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書籍と雑誌の要約と解説

「ゴミ焼却」が赤ちゃんを殺すとき

ダイオキシン汚染と乳幼児突然死症候群

装丁
「ゴミ焼却」が赤ちゃんを殺すとき しのびよるダイオキシン汚染をどうくい止めるか 「ゴミ焼却」が赤ちゃんを殺すとき しのびよるダイオキシン汚染をどうくい止めるか
「止めよう!ダイオキシン汚染」さいたま実行委員会
合同出版
ISBN4-7726-0227-5
2009/05/03
¥1400
全国各地の焼却場周辺住民の血液や母乳から高濃度のダイオキシンが検出される一方で、
産廃処理場が密集する地域の新生児死亡率が注目された。

産廃処理場の密集地域で、
焼却場の増大とともに新生児死亡率が高くなることがわかった。
そして、産廃焼却場、自治体の焼却施設ばかりではなく、
家庭用簡易焼却炉の購入補助制度が長期間にわたる自治体でも、
同様に新生児死亡率が高いという、驚くべき事実が判明した。

なぜ、このような事態が起こるのか。
衝撃のデータの全容が、本書で初めて公開される。

目次
  1. 「産廃銀座」となった経緯
    1. 緑豊かな大地――三富新田
    2. なぜ、くぬぎ山にごみ処理施設が集中したのか
    3. 野焼きから小型焼却炉へ、県が後押し
    4. 同一敷地内での複数炉設置へ
  2. 産廃焼却の実態をさぐる
    1. 埼玉県の焼却炉分布
    2. 「産廃銀座」で起きていること
    3. 産廃の正体
    4. いままでのダイオキシンの発生量
  3. ダイオキシン汚染の実態
    1. ダイオキシンはどこへ
    2. くぬぎ山の土壌汚染
    3. 土壌汚染の広がりを調べる
    4. 50%が、大気環境濃度を超える
  4. 「産廃銀座」で赤ちゃんが死ぬ!?
    1. 「人口動態統計」をみつける
    2. 「新生児死亡率」の異常な変化
    3. 「産廃銀座」で赤ちゃんが死ぬ
  5. ダイオキシンの大気濃度と新生児死亡率
    1. 新生児死亡率と焼却量の関係
    2. 隠された被害を求めて
  6. 家庭焼却でも赤ちゃんが死ぬ!?
    1. 家庭焼却の奨励制度
    2. 家庭焼却で赤ちゃんが死ぬ!?
    3. 家庭用焼却炉の購入補助制度の危険性
  7. なぜ、産廃が集中するのか
    1. 埼玉は東京のゴミ焼き場!
    2. 産廃の事前協議制がない
  8. 立ち上がる市民
    1. 「止めよう!ダイオキシン汚染」さいたま実行委員会の結成
    2. 活発化する額集会――市民へアプローチ
    3. 刑事告発された市長
    4. 従来の市民運動を脱却して――調査型市民運動
    5. マス・メディアの動き
    6. 県・国を動かす
    7. 所沢市ダイオキシン規制条例の意義
    8. 母乳中のダイオキシン調査
  9. 解決策を求めて
    1. 三種類のゴミ焼却場、もっとも効果的な対策を
    2. ダイオキシン濃度を下げるために
    3. 生活者は環境センサー
  10. 私たちの目指す社会とは
    1. 大量生産・大量廃棄社会から脱却を
    2. 大量生産・大量廃棄の根幹にどうくさびを打ち込むか
文献
  • 宮田秀明『よくわかるダイオキシン汚染』
  • デボラ・キャドバリー『メス化する自然』
  • シーア・コルボーン『奪われし未来』
  • 脇本忠明『ダイオキシンの正体と危ない話』
  • 綿貫礼子『環境ホルモンとは何かⅠ』
  • 宮田秀明『ダイオキシンから身を守る法』
  • 宮田秀明『STOP!食品母乳のダイオキシン汚染』
  • 山地政美『わたしたちの生活環境を考える』
  • 反農薬東京グループ『ダイオキシンが未来を奪う』
  • 化学物質問題研究会『塩ビは地球に優しいか!?』
  • 津川敬『ゴミ処分』
  • 彼谷邦光『環境のなかの毒』
  • 永山淳哉『しのびよるダイオキシン汚染』
  • 菅原淳『生物モニタリング』
  • 綿貫礼子『毒物ダイオキシン』
  • 綿貫礼子『ダイオキシン汚染のすべて』

内容

  1. 産廃銀座における推定累計焼却量(1974年~1996年/単位:万トン)[P.27]
  2. 所沢周辺各市町の大気中ダイオキシン平均濃度[P.40]
  3. ダイオキシン大気汚染濃度の安全指針を超えた小中学校[P.41]
  4. 所沢市内では喘息・アトピーの罹患率が高い[P.64]
  5. 吉田町の各家庭には、ほとんど各戸に一台、煙突のないブロッグ製の簡易焼却炉が普及しています。[P.80]
  6. 家庭焼却の年数が長い自治体ほど新生児死亡率が高い[P.71-78]
  7. 福岡県志免町の新生児死亡率は夜間焼却開始後に急増している[P.87]
  8. 焼却場・豊能郡美化センターの死亡率は大阪府でトップ[P.88]
  9. 母乳のダイオキシン汚染[P.107]

産廃銀座における推定累計焼却量(1974年~1996年/単位:万トン)[P.27]

新座市 狭山市 所沢市 川越市 三芳町
1.32 10.87 11.04 15.25 17.63

所沢周辺各市町の大気中ダイオキシン平均濃度[P.40]

1997年7月下旬~9月上旬(単位:ピコグラムTEQ/m3)
三芳町 所沢市 川越市 入間市 朝霞市 狭山市
1.47 1.14 0.91 0.75 0.63 0.39

ダイオキシン大気汚染濃度の安全指針を超えた小中学校[P.41]

  • 所沢市安松小学校   (ニ・五ピコグラムTEQ/m3
  • 三芳町三芳東中学校  (一・二ピコグラムTEQ/m3
  • 川越市芳野中学校   (一・〇ピコグラムTEQ/m3
  • 川越市霞ケ関西小学校 (〇・九五ピコグラムTEQ/m3
  • 三芳町藤久保小学校  (〇・九四ピコグラムTEQ/m3
  • 所沢市秋津小学校   (〇・八七ピコグラムTEQ/m3

所沢市内では喘息・アトピーの罹患率が高い[P.64]

所沢市教育委員会が行なった児童の健康アンケート調査と、
通常の身体検査の結果を所沢市教育委員会がまとめたものを紹介しましょう。
アンケート調査は、所沢の「健康を考える会」(釜山信之代表)が入手し、
また身体検査の資料は、タウン誌「所沢ニュース」(発行人・矢部敏道氏)が入手したものです。

はじめに、喘息・アトピー性皮膚炎に関するアンケート調査結果は、
所沢市教育委員会が97年に実施したのですが、
この調査によると、しないの小中学校の学童2万5千人のうち、
41.5%が喘息もしくはアトピー性皮膚炎に罹っていたか、
あるいは現在も罹っていることがわかりました。

そして、現在の罹患率も、喘息の全校平均が7.4%(対埼玉県4.8倍)、
アトピー性皮膚炎が同6.0%(対埼玉県3.9倍)と、所沢市内全域で非常に高く、
とくに大気汚染の激しい東部地域で比率が高くなっていることがわかりました。

新生児死亡率が高率の自治体は家庭焼却歴が長い[P.71-78]

死亡率が高順位のグループでは長期間の家庭焼却が行われていたことがわかります。
そして、死亡率ランク20位までの自治体中6割が、
5年から最長27年も家庭焼却を行なっていました。
第1位の吉田町(死亡率11.49人、対県4.65倍)が最長の27年。
第10位の小鹿野町(4.27人、1.73倍)が25年。
第20位の杉戸町(3.49人、1.41倍)が約19年。
これに対して、第21位から40位までは、2割の自治体しか補助制度を採用していません。

購入補助を行なっていない(家庭焼却を奨励していない)、
両神村、大滝村、神泉村、東秩父村、名栗村などでは、「新生児死亡率」はゼロでした。
同じく購入補助制度を導入しなかった秩父市も対県倍率は1.04倍と低い値でした。

福岡県志免町の新生児死亡率は夜間焼却開始後に急増している[P.87]

福岡県志免町の新生児死亡率ですが、夜間焼却が始まった86年から95年は、
福岡県内の出生数3000人以上の自治体中、志免町の新生児死亡率は3.43人、
対県倍率が0.7倍(4.47人)でしたから、夜間焼却が始まってから
死亡率ランクが急激に上がったことになります。
このような死亡率の急上昇は、志免町周辺の5つの自治体では見られませんので、
夜間焼却の影響が考えられます。

焼却場・豊能郡美化センターの死亡率は大阪府でトップ[P.88]

大阪府能勢町の焼却場「豊能郡美化センター」敷地内の池の泥から、
1グラム当たり2万3千ピコグラムTEQのダイオキシンが、
また周辺土壌からも最高8500ピコグラムTEQのダイオキシンが検出され、
全国に大きな衝撃を与えました。
汚染レベルの異常な高さにもかかわらず、
町は人体への影響はない、という安全宣言まで出しました。

しかし、私はこの問題が大変気になっていたので、
本書の脱稿直前に大阪府の新生児死亡率と早期新生児死亡率を調べてみました。
この焼却炉は88年から使用されたので、焼却期間に対応する89年から96年と、
それ以前の84年から88年における死亡率を求めました。

その結果、驚くべきことに、
89年から96年における新生児死亡率は7.59(人/千人)と大阪府全体の3.4倍、
また早期新生児死亡率も7.59と大阪府全体の4.7倍に達しており、
いずれも大阪府で第一位であることがわかりました。
一方、焼却開始前の新生児死亡率は1.95と大阪府全体の0.6倍、
また早期新生児死亡率も1.95と大阪府全体の0.84倍であることがわかりました。

母乳のダイオキシン汚染[P.107]

埼玉県は1997年10月から98年1月にかけて100検体の母乳を採取し、
人体汚染の調査に着手しました。
調査目的は「埼玉県におけるダイオキシン類の人体への蓄積状況を把握し、
県民の不安を軽減すること」とし、調査対象地域は、
東部は草加市で20検体、南部は戸田市で20検体、北部は熊谷市で20検体、
西部は所沢市で8検体、挟山市で8検体、入間市で8検体、川越市で8検体、
三芳町で4検体、大井町で4検体とされました。

1998年3月20日に発表された結果は、
他の先進諸国や国内でのこれまでの調査とくらべてそう高くはないこと、
産廃焼却炉が集中する県西部などの特定地域だけではなく、
広範囲に人体が汚染されていることが確認され、汚染の地域差はないという内容でした。
「ダイオキシンの9割は食べ物から摂取されるから、地域差はない」
というのが、埼玉県の見解でした。

しかしながら、母乳1ミリリットルあたりのダイオキシン濃度は県平均0.6ピコグラムで、
乳児が通常1日体重1キログラム当たり120ミリリットルの母乳を飲むとして、
1日72ピコグラムのダイオキシンを摂取している計算になります。
これは厚生省が示した安全のための指針値
(耐容一日摂取量の10ピコグラム)の7倍を越えるもので、
決して安心できるものではないのです。
また、今回の調査での最高値は76.0ピコグラムでしたが、
その原因についても一言もふれられていません。
このような高濃度汚染者の居住地こそ、徹底的に調べるべきではないでしょうか。

埼玉県の報告から1週間後、思いもかけぬどんでん返しが起こりました。
県は、調査対象者を「原則として5年以上居住しており、
出産(予定)日を基準として、25歳から35歳で、
健康に異常が認められず、調査の主旨を十分に理解し、
任意の協力が得られた初産婦」と規定していました。
しかし、実際は居住5年未満が100中41人も含まれており、
その中に居住年数1、2年という女性もいたのです。

また、当初の発表では市町村別データの公開はされませんでしたが、
市町村別のダイオキシン濃度を比較してみると、
所沢市は県平均値を大きく上回り、22.7ピコグラムにもなっていたのです。
これは、明らかに県が高濃度地域を不明にするために
作為的な「まとめ」を行ったことを意味します。
ダイオキシン対策の先進県といわれる埼玉県が、
数億の税金をかけながらも作為的な調査方法と虚偽のデータで県民をごまかしたのです。

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