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書籍と雑誌の要約と解説

うま味調味料の知識

その使用法、有用性あるいは安全性について

装丁
うま味調味料の知識 うま味調味料の知識
太田静行
幸書房
ISBN4-7821-0112-0
1992/06/25
¥1922
解説
本書には最近のうま味研究で明らかにされた多くの基礎的知見が平易に解説されており,
さらに,上記の各種うま味関連の食品の製造法,実際的な使用方法,
調理方法など豊富な資料や研究データが収録されている.
大変わかりやすく書かれているにも拘らず,内容は専門的学術書である.
この1冊でうま味をめぐるすべての知識が得られる便利な書でもある.
目次
  1. うま味調味料の歴史
    1. グルタミン酸ナトリウムからうま味調味料へ
      1. 新調味料の誕生
      2. 種々の銘柄のグルタミン酸ナトリウムの発売
      3. 中国へも進出
      4. 戦中・戦後の生産
      5. 合成法・発酵法の開発
      6. 核酸系うま味調味料の製造と複合うま味調味料の出現
      7. 化学調味料からうま味調味料へ
      8. うま味調味料の発展
    2. うま味調味料製造法の変遷
      1. グルタミン酸ナトリウム
        1. タンパク質分解法
        2. 合成法
        3. 現在の主流は発酵法
      2. 核酸系うま味調味料
  2. うま味物質の諸性質
    1. うま味物質
      1. アミノ酸系のうま味物質
        1. アミノ酸
        2. ペプチド
      2. ヌクレオチド
        1. イノシン酸
        2. グアニル酸
      3. 食品中のうま味成分
        1. グルタミン酸
        2. ヌクレオチド
      4. うま味調味料
        1. グルタミン酸ナトリウム
        2. イノシン酸ナトリウム
        3. グアニル酸ナトリウム
    2. うま味物質の呈味力
      1. いき値と弁別閾
        1. いき値
        2. 濃度差の識別
      2. 相対的な味の強さ
      3. うま味の相乗作用
        1. うま味の相乗効果の数量化
        2. うま味の相乗作用を利用した複合うま味調味料
        3. うま味の相乗作用の意義
      4. 他の基本的な味成分との併用効果
        1. 味(塩から味)
        2. 酸味
        3. 甘味
        4. 苦味
        5. うま味
      5. 食品組織内でのうま味の強さ
  3. うま味の基本的な性質
    1. 味覚からみた“うま味”の諸性質
      1. うま味の独立性
      2. うま味とうま味成分の構造
        1. グルタミン酸
        2. ヌクレオチド
      3. うま味の強さ
    2. うま味の生物にとっての意味
      1. バクテリアとうま味成分
      2. 種々の生物とうま味成分
      3. 魚類とうま味成分
        1. アミノ酸
        2. 核酸関連物質
      4. うま味物質に対するヒトの応答
        1. ヒトにおける味覚の伝達
        2. ヒトなど哺乳動物でのうま味の伝達
    3. うま味成分の相乗作用
      1. 生化学的に見たうま味成分の相乗作用
      2. 神経生理的に見たうま味成分の相乗作用
  4. うま味物質の生化学と安全性
    1. うま味物質の生化学
      1. グルタミン酸
        1. 吸収と代謝
        2. 生体内変化
        3. 生体内関門
      2. イノシン酸、グアニル酸
    2. うま味物質の安全性
      1. うま味物質の安全性試験
        1. 急性毒性試験
        2. 亜急性毒性試験
        3. 慢性毒性試験,発がん性試験
        4. 変異原性試験
        5. 催奇形性試験,繁殖試験
      2. うま味物質の安全性をめぐる話題
        1. 脳障害
        2. いわゆる中華料理店症候群
        3. ナトリウム摂取量
        4. 痛風との関連
    3. 日本および国際的な機関における評価
      1. 日本
      2. アメリカ
      3. JECFA
      4. EC
  5. うま味調味料
    1. うま味調味料とは
    2. うま味調味料の種類
      1. 単一うま味調味料
      2. 複合うま味調味料
    3. うま味調味料の製造法
      1. グルタミン酸ナトリウム
      2. イノシン酸,グアニル酸
        1. 酵母核酸分解法
        2. 発酵法
    4. うま味調味料の実用上の性質
      1. グルタミン酸ナトリウム
        1. 分子式,化学構造など
        2. 実用上の諸性質
      2. イノシン酸ナトリウム
        1. 化学構造など
        2. 実用上の諸性質
      3. グアニル酸ナトリウム
        1. 化学構造など
        2. 実用上の諸性質
    5. うま味調味料の安定性
      1. グルタミン酸ナトリウム
        1. ラセミ化
        2. ピロリドン化
        3. 褐変
        4. 著しく高温に加熱した時の分解
        5. 酵素による変化
      2. イノシン酸ナトリウム
        1. 水溶液あるいは酸性溶液中における安定性
        2. 加熱に対する安定性
        3. 酵素による変化
    6. 関連調味料
      1. 天然調味料
        1. エキス成分と天然調味料
        2. エキス類の味に関与する成分
        3. 畜肉エキス
        4. 魚貝類エキス
        5. 野菜エキス
        6. 酵母エキス
        7. HVP,HAP
        8. 天然エキスおよびその代替品の評価
        9. 天然調味料の用途と使用法
      2. 風味調味料
        1. だし類
        2. 風味調味料
        3. 風味調味料の使用法
      3. 複合うま味調味料の付加成分など
        1. アスパラギン酸ナトリウム
        2. コハク酸ナトリウム
        3. クエン酸ナトリウム
  6. うま味調味料の使用方法
    1. うま味調味料の使用量と使用時期
      1. グルタミン酸ナトリウム
        1. 使用量
        2. 使用時期
        3. 酢などに対する溶解度
      2. イノシン酸ナトリウム
        1. 使用量
        2. 使用時期
      3. グアニル酸ナトリウム
    2. 調味料添加のサシスセソ
    3. 味調味料とうま味調味料
      1. しょうゆ
      2. みそ
    4. 酸味調味料とうま味調味料
    5. 甘味調味料とうま味調味料
    6. うま味調味料の具体的な使用法
      1. 家庭用
        1. うま味調味料
        2. 複合うま味調味料
      2. 料理・飲食店用
      3. 食品加工用
        1. 濃縮めんつゆ
        2. 即席めん類の別添スープ
        3. スープ,たれ,つゆ類
        4. 水産加工品
        5. 畜産加工品
        6. 農産加工品
        7. 油脂食品
  7. 食品のおいしさ
    1. “おいしさ”について
      1. うま味と食品のおいしさ
      2. 食品の味に占めるうま味の優位性
      3. コク
    2. 食品のおいしさと調味料
文献
  • 露木英男『食品の履歴書』P.219
  • 味の素株式会社『味をたがやす―味の素八十年史』P.39
  • 小原正美『食品の味』P.56
  • 小俣靖『「美味しさ」と味覚の科学』P.227
  • 福場博保&小林彰夫『調味料・香辛料の事典』P.175
  • 太田静行『食品調味論』P.111
  • 河村洋二郎&木村修一『うま味―味の再発見』P.66
  • 河村洋二郎『食欲の科学』P.150
  • 栗原堅三『味覚』P.97
  • 遠藤一&林寛&中野智夫『栄養性化学』P.163
  • L.J.Filer et al.(eds.),”Glutamic Acid: Advances in Biochmistry and Physiology”(1979)Raven Press,New York.
  • K. Kojima, Safety evaluations of disodium 5′-inosinate, disodium 5′-guanylate and disodium 5′-ribonucleotide, Toxicology, 2, 185-206(1974)
  • Toxicological Evaluation of Certain Food Additives, WHO Food Additives Series, No.22(1988)WHO.
  • Reports of the Scientific Committee for Food, Food Science and Techniques, 25th Series (1991) Commission of European Communities.
  • J.K.Wilkin,J.Am.Acad.Dermatol.,15,225-230(1986)
  • 藤巻正生『食料工業』(1985)
  • 太田静行『食品産業における新製品開発』P.95
  • 下田吉人&松元文子『調味料・嗜好品』P.51
  • 太田静行『調理と塩』
  • 太田静行『食品調味・配合例集』P.
  • 太田静行『つゆ類―その化学と製造』
  • 太田静行『たれ類―その科学と製造』
  • 太田静行『珍味―その製法と流通技術』
  • 太田静行『食用油脂』P.64
  • 太田静行『調理と油脂』P.137
  • 近藤弘『日本人の求めたうま味』P.81
  • 柳田友道『うま味の誕生―発酵食品物語』P.91
  • 大塚滋『味の文化史』P.71
  • 谷村 顕雄『食品添加物公定書解説書』[P.99]

内容

  1. この1冊でうま味をめぐるすべての知識が得られる便利な書でもある.[P.ⅳ]
  2. 食品企業は食品添加物を忌避する傾向にある[P.ⅴ]
  3. グルタミン酸にはD体とL体とがあり,うま味のある天然のものはL体である.[P.20]
  4. イノシン酸は,1847年に牛肉エキスから発見された.[P.20]
  5. 旨味調味料一覧[P.21-22]
  6. イノシン酸の場合には,濃度をかなり増しても,うま味の強さはあまり変わらない.[P.40]
  7. 味の素は苦味を打ち消す[P.51-52_198]
  8. うま味は,英語でも“umami”と称し,“umami”という用語は国際的な学術雑誌にも立派に通用する.[P.56-57]
  9. L-グルタミン酸のγ-カルボキシル基がスルホン酸基で置換されたL-ホモシステイン酸はL-グルタミン酸の約2倍のうま味を示し,L-グルタミン酸とは炭素数の異なるL-アスパラギン酸とL-α-アミノピメリン酸は弱いながらうま味を呈する7).[P.60]
  10. うま味の相乗効果はイノシン酸やグアニル酸が存在すると,舌の味覚細胞に対するグルタミン酸の結合量が増加することによって起こるということで説明できる。[P.79]
  11. 栗原堅三ら14)はイヌの味覚器がうま味物質に鋭敏に応答することを報告している.[P.80]
  12. グルタミン酸の代謝量と摂取量[P.84]
  13. 幼若なマウスやラットは成獣と比べてグルタミン酸の代謝能が劣るが,ヒトの場合は乳児,そして未熟児でも成人と同様に速やかにグルタミン酸を代謝することがわかっている.[P.86]
  14. 脳内グルタミン酸濃度は変動しない[P.92]
  15. 妊娠サルのおいて実験的に母体血中のグルタミン酸の濃度を通常の10~20倍に高めても,胎仔の血中グルタミン酸濃度は変わらないことが知られている.[P.93]
  16. 調味料として摂取しているヌクレオチド量は日本の場合
    約15mg/日(ヌクレオチドナトリウム換算で約70mg/日)であり(Kojima,1974)3)
    調味料として摂取されるイノシン酸,グアニル酸は,食品や飲料からのそれの約3~4%である.[P.94]
  17. グルタミン酸ナトリウムの安全性を示す人体実験[P.106-107]
  18. 1987年FAO/WHO合同専門家委員会(JECFA)はグルタミン酸塩類の安全性評価を行って,その報告書の中で「いろいろな試験・研究が行われたが,グルタミン酸ナトリウムが中華料理店症候群の原因とは確定できない」と,述べている.[P.107]
  19. 欧米では,うま味調味料はflavor enhancer という一般名で知られている.[P.111]
  20. FDAはグルタミン酸塩類を無害と認定している[P.111-112]
  21. SCFは旨味調味料を安全だと報告している[P.114]
  22. グルタミン酸生産菌は種類が多く,自然界から分離された非病原性の細菌である.[P.121]
  23. イノシン酸の製造は,当初,煮干しなどイノシン酸を豊富に含む原料から抽出することから出発したが,原料が数量的に限られるので,この方法は現在では全く行われていない.[P.123]
  24. 発酵食品に添加されたイノシン酸ナトリウムは消失する[P.151]
  25. HVP(アミノ酸液)[P.170]
  26. アスパラギン酸(aspartic acid)は以下に示すように,グルタミン酸と構造がよく似たアミノ酸で,その味もよく似ている.[P.179]
  27. コハク酸ナトリウム[P.180-181]
  28. うま味成分ではないが,クエン酸ナトリウムは緩衝作用が強く,味をマイルドにする作用があり,グルタミン酸ナトリウムやリボヌクレオチドナトリウムと併用すると,鶏がらに極めて近似したうま味になるとされている.[P.182]
  29. 複合旨味調味料は食酢の味を引き立てる[P.204_207]
  30. 高給料理店では“うま味調味料”を使わず,天然だしを利用する,といっている.[P.205]
  31. マーガリンに対し,食塩はその重量の2~3%用いられ,うま味調味料は,一例を示すと製品100kg当たりグルタミン酸ナトリウム 3~5 g,イノシン酸ナトリウム0.09~0.15g,天然調味料10~30gが用いられる.[P.223]
  32. ショートニングはいわゆる“味”は付けないので,うま味調味料も使用されない.[P.224]
  33. 長期間保存するマヨネーズには核酸系うま味調味料を使用しない.[P.225]

食品企業は食品添加物を忌避する傾向にある[P.ⅴ]

私は大学で“食品調味論”の講義を担当し,
またいくつかの食品企業から主に調味の面での相談を受けている.
この場合,「うまみ調味料を使わずによい味付けができないか」という相談が多い.
その理由を聞いてみると
「なるべく食品添加物を使用していない食品を納入するよう仕入れ担当者からいわれるからだ」という.

旨味調味料一覧[P.21-22]

表2.1 うま味物質とそのいき値
うま味物質 いき値(%)*
第1群 L-グルタミン酸 0.03
L-アスパラギン酸 0.16
DL-α-アミノアジピン酸 1.25
DL-スレオ-β-ヒドロキシグルタミン酸 0.03
L-ホモシステイン酸 0.015
トリコロミン酸 0.005
イボテン酸 0.005
第2群 テアニン 0.15
コハク酸 0.055
第3群 5′-イノシン酸 0.025
5′-グアニル酸 0.0125

* ナトリウム塩として.

<中略>

アスパラギン酸はグルタミン酸と構造が似たアミノ酸で,その味も比較的よく似ている.

トリコロミン酸はハエトリシメジ(Tricholoma muscarium)から,
イボテン酸はイボテングタケ(Amanita strobiliformis)から発見されたもので,
アミノ酸の一種である.

また,α-アミノアジピン酸,スレオ-β-ヒドロキシグルタミン酸,
ホモシステイン酸は合成された化合物で,天然物から発見されたものではない.
表2.1に第1群として示した各化合物は,
第3群のイノシン酸やグアニル酸と呈味の相乗作用を示すことが知られている.

味の素は苦味を打ち消す[P.51-52_198]

グルタミン酸ナトリウムは苦味を減少させることが経験されている.

*   *   *

サッカリンなど,あと味に苦さを伴うような甘味料の場合に,
微量のグルタミン酸ナトリウムの添加は,この苦さをマスキングする作用があり,
グルタミン酸ナトリウムをサッカリンに対し1~5%添加,
およびリボヌクレオチドナトリウムをグルタミン酸ナトリウムの
1~3%添加を行うと味がソフトになるという1)

グルタミン酸の代謝量と摂取量[P.84]

分解・合成により毎日入れ替わっているグルタミン酸の量は,
体重70kgの成人で約48gと報告されている(Munro,1979)2)
日本人が毎日食事から摂取しているグルタミン酸の量は,
厚生省が毎年実施している国民栄養調査や,
食品添加物の摂取実態調査(昭和63年発表)で見ると,
食品尾タンパク質から14g,遊離の形で約1.4g
(内訳:生鮮食品から0.26g,加工食品から1.1g),合わせて約15~16gとなる.

脳内グルタミン酸濃度は変動しない[P.92]

大量のグルタミン酸が摂取された場合,
この代謝システムによる制御を超えるグルタミン酸が血液中に出てくることになるが,
そのような場合でも,血液脳関門(blood-brainbarrier)によって
脳内のグルタミン酸濃度は変動しないようになっている.
これは,脳の毛細血管の内皮細胞は他の抹消組織のそれと異なり,
内皮細胞同士が隙間なく結合していること,
内皮細胞が脂質二重層から構成されているので
グルタミン酸のように水溶性の物質は通りにくいこと,
脳の代謝に必要な栄養物質を血液から脳内に運ぶ特定の運搬体が
栄養物質の種類ごとに内皮細胞の壁に存在するが,
酸性アミノ酸についてはこの運送能力が小さいこと,
脳内でグルタミン酸はたくさん作られるため
脳内のグルタミン酸濃度は循環血液中よりはるかに高いこと,などによる.

グルタミン酸ナトリウムの安全性を示す人体実験[P.106-107]

Kenney(1986)4)は,自分はグルタミン酸ナトリウムに感受性である
と信じている人を対象としての二重盲検試験を行った.
すなわち,自称感受性者6人を被験者とし,
グルタミン酸ナトリウムの味がわからないようにした飲料に,
無添加,および6g添加の試験をそれぞれ2回行った.
グルタミン酸ナトリウム添加溶液にのみ反応した人は,1人もいなかった.
また,Wilkin(1986)8)は,中華料理を食べて顔がほてったことがある
とする者18人を含む被験者合計24人に,
グルタミン酸ナトリウム3~18.5gを与え二重盲検試験を行ったが,
同物質投与で実際に顔のほてりを訴えた人は1人もいなかった.

FDAはグルタミン酸塩類を無害と認定している[P.111-112]

1969年の大統領令によってFDA(Food and Drug Administration,食品医薬品局)は,
現在の科学的知見に基づいてGRAS物質の安全性などの総点検を開始した.
グルタミン酸ナトリウムなどグルタミン酸塩類については,
1980年に最終報告が出て,「現在の使用実態で問題がない」とされた.
FDAはこの報告と,FDA自身による調査・研究によって,
「本物質は一般人に安全な物質であり,GMP(Good Manufacturing Practice,
適正製造規範:意図された技術的効果を発揮するため必要な適正量の範囲で使うこと)
に従って使用する限りなんら問題はない」としている.

SCFは旨味調味料を安全だと報告している[P.114]

ヨーロッパ共同体(EC)の食品科学委員会
(SCF, Scientific Committee for Food)もJECFAとは独自に,
食品添加物の安全性評価を行っている.1990年6月,この審議の一環として
グルタミン酸塩類(グルタミン酸およびそのナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム塩),
核酸系うま味物質(イノシン酸,グアニル酸およびそれらのナトリウム,
カリウム,カルシウム塩)の安全性を最新の文献・データをもとに評価し,
JECFA評価と同様に,それぞれグループ化合物として,
ADI「数値で制限しない」とした結論をEC理事会に報告した6)

発酵食品に添加されたイノシン酸ナトリウムは消失する[P.151]

酵素による変化2)

生みそ中ではイノシン酸ナトリウムは極めて不安定で,
全く加熱処理を加えていない信州みそに0.1%添加してその後の変化を調べたところ,
10日後には全量が消失していた.

清酒中でも,火入れ以前の倉出し品では酵素活性がかなり強く,
0.05%添加したイノシン酸ナトリウムは7日後には全く失われていたが,
火入れを加えたものでは2ヵ月後に90%以上保持されていた.

漬物類に加えたイノシン酸ナトリウムの分解も著しく,
福神漬け,しょうゆ漬けでは漬け込み時に,わさび漬けでは市販品に,ぬかみそ漬けには糠床に,
それぞれ全量の0.1%加えたイノシン酸ナトリウムは3~5日後にはほとんど消失していた.
また,らっきょう漬けは,他の漬物類と異なり発酵の過程がないため,
比較的添加イノシン酸ナトリウムは安定で,1ヵ月後に約半量が残存していた。

HVP(アミノ酸液)[P.170]

HVPは普通,脱脂大豆などのタンパク質を塩酸で加水分解してアミノ酸とし,
酸性不溶物質(ヒューマス)を濾別した後,水酸化ナトリウムで中和する.
この分解液は必要に応じて脱臭,脱色などの工程を経てHVP原液となる.
この原液は成分の調整をしてHVP液となるが,
これは主としてしょうゆの原料となるアミノ酸液である.

<中略>

HVP の液状製品の代表的なものは味液で,これはしょうゆの原料となっている.

コハク酸ナトリウム[P.180-181]

コハク酸は,1550年に Agricola により
コハクの乾留液から白色結晶状のものとして初めて分離された.

1912年,高橋偵造は,細菌培養濾液中に著量のコハク酸が蓄積することを認め,
またほとんど同時に清酒の味にコハク酸が関与していることを見出した.

さらに1933年,青木克は,シジミ,アサリの成分について研究し,
コハク酸がこれらの貝類のうま味の主成分であることを明らかにしている.

<中略>

グルタミン酸ナトリウム,イノシン酸ナトリウムなどとの間に味覚上の相乗効果はない.

コハク酸ナトリウムは,醸造品をはじめ一般加工食品に調味料として用いられているが,
その味がかなり特異的で,使用量が多すぎると,ひどくえぐい味になるため,
家庭用調味料として使われることはほとんどない.

加工食品に対する添加基準量は,清酒(3倍増醸清酒)0.08~0.09%,
しょうゆ0.01~0.03%,練り製品0.01~0.03%である.

複合旨味調味料は食酢の味を引き立てる[P.204_207]

複合うま味調味料は,食酢の味と非常によく合い,まろやかな味を出す.
いろいろな酢の物や,すしの合わせ酢・調味酢などに,
食酢180㏄当たり複合うま味調味料を小さじ1/3~1/2杯入れると,ぐっと味が引き立ってくる.

*   *   *

酢の物やすしめしなど食酢を用いた料理に複合うま味調味料を使う場合,
食酢に対してもその味とよくマッチし,まろやかな風味を与え極めて効果的である.

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