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書籍と雑誌の要約と解説

「アトピー」勝利の方程式

歯科金属アレルギー性アトピーについて

装丁
「アトピー」勝利の方程式 「アトピー」勝利の方程式
菊池新(元慶應義塾大学医学部皮膚科医局長)
現代書林
ISBN4-7745-0766-0
2006/10/19
¥1200
外来患者数1日200人以上!!
専門医が書いたアトピー最新療法

慶大医学部医局長を経てアメリカ国立衛生研究所に
留学した「スゴ腕」ドクターによる
アトピーの基礎から最新情報まで!

解説

台東区◎小森歯科医院 小森久弘

菊池先生と知り合ってから、
金属アレルギーの患者さんがこんなに多いのかと驚いた。
歯科医となって20年経つが、
その間、金属アレルギーと思われる患者さんは1人か2人である。
それがここ5年で300人以上である。

歯科金属の影響はまず口腔内にあらわれると考えていたため、
当初菊池先生から紹介された患者さんの口腔内には何の異常も認められないので、
疑いながらも金属を除去して治療をしてきた結果、
ものの見事に症状が改善してきたから驚きである。

実際、今まで診察した患者さんで歯科領域に症状が現れているのは
約1パーセントしかいなかった。
そのほとんどが手や足をはじめとした皮膚の湿疹である。
これでは歯科で金属アレルギーを見つけるのは不可能に近い。
では皮膚科で見つけることができるかと言うと、これも疑わしいところである。

当院では、菊池先生以外の皮膚科からの依頼は2件ほどしかなく、
実際に来院した患者さんから聞いてみると
「何軒か皮膚科に行ったがわからず、菊池先生のところでようやくわかった」
という方がほとんどだ。
皮膚科の先生にももっと頑張っていただきたいところだ。

目次
  1. アトピー発症のメカニズムとアレルギーの仕組み
    1. アトピー患者は増加の一途、その原因に現代型・都市型の生活
    2. アレルギーの仕組みを復習しよう
    3. 知っておきたい!「アレルギー」を起こす7つの要因
    4. アトピー治療には4つの柱がある
    5. 日本のアトピー治療の問題点とは
    6. アトピー治療、「5本目の柱」とは
    7. 僕がアトピーを発症しないわけ
  2. アトピーのかゆみとストレスの深い関係
    1. そもそも「かゆみ」ってなんだろう?
    2. 「乾燥肌によるかゆみ」と「アトピーのかゆみ」は違うんだ
    3. ストレスがあると「かゆみ」が強くなる
    4. ストレスについての考察をもう少しだけ
    5. 「掻破」こそアトピー最大の敵
  3. アトピーと似て非なるもの – 「金属アレルギー」が危ない
    1. 盲点だった金属アレルギー
    2. 悪い歯医者さんの3つのパターン
    3. 立ちはだかる「歯科保険制度」という壁
  4. 抗アレルギー剤の話
    1. 今、注目される抗アレルギー剤
    2. 抗アレルギー剤が効かない2つの要因
    3. 進歩しているその他の抗アレルギー剤
  5. アトピー治療「勝利の方程式」
    1. アトピー治療、第1の柱「原因療法」
    2. アトピー治療、第2の柱「薬物療法」
    3. アトピー治療、第3の柱「対症療法」
    4. アトピー治療、第4の柱「スキンケア」
  6. 小児の湿疹治療の注意点
    1. 小児科医の「アトピーですね」が危ない
    2. アトピーっ子の親御さんへのお願い
  7. アトピー診察室2006
    1. 症例① IPDが効き、IgE値が下がって湿疹も改善した50歳の男性
    2. 症例② IgE値が下がって、劇的に改善した2歳の男の子
    3. 症例③ 「脱ステロイド」で全身から浸出液を流しながら診察室に入ってきた25歳の男性
    4. 症例④ 国立病院で「一生治らないからあきらめろ」と言われた60歳の女性
    5. 症例⑤ 受験と母親からのプレッシャーで体中を掻き壊す11歳の男の子
    6. 症例⑥ 検査もしてもらえず、ステロイドを与え続けられた生後3ヶ月の赤ちゃん
    7. 症例⑦ ついにギブアップした和食チェーンの40歳社長さん
    8. 症例⑧ 「自然派」「ベビー用」というキャッチフレーズに騙され続けた30歳の女性
    9. 症例⑨ 20年間も毛染めのかぶれをアトピーと誤診されていた60歳の女性
    10. 症例⑩ なかなか良くならない健康志向の28歳の女性
    11. 症例⑪ 高血圧の薬でひどい湿疹の出た55歳の女性
    12. 症例⑫ 精神的なストレスがアトピーを悪化させていた5歳の男の子
  8. FAQ – よくきかれる質問に答える
    1. 「布団で注意すべきことはなんですか?」
    2. 「布団以外にどんなものが有効ですか?」
    3. 「サプリメントとの付き合い方は?」
    4. 「入浴剤はどんなものを選んだらいいですか?」
    5. 「食べ物に関して気をつけることってありますか?」
    6. 「嗜好品について注意点はありますか?」
    7. 「運動するときに注意する点はなんですか?」
    8. 「乳酸菌がアトピーにいいてほんとですか?」
    9. 「最近よく耳にするプロトピックという薬についてもう少し詳しく教えて下さい」
    10. 「抗アレルギー剤に副作用はないのですか?」
    11. 「抗アレルギー剤はどのくらい飲み続ければいいのですか?」
    12. 「ステロイドって危ない薬なのでしょうか?」
  9. アトピー治療「最新の薬と治療法」
    1. 「ピメクロリムス」という新しい免疫抑制剤の軟膏
    2. 「インターフェロンガンマ点滴療法」は失敗に終わってしまった
    3. 「抗IgEモノクローナル抗体」と呼ばれる迎撃ミサイル療法
    4. 「抗lL-5モノクローナル抗体」による中和療法
    5. 「s(可溶性)-lL4-受容体」を用いたlL-4不活化療法
    6. 「おとりDNA療法」
    7. 「空気銃でDNAを撃ち込む」ワクチン療法
  10. 患者さんへ – 僕からのメッセージ
    1. オレ流はダメ
    2. アトピーという病気を知り、自分の状態を正しく把握しよう
    3. 必要以上に落ち込まない、治ると信じて明るく振る舞おう
    4. 時にはねばり強い根気も必要だ
    5. 相手が権威だからといって妄信するな
    6. マスコミの情報に一喜一憂してはだめ

内容

  1. 走り始めてもう7年になるが、それは、「自分の体調が悪くては、患者さんに良い診療を提供できるわけがない」と考えたから。以来、暇さえあればトレーニングは欠かさない。[P.1]
  2. ストレスで痒みが増す[P.22]
  3. きれい好きの民族が、毎日のように石けんやシャンプーで体を洗うことで、実は皮膚が悲鳴をあげているのだ。[P.23]
  4. 喫煙はIgE値を上昇させる[P.24_179]
  5. 冷水や氷などでかゆい部分を冷やすと、かゆみを伝える神経繊維が麻痺してかゆみが治まってくる。[P.47]
  6. 痒みには複数のルートがある[P.49]
  7. きちんとしたデータがあるわけではないが、僕はアトピー患者の抱えているかゆみの、8割ほどが『湿疹』に伴う末梢性で、残り2割は中枢性のかゆみではないかと考えている。[P.57]
  8. ストレスが強まると、それを解消しようとする代償行為として「掻く」という行動が起こる。[P.60]
  9. 掻かなければ治る[P.67]
  10. 金属アレルギー性皮膚炎[P.73-74]
  11. 歯科金属除去による皮膚炎の改善[P.80-83]
  12. 菊池皮膚科医院におけるIPDの統計[P.90-91]
  13. 補中益気湯[P.97]
  14. ジャンクフードやスナック菓子、多くのコンビニ弁当やおにぎり、ファミレス、ファストフード類の外食、保存料が多く使われているレトルト食品やインスタント食品を可能な限り摂取しないことが基本。できれば無農薬、完全にとまでは無理でも低農薬や有機野菜など添加物の少ない食品を選び、少しでも化学物質を体内にとりこまないよう努力する。[P.109]
  15. 中等症以上のアトピー患者さんの場合は飲み水に限らず、シャワーや入浴の水にも注意を払ってほしい。毎日塩素入りのお風呂に入っていれば、これが皮膚から吸収されるばかりでなく、皮膚のバリアを障害する恐れも大いにあるのだ。[P.110]
  16. 抗ダニ布団[P.113]
  17. アトピー患者には、硫黄の入っている温泉は禁物。[P.125]
  18. 小児の場合、水道の塩素にかぶれを起こし、血液検査ではアレルギーは全く見つからないにもかかわらず、アトピーが疑われるほど湿疹がひどいというケースもよくある。[P.130]
  19. 乳児の場合、乳児脂漏性湿疹や食物アレルギーの方が、圧倒的にアトピー性皮膚炎よりも多いということを覚えておいてほしい。[P.131]
  20. 生後数ヶ月の赤ん坊の血管は糸のようにものすごく細いから、そこに注射針を刺して採血するというのは実際問題至難の技。情けないけど、残念ながらそれをやりたくないがために「アトピーです」って診断して、塗り薬でとりあえず治療を先送りする医者が実際には多いのだ。[P.132]
  21. 金属アレルギーの症例[P.143-147]
  22. カビアレルギーの症例[P.148-150]
  23. 母乳アレルギーの症例[P.153-154]
  24. 洗浄剤かぶれの症例[P.157-159]
  25. 毛染めかぶれの症例[P.160-161]
  26. サプリメントアレルギーの症例[P.162-163]
  27. 光線過敏性皮膚炎の症例[P.164-165]
  28. 洗濯槽の除菌[P.173-174]
  29. 入浴剤でかぶれるアトピー患者も多いので入浴剤選びには注意が必要。[P.176]
  30. お酒は飲んだ後、体がポカポカしてくることからもわかるように、皮膚の毛細血管が拡張し、血液中のヒスタミンやIgEといった物資の皮膚への移動を容易にするため、かゆみは必ず増してしまう。[P.179]
  31. プロトピックは皮膚科やアレルギー専門の先生以外からは処方してもらわないこと。使い方がとても難しい薬だから。[P.186]
  32. アトピーの専門医のいない大学病院[P.211-212]

ストレスで痒みが増す[P.22]

ストレスが多くなると何が起きるかというと、
①アレルギーを引き起こす免疫細胞(Th2細胞)を増加させ、
②皮膚のかゆみを増し、
③ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を減少させるということがわかってきている。
NK細胞が減るとどうなるかというと、アレルギーに関係する免疫細胞の調節ができなくなってしまう。
つまりストレスを減らすことによって、アトピーの症状は確実に軽減できる。

喫煙はIgE値を上昇させる[P.24_179]

ニコチン、タール、一酸化炭素といった有害物質は受動喫煙による副流煙
(タバコを吸っていない子どもたちの吸う煙)にむしろ多いのだ。
これらはIL-4、IL-5といったアレルギーを強める働きのある化学伝達物質の産生を促し、
その結果として血中IgE値を上昇させる。

近年、女性とくに出産前後の若年女子の喫煙率が増加しているのはご承知の通りだが、
これによりタバコに含まれる有害物質が胎児の段階でも、
また新生児、乳児の免疫にも悪影響をおよぼし、
アトピー患者を増加させていることにも気づいてほしい。

そのうえ、能動喫煙の場合、金属アレルギーを悪化させることもわかっているし、
さらにタバコの煙は室内環境も汚染するため、
二次的にヒョウヒダニといったアトピーの原因で最も多いアレルゲンを増加させる恐れもある。

痒みには複数のルートがある[P.49]

10年ぐらい前まで、かゆみというのは、
「ヒスタミン」という物質がすべての根源だと思われていた。
皮膚の中に「ヒスタミン」という化学伝達物質が出てくると、
それを感知するH1(ヒスタミン1という意味)レセプターがこれを感知し、
かゆみを感じるというのが定説だった。

ところが最近、かゆみを伝えるルートはそんなに単純なものではなく、
H1レセプターとは別の神経線維である求心性C繊維というルートもあることがわかってきた。
つまり、「ヒスタミンが出てなくても、かゆみを感じる」ということなのだ。
そんな時、いくら抗ヒスタミン剤を塗っても、飲んでも効果が出るはずはない。

その他にも、かゆみの研究はどんどん進んでいて、
「サブスタンスP」や「NGF」という神経ペプチドなども
かゆみに密接に関係することがわかってきている。

掻かなければ治る[P.67]

アレルギーの有無にかかわらず「掻く」という行為そのもので
ランゲルハンス細胞は活性化され、T細胞が活動を開始し、
好酸球や好塩基球が集まってきてヒスタミンを放出して、さらにまたかゆくなって……
といった恐ろしい悪循環(かゆみのループ)が引き起こされる。
掻かなければこれらは起こらない。

実際、掻くのをやめただけで、それだけで治っちゃった患者さんも大勢いるんだ。
しかしどんなに掻かないように注意していても、子どもや寝ている時などはどうしようもない。
これらに対する方策としてはまず掻けなくしてしまうこと。
これを防ぐために、中には自分で自分の手をベッドの柵に縛って寝ている人もいるぐらいだ。

金属アレルギー性皮膚炎[P.73-74]

先日、僕のところに頻繁に通院してくれているアトピー患者さん数千人の統計をとってみたところ、
アトピー患者の約25パーセントが、金属アレルギーを併発しているということがわかった。

正直、驚いた。統計をとるまでは、僕自身、
4人に1人という高率で金属アレルギーを合併しているなんて思ってもみなかったのだ。

そして“非常に重要なことは”歯科金属アレルギーの発疹は、
“口の中の粘膜よりも、皮膚に最初に出現する”ことが多いということだ。

慢性痒疹といって体中に小さな虫刺されのようなかゆいしこりができるものが41.7%、
手のひら、足の裏に小さな水疱やかゆい湿疹ができるのが38.3%で、この2つで約8割を占める。
一方、口内炎や、口内炎の一種ともいえる扁平苔癬は、それぞれ1.7%を占めるに過ぎなかった。

金属アレルギーによる発疹のタイプ
慢性痒疹 41.7%
手足の湿疹・小水疱 38.3%
複合型 7.8%
紅斑 5.2%
掌蹠膿疱症 3.5%
口内炎 1.7%
扁平苔癬 1.7%

歯科金属除去による皮膚炎の改善[P.80-83]

実際に口の中から金属を取り外した場合、症状はどの程度改善するのだろう。

僕のところを訪れた金属アレルギーの患者さん115人
(男43人、女72人)を対症に統計をとったものが次の図だが、
歯科金属除去6ヶ月後には「著名改善」と「改善」を合わせると、
実に87%もの患者さんの皮膚症状が劇的に改善している。

歯科金属除去6ヶ月後の症状改善率
著名改善 45.2%
改善 41.7%
やや改善 9.6%
不変 3.5%

また早い人だと歯科金属を外して3ヶ月以内、平均でも6.76ヶ月で発疹が改善するという結果も得られた。

歯科金属除去後症状寛解に要する期間
3ヶ月以内 40.0%
3~6ヶ月 22.5%
6~12ヶ月 27.0%
1年以上 10.8%

●患者平均年齢 41.8(n=115)
●男:女=43:72

発疹のタイプ別では慢性痒疹型や手足湿疹型の改善率がよいこともわかった。
しかし掌蹠膿疱症や扁平苔癬ではあまりよくならない患者さんも3割ほど存在した。
これは掌蹠膿疱症や扁平苔癬という皮膚科慢性疾患の中には、
金属アレルギーだけでは説明のつかない病態も含んでいることが推測される。

また「再燃率」にも傾向がある。
「再燃」というのは、いったん発疹が消えたのに、また出てくるということ。
特に、季節のかわり目や、気温や湿度が高く発汗の起きやすい梅雨時に再燃しやすい傾向が認められた。

これは長い年月かかって歯から体内に吸収された金属がまだ完全には体外に排出されておらず、
おそらくは冬場、血中などで大人しくしていた金属イオンが、
汗とともに皮膚に出てくるために生じると考えられる。
ただ、2年、3年と時間が経つにつれて、再燃は年々少なくなってゆく。
また治療に対しても反応がよくなり、再燃による発疹は長期間持続しないことが多い。

補中益気湯[P.97]

IgEを低下させる作用のあるもう一つの薬剤として「補中益気湯」という漢方薬がある。
成分は「黄嗜」「紫胡」「人参」「当帰」「大棗」などが混合されており、
もともと更年期障害に効果があると言われてきた薬だ。

それが最近の基礎研究から、腸管のTh細胞に作用し、
IFN-ガンマ(Th2を抑制する働きのある化学伝達物質)の産生を誘導し、
Th0からTh1への分化増殖を促し、結果的に亢進状態のTh2を抑制する、
という驚くべき作用が明らかになったのだ。

これまで漢方と言えばどうしてアトピーに効くのかわからなかったため使いにくかったのだが、
このように作用機序(メカニズム)が明らかになれば僕らサイドとしても非常に使いやすい。

抗ダニ布団[P.113]

ほとんどの患者さんにとって、ダニやハウスダストと接触する機会の80~90%は寝具。
ダニやハウスダストにアレルギーのある人はその布団や枕に最大限の
注意を払うべきことは言うまでもないのだが、案外これが軽視されている。

普通の綿の布団、ましてや羽毛、羊毛でできた布団を使っている患者さんは、
今すぐ抗ダニ布団や枕に替えてほしい。
ただし通販などで売られているものの中には、
全く効果がないような宣伝文句だけの製品もあるから、多少高くても、
きちんと科学的に抗ダニ効果の証明されている商品を買うことをおすすめする。
最も抗ダニ効果が高いと言われているのは、
クリニック布団と呼ばれる製品に代表される数種類のもの。
中の繊維にダニの忌避剤である除虫菊の成分などを縫い込んであるから、
ダニがたとえ迷い込んでも布団の中で生きることすらできないのだ。

金属アレルギーの症例[P.143-147]

「なんとかしてください」とやっと言った彼は、
ありとあらゆる皮膚から滲出液(リンパ液)を流す、いわば全身熱傷のような状態だった。

これはもう緊急事態で、全身大やけどのような状態だったから、
体にストロングクラスのステロイド軟膏を塗り、
さらに亜鉛華軟膏を貼りつけて包帯で全身をぐるぐる巻きにし、ミイラのようにした。
さらにセレスタミンというステロイド配合剤を2週間内服してもらって、
その間ほぼ毎日のように通院させて、ようやく2週間ぐらいで滲出液が止まり
「脱ミイラ」できた、というくらいひどかった。

「どうしてこんなに悪くなっちゃったの?」と訊ねると、
「ステロイドはとにかくやめろと知り合いに言われたから」という答えが返ってきた。
無責任な知り合いとか友人とかネットの情報とか民間療法の薬屋とか、
とにかくいい加減な奴が多すぎる!!

<中略>

さて、その患者さんは、2週間後皮膚がかわいてくると、発疹にある特徴があることがわかった。
2週間前には滲出液の海の中で見えなかったものがようやく見えたきた。
米粒大くらいの固い小さいしこり、あるいはそれよりひと回り大きい結節が体中にあることがわかった。
さらには手のひらには小さな水疱がたくさんつながりあって、皮がボロボロと剥けている状態。
そう、まさに金属アレルギーの症状だ!
そこで僕は、「金属アレルギーがあるにちがいない」と考え、
すぐさま金属のパッチテストを行ったところ、
いったん寛解に向かいつつあった症状が、再び悪化してしまったのだ。

金属の成分が皮膚から吸収されて一過性に悪化(フレアアップ)してしまった。
パッチテストの結果は、案の定、金やパラジウム、亜鉛、
コバルトなどに強い陽性反応があることがわかり、
そのうちの金とパラジウムが、歯冠の治療に使われていることがわかった。
さらに歯の矯正もしていて、その針金の成分であるニッケルやクロムにも反応があった。

金属アレルギーを専門にしている歯医者さんに依頼して、
1本1本金属を外すたびに、症状は日に日に快方に向かっていった。
もちろん金属をはずす際、
削りかすを飲み込んでしまうため同様のフレアアップは何度か認めはしたけれど。
3ヶ月後。「これで社会復帰できそうです」
彼が初めて笑ったのを見て、僕はようやく胸を撫で下ろした。

ところが彼は、どうしても歯の強制がやりたかったらしく、
僕に無断でまた口腔内に針金を入れてしまった。そしてまた再発。
さすがに懲りたらしく、矯正用の針金も合成樹脂で作るように指導したところ、
今では手はツルツル。今まで一体何だったの?という感じだ。

カビアレルギーの症例[P.148-150]

ある日、僕が以前書いた『週刊文春』の医療記事を片手に、初老の夫人がやって来た。
「先生、この記事書いた先生でしょ?」って。
そしてどうにか助けてほしいと切々と訴えるのだ。

実はこの御夫人、某国立病院の皮膚科に通っていたのだが、そこの先生に、
「これは“歳のせい”だ、もう一生治らないからあきらめなさい」
と言われたというのだ。見れば皮膚全体がゴワゴワしてがさつくような感じで、
小型の痒疹結節が多発していた。
明らかにⅠ型とⅣ型のアレルギーが混ざっている状態。

「それで、検査の結果はどうだったの?」
と訊ねると、なんと何も検査していないという。
国立病院で検査もしないで歳のせいとは……。

さっそく血液検査をしてみると、出るわ出るわ、
カンジダ、ピチロスポルム、ムコール、アスペルギルスその他、
カビにばっかりアレルギーを持っている女性だったのだ。
それに金属アレルギーを合併していた。
その結果を一通りながめながら、僕が、
「治りますよ。治らない病気でも何でもない」
と言ったときのその御夫人の嬉しそうな顔といったら……。

抗アレルギー剤を内服をしながら歯を覆った金属を取り除いてもらったら、
3ヵ月ぐらい後に、「あら、先生、治っちゃった」と驚いた顔をしていた。
確かに金属アレルギーによる慢性痒疹の方は治ったのだが、
皮膚のゴワゴワやかゆみはなかなか取れない。

「お宅にカビが生えてるところない?布団はどう?探してみて」
と聞いてみると、次に来たとき、
「先生、金属の方にばっかり頭が行ってて気がつかなかったんだけど、
押し入れを開けて敷ものを取ってみたら、もうカビがびっしり。
絨毯も上げてみたらカビがいっぱい生えてて……
窓にはいつも結露がいっぱいついちゃうからですかねえ、うち」と興奮状態。

それでカビ駆除剤を使ったり絨毯を撤去したり、押し入れの下にスノコを敷いたり、
エアコンのドライ運転で湿気を取ったり、カビと徹底的に闘ってもらった。
その結果、今まではIPDの服用だけで、ほぼ完治。

母乳アレルギーの症例[P.153-154]

生後3ヶ月ぐらいから、顔と上半身を中心に滲出液をともなう湿疹が出てきた。
非常にかゆがって夜も眠れない状態だったので、
お母さんは近くの小児科につれて行ったのだが、
例のごとく、「これはアトピーだね」と言われて、
消炎鎮痛剤含有の非ステロイド系の軟膏をもらった。

それでもちっとも治らないので、お母さんが、
「アトピーだとしたら、原因はなんですか?検査して調べていただけませんか?」
とお願いしたところ、
「こんな時期(生後3ヶ月)に検査なんかしたって何もわからないから検査はできない」
と言われ、「非ステロイド系軟膏が効かないんだったらこれを塗っといて」と、
リンデロンVGというストロングクラスのステロイド軟膏を処方された。

それを塗ると一瞬消えるんだけど、やめるとまた湿疹が悪化するというのを何度も繰り返し、
原因もわからずにこのままでいいのかと疑問を抱きはじめたお母さんが、
不安になって僕のところにやってきたわけ。

検査をすると、何のことはない、大豆と卵白に反応の出るよくあるタイプの食物アレルギー。
お母さんが食べたものが、母乳を通して赤ちゃんの体内に入り込んで悪さしていたわけだ。
それでお母さんにこれらの食餌制限をしてもらって、
離乳食が始まってからは大豆と卵白を与えないようにしてもらったら、
それだけで治ってしまった。

特に年配の小児科の先生がいる診療所には、こういうケースがよくあって、
いずれ治るだろうと安易な治療をするから、
典型的な食物アレルギーのケースをアトピーと診断したり、
原因も調べず強い薬を出すことでお母さんを不安にしてしまうことはよくある。

洗浄剤かぶれの症例[P.157-159]

この女性は、顔面から首、髪の毛の生え際にしょっちゅう湿疹が出たり消えたりを繰り返していた。
近くのお医者さんに行ってステロイド軟膏をもらっていたのだが、
塗ると治るんだけど、やめるとすぐに出てくるという堂々巡りを続けていた。

「お医者さんからはアトピー性皮膚炎だと言われたんですけど」
ある日僕のところを訪ねてきたその女性、ほとほと困り切った様子だった。
僕が、「ああ、そうなの。で、アトピーの原因は何なんだって?」
ときいてみると、案の定検査なんかしたことないとの答え。
またあてずっぽう医師の登場かとため息を漏らしつつ採血してみると、
後日、まったく血液検査ではアレルギーがないことが判明。
IgE値も正常で、つまりアトピー性皮膚炎でも何でもなかったのだ。

そこで、使ってるシャンプーだの石けんだのクレンジングだのを
全部持ってきてもらって、パッチテストをした。
するとなんとほとんどすべてに陽性反応が出たのである。
要するに、洗浄剤によるかぶれだったのだ。

そこで低刺激のシャンプー、石けんその他に替えさせたところ、
よくあることだが調子が良くなったといってしばらく姿を見せなくなった。

ところが半年もしないうちに、「先生、また再発しました」
と言って受診してきたから、問診してみると、
良くなったから友達にすすめられた“自然派”シャンプーと石けんに替えたという。
ははん、それだなと思ってパッチテストをしてみたら、案の定陽性の反応が出た。
「自然派って書いてあっても、かぶれる人はかぶれるんだから、
気をつけなきゃだめだよ」と軽くお説教をして帰したのだが、
また3ヶ月もしないうちに姿を現し、またまた再発したという。

「またシャンプーや石けん替えたんじゃない?」と訊ねてみると、
「いえ、先生。今度のは“ベビー”石けんとシャンプーだから絶対にそのせいじゃありません。
赤ちゃんに使っても大丈夫だから、絶対かぶれないって薬屋さんに言われました」と言う。
じゃ、また持ってきてごらんと内心“深~い”ため息をつきつつ、
パッチテストをしてみると、はい、また陽性!

「赤ちゃん用だとか、自然派だとか、植物派だとか、何となく低刺激を連想させるけど、
そこは売り手の宣伝文句なんだ。かりにアレルギー検査済みと書いてあったとしても、
自分自身の皮膚でパッチテストしてみなければ、合うかどうかはわからないんだから」
と滔々とお話して、ようやく納得してしまい、本当に僕らが経験的に
低刺激であることがわかっているシャンプーや石けんを複数パッチテストしてみて、
その中から陰性のものを選び出して使ってもらったら、それでようやく治癒した。

毛染めかぶれの症例[P.160-161]

顔面と首と頭皮にかゆい紅班のある60歳の女性がやって来た。
「夏になると必ずこういう発疹が出て病院に行くんだけど、
アトピーだって言われて、ステロイド塗ると治るんだけど、
やめるとまた出てきたりして……夏になると必ずなのよね」と訴える。

もしかしたらと思って、「あなた、毛染めしてますか?」
と聞くと、毎月欠かさずやっているという。
それが原因かも知れないよと指摘すると、
「そんなことは“絶対に”ない。わたし、20年間毛染めやってて、
一度もかぶれたことなんかないだから」と否定するのだ。
まぁいいからその毛染め剤を持ってきてごらんよ、
と説得して背中でパッチテストしてみたら予想通り強陽性。

どいうことかと言うと、普段はかぶれなくても、体調がすぐれなかったり、
夏になって毛染めの成分が汗の脂分で溶け出したりすることで、かぶれてしまうことはよくある。

今までずっと同じものを使っていて大丈夫でも、
ある時突然かぶれるようになることはよくあることなのだ。
人間の免疫は日々変化しているのだし、大人になってからでも、
去年までなかった花粉症が今年初めて出たなんて話、よく聞くでしょう。
ずっと使っているものでも疑わしければきちんとパッチテストをすることが大切なのだ。

毛染めの場合、大部分の製品に共通して入っているパラフェニレンジアミン(PPDA)という成分が、
特に接触アレルギーを起こしやすいことが知られている。
もちろんそれが入ってない毛染め剤というのもあるので、
それを使ってもらうようにしたら完治してしまった。

サプリメントアレルギーの症例[P.162-163]

1年前から体にブツブツの発疹がたくさんできて、かゆくてたまらないという女性がやって来た。
近所の医者からは例によって「(よくわからないので)アトピーだ」と言われたらしいが、
血液検査をしてみると、アレルギーは全くでない。

それじゃと思って口の中を見てみると、歯に金属がたくさん使ってあった。
パッチテストをしたら、みごとに金属アレルギーであることが判明。
いつものように、歯医者さんにそれをはずしてもらったのだが、
症状はかなり良くなったものの、1年経っても2年経ってもまだ発疹が出つづける。

歯科金属が原因ならそろそろ消えてもいい頃だと首を傾げていたのだが、
ハッと気づいて、「もしかしてあなた、サプリメント飲んでない?」と質問してみた。
「ええ、亜鉛を飲んでますけど……」
「それだ」――彼女は亜鉛(金属)アレルギーを持っていた。
ただちに服用を中止してもらったのだが、それでも良くならなかったのだ。

「ビタミン剤とか、他にも何か飲んでない?」ときくと、ビタミンB12を飲んでいるという。
メチコバール(ビタミンB12)は眼にいいと友人に薦められたというのだ。
このメチコバールというのは、シアノコバラミンといってコバルト(金属)が含まれているのだが、
彼女はコバルトにもアレルギーがあったのだ。
これもただちに服用中止。それから1ヶ月後、ようやく治癒したのである。

ところが半年ぐらいしてまたひょっこり現れて、
「先生、また体が突然かゆくなったんです」と訴える。
「なに、今度は何のサプリメント飲みはじめたの?」ときくと、
「いえ、もうサプリには懲りたので、最近お茶にはまってるんです」
調べてみるとその健康茶には、クロムとニッケルが多く含まれていたのだ……。
海草とかお茶、コーヒー、ココアなどにはもともと金属イオンが多く含まれているのだ。

結局、健康志向が招いてしまった金属アレルギーという症例。

光線過敏性皮膚炎の症例[P.164-165]

デパートに勤務している55歳の女性なのだが、2年前の夏から顔や腕などに湿疹が出始めた。
「先生、これアトピーでしょうか」
と不安そうな顔をしているから、さっそく検査をしてみたのだが、
血液検査でアレルギーは全くない。IgE値も低くて正常に近い。

よくよく話を聞いてみたら、この女性は血圧が高くて降圧利尿剤を飲んでいることがわかった。
この種の薬の特徴は、飲んで日光にあたると、光線過敏性皮膚炎を起こすことがよくある。
つまり、強く日光に当たった部分にのみ発疹が出てしまうのだ。
血圧の薬だけでなく、ある腫の抗生物質、肝臓の薬などの成分にも、
そうした光線過敏が出るものが多い。
冬は何ともなくても、夏の強い日差しにあたると反応するという場合が多い。

これは僕自身が説明しないと伝わらないだろうと思って、
女性が通っている内科の先生に連絡をとって事情を説明し、薬を替えてもらった。
するとそれっきりきれいさっぱり治ってしまった。
血圧の薬などを飲んでいて、夏場に悪くなるような湿疹は、
アトピーではなく光線過敏症の可能性があるということを覚えておいてほしい。

洗濯槽の除菌[P.173-174]

洗濯機にも、抗菌効果のある洗濯槽・脱水槽を備えた製品があるが、
最も重要なことは洗濯機の洗濯槽をきれいにする除菌クリーナーが市販されているから、
カビやブドウ球菌などに陽性反応がある患者さんは必ず、
たとえ持っていなくても予防のため、週に一度くらいは除菌をすることが好ましい。
つまり、そんな患者さんにとってコインランドリーを使うなんてことは、
もってのほかだということがわかってもらえると思う。

アトピーの専門医のいない大学病院[P.211-212]

大学病院に行って、部長だの教授だのに診察してもらう機会があるかも知れないが、
だからといってその医者の見立てをそのまま鵜呑みにしてはならない。
教授だからといって、アトピーを治せるとは限らないのだ。

ことにアトピーは皮膚科のなかでも、専門に勉強している医者は少ない、
いやその大学病院にアトピーの専門医がいないというところだってある。
僕がいた大学病院でも、「えっ!?なんでこんなやつが教授になるの?」
なんて話はいくらでもあった。

もう皮膚科の中ではマイナー中のマイナー、
たとえば一般の人がまず一生お目にかかることも聞いたこともないような病気の研究をして、
そんな研究をしてる学者は世界に数えるぐらいしかいないから、
それが偶然、有名な雑誌に論文が載ったりして、
教授になっちゃったなんてことはいくらでもある。
そんな教授のもとではオタクな研究ばかりしてるから
一般的な皮膚病はおろそかになりがちで、そこで指導をうけている研修医たちが、
アトピーをきちんと診れなくても仕方がないわけだ。

きちんと勉強してないからストロンゲストクラスのステロイドなんか平気で出しちゃうし、
ステロイドの内服なんて、
僕だったらよほどの緊急性がない限り絶対しないような処方を容易にしてしまう。

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