バベルの図書館

書籍と雑誌の要約と解説

非イオン系合成洗剤

その生体毒性と環境影響

装丁
非イオン系合成洗剤 非イオン系合成洗剤
小林勇(生協蓮ユーコープ事業連合商品検査センター所長)
合同出版
ISBN4-7726-0188-0
1995/05/30
¥2000
解説
本書では、最近、私のところへもたくさんの質問が寄せられている非イオン界面活性剤について、
消費者の方々にも十分理解して頂けるよう極力、かみ砕いた入門書を執筆することを企図しました。

そのため非イオン界面活性剤の多様な種類、食品添加物にまで使われている広範な用途、
その安全性、生分解性、生態影響を陰イオン界面活性と比較しながら解説しました。
とくに女性用避妊薬として世界的に普及している現状から、
薬剤としての安全性についても、内外の文献を検索して紹介しました。

本書は、化学の専門家や中学・高校の理科の教師、
短大・大学の生活科学、環境科学、化学の学生にも役立つよう最低限のデータ、
内外の重要な研究データを明示しました。
とりわけ、最終章では、現在の各種界面活性剤の環境汚染の現状と測定法の進歩を概括しました。

全体を通じて、洗剤問題の新たな状況に対応するための、
最新のデータ、情報を提供することができたと思っております。

目次
  1. 界面活性剤にかこまれた暮らし
    1. 朝の洗顔
    2. はみがき
    3. 朝シャン
    4. 朝食の後かたづけ
    5. 洗濯
    6. 毎日食べている界面活性剤
    7. 住居用の洗剤
    8. 入浴用の洗剤
    9. 石鹸と合成洗剤=どちらも界面活性剤
    10. 植物や動物が持っている界面活性剤
    11. 化粧品類の界面活性剤
    12. 1日40グラム消費される界面活性剤
  2. 界面活性剤とはなにか?
    1. どのような作用を持つ物質が界面活性剤が?
    2. どのような化学物質が界面活性剤になるのか?
    3. 界面活性剤をどのように区分しているか?
    4. 界面活性剤はどのくらい生産されているのか?
  3. 非イオン界面活性剤とはなにか?
    1. 非イオン界面活性剤を特徴づける一般的性質
    2. 非イオン界面活性剤の分類
  4. 非イオン界面活性剤のHLB価
    1. 界面活性剤と乳化剤
    2. HLB価の算出法
    3. HLB価と性能の関係
  5. 食品添加物としての非イオン界面活性剤
    1. 食品添加物に指定されている非イオン界面活性剤
    2. 乳化剤と貿易摩擦の火種
    3. グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド)
    4. SE(ショ糖脂肪酸エステル)
    5. SPAN(ソルビタン脂肪酸エステル)
    6. TWEEN(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)
  6. アミンアミド型、グリコシド型非イオン界面活性剤
    1. DEA(脂肪酸ジエタノールアミン)
    2. AO(アルキルアミンオキシド)
    3. AG(アルキルグリコシド)
  7. POE型非イオン界面活性剤
    1. ポリオキシエチレンとはなにか?
    2. POE型陰イオン界面活性剤とジオキサン
    3. POE型非イオン界面活性剤の共通の性質
    4. POE型非イオン界面活性剤は同一に扱えない
  8. POERの生体影響
    1. POERの吸収と排泄
    2. POERの急性毒性
    3. POERの慢性毒性
    4. POERのの変異原性、催奇性、発癌性
    5. POERのの皮膚刺激性
    6. POERの殺精子作用
    7. POERの蛋白質変性作用
    8. POERの溶血性
    9. POERの細菌に対する阻害作用
    10. POERの生体影響の総合評価
  9. POERの環境影響
    1. POE型非イオン界面活性剤の環境排出量と水質汚濁
    2. POERの生分解性
    3. POERの水生生物への毒性
    4. POERの環境影響の総合評価
  10. POEPの生体影響
    1. POEPと女性用避妊薬
    2. 殺精子剤の粘膜刺激性と避妊効果
    3. POEPの変異原性、発癌性、催奇性
    4. POEPの蛋白質変性作用
    5. POEPの溶血性
    6. POEPの殺菌消毒効果
    7. POEPの生体影響の総合評価
  11. POEPの環境影響
    1. POEPの環境排出量
    2. POEPの生分解性
    3. POEPの魚毒性
    4. POEPの環境影響の総合評価
  12. PEGの生体影響
    1. PEGの生体影響
    2. PEGの吸収、代謝と排泄
    3. PEGの急性毒性
    4. PEGの慢性毒性
    5. PEGの発癌性
    6. PEGの生体影響の総合評価
  13. 非イオン界面活性剤の簡易検査法
    1. 陽イオン、POE型非イオン界面活性剤の試験法
    2. POE型非イオン界面活性剤の試験法
    3. POEPの試験法
    4. アミンオキシド型の試験法
    5. 脂肪酸アミドの試験法
  14. 界面活性剤による環境汚染とその測定法の現状
    1. 界面活性剤による環境汚染の総量
    2. 陰イオン界面活性剤による環境汚染と測定法
    3. 非イオン界面活性剤の環境汚染と測定法
    4. 陽イオン界面活性剤の環境汚染と測定法
    5. 界面活性剤の環境汚染と測定法の現状のまとめ
文献
  • 日高徹『食品用乳化剤』[P.42]
  • 『合成洗剤研究会誌』[P.53]
  • 日本缶詰協会『海外情報№287』1994年8月15日[P.60]
  • 牧野志雄『蛋白質・核酸・酵素』21,(12)1976[P.72]
  • 『合成洗剤研究誌』9,2,1985[P.73]
  • 『公衆衛生学雑誌』23,10,643~647,1976[P.75]
  • 『公衆衛生学雑誌』24,10,535~541,1985[P.76]
  • 『水環境学会誌 vol.16 No.5』1993年[P.89]
  • 『合成洗剤研究会誌』9(2):13-20,1986[P.91]

内容

胆汁は体内で作られる天然界面活性剤[P.21-22]

ヒトを含む哺乳動物の胆汁には、陰イオン界面活性剤の胆汁酸ナトリウム
(コール酸ナトリウム、またはデソキシコール酸ナトリウム)が含まれています。
この胆汁酸ナトリウムは、コレステロールから生成されますが、
脂肪の消化吸収の機能を果たす一方で、病原微生物(特にグラム陽性菌)を殺菌し、
感染症を防止する重要な役割を果たしています。
しかし、同時に胆汁酸ナトリウムは大腸癌の促進物質(プロモーター)
にもなっていると指摘されています。

イギリスのランカシャーでは羊毛の洗浄に牛の胆汁を利用した歴史があり、
わが国では江戸時代からウグイスの糞が高級洗顔料として使われました。
いずれも胆汁酸ナトリウムを洗剤(界面活性剤)として利用したものです。

洗剤によって溶血は起こり得ない[P.72-73]

日常の洗剤使用によって皮膚から浸透した界面活性剤の量で、
血管の中で溶血が起こるとは考えられません。
血液中には7~8g/dl%)のアルブミン、グロブリンの蛋白質があり、
この蛋白質が界面活性剤にすぐに結合して、溶血作用を妨害します。
濃厚な陰イオン界面活性剤の溶液を故意に静脈注射でもしない限り、
生体内の血管中での溶血は起こりません。
まして、日常の洗剤使用で溶血性貧血などは起こり得ません。

避妊薬Nonoxynol-9[P.97-99]

私が界面活性剤による細菌発育阻害作用に着目して、細菌鞭毛の発育阻害を発見し、
ここから界面活性剤によるヒト精子の運動停止効果の実験を初めて行ったのは
1977年のことでした。

現在、POEPのNonoxynol-9が避妊薬として実用化され、世界中で利用され、
とりわけ人口抑制政策をとる中国では広範に使用されています。
また、アジア、アフリカ、南アフリカでは、売春婦の避妊とエイズ、
性行為感染症の予防に利用しようという計画もあり、
POEPの安全性と有効性のバランスが実際問題として問われています。

<中略>

もっともPOEP一般ではなく、NONIDET-9(mataha Nonoxynol-9)とよばれる、
ポリオキシエチレン・ノニルフェノールエーテル(C19OEO)。
アルキル基のCが9個のノニル基のPOEP)だけが避妊薬として使用されています。
避妊薬としては、スポンジ(タンポン)、ゼリー、
膣座薬、カプセルなどの形態で製剤化されています。

<中略>

イギリスのトライアングル・パーク研究所の国際家族保険部のR.ロディらは1993年、
Nonoxynol-9の膣粘膜刺激性に関する研究を行っています。
35人の女性を五つのグループに分けて、
Nonoxynol-9を含むゼリーと含まないゼリーで比較していますが、
一日4回、2週間使用の場合、対照に比べて5倍の粘膜刺激性があり、
一日2回と1回、二日で1回使用の場合は、
対照より表皮の破壊が2.5倍あったと報告しています。

メキシコのコアウイラ国立自治大学生理学部のR.レキコらは1992年、
Nonoxynol-9のソフトカプセルについてカプセルの溶解と避妊効果を調査しています。
40人の女性を八つのグループに分けた調査で、平均8.2分(6.2~8.8分)で溶解し、
95%の避妊効果があったと報告しています。

フランスのM.M.ツッファライの1985年の報告では、家兎とラットの実験で、
Nonoxynol-9は膣表皮から吸収されたが、
ベンザルコニウムクロリド(陽イオン界面活性剤)は吸収されなかったとされ、
また、コンドームでは感覚的違和感が訴えられたと報告しています。
また、ツッファライとアメリカのG.フエイチの報告(1986)では、
避妊用のスポンジタイプのものでは、使用期間が長かった場合、
月経中、産褥中にごくまれに毒性ショック症候群が起こると報告しています。
彼らはNonoxynol-9の使用は避妊の利益と危険のバランスの問題だとコメントしています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です