳴らしたハーブスト博士の態度が急変した。
一転して、「DES処置によるがんの危険性はそれほど深刻ではない」
という趣旨の論文を発表したのである。

こんなことを目の当たりにしても私はさして驚かなかった。
ハーブスト博士は、自分が先に行った発表で医学界の威信が失墜し、
日ごろ処方している薬の危険性に対して医者がいかに無知であるかが世間に曝露される結果になって、
これはますいと思ったのだろう。
そこで、難解な医学用語を駆使して詭弁を弄し、薬害事故は決して薬害事故ではなく、
危険は決して危険ではなかったかのように装って世間を欺こうとしたのである。

エストロゲンは胆嚢炎と子宮癌のリスクを跳ね上げる[P.68-69]

アメリカではピルの服用者約一〇〇〇万人の女性に加えて、
閉経期にある五〇〇万人以上の女性がエストロゲンを服用している。
この薬には、胆嚢炎と子宮がんの発症率を五倍から一二倍にまで跳ね上げる危険性が指摘されており、
食品医薬品局としてはピル同様、医者と患者にそれを警告せざるをえない状況に追い込まれている。
しかし、医者に関する限り、この警告はほとんど無視されている。
多くの病院でこの薬は、閉経期の不快な症状を予防するという理由でごく日常的に使用されているからだ。

エストロゲンは、若さの維持や美容効果、うつ状態の軽減、
心臓病の予防という名目で投与されているが、本当はそんなことに効果はないことが立証されている。

鎮痛消炎剤ブタゾリジンと白血病[P.72]

ブタゾリジンに記された医師向け添付文書を紹介しよう。
これを読むと、医者がこんな薬を投与していたのかと知って
気分さえ悪くなりかねないので、注意してお読みいただきたい。
「この薬を患者に投与する際には十二分に注意してください。
これは使用法を間違えると、重大な副作用を引き起こす恐れがある劇薬です。
服用期間にかかわらず、白血病になった症例が何例も報告されています。
患者のほとんどは四十歳以上でした」

さらに、副作用として、頭痛、めまい、昏睡、高血圧、網膜の出血、
肝炎など全部で九二の症状があると書かれている。
これではこの薬の投与は、患者に害をおよぼす意図的行為と同じになってしまう。

アメリカ食品医薬品局の臨床試験抜き打ち検査[P.79-80]

四人のノーベル賞受賞者を含む著名な科学者たちで構成された委員会が、
薬に関する問題を研究した結果、次の二点が判明した。

  • 諸悪の根源は臨床試験を行っている医者と研究者にあること。
  • 新薬の臨床試験はでたらめであること。

アメリカ食品医薬品局は、臨床試験を行っている医者を無作為に抽出して、
その仕事ぶりを調べるという抜き打ち検査を行った。
その結果が「アメリカ医師会雑誌」(JAMA、一九七五年十一月三日付)に報告されている。

  • 全体の約二割が不正確な分量を使ったり、データを改変したりするなど、
    ありとあらゆる不正行為を行なっている。
  • 全体の約三分の一が実際には臨床試験を行っていない。
  • さらに三分の一が診察録に従っていないデータを使用している。
  • 臨床試験の結果に科学性を認められるのは、結局、全体のわずか三分の一程度にすぎない。

製薬会社と医者の癒着が腐敗と薬害の温床になっていることは明らかだ。
といっても、製薬会社とその営業マン、政府の取り締まり機構、
薬をせがむ患者にまで非があるとは私は考えない。
問題のほとんどは医者にあるからだ。

医者は医薬品情報を十二分に入手できる立場にあるし、
臨床試験の結果、重大な副作用があることが判明すれば、
ただちに慎重な投与を心がけるべき立場にあることも承知している。
にもかかわらず、なおも節操なく薬の投与を続けているのだ。

効果と副作用が同じ精神安定剤ジアゼパム[P.87]

適応症と副作用が同じ、
つまりその薬で効くはずの症状とその薬で起こる副作用の症状が同じという薬がある。
この種の薬は珍しくはない。
そのひとつがアメリカで記録的な売り上げを示しているジアゼパムという精神安定剤(抗不安剤)である。
この薬の医師向け添付文書を見ると、適応症と副作用がほとんど同じであることが一目瞭然である。

  • 適応症 不安、疲労、うつ状態、激しい感情の動揺、震え、幻覚、骨格筋のけいれん
  • 副作用 不安、疲労、うつ状態、激しい興奮状態、震え、幻覚、筋肉のけいれん

不要な手術[P.97-98]

かつてアメリカ議会小委員会が提出した資料には、
国内で行なわれた手術の実態が次のように報告されている。
毎年二四〇万例以上もの必要のない手術が行われ、そのために四〇億ドル以上が浪費されている。
術中・術後に死亡する年間二五万人にものぼる患者のうち、
その5%にあたる一万二〇〇〇人以上がこうした不必要な手術の犠牲者である。

健康調査グループという独立機関の調査では、
必要が認められない手術は年間三〇〇万例以上とされ、
さらに複数の調査が、その数は全手術の一一~三〇%を占めていると伝えた。
私は、手術の九割前後が時間・労力・費用ともに無駄であるばかりか、
なにより手術そのものが尊い人命を奪う結果になっていると考えている。

手術を勧められた患者を調査した研究によれば、
そのほとんどのケースに手術の必要が認められなかったばかりか、
調査対象となった全患者の半数が、そもそも医療処置そのものが不要だったことが判明している。

不要な会陰切開[P.104-105]

産科医は会陰切開についてこんな主張をする。
「手術によって会陰部を切開しておけば、自然にできる会陰裂傷よりも傷口はまっすぐだから早く治る」

だが、これには見落とされている事実がひとつある。
それは、妊婦が意識不明にさせられずに、分娩の知識と経験のある人からそばで指導を受けて、
分娩の準備が心身ともに整っていれば、息む方法とタイミングがつかめるということである。
意識がはっきりした状態で妊婦が分娩に臨めば、会陰に裂傷が生じることはまずありえない。

赤ん坊が出てこれるように、もともと膣は十分に開くようにできている。
かりに会陰に裂傷が生じたとしても、
「会陰切開の方が早く治る」などと産科医が言い張る根拠はどこにもないのだ。
それどころか、私の臨床経験では、
傷口は自然にできたものの方が会陰切開でできた傷よりも治りは早く、
不快感もずっと少ないことがはっきりしている。

帝王切開の諸問題[P.107-109]

帝王切開で子供を産んだ半数の女性は後遺症に苦しみ、
これが原因で死亡する者も少なくはない。
しかも、その確率は経膣分娩の二六倍という高さである。

胎児モニターの名称は、分娩監視装置ではなく母親と赤ん坊の
「分断致死装置」とでも改めた方がいっそふさわしいようである。*

妊娠期を十分に経ていても、帝王切開で生まれた赤ん坊には、
硝子膜症しょうしまくしょう(ヒアリン膜症)という、
呼吸窮迫きゅうはくを伴う重い肺障害を起こす危険がつきまとう。
これは時として赤ん坊の命を奪うこともある病気で、その適切な治療法はまだ確立していない。
以前は未熟児にしか見られなかった病気である。

<中略>

アメリカでは、陣痛促進剤を使って帝王切開を行うケースはますます増加している。
かつて、帝王切開の比率が出産総数の四~五パーセントを超えると、
病院は徹底して原因を究明したものである。
しかし、その比率が二五パーセント、
全体の四分の一を占めるようになった現在も病院はなんの調査も行っていない。
なかにはその比率が五〇パーセント近くにまで達している病院すらある。**

<中略>

*訳注 分娩監視装置の発明者エドワード・ホン博士はこう語っているという。
「陣痛を起こした女性のほとんどは、病院よりも自宅で出産した方が安全である。
この装置は妊婦に暴行を加えている」
(ダイアナ・コルテ/ロベルト・サエル著『よい出産、安全な出産』による)

**訳注 世界保健機関(WHO)のマースデン・ワグナー博士はこう警告している。
「アメリカで行われている帝王切開の少なくとも半数は不要である。
しかも、その多くは命を危険にさらし、母親をかなり衰弱させる。
帝王切開が母子ともに危険をおよぼしている事実は、
アメリカで最も巧妙に隠蔽されている秘密である」
(「不要な帝王切開の蔓延」より。「育児学」一九九三年秋季号掲載)

冠動脈バイパス手術[P.110-111]

退役軍人局が七年間にわたって、
一〇〇〇人以上を対象に冠動脈バイパス手術の予後について調査したところ、
次のことが判明している。

  • 左主幹冠動脈疾患という特殊な病気を除いて、この手術には有用性がない。
  • 手術をした場合と、内科的治療(主に薬物療法)をした場合とでは、
    死亡率にたいした差はない。
  • 軽症患者の場合、治療から四年が経過した時点で、
    手術をしなかった患者の方がわずかながら生存率が上回った。

また、患者は手術を受けたあとでも運動負荷心電図検査で異常を示していること、
手術以外の治療を受けた患者と同じように、
心臓発作を再発する危険性が高いことを報告する研究もある。

冠動脈バイパス手術は狭心症の痛みを和らげてくれるようだが、
これは自己暗示(偽薬効果ならぬ「偽手術効果」による暗示の効果)か、
無感覚(神経経路を手術で切断したため)のいずれかの理由によるものだろうと推測されている。

しかも、この手術には落とし穴がある。
それは、いずれバイパスそのものが狭窄を起こしてしまい、
結局は手術前の状態に戻るおそれがあるということだ。

心臓病に一番効果がある治療法は、食生活の根本的な改善である。

医者のストライキで死亡率減少[P.186-187]

一九七六年、南米コロンビアの首都ボゴタ(現サンタフェデボゴタ)で、
医者が五十二日間のストに突入し、救急医療以外はいっさいの治療を行わなかった。
現地の新聞は、ストがおよぼした奇妙な「副作用」を報じた。
ストの期間中、死亡率がなんと三五パーセントも低下したのである。
国営葬儀協会は「この現象は偶然なのかもしれないが、事実は事実である」とコメントした。

同じ年、ロサンゼルスでも医者がストライキを決行した。
このときの死亡率の低下は一八パーセントだった。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校で医療行政を研究するミルトン・レーマー教授が、
一七の主要病院を調査したところ、
ストの期間中、手術の件数が六〇パーセントも減少していたことが明らかになった。
そして、ストが終わって医療機器が再び稼動を始めると、
死亡率はスト以前と同じ水準に戻ったのである。

一九七三年にはイスラエルでも似たようなことが起きている。
ストが決行され、診察する患者の数が一日六万五〇〇〇人から七〇〇〇人に減らされた。
ストは一カ月間続いたが、エルサレム埋葬協会によると、
イスラエルでもストの期間中、死亡率が半減したという。
イスラエルでこれほど死亡率が減少したのは、
二十年前にやはり医者がストをしたとき以来だったという。

有名大学と製薬会社スクイブの癒着[P.203]

ハーバード大学医学部のロバート・エバート博士とエール大学医学部のルイス・トマス博士の二人は、
いずれも学部長という要職にありながら、大手製薬会社スクイブ社の契約顧問として
同社のドル箱商品ミステクリンの販売停止措置を解除するよう
アメリカ食品医薬品局(FDA)に働きかけていた。

エバート博士は、「自分にできる最善のアドバイスをしただけだ」と述べたが、
スクイブ社のノーマン・リター副社長はこの2人に大金を払ったことをすでに認めていた。
しかし、自分たちが受け取った「わずかな手数料」の具体的な額について、
博士は「ノーコメント」で押し通した。
その後、エバート博士はスクイブ社の理事に就任し、
一万五〇〇〇ドル相当の株式を取得していたことをついに認めた。

食品添加物の不正審査[P.203-204]

薬物が原因のがんと奇形児の研究の世界的権威で、
ケースウェスタン・リザーブ大学教授であるサミュエル・エプスティン博士は、
上院栄養問題特別委員会で次のように証言している。
「アメリカ科学アカデミーは利害関係が複雑に絡み合った組織である。
食品添加物のような重要な問題を決定するパネル討論会なのに、
その構成メンバーは当の規制対象の業界代表者や
その息のかかった人たちで占められるケースが実に多い。
アメリカでは、金さえ積めば、自分たちに都合のいいデータを入手することができるのだ」

麻薬中毒の双子医師[P.217]

双子の婦人科医としてかつて名を馳せたマーカス兄弟が
麻薬の禁断症状で死亡したというニュースは、
世間をあっと言わせたが、同僚の医者にとっては別に驚くようなことではなかった。
亡くなる前の年に、彼らの麻薬中毒はすでに病院のスタッフには知れわたっており、
病院側は休暇をとって治療に専念するよう指導していたのである。

兄弟がニューヨーク病院コーネル医療センターに一時復帰したとき、
少しは中毒状態から脱していたかというと、そうではなかった。
職員に取り押さえられるようなことはなかったが、
州の医師免許委員会に報告されることもなかった。
死亡した年の夏に勤務停止処分になっていただけである。
二人の遺体が発見されたのは、
彼らが患者に入院を許可する権限を失った日から数日後のことだった。

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