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書籍と雑誌の要約と解説

歯科からの医療革命

体の症状を歯から治す

装丁
歯科からの医療革命 歯科からの医療革命
藤井桂朗(歯科医師)
現代書林
ISBN4-7745-0605-2
2004/08/20
¥1200
食養生の権威神戸山手大学教授・医学博士島田彰夫氏推薦!

藤井先生は「歯は食べるためだけにあるのではなく、前進を支えるためにある」と言う。
これは真実を言い当てた名言である。
全身状態を考慮した先生の治療によって、私は圧倒的に歩きやすくなった。
全国民は歯の全身への影響を認識すべきである。

解説
現代医療制度への批判をこめて、
前著『歯科からの逆襲 寝たきり老人が歩き出す歯科治療って何だ!』
(一九九七年刊)を刊行しました。
『歯科からの逆襲』では今回同様、咬合治療によって改善した症例のほか、
日本の医療が直面している種々の問題についても述べています。

前著の発刊から七年が経過し、私の治療法も、より有用性の高い治療法へと変わってきました。
私の治療に共感し、協力してくれる医師や政治家の方々も増えてきました。
政府も医療改革を推進すべく、努力しています。
しかし、慢性疾患や不定愁訴に苦しむ人々はいっこうに減らず、
医療界は相変わらず歯科と医科が分離したままです。
この国の医療制度は、七年経ってもほとんど変わっていないのです。

本書では、私の治療法について述べるとともに、歯科医療が全身疾患の改善をうながし、
少子高齢社会における医療費削減を実現する可能性があること、
そして現代社会の医療のあり方が健康の維持と回復を阻害しうることへの警告なども行いました。

目次
  1. 診察ベッドのない歯科へは行ってはいけない?
    「歯と全身の密接な関係」と歯科医療の現状
    1. 私の歯科医院には虫歯や歯周病で来院する患者さんはほとんどいない
      1. 腰が痛い、頭が痛い、肩が凝る、膝が痛い
      2. 歯の最も重要な機能は咀嚼機能ではない
      3. 歯科医院になぜ診察ベッドが必要なのか
    2. 歯と全身を診ないと症状は治らない
      1. 原因から治さないと根本治療はできない
      2. 全身医科的知識が歯科医師にも必要
    3. 咬合と全身の関係を認めない権威者たち
      1. 歯科と医科の連携を阻む要因
      2. 現代科学で解明できない事実に目を向けない大学の姿勢
    4. 医療改革を目指す民主党のとりくみ
      1. 民主党の歯科医療改革案
      2. 医師を中心としたネットワークの構造をつくる
    5. 医療マインドコントロールを解く
      1. 日本人は医療知識のマインドコントロールを受けている
      2. 代替医療を見直しはじめた欧米の医療
  2. ここまでわかった!歯と全身の密接な関係
    「咬合と全身の関係」についての最新情報
    1. 数ミクロン単位の咬合不調が全身に重大な影響を与えるメカニズム
      1. 咬み合わせによって全身のバランスを保つしくみ
      2. 数ミクロンの差が全身に影響を及ぼす
    2. 個々の患者さんに合った咬合調整
      1. 単純に噛み合わせを良くするだけではいけない
      2. 歯の頬側や舌側の調整も必要
    3. 頭蓋仙骨系の知識なくして歯科治療はできない
      1. 頭蓋仙骨系を考慮した治療とは
      2. 間違った治療は頭蓋仙骨系の動きを妨げる
    4. 咬合は全身に影響するが、全身状態も咬合に影響を与える
      1. 咬合治療の必要がない場合もある
      2. いきなり咬合調整をすると失敗する
    5. 全身調整法(AKA)をとりいれた咬合治療
      1. 全身調整は仙腸関節がカギになる
      2. 全身調整をせずに顎関節症の治療はできない
  3. O-リングテストを使って歯から症状を治す
    アプライドキネオロジー(O-リングテスト)の基本情報と歯科治療への応用
    1. “見えない力”が健康を左右している
      1. 携帯電話の人体への影響
      2. アマルガムの人体への影響
    2. アプライドキネシオロジー(O-リングテスト)を使うと“見えない力”が見えてくる
      1. アプライドキネシオロジーとは何か
      2. O-リングテストのやり方
      3. 同一物質間共鳴現象の可能性
    3. O-リングテストで数ミクロン単位の咬合調整が可能になる
      1. O-リングテストで顎の位置を決定する
      2. 理想的な顎位を目指して何度も調整
    4. O-リングテストで調整すべき歯を正しく決定する
      1. 皮膚炎の治療で実施するO-リングテスト
      2. O-リングテストが示した意外な反応
    5. 義歯や詰め物もO-リングテストで相性を調べる
      1. パッチテストでは発見できない水銀の毒性
      2. からだは合わない物質にちゃんと反応する
    6. 歯科で治る症状かどうかもO-リングテストで判断できる
      1. AKAとO-リングテストを併用した診断法
      2. 原因部位を確実に診断する
  4. なかなか治らなかった慢性病・不定愁訴が改善する
    「藤井式歯科治療」の実際と症例
    1. なぜ慢性疾患の患者さんが歯科医院を訪れるのか
    2. ケース①難治性のアトピー性皮膚炎
      1. 二十年間悩んだアトピーが三カ月で改善した(女性・二二歳)
      2. 歯に金属の冠をかぶせただけで皮疹がなくなった(女性・三六歳)
      3. アマルガムを除去したら頬のひどい皮疹が消失(女性・一六歳)
      4. 口腔内炎症の治療でアトピーが改善(女性・二二歳)
      5. スプリント装着で皮疹も全身姿勢も改善した(女児・十歳)
    3. ケース②歯科治療に起因する腰痛
      1. 矯正治療による腰痛がスプリント装着で治った(女性・二二歳)
      2. 咬合治療が原因の不定愁訴は咬合治療で治す(女性・四三歳)
    4. ケース③全身のゆがみが原因の顎関節症
      1. 全身調整で開きにくかった口が楽に開いた(女性・四二歳)
    5. ケース④義歯未使用による寝たきり
      1. 義歯装着で自力歩行が可能になった(女性・八八歳)
      2. 寝返りも打てない状態から杖歩行ができるようになった(男性・七十歳)
      3. 在宅治療での義歯装着によって日常動作活動性が向上(女性・八九歳)
    6. ケース⑤原因不明の掌せき膿疱症
      1. カサカサジクジクした肌が金属の置換できれいになった(女性・五五歳)
      2. どこの皮膚科でも改善しなかった皮疹が咬合治療で劇的に改善(男性・四九歳)
    7. スポーツ選手への治療
      1. 咬合治療で腰痛が改善して見事復活(女性・二四歳)
  5. 歯科と医科の連携が医療革命を起こす
    医療抜本改革への著者からの提言
    1. 歯の病気の予防こそが全身の健康を維持する
      1. 歯の健康は全身の健康につながる
      2. 治療歯科から予防歯科への転換を目指すために
    2. 患者さんのための医療を実現する
      1. 正しい歯科治療が国庫と患者さんを救う
      2. 今の医療は既得権益者のための医療だ!
    3. 高齢社会の歯科治療が医療費増加に歯止めをかける
      1. 義歯装着が高齢者疾患を防ぐ
      2. 義歯の重要性を理解していない医療者や介護者たち
    4. 医師免許にも更新制度を設ける
      1. 国家試験の問題内容の見直しが必要
      2. 教科書通りの治療をしてもミスは起きる
    5. 歯科治療の全身への効果を認めれば多くの病気は治る!
      1. 歯科保険の適用範囲が咬合治療の発展を阻む
      2. 今の医療を変えるには国民が声をあげることも大事
文献
  1. 船井幸雄『すべての答えは自分にあった』[P.47]
  2. 帯津良一『<いのち>の場と治療』[P.48]
  3. ダニー・スタインバーグ『口の中に潜む恐怖』[P.87]
  4. 大村恵昭『図解バイ・ディジタルO-リングテストの実習』[P.94]
  5. 藤井佳朗『歯科からの逆襲』[P.150]

内容

咬合異常実験[P.34]

噛み合わせと全身との関連を簡単に証明することはできないのでしょうか。
たとえば、約一cmの厚みの木片を両側臼歯部で噛めば、
平衡感覚障害が発生して体が傾いたり、ふらついたりする人がいます。
また息苦しさ、腰背部痛、身体各部の関節可動域の減少など不快症状を呈する人もいます。
噛み合わせを約一cmも挙上して高すぎる噛み合わせを人工的に作れば、
何らかの不快症状を示す割合は五十%以上にもなります(前頁写真参照)。

咬合異常機序[P.51-52]

噛み合わせの異常は全身にあらわれます。
それは全身のバランスを保つうえで、重要な働きをしているからです。
噛み合わせは、全身の筋肉や骨に影響を及ぼすのです。

まず筋肉への影響ですが、
ものを噛むときには咬筋、側頭筋、外側翼突筋といった咀嚼筋などを使います。
噛み合わせが悪く、長い間おかしな噛み方をしていると、
咀嚼筋に不自然な力がかかり、痛みが出てくるようになります。
噛み合わせの以上は、咀嚼筋だけではありません。
咀嚼筋とつながっている首すじの胸鎖乳突筋にも影響します。
さらに胸鎖乳突筋につながる胸、肩、背中にまで痛みは及んでくるわけです。

次に骨への影響です。顎の骨というのは、全身の骨とつながっています。
頭蓋骨、頚椎、肩甲骨につながっています。
首から下の脊椎をみていくと、
脊椎は頚椎、胸椎、腰椎、仙骨の順に構成され、骨盤に接続しているわけです。
もしも、顎の骨や関節がゆがんでいれば、
ゆがみは脊椎から骨盤まで及んで、全身に広がっていくのです。
噛み合わせの悪い人は、たいてい背骨が曲がって姿勢が悪いのですが、
それだけ噛み合わせの不調が背骨にあらわれるということです。

プラットフォーム落下事故携帯電話説[P.83-84]

私は日本歯科東洋医学会誌に、
携帯電話による電磁波の人体への影響について、論文を発表しました。
約五十人の人を対象に、携帯電話をからだに近づけたり、
持ってもらってデータをとっています。
その実験では、約五十人のうち十九人の人がなんらかの平衡感覚障害を訴えました。
だいたい三人に一人くらいの割合で、携帯電話の電磁波に対し、
からだが傾くという反応をみせているのです(口絵参照)。

ところで、近頃は駅のホームからの乗客の落下が増えています。
そのためか、このところ都市の新しい駅には、柵がたくさん作られています。
新幹線のホームは昔は柵などなかったのに、今ではかなりの駅で柵が設置されています。
それはもしかしたら、携帯電話の普及と時期を同じくして、
落下事故が増加しているからかもしれません。
落下が増えていることと、柵の設置と、
携帯電話の普及は因果関係があるのではないかと私は推測しているのです。

咬合異常に起因するアトピー症例[P.110-113_131-132]

ハンドアトピーの症例(女性28歳)

この患者さんは、役二年前から手のひらにかゆみをともなう皮疹が発生しました。
発症当時、皮膚科で主婦湿疹と診断され、ステロイドを使用していました。
主婦湿疹という診断なので、炊事にはゴム手袋をするなど、気をつけたものの改善しませんでした。
そして、半年後にはアトピー性皮膚炎の可能性があるといわれたそうです。
副作用のおそれからステロイド治療は中止しましたが、
皮疹に変化はみられず、かゆみも続いていました。

私の歯科医院に来たときも、手のひらに皮疹がみられました。
しかし、手のひら以外に皮疹はありません。
その他の愁訴としては、肩凝りと首の凝りがありました。

歯を診ると、上顎の両側側切歯と両側第一小臼歯が反対咬合になっていました。
歯は上下とも、正中という歯の真ん中のラインから、中切歯、側切歯、犬歯(糸きり歯)、
第一小臼歯、第二小臼歯、第三大臼歯(親知らず)という順で並んでいます。
この患者さんの場合、真ん中から二番目と四番目の上顎の歯が両側とも反対咬合、
つまり下顎の歯の後方に位置していたわけです。

<中略>

この患者さんには、一週間ごとに三回にわたって、右側側切歯を削る治療を行いました。
一回につき削る量は、数十ミクロンです。
一カ月後には皮疹は改善し、かゆみもなくなりました。
皮疹の消失とともに、その他の愁訴の肩凝り、首の凝りも改善しています。
下顎の位置は後方に変位し、四回目の来院時には、ほぼ生理的な顎位と判断されました。
約三カ月後の予後観察においても、皮疹の悪化はみられなかったため、治療は終了しました。

上半身アトピーの症例(女性22歳)

この患者さんは、幼児期にアトピー性皮膚炎を発症しています。
以後、二十年間にわたってステロイド治療を継続してきました。
しかし、ある時期からステロイド治療が効かなくなり、
歯科での治療に賭けて私の医院を訪れました。

症状は上半身が中心で、
顔面全体、頚部、胸部、上肢にかけて、著しく紅潮した皮疹が存在しました。
ほてりやかゆいも激しく、ジクジクした浸出液が一部にはみられます。
口腔内は、歯周組織や口腔粘膜にはとくに異常はありませんでした。

O-リングテストにより顎の位置の診断をすると、
この患者さんは低位咬合であったため、スプリントによる咬合治療を実施することにしました。
そして、患者さんに最も生理的に合った顎の位置を確認したうえで、ソフトプリントを装着しました。
その他には、漢方エキス剤投与、化粧品の再検討も行っています。

治療開始から三カ月後には、皮疹がかなり消失しました。
紅潮もほとんどなくなり、二十年間に及んだアトピー性皮膚炎が、
三カ月で改善されたのです。

アマルガムに起因するアトピー症例[P.116-117_133-134]

顔面と背中のアトピー症例(女性46歳)[P.116-117]

この患者さんは、二年以上前に顔面と背中に湿疹が発生しました。
皮膚科でアトピー性皮膚炎と診断され、ステロイドを投与されましたが、
半年以上経っても治癒しませんでした。
そのため、大学病院皮膚科の指導により、ステロイド使用を中止しました。

ところが、ステロイド中止の約二週間後から、
リバウンドと思われる皮湿の悪化があらわれました。
以来、さまざまな民間療法を試したもののいずれも効かず、
とうとう歯の関与を疑って、私の歯科医院に来たのです。

アトピー性皮膚炎の症状は、顔から上肢にかけての湿疹がひどく、かゆみも強いため、
各所にかきつぶしたとみられる出血の痕がありました。

口腔内を診ると、歯周組織、歯肉、口腔粘膜の健康状態は良好です。
ただし、アマルガムを使用して修復した歯が九本、
金パラジウム銀合金で修復した歯が二本ありました。
アマルガムに含有されている水銀の毒性については、前述の通りです。(86頁参照)

皮膚科で実施したアレルギーの検査をみると、
パッチテストではコバルトとニッケルのみ陽性でした。水銀は陰性です。
血液検査の結果では、アトピー素因は見受けられませんでした。
しかし、毛髪分析では水銀値が高値でした。

そこで、九本の歯に詰めてあったアマルガムをすべて除去し、
別の金属やセメントに置換することにしました。
新たに詰めた材料は、歯科材料のサンプルを使ってO-リングテストを行い、選択しました。
治療後、約二週間で湿疹は改善しはじめ、約五カ月で湿疹もかゆみも激減しました。

この患者さんの場合、アマルガムの除去により明らかに改善したので、
疾患の原因はアマルガムに含有される水銀だとみられます。
ところが、皮膚科でのパッチテストでは水銀は陰性で、
アレルゲンとしてアトピー性皮膚炎に関与したとは判断しにくいわけです。
したがって、水銀の毒性やアマルガム固有の電磁波などが
皮膚炎の発症に関与したのではないかと推察します。

首から頬にかけてのアトピー症例(女性16歳)[P.133-134]

高校生のこの患者さんは、幼稚園の頃に顔面と頚部に皮疹が発生しました。
皮膚科でアトピー性皮膚炎と診断され、
十年以上にわたってステロイドによる治療をしてきましたが、完治しませんでした。
やがてステロイドを止めたときの副作用について知ったため、
危機意識をもって私の医院を来院しました。

この患者さんは、主に頚部から顔面にかけて、ひどい皮疹があらわれていました。
とくに左右の両頬には、ジクジクした浸出液をともなう皮疹があり、
強いかゆみに悩まされていました。
口腔内は、アマルガム、金銀パラジウム合金、レジン(プラスチック樹脂の歯科材料)
などによって修復、補綴した歯が数カ所みられました。

O-リングテストを実施した結果、皮疹の原因は、主に歯科用金属の影響と判断しました。
とくにアマルガムに含まれる水銀が、関与したものと思われます。
そこで、アマルガムを除去し、金と白金の合金に置換しました。

アマルガムを除去したのち、皮疹は軽減してきました。
ただし、治療開始とともにステロイドを中止したため、
ステロイド離脱時のリバウンドとみられる悪化がみられました。
しかし、その後は順調に改善し、再悪化することはありませんでした。
約七カ月後には、両頬の皮疹もほとんど消え、きれいな肌になっています。

歯肉炎に起因するアトピー症例(女性22歳)[P.134-136]

数年前から、四肢関節屈曲側(肘・膝の内側)に皮疹が発生。
皮膚科でアトピー性皮膚炎の診断のもと、ステロイドを投与されていました。
しかし、副作用の危険性から、ステロイドを使用しない治療を受けたいと思うようになりました。

初診時の症状は、四肢関節屈曲側にかゆみをともなう乾燥性皮疹がみられました。
口腔内は、PCR(プラークコントロールレコード・
色のついた液で歯垢をチェックして数値化したもの)が百パーセントでした。

PCRは全歯面を百パーセントとして、
何パーセントの歯に歯垢が付着しているか算定していますから、
PCRが百パーセントということは、口腔内の状態は良好とはいえません。
また、歯と歯の間の歯肉を中心に、歯肉炎がほぼ全歯牙にわたってありました。

この患者さんの場合は、口腔内所見から口腔内炎症の影響が推察されます。
いわゆる病巣感染が、アトピー性皮膚炎の発症に関与していた可能性がありました。
病巣感染というのは、からだの一部に慢性化した感染性炎症病巣があり、
その病巣はわずかな症状を示す程度なのに、
そこから離れた臓器に二次感染が起こる状態のことです。
つまり歯肉炎が、アトピー性皮膚炎の原因となっていたのです。

そこで、ブラッシングを中心としたプラークコントロールを実施しました。
それと同時にO-リングテストを用いて、漢方エキス剤を選定したうえで投与。
さらに、皮疹の治療として、抗菌作用のある超酸性水を、
かきむしった皮膚の感染防止に使用しました。

プラークコントロールでPCR五十パーセントを維持した結果、約二カ月で腕の皮疹は消えました。
やがて足の皮疹も改善し、以後、悪化はしていません。

咬合異常に起因する腰痛症例[P.142-145]

矯正治療ミスによる腰痛症例(女性22歳)[P.142-144]

この患者さんは、かつて歯科矯正を受けました。
ところが、矯正治療が進むにつて、腰痛を自覚するようになりました。
矯正治療は終了しましたが、腰部の痛みはどんどんひどくなり、
私の医院に治療を受けにきたわけです。

口腔内は、歯列矯正後ですから歯並びはとてもきれいに見えます。
しかし、立位の姿勢をみると、明らかに骨盤が傾斜しています。
まっすぐ立ってもらうと、腰部から上が明らかに右に傾いているのです。
矯正前の姿勢をチェックしていないので、骨盤の傾斜と腰痛が、
歯列矯正によって発症したものかどうか断定はできません。

ただ患者さんに聞くと、治療をした矯正医は、
治療の過程で一度も全身姿勢を観察しなかったといいます。
咬合が全身姿勢に影響することは、歯科医なら当然知っているべきことです。
なのに、全身状態をまったく考慮せず、口腔内だけを診て、
矯正治療を行う矯正医がいるということ自体が問題です。

この患者さんに対しては、O-リングテストで生理的な顎位を診断し、
スプリントを装着することにしました。
スプリント装着後、姿勢が改善されほどなく腰痛も改善しました。

咬合治療ミスによる腰痛症例(女性43歳)[P.144-145]

私の医院に来院する約半年前、某歯科医院で噛み合わせが悪いという指摘を受けました。
この女性はふだんから健康には気をつけていて、とくに不定愁訴などはありませんでした。
しかし、噛み合わせが悪いと指摘され、スプリントを装着するよう指導されたので、
寝るときもスプリントを装着して生活していました。

すると、これまで自覚のなかった腰痛をはじめ、頭痛、肩凝りなどが発生しました。
そのことを歯科医に伝えると「好転反応だ」といわれたそうです。
さらに歯科医から「スプリント装着のあと、最終的には全部の歯をかぶせ直す」といわれました。
しかし、腰痛はまったく改善せず、治療を続けるべきか、不安になって私の医院を訪れたのです。

私はまず本当に噛み合わせが悪いのかどうか、診断をしました。
某歯科医院では、両側の臼歯の部分でロールワッテ(円筒状の綿)を噛ませ、
背中を押したときのほうが、噛まないで押したときより、前に倒れにくいという理由で、
噛み合わせを上げるスプリントを装着したそうです。

しかし、両側の臼歯でロールワッテを噛んでもらい、
O-リングテストを実施すると、O-リングは開いてしまいます。
つまり、指の力が弱まって、異常反応を示しているのです。
したがって、スプリントを装着するほど噛み合わせは低くないと判断し、スプリントを除去しました。
すると、腰痛や肩凝りなどの不定愁訴は、たちまち軽減しました。

義歯装着で寝た切りから回復した症例[P.152-155]

義歯を装着することで歩けるようになった症例(男性70歳)[P.152-153]

この男性は、脳梗塞後に左半身麻痺が十年以上続いていました。
そこへ発作が再発し、寝たきり状態となって入院しました。
寝たきりになってからは、呼びかけにもほとんど反応せず、自力では寝返りも打てません。
静脈注射による抗凝血剤の投与と栄養補給はされていましたが、
主治医は救命は困難と判定していました。

私は病室に治療に出向き、診断のうえ義歯を装着してみることにしました。
そして、看護師の協力のもと、上下総義歯を装着し、摂食訓練を実施しました。
すると、はじめは全面的な介助を必要としながらも、
徐々に口から食事がとれるようになってきました。

義歯装着後、二週間経つとベッドの上で座ることができました。
その時点で静脈注射による栄養補給は中止し、介助付きながら食事は普通食になりました。
この頃には、言語療法もせずに日常会話がスムーズにできるようになりました。

一カ月後には、介助なく食事と排泄が可能になりました。
さらに一カ月後には、介助なしで車椅子に乗り移ることができるようになり、
自由に病院内を移動しています。
そうして、短距離なら杖歩行も可能になり、とうとう退院までこぎつけたのです。

義歯をはずして寝た切りになった症例(女性89歳)[P.153-155]

以前は義歯を使用していたこの患者さんは、杖をついて自力で歩行していました。
あるとき、健康診査のための検査入院をし、その病院で義歯をはずすようにいわれました。
入院はあくまで検査目的だったのですが、入院中に生活動作能力が急激に低下してきました。
結局そのまま寝たきりの状態となり、静脈注射による栄養補給のほか、治療は実施されませんでした。

やがて入院生活では回復が見込めないと家族が判断し、在宅介護を希望して、退院させています。
自宅では摂食訓練によって、やわらかい食べ物が食べられるようになりました。
家族によると介護と、主治医の往診による治療を継続しながら、
専門家の指導のもと関節を屈伸させるリハビリテーションも室内で実施していました。

ところが、日常動作活動は徐々に低下して、家族の呼びかけにも応えなくなりました。
寝たきりで目を開けることもできなくなったため、
リハビリも中止せざるをえなくなってしまったのです。

私が自宅に治療に行ったとき、患者さんは目を閉じて一日中ベッドで寝ている状態で、
呼びかけてもまったく反応しませんでした。
私はすぐにはずしていた義歯を修理し、それを装着しました。

結果、装着後二週間で目を開けるようになりました。
家族の介助のもと、流動食から軟性食になり、嚥下状態も改善されました。
日常動作活動はみるみる向上して、意識レベルも回復がみられました。
約二カ月後には、ベッド上での在宅リハビリを再開するにいたったのです。

歯科金属アレルギーに起因する掌蹠膿疱症症例(女性55歳)[P.158-160]

約半年前から、手のひらと足の裏に赤い皮疹ができ、
皮膚がウロコ状にポロポロはがれ落ちてきました。
そのまま二カ月が経過し、どんどん症状がひどくなっていくので、
心配になって近所の皮膚科を受診しました。
皮膚科では掌せき膿胞症と診断のもと、ステロイド軟膏を塗布する治療を開始しています。
しかし、ステロイドが効いてある程度は改善しても、再び悪化するという繰り返しでした。

そこで、二カ月後に精密検査と治療のため、大学病院を受診することにしました。
精密検査では、フードアレルギー、ドラッグアレルギーともに陰性です。
大学病院での治療方法は、薬浴してから紫外線を照射するPUVA-Bath治療が中心でした。
ところが、二カ月の間に二十回PUVA-Bath治療を実施しても、十分な改善がみられませんでした。
この患者さんは、自分でいろいろ調べているうちに、
金属パッチテストでパラジウムと白金が陽性であったことから歯科金属を疑い、私の医院に来たのです。

最初に来院したときは、手のひらと足の裏に水疱がみられ、皮膚がところどころはがれ落ちていました。
かゆみも激しく、かなりつらそうでした。
口腔内は、金パラジウム銀合金、白金加金合金、
レジン(プラスチック樹脂の歯科材料)などで修理または補綴した歯が数カ所あります。
歯周組織の健康状態は良好でした。

私はまず、ステロイド軟膏の使用を中止するよう指導しました。
そして、歯科用金属のサンプルを使ってO-リングテストを行い、
金パラジウム銀合金、白金加金合金の詰め物とかぶせてあった冠を除去し、
白金やパラジウムが配合されていない20K金合金に置換しました。

すると、治療開始後まもなく急激に症状は改善しはじめました。
赤い皮疹が消失し、かゆみも激減して、約三カ月後には皮膚科で治癒したと判定されたのです。
なおステロイド中止による、リバウンド現象はありませんでした。

咬合異常に起因する掌蹠膿疱症症例(男性49歳)[P.160-163]

この男性は、約二年前から手のひらと足の裏に水疱と赤い皮疹ができていました。
皮膚科で掌せき膿疱症と診断され、ステロイド軟膏による治療を続けていましたが、
あまり効果がありません。
そこからあちこちの総合病院皮膚科を転々とするも、
どこへ行っても原因が解明されませんでした。
その頃にはデルモベートという強いステロイド軟膏を、
約二カ月間にわたって塗布していましたが、
もはや外用治療はまったく効果がなくなっていました。
最後に歯科治療に希望をかけて、私の医院を来院したのです。

初診時は、手のひらと足の裏全体が赤く、水疱が多発していて、浸出液でジクジクしていました。
口腔内を診ると、歯周組織の状態は良好で、口腔粘膜にも異常はみられません。
ただし、右側の第二小臼歯と第二大臼歯が欠損しているほか、
金属とレンジで補綴処置した歯が数カ所存在しました。
ちなみに皮膚科での検査所見によると、
金属パッチテスト、血液検査、細菌検査などでも異常は発見されませんでした。

私はこの患者さんの場合も、ステロイド軟膏の使用を中止しました。
そして、O-リングテストで口腔内の金属のテストをすると、
口腔内の金属の皮疹への関与はなさそうだと判断しました。
そこで、欠損している右側の歯に義歯を装着することにしたのです。

すると、義歯装着の二週間後に、角化して固くなった皮膚が著しく改善してきました。
ところが、もとから左の上の中切歯にかぶせてあった冠が落ち、その影響で症状が再び悪化しました。
しかし、その部位に歯冠をかぶせると、再び改善しました。
以後、装着した義歯を再補綴し、他の歯も咬合調整をしていきました。
治療途中では、ステロイド治療中止によるリバウンドとみられる症状の悪化もありました。
しかしながら、初診から三カ月後には、手のひら足の裏ともに、皮疹はほとんど消失しています。
どんなに強い軟膏を塗布しても治らなかった皮疹が、咬合治療で改善したのです。

咬合異常に起因する慢性疲労症候群症例(女性30代)[P.175]

かつて治療したある患者さんは、
どこの病院に行っても原因が見つからず、慢性疲労症候群と診断されていました。
この患者さんは三十代前半の女性でしたが、
初診時には立つことも歩くこともできず、ぐったりと寝込んでいる重篤な状態でした。
数年間いくつもの病院を転々とし、膨大な薬を投与され、
たび重なる検査を受けても異常は見つからないのです。

ところが、スプリントを作製し、調整しながら治療を進めていったところ、
約一カ月で立ち上がれるようになりました。
やがて患者さんの近在の歯科医院で咬合治療を継続しているうちに、
歩いて歯科に通えるまでに回復したのです。

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