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書籍と雑誌の要約と解説

恐るべき輸入食品

輸入検査の恐るべき実態ルポ

装丁
恐るべき輸入食品 健康と安全が危ない恐るべき輸入食品
港湾労働組合・港湾関係物流実態調査研究会
合同出版
ISBN4-7726-0023-X
1986/4/15
¥1200
「輸入食品のすべては、国が厳重に安全性を検査している」
と信じられているが、それは事実なのか?
アクション・プログラムの波に揺れる輸入検査の恐るべき実態ルポ。
解説
私たち港湾労組は、一九八四年七月の外米輸入反対・海上でも以来、
日本の食糧と農業を守るために、その先頭に立って奮闘してきた。
本書は、その闘いのあゆみと関連し、
輸入食品問題をあらゆる角度から調査・分析したものを、組合員の協力のもとに、
当時、港湾労組委員長だった港湾関係物流実態調査研究会の森下賢一が執筆し、
病気で中断したものを書記長の奥村などがまとめ上げたものである。

これまで輸入食品について書かれた本は少ないし、
書かれていても大きなテーマの中で、一~ニページで終わっているものが多い。
本書は、輸入食品について、直接それらを取扱っている港湾労働者の現場からの告発である。
同時に、国民のいのちと安全はもとより、
国の主権にもかかわるものとして輸入食品のミナトでの現状を告発したものである。

目次
  1. 知られざる輸入食品の実態
    1. ミナトにおける保管の実態
      1. 輸入食品は野積みの山
      2. テレビ放映で野積みが消えた
      3. 改善に誠意を見せない厚生省
      4. ミナト見学で監視を強めよう
    2. 輸入食品のいくつかの特徴
      1. 主要穀物の自給率は三二%
      2. 先進国では最低の食料自給率
      3. 二五年間で約四・五倍に増加
      4. 水や茶柱まで輸入されている
      5. ミナトを中心に作られるウソ
  2. 国民の安全を脅かす検査体制
    1. 安心できない検査体制の実情
      1. 奥に牛肉、入口に自由化品目
      2. 有毒ワイン事件が意味したもの
      3. ミナトにおける検査の仕組み
      4. 書類審査だけでパスする現実
      5. 検査の簡略・省力化が国の方針
      6. 少なすぎる輸入食品監視員
    2. なんとも恐ろしい自主検査
      1. 抜き取りサンプリングの盲点
      2. 明示されない製造年月日
      3. 同一食品の継続的輸入は検査免除
      4. 横流しされた腐敗タマネギ
      5. チェックされない残留農薬
      6. 輸入青果物はクスリ漬けの危険
      7. 輸入農産物と食品添加物
      8. 非自由化品目輸入にも盲点が
  3. 底なしの市場解放
    1. 国民の健康と安全に背を向ける市場解放行動計画
      1. 輸入制限を撤廃する政府の動き
      2. 国民の生活を守る「基準・認証制度」
      3. 食品衛生法と薬事法が大幅改悪
    2. アクション・プログラム批判
      1. おのずから限界がある自己認証
      2. 認証手続きの簡素化、迅速化の意味
      3. 性急に改変するのは非常に危険
      4. つきくずされる消費者運動の成果
  4. 港の機能と役割
    1. いま、ミナトで何が起こっているのか?
      1. 大企業のための港湾整備計画
      2. ミナトを中心に関連し合う法律
      3. 輸入貨物のミナト素通りがネライ
      4. 国民のいのちと暮らしが危ない
      5. コンテナを利用して密輸出入
  5. 韓国米・外米輸入反対闘争
    1. その出発と出会いと到達点
      1. これは、ただごとではない
      2. 港湾労組、韓国米輸入反対を決議
      3. ヨーシこれだ! 反撃のチャンス
      4. 開港以来はじめての労農海上でも
      5. 実りのあった労・農の懇談会
      6. 韓国米輸入をめぐって情報合戦
      7. 東京では韓国米上陸阻止闘争
      8. あらたな挑戦のはじまり
    2. 不透明で不可解な韓国米の輸入
      1. 神奈川食料事務所を追及
      2. 暑い夏の日の韓国米阻止闘争
      3. 毎年コメが輸入されている
      4. 米・麦輸入で儲けているのは誰か
      5. 世論の力で食管制度を守ろう
      6. 核を廃絶し、農業と食料を守ろう
      7. 輸入貨物に関連する法令一覧
文献
  • 大蔵省『日本貿易統計』[P.22]
  • 農林水産省『食糧需給表』[P.23]
  • 『消費者問題・調査季報』「基準・認証制度の緩和、アクション・プログラムと食生活の安全性」1986年3月号[P.96]
  • 『日本史探訪』[P.105]

内容

  1. 輸入食品は港で野積みされている[P.9-10_14-15]
  2. 輸入食品の告発報道史[P.11-14]
  3. 輸入食品は腐敗していても出荷されている[P.16]
  4. 輸入食品は国産品だと偽装表示されている[P.36-40]
  5. カイコのフンが輸入されてくる。これは、チューインガムの着色料として使われている。[P.37]
  6. 高級料亭や旅館の食材には輸入食品が使用されている[P.39]
  7. 港では密輸が公然と行われている[P.43-45]
  8. ジエチレングリコール入りオーストリア産ワイン事件[P.45-46]
  9. 検疫所の人手は圧倒的に不足している[P.61-62]
  10. 検疫行政は輸入業者と癒着している[P.66]
  11. 腐敗輸入タマネギ横流し事件[P.72]
  12. 燻蒸問題[P.76-77]

輸入食品は港で野積みされている[P.9-10_14-15]

ラッキョウの荷は、外側のダンボールが破れ、下のほうからは液体が流れ出て、
のぞきこむと内側のポリ容器が破損している。
ゼンマイの入ったドラム缶は、雨、風、海水にうたれたためか、
塩分と鉄分で真っ赤にさびつき、黒ずんだゼンマイがこわれたフタから見える。
ワラビのつまったカメも割れたものがまじり、一部にカビが出ている始末だ。
台湾産のシロウリ、ショウガなどの木箱は、何日も野ざらしにされて、
まるで“流木”のような木箱となってしまっている。

<中略>

輸入食品の野積みの山は、もう一年近く放置してあるものが多い。
港の規則では一カ月しか置いてはいけないのだが、
書類を更新しながらズルズルと野積みされたままになっているケースが大半だ。
市場の需給関係をにらみながら、ここで出荷を調整してるのかもしれない。
そしてミナトでの輸入食品の保管状況は、
「墓石」と一緒に野ざらしにされているのがほとんどである。

私たちも、いまでこそ輸入食品について関心を持ち始めているが、
以前は野積みされた輸入食品を見ても何の不思議さも感じず、
慣れっこになってしまっていた。
それどころか、港の中にはトイレが少ないので、
格好の物かげとばかり、野積み食品の場所で用を足していた。
いま思えばお恥ずかしい話で、深く反省している。

*   *   *

輸入食品は、通関の手続や検査のためにミナトのなかにとどめ置かれるわけだが、
不思議なことに、手続や必要な検査などが終わっても、
食品メーカーなどが輸入業者から買わなければ、
輸入食品はそのままミナトの野積み場にいつまでも据え置かれることになるのである。

それにしてもミナトには倉庫がいっぱいあるのに、
なぜ、野ざらしのままになるのだろうか?

塩漬けだから常温保存でも傷みが少ないとか、運んでくる間も雨ざらしなので、
日本に着いてから倉庫に入れても仕方がないという言い訳もある。
しかし、決定的な理由は、野積み場は保管料が安いからである。
「もうけ」るために輸入した業者にとって、
保管料が安いことは最大の魅力だからだ。
野積み場は、一日、一平方メートル当たり一二円で、上方にはいくらでも積める。
上屋・倉庫に入れると、一平方メートル当たり三三円で、
保管料は少なくとも三倍弱のはね上がりとなってしまう。

倉庫業者にとっても彼等なりに野積みをする十分な理由がある。
それは、上屋や倉庫などに輸入食品を入れると、
他の貸物にニオイがつくから好ましくないという理由である。

輸入食品の告発報道史[P.11-14]

私たちの働きかけで、輸入食品問題を新聞・雑誌などでも取り上げるようになったが、
しかし、なんといっても日本中に衝撃を与え、世論を一気に高めたのはテレビだった。

昭和六〇年一〇月五日(土)、朝八時半からNHK「くらしの経済セミナー」は、
シリーズ第一弾として「食品輸入」問題を全国に放映し、
茶の間に輸入食品の実態を生のまま持ち込んだ。

<中略>

一〇月一二日(土)にも、第二弾が放映され、
一〇月一七日には教育テレビ「ファミリージャーナル」でも再放送された。

さらに、一〇月三一日、テレビ朝日「江森モーニングショー」でも、
「危険がいっぱい。野積みで放置!! 輸入食品は安全か?!!」を放映。

<中略>

このテレビが終了した直後に、横浜検疫所の職員から電話があり、
「テレビに映された真赤にサビついたドラムは、どこに置いてあるのか教えてほしい」という。
なんと、午後になってその場所に行ってみると、
輸入食品が野積み場所から消えていたのであった。
それ以前にも、新聞で報道されるたびに、報道された野積み場所から輸入食品が消えていた。
考えようによってはミナト見学もデモンストレーションとして威力を発揮していたと言えよう。
世論が野積み状態を許さなくなったことを察知した業者は、
輸入食品を野積み場所から倉庫へ移動させたのである。

輸入食品は腐敗していても出荷されている[P.16]

業者が真赤にサビたドラム缶を横一列に並べて、フタを取って調べている所をある日目撃した。
傷み具合によって食品を仕訳けしているのである。
近づいて中を見ると、ヘドロのように真黒に変色している山菜だった。
私たちが「これはひどい。もう食べられないじゃないの。これまだ使えるんですか?」
と業者に声をかける。
業者はこれを処分するとは言わない。ニヤニヤ笑っているだけだった。
ドラム缶には、変質・腐敗の程度によってアルファベットを記入していく。
こんなものが出荷され、食品メーカーで加工されているのかと思うと憤りより先に、
ただ、あぜんとしてしまうばかりだった。

輸入食品は国産品だと偽装表示されている[P.36-40]

  1. 偽装日本茶[P.36-37]
  2. 偽装蕎麦[P.38]
  3. 台湾産の梅干は、加工用メーカーで紀州名産梅干しの箱に詰められていた。[P.40]
  4. 神戸港では、コンテナに入って韓国産のタマネギが大量に輸入されてくるが、これは、いったん淡路島に送られ、淡路島のタマネギとして出荷される仕組みになっている。[P.40]
  5. 台湾産のカワハギが冷凍コンテナで輸入されたのを見ると、その輸入業者の所在地が静岡県熱海市田原本町となっていた。[P.40]
偽装日本茶[P.36-37]

台湾産や中国産のお茶が日本に上陸して、
日本茶として大手を振って出回っていることをご存じだろうか。
いま中国からは緑茶の茎(Green Tea Stalks)が大量に輸入されてくる。
日本ではこれを緑茶の中に混ぜて販売する。
最近の緑茶の中に、
その緑茶と全く違った感じの茎が混じっているのにお気付きじゃないだろうか。
お茶を飲もうとして、茶柱が立ったとよろこんでいたら、
それは中国産の茶柱だったということになる。
また、バングラディシュからは紅茶の茎が輸入され、番茶の中に混ぜて販売されている。

偽装蕎麦[P.38]

埠頭の一文字倉庫には、カナダ産、中国産、ブラジル産のソバが陸揚げされる。
この埠頭からは、「日光そば」と銘打った袋が、
栃木ナンバーのトラックに積まれて、次々と出ていく。
ここからは「日光そば」だけでなく「信州そば」も陸揚げされている。
長野ナンバーの大型トラックが、麻袋に入ったブラジル産のソバを大量に積んで出ていくのを見た。
そのトラックの横腹には、「信州そば一〇〇%の味」という宣伝文句が派手に書いてあった。

高級料亭や旅館の食材には輸入食品が使用されている[P.39]

新港埠頭の積み場には台湾産の白ウリの塩漬けが
ビニールに入った木箱に詰められてうず高く積まれているが、
これは東京ナンバーのトラックが積んで出ていく。
高級割烹や高級料亭でお新香として使われるのだ。

<中略>

一方、山下埠頭では「飛騨運送」と横腹に派手に書いてある岐阜ナンバーのトラックが、
台湾産のキノコを積んでいた。運転手に行先を聞けば、飛騨の高山へ持っていくという。
高山の旅館で山菜料理として出されることはいうまでもない。

コンテナ埠頭で有名な本牧埠頭のA突堤やC突堤には、他の埠頭と同じように、
中国や東南アジアからの農産物が多量に陸揚げされる。
山形ナンバーの大型トラックが、中国産のワラビ、ゼンマイ、
シメジなどが入った塩蔵もののドラム缶を積んでいた。
運転手に行先を聞くと、やはり山形県の上山温泉に持っていくとのことだった。

港では密輸が公然と行われている[P.43-45]

いまや、ミナトを中心とした輸出入貨物の輸送は、
コンテナが主流となってきており、コンテナ輸送体制が着々と確立されつつある。
輸出入用コンテナの場合、その貸物用途によって、多少形態は違うが、
主に、出入口が一ヵ所しかついていない。
しかも、外からは中が見えない。
これを利用して、密輸出入が半ば公然とおこなわれている。
いくつかの例をあげると――

輸出用のスクラップをコンテナに積み込むために、
海上コンテナ・ドライバーがメーカー倉庫にコンテナをつけると、
ドライバーに“小づかい”が出て、「どこか他の所へ行って休憩してきてくれ」
と言われてコンテナの場所から追いたてられるわけだ。
少し離れた所から見ていると、そのコンテナの奥のほうに、別の貸物を積み込んでいるのだ。
例えばタイヤを何本か積み込み、その後でスクラップを詰め込む。
そして、それは輸出用スクラップのコンテナとして搬出される。
ミナトに着いて税関検査があっても、全量を取り出して検査はされず、
入口を開けて見るだけの確認行為しかおこなわれていない。
したがって、このコンテナはスクラップとしてパスしてしまうわけだ。
タイヤとスクラップでは、すべての面での手続上大きな違いが生まれ、
タイヤの密輸入で儲けを手にすることができるのである。

だいたい大手メーカーの輸出用貸物の場合は、
一つには継続した輸出ということと信用度が高いということなどによって、
税関検査はほとんどされていないのが実情だ。
そのため、よく数をごまかすとか、
あるいは中身を違えるなどの行為がなされていない保証は全くないといわれているほどだ。
輸入の場合も同様である。
非自由化品目のアジ、イカ、牛肉などをコンテナの奥のほうに入れて、
入口のほうにはカワハギなどの自由化品目を置いて
本名の輸入食品を隠すという手口が使われている。

また、自転車などの場合、再生ができるように適当に解体したものを奥の方に積み、
入口に、こわしたものを詰めて「スクラップ」として輸出することもある。
現地で組立・修復すれば立派に使える。

コンテナは犯罪にも利用されやすい。
最近、コンテナの外側と内側のすき間に
ピストルや麻薬などを入れて日本に持ち込む犯罪も増えている。
まさにコンテナの盲点を巧みについた犯罪である。
こんな例があった。

昭和六〇年四月一〇日、コンテナを使った拳銃密輸事件が発覚したが、それはこんな具合だった。
マニラからボニタ・エース号が大井埠頭六号に接岸した。
すでに、マニラから暴力団極東組が
大量の拳銃をコンテナを利用して密輸するという情報が入っていたので、
該当するコンテナにマトをしぼり、
そのコンテナの扉を開けるとクジャク型の藤椅子がゆったりと入っていた。
コンテナを空にして改めて隠し場所を捜したところ、
両隅のコーナーに細工がしてあるのでタガネで切断したところ、
切れ口から実弾と拳銃二〇〇挺がバラバラと滝のように流れだしたという。

ジエチレングリコール入りオーストリア産ワイン事件[P.45-46]

西独から輸入され、
すでに一八〇本が国内に出回っていたオーストリア産白ワインの一銘柄に、
自動車の不凍液として使われ、
人体に有害なジエチレングリコールが入っていることが発覚したのは
昭和六〇年七月二四日。暑い日だった。

このジエチレングリコールは、腎臓や肝臓に障害を起こすもので、
この有毒ワインには、致死量の一〇分の一にあたる一リットル当たり五・三グラムが混入していた。
国内で発見された外国産有毒ワインは六六銘柄。
そのほか、有毒物混入国産ワインはマンズワインなど六銘柄、四〇万本もあった。

ご存じのように有毒ワイン事件は大きな社会問題になった。
有毒ワインが、輸入食品の安全監視に目を光らせている厚生省の検疫所を、
なぜ、らくらく通過できたのか。
そうした疑問から輸入食品の監視体制に対して、
国民の関心と、それの不備について批判が強まった。

輸入食品の検査の仕組みは、あとで詳しく触れるとして、
有毒ワインの輸入元であるマンズワイン社が東京検疫所に届け出した書類には、
ジエチレングリコールの品名は書かれていなかった。
したがって、当然のように書類審査ではパスとなり、
合格品として国内市場へ出されたのである。
ここで言えることは、書類審査だけで済ませずに、現物を検査し、
安全性を確認していれば、有毒ワイン事件は防げたはずだということだ。
しかし現実は、食品衛生監視員の人手不足のために、
輸入食品を全部検査していたら、港の業務はストップしてしまう。
これが現在の検査体制の実態なのである。

検疫所の人手は圧倒的に不足している[P.61-62]

全国一九ヵ所にある厚生省検疫所で働いている食品監視員は、
総数でたったの六七人しかいない(表⑦)。

<中略>

私たちの近くにある横浜検疫所の場合は、
受付の女性一人を含めて所員は総勢七人しかいない。
横浜検疫所の守備範囲は、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県(成田空港を除く)、
神奈川県の六県にまたがっているのに、この人数である。
そんな人数で実際にどうやって仕事をこなしているかというと、
例えば宮城県の塩釜港に揚がった輸入食品の検査は事実上不可能なので、
書類審査だけで済ませている。
しかも、その輸入食品の「輸入届書」は、
横浜検疫所へ輸入業者または代行者が直接持参するのではなく、郵送で提出される。

検疫行政は輸入業者と癒着している[P.66]

港湾労組のA分会長は「通関士」の免状を持っているところから、
輸入業者(荷主)の代行業務をおこなえる立場にある。
その分会長でもあるA通関士のところへ
チューインガムやアメの粘着防止剤などに使われる添加物マンニトールが輸入されてきた。
検疫所の指示は自主検査であった。
A通関士は、そのマンニトールを見て、
どう見てもカビが生えている可能性があると判断し、
カビの権威である「マイコトキシン検査協会」にその検査を依頼した。
結果は不合格であった。
ところが大手荷主は「待った」をかけてきて、「こちらで検査をやってみるから」と言う。
そして一週間後には別の検査機関の「合格」の書類を持ってきて、
それを検疫所に提出するように指示するのであった。
港湾業者は大手荷主には弱い。結果的には、指示されたように処理せざるを得なかった。

A分会長の証言によれば、どう見てもカビが生えていた可能性が強かったのに、
なぜ「合格」の結果を得たのか納得がいかないという。
きっとサンプルをすり換えたのに違いないと分会長は憤慨していた。
マンニトールは、よく輸入されており、すり換えようと思えばストックはいくらでもあるからだ。

輸入腐敗タマネギ横流し事件[P.72]

腐った輸入タマネギがソースとして製品化されていた、という事件も起こっている。
昭和六〇年三月、オランダから神戸港に輸入された大量のタマネギが腐っていたことが分かり、
神戸植物防疫所が廃棄処分を命じたにもかかわらず、
輸入会社と荷役会社はそれを無視し、関西の食品会社一二社にソースの原料として出荷させ、
約一五五トン分がソースとして製品化され市場に出回っていたという事件である。

このタマネギ事件は、不合格の場合の処理方法にも思わぬ弱点があることを示した一例であろう。
検査の結果不合格となった輸入食品は、厚生省の指示に従って、
①廃棄、②積み戻し、③加工選別、④食用以外に転用などの処置が講じられる。
このうちの①廃棄と②積み戻しは、はっきりとした処分ですっきりとした処理方法のはずだが、
タマネギ事件のようなことが起こってくる。
③加工選別と④食用以外に転用の場合は、
いずれも処理計画書か誓約書を検疫所に提出することになっているが、ここにも問題はある。

例えば「異物混入」の場合、輸入車はいつ、どこで、
どのような方法で処理するのかの処理計画書を提出する。
書類には一様に処理方法が詳しく書かれてあるが、
問題は、そこに記載されているような処理がおこなわれたのかどうか、
それを見届ける立会行為がないことだ。

燻蒸問題[P.76-77]

動・植物防疫法に基づいて害虫などの侵入を防ぐために、
水ぎわで輸入農産物の「くん蒸」処理がよくおこなわれる。
これは農林水産省の管轄で、この防疫業務に従事している人は全国で七〇〇人といわれている。
そして、この水ぎわでの「くん蒸」は、現在ではほとんどが倉庫でおこなわれている。
問題は、「くん蒸」処理をおこなえば、必ずその成分が残留するはずだという点にある。
ところが出荷に際して残留チェックがおこなわれていないのが現状だ。

<中略>

私たちは、オーストラリア産オレンジのEDB「くん蒸」の検査現場を目撃することができた。
EDB「くん蒸」がおこなわれている輸入コンテナは、
検疫所の指示に基づいて、他のコンテナと違う場所に移動する。
そして、その周りに鉄柱を立て、網を張りめぐらす。人を近づけないためである。
農水省指定の「くん蒸」会社の職員二人が、やおら防毒マスクをつけてコンテナを開ける。
その中へ五、六メートルぐらいの木の棒を差し込む。
その棒の中間部分の二ヵ所にはEDB濃度を探知する器具がつけてあり、
約五分後に再び防毒マスクをつけた職員がコンテナを開け、
棒を取り出し、探知器具を回収する。翌日でないと結果は分からない。

EDBは、アメリカ、メキシコなど地中海ミバエ、
メキシコミバエの発生している地域から来る果物・かんきつ類の「くん蒸」に使われているものだ。
このEDBには発ガン性物質が含まれ、そのうえ遺伝子を傷つけるという有毒なものであり、
アメリカでは使用禁止となっているシロモノだ。
ところが農水省は、いまだにこのEDBの使用を認めているのである。

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