バベルの図書館

書籍と雑誌の要約と解説

高甘味度甘味料アセスルファムK

開発者サイドが著したアセスルファムKの概要書

装丁
高甘味度甘味料 アセスルファムK 高甘味度甘味料 アセスルファムK
太田静行(北里大学名誉教授/元味の素社員)
幸書房
ISBN4-7821-0203-8
2002/04/10
¥1800
解説
本書は、アセスルファムカリウムの良さを広く知ってもらいたいと思い短期間にまとめ上げたものである。
ニュートリノヴァ㈱の俣野和夫さん,大沼 明さん,武田薬品工業㈱の大倉裕二さん,
木田隆生さんと私の5人の共著である。
それぞれの得意なところを選んで執筆したが,まとめてみると特徴が網羅された1冊になった。
それは,アセスルファムカリウムの開発・利用に携わった方々の成果であると思われる。
目次
  1. アセスルファムカリウムの歴史と使用状況
    1. アセスルファムカリウムの歴史
    2. 認可の経緯
    3. 国際的使用状況
    4. 他の高甘味度甘味料との比較
    5. アセスルファムカリウムの生産
    6. アセスルファムカリウムの成分規格
  2. アセスルファムカリウムの特性
    1. 甘味料としてのアセスルファムカリウム
    2. アセスルファムカリウムの諸特性
      1. 物理・化学的特性
        1. 名称
        2. 溶解性
        3. 浸透性
        4. 安定性
        5. 共存する食品成分との反応性
        6. 食品中のビタミンに及ぼす影響
        7. 環境への影響
        8. その他
      2. 生理学的特性
        1. 代謝性
        2. 非う蝕性
        3. インスリンの分泌と血糖値による影響
      3. 官能特性
        1. 甘味度
        2. 甘味の特性
    1. 他の甘味料との併用効果
    2. マルチスウィートナー・コンセプト
      1. 味質の向上
      2. 甘味度の向上
      3. 製品安定性の補完
      4. さまざまな甘味料との相乗効果
      5. マルチスウィートナー・コンセプトプラス
      6. 砂糖とアセスルファムカリウムの併用
    3. 甘味以外の呈味物質との併用効果
  3. アセスルファムカリウムの安定性
    1. 粉末状態での安定性
      1. 室温保存時の安定性
      2. 加熱に対する安定性
    2. 水溶液中での安定性
      1. 5℃および20℃での安定性
      2. 40℃での安定性
      3. 100℃での安定性
    3. 加工時の安定性
    4. 保存時の安定性
    5. 酵素などに対する安定性
  4. アセスルファムカリウムの安全性
    1. 国際機関における安全性の評価
    2. アセスルファムカリウムの安全性試験
    3. 体内動態試験(代謝に関する試験)
    4. 単回投与試験(急性毒性)
    5. 反復投与試験
      1. ラットを用いた90日間反復投与毒性試験
      2. ラットを用いた2年間反復投与毒性および発ガン性試験
      3. マウスを用いた80週間発ガン性試験
      4. イヌを用いた2年間反復投与毒性試験
    6. 繁殖および催奇形性試験
      1. ラットを用いた繁殖および催奇形性試験
      2. ウサギを用いた催奇形性試験
    7. 抗原性試験
    8. 変異原性試験
    9. 一般薬理試験
    10. その他の試験
  5. アセスルファムカリウムの分析方法
    1. 概論
    2. 試料液の調整方法
    3. 分析の条件
  6. 食品用途と使用基準
    1. アセスルファムカリウムの食品での効果
      1. 高い安定性
      2. 高い甘味度
      3. 甘味の発現が速くキレがよい
      4. ノンカロリー,非糖質
      5. 非う蝕性
      6. 他の物質と反応しにくい
      7. 高い浸透性
      8. 他の甘味料と相性がよい
    2. 標準使用量
    3. 使用基準
  7. 代表的な食品の処方例
    1. 飲料
      1. 概論
      2. 缶コーヒー
      3. ニアウォーター
      4. 乳酸菌飲料
      5. コーラ
      6. ストレートティー
    2. 菓子
      1. 概論
      2. ミルクチョコレート
      3. 口中清涼菓子
      4. キャンディー
      5. チューインガム
      6. コーヒーゼリー
    3. 農・水産加工品
      1. 概論
      2. ラッキョウ甘酢漬け
      3. はちみつ漬け梅干し
      4. ショウガ甘酢漬け
      5. 金時豆の煮豆
      6. 煮豚調味液
    4. その他
      1. 概論
      2. 粉末飲料
      3. 卓上甘味料
校正
  • 微生物似対して無害だった。→微生物に対して無害だった。[P.12]
文献
  • 太田静行『食品調味論』[P.95]
  • 吉積智司&伊藤汎&国文哲郎『甘味の系譜とその科学』
  • 並木清夫&青木博夫『新しい甘味物質の科学』
  • 関根眞隆『奈良長食生活の研究』
  • 露木英男『食品の履歴書』
  • 朝倉治彦&安藤菊二&樋口秀雄&丸山信『事物起源事典』

内容

  1. アセスルファムKの歴史[P.1-2]
  2. アセスルファムKの製法[P.5]
  3. アセスルファムKは環境を汚染しない[P.12-13]
  4. アセスルファムKは完全に排泄される[P.14_43]
  5. アセスルファムKは他の甘味料を強化する[P.24_27]
  6. アセスルファムKに毒性は確認されていない[P.41-42_44]
  7. コーラの人工甘味料使用量[P.66-67]
  8. アセスルファムカリウムは,浸透圧が極めて高いので(図7.1),食品素材に速やかに中心部まで浸透する。[P.57-58]
  9. 一般的に砂糖の30%をアセスルファムカリウムで代替しても砂糖の甘味質は変わらない。[P.58]
  10. 爆弾糖=ニトログリセリン[P.117]

アセスルファムKの歴史[P.1-2]

アセスルファムカリウムは,ドイツのヘキスト社において開発された
化学名6-メチル-1,2,3-オキサチアジン-4(3H)-2,2-ジオキシドカリウム
(Potassium salt of 6-methyl-1,2,3-oxathiazin-4(3H)-one-2,2-dioxide)で,
砂糖の200~250倍の甘味を有している。
アセスルファムカリウムは,1967年,
ヘキストAG(ドイツ・フランクフルト)の研究所で,
他の研究実験中にある物質に強い甘味があることを
偶然に発見したことを契機に開発された甘味料である。
発見者はカール・クラウス博士とハラルド・イエンセン博士で,
各種のオキサチアジノンジオキシド誘導体について調査した結果,
検討された多くの物質の中から,甘味度が高く甘味質が良い
アセスルファムカリウムが新しい甘味料として世の中に出ることになった。

<中略>

ニュートリノヴァ・ジャパン株式会社と武田薬品工業株式会社が,
平成11年1月18日に食品添加物の新規指定要請を行い,
食品衛生調査会の審議を経て,平成12年4月25日に正式に食品添加物として指定され,
わが国においても食品添加物としての使用ができるようになった。

<中略>

ニュートリノヴァ社で商品名「サネットR(SunettR)」
として製造・販売され,世界において4,000種類以上の商品に使用されている。

1983年に世界で一番早くサネットRの使用が許可されたイギリスでは,
近年シュガーリプレイスメントの概念が浸透し,
100%人工甘味料を用いたノンカロリーまたは
低カロリーのダイエット製品への使用のみではなく,砂糖との併用により,
一般製品のコスト低減やカロリーの低減を目的として幅広く使用されている。

アセスルファムKの製法[P.5]

ジケテン →(合成反応)→(環化反応)→ アセスルファム環(Sweetener Acid)
→(中和)水酸化カリウム → アセスルファムカリウム →(充填・小分け包装)
→ サネットR

アセスルファムKは環境を汚染しない[P.12-13]

アセスルファムカリウムの製造工程,
物理的性質および環境への排出から見て,環境への影響は非常に低いレベルであると考えられ,
アセスルファムカリウムとその加水分解物に関する安全性試験の結果は,
それらが自然環境のいかなる状況にも害を与えないことを明確にしている。

下水処理あるいは下水において予想される最大のアセスルファムカリウム濃度よりも
はるかに高い濃度で行った試験(長期の使用後でさえも)において,
アセスルファムカリウムはミジンコ属に対して無害であり,
ゼブラフィッシュ,Golden orfes,あるいは微生物似対しても無害だった。

観察時間96時間のゼブラフィッシュの急性毒性試験では,
LC50(Half Lethal Conentration)が1,800~2,500mg/Lとなり,
下水中の最大濃度の最低60,000倍である。

生分解試験では,真菌をはじめ Pseudomonas 属など18種の菌種が,
ゆっくりではあるが,完全に分解するという結論を得ている。

アセスルファムKは完全に排泄される[P.14_43]

アセルファムカリウムのラット,イヌ,ブタを用いた代謝試験では,
摂取量の80%以上が速やかに吸収され,
24時間後に投与量のほぼ100%が代謝されずにそのまま尿および糞中に排泄される。

*   *   *

ヒトの場合は投与後ほぼ100%が速やかに吸収され,
投与後1.0~1.5時間の間に血中濃度が最高値に達した後,
投与後24時間のうちに投与量のほぼ100%が
アセスルファムカリウムのまま尿および糞と一緒に体外へ排出された。
さらに,ラットを用いた投与後の体内分布を調べた研究では,
投与されたアセスルファムカリウムは消化管,膀胱,人造で高濃度に検出されたが,
単回投与の場合も反復投与の場合も組織中へ蓄積することはなく,
また,アセスルファムカリウムの代謝物は検出されなかった。
妊娠中のラットに投与した場合の体内分布についての調査では,
投与により胎児へ移行するものの,24時間以内には消失し,
妊娠ラットと妊娠していないラットの間では分布に差がないことが確認された。

アセスルファムKは他の甘味料を強化する[P.24_27]

飲料分野ではアスパルテームとの併用が最も多く,
例えば1:1で併用すると,甘味度は40%程度強化され,
甘味質もショ糖に近いものとなり,他の高甘味度甘味料の甘味特性を補完する作用がある。

*   *   *

アセスルファムカリウムは砂糖,果糖,糖アルコールなどの糖質甘味料との併用でも,
甘味度は15~30%程度強化され,甘味質は砂糖類似性が高まる。

アセスルファムKに毒性は確認されていない[P.41-42_44]

アセスルファムカリウムの安全性については,17年にわたる長い歴史があり,副作用は,
これまで使用実績のあるヨーロッパやアメリカからは一例も報告されていない。

(中略)

国際機関における安全性の評価として,
アセスルファムカリウムの安全性をはじめとする各種のデータは,
1980年FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)に提出され,
1981年および1983年の二度にわたって評価を受けた。
その結果,アセスルファムカリウムには変異原性,ガン原性は認められず,
分解物についても,食品中の安定性からみて,毒性学的な問題は生じないと結論され,
ADI(1日摂取許容量)が0~9mg/kgと設定されると共に,A(Ⅰ)リストに収載された。
その後,1990年にADIについて再検討が行われ,ADIは0~15mg/kgに改定された。
一方,アメリカにおいては,
1988年7月に食品添加物として許可されると同時にADIは0~15mg/kgと設定された。

*   *   *

アセスルファムカリウムの経口LD50値は,
ラットで少なくとも5,000mg/kg体重以上,マウスでは6,000mg/kg体重以上だった。

コーラの人工甘味料使用量[P.66-67]

コーラの処方例を表8.4に示した。アセスルファムカリウム,
スクラロースおよびエリストールを使用したノンカロリータイプのコーラである。
アセスルファムカリウムとスクラロースの併用比は2.4:1で,甘味のキレのよいものができる。
エリスリトールは,ボディー感不足する甘味を付与している。

コーラのような酸性飲料にアスパルテームのみを使用すると,
アスパルテームが分解して甘味度が大きく低下する場合がある。
アセスルファムカリウムとアスパルテームを併用すれば,
アセスルファムカリウムの高い安定性により甘味度の低下が緩和され,
賞味期限を延ばすことができる(図3.5参照)。

表8.4 コーラの処方例
原材料名 配合量
カラメル
香料
「クエン酸ナトリウム」
リン酸(85%)
カフェイン(抽出物)

炭酸水(ガス圧:3.7kg/cm2
0.3g
0.1g
0.08g
0.08g
0.01g
残量
75.0mL
「エリスリトール」
「アセスルファムカリウム」
スクラロース
1.5g
0.026g
0.011g
合計 100.0g

「 」は武田薬品工業㈱の製品

爆弾糖=ニトログリセリン[P.117]

戦中戦後の食糧不足の折に,日本国民が甘味料を求めた状況は極めて異常なものであった。
砂糖は闇市で高価で売られており,粗悪ないも飴,甘酒なども高給なものであり、
サッカリン,ズルチンなども素性が知られている点では,まだ良い方であった。
ひどいものでは,ダイナマイトに使用されていたニトログリセリンなどまで甘味料として使用された。
当時,爆弾糖という言葉が流行した。
この爆弾糖には二つの意味があって,一つは文字通り,
爆弾の火薬そのものであり,もう一つは,私の記憶では,
たしかp-ニトログリセリン-o-トルイジンというものであった。
この化合物は極めて甘いが,毒性は極めて強く,
肝臓などに及ぼす影響はまさに爆弾のようなものであったらしい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です