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書籍と雑誌の要約と解説

食品汚染――食卓をおそう化学毒物

食卓をおそう化学毒物

装丁
食品汚染――食卓をおそう化学毒物 食品汚染――食卓をおそう化学毒物
渡辺雄二
技術と人間
ISBN4-764-50057-0
1987/07/10
¥1600
私たちが日頃口にする数々の食べものと飲みもの、
そのすべてに含まれる有害な化学毒物の数々……。
私たちはあまりにも容易にそれらを食卓に乗せてはいないだろうか。
食品添加物、農薬、水道水中に含まれる発ガン物質から、
合成洗剤にともなう複合汚染まで。
それらの化学毒物は、私たちの体を蝕むだけではない。
将来、人類全体にわたって確実にガンや遺伝障害をもたらしつつある。
目次
  1. 長寿村が短命村に
  2. 次々と指摘された食品添加物の危険性
  3. こんなに多くの食品荒廃の元凶、添加物が
  4. 身を守りきれないほどの添加物が
  5. カネミ油症が示したもの
  6. 広がるダイオキシン汚染
  7. 奇形ザルは何を訴えているのか
  8. 増えつづける農薬
  9. 偽りの自然食品、危険な健康食品
  10. 環境汚染の縮図としての水道水
  11. 合成洗剤と複合汚染
  12. 食の荒廃がもたらす将来
文献
  • 古守豊甫『長生きの研究』[P.9]
  • 古守豊甫&鷹觜テル『長寿村短命化の教訓』[P.15]
  • 西村一『疑惑の食品添加物』[P.29]
  • 高橋&里見宏『食品添加物の常識』[P.34]
  • 桜井芳人&川城巌『食品別添加物要覧』[P.64]
  • 日本消費者連盟『ほんものの酒を!』[P.74]
  • 谷村顕雄『食品添加物の実際知識』[P.79]
  • 日高徹『食品添加物の常識』[P.83]
  • 日本植物防疫協会『農薬要覧』[P.133]
  • ニホンザル奇形問題研究会『奇形ザル』[P.150]
  • 港湾労働組合・港湾関係物流実態調査研究会『恐るべき輸入食品』[P.165]
  • 藤原邦達『よくわかる農薬一問一答』[P.174]
  • ジェレミー・リフキン『エントロピーの法則』[P.181]
  • 三上美樹『図説洗剤のすべて』[P.212]
  • 合成洗剤研究会『みんなの洗剤読本』[P.215]
  • 今村光一『いまの生活では早死にする』[P.236]
校正
  • それより一カ月以上に、→それより一カ月以上前に、

内容

AF2が禁止になるまでの経緯[P.27-28_31-33]

チクロに続いて、発ガン性があることがわかったのはAF2である。
AF2の危険性に初めて気づいたのは、東京医科歯科大学の外村晶教授。
外村教授は食品添加物の毒性を研究している人で、消費者運動にも理解がある。

<中略>

外村教授は、AF2を人間の培養細胞に加えて、染色体がどうなるかを観察した。
すると驚いたことに、一部が切断された染色体がたくさん見つかったのだ。
これには外村教授はそうとう衝撃を受けたようだ。
なぜなら、このような染色体異常をひきおこす物質は発ガン性の疑いが強いからだ。
しかもAF2が染色体異常をひきおこす度合いは、
他の添加物とは比べものにならないほど強かったのだ。
その強さは、実験室で危険物とされている薬品と同じぐらいで、
それが食品に添加されているとは信じられないことだった。

外村教授は慎重を期して、もう一度同じ実験を行なった。
しかし結果は同じだった。
しかも、AF2の濃度を高くするにつれて、染色体異常が増えていった。
つまり、AF2の量と染色体異常が相関関係をもっているわけで、
これはそれをひきおこす原因が、AF2であることに間違いないことを示していた。

外村教授はすぐさま、国立遺伝学研究所の田島弥太郎博士に電話をして、
経過を話し、AF2の変異原性をさらに詳しく調べてくれるように依頼した。

*   *   *

外村教授から連絡をうけた国立遺伝学研究所の田村博士は、
すぐに研究者を組織して、AF2の変異原性を細菌やカイコなどを使って調べた。
その結果は、いずれもAF2が強烈な変異原性物質であることを示していた。

これらの研究結果は、
昭和四十八年に三島市で開かれた「日本環境変異原研究会」で報告され、
新聞やテレビで報道されると、日本中が大騒ぎになった。
それもそのはずだ。いままでまったく安全とされ、毎日のように食べていたものが、
ガンをひきおこすらしいと報じられたわけだから。
消費者団体や生協は、AF2の使用禁止運動をすぐさま開始し、
それは全国にうねりのように伝わっていった。

しかしこの段階では、厚生省はAF2の使用を禁止しなかった。
その理由は、
「変異原性試験の結果だけでは、AF2が発ガン物質であるかどうかわからない」
というものだった。
厚生省は国民の不安をよそに、AF2の使用を禁止するどころか、
「AF2は安全な殺菌剤」との趣旨のパンフレットをつくって、
全国の食品業者にバラまいた。まったくあきれた所業である。

一方、食品衛生調査会のなかには、ガンと遺伝の二つの臨時部会が設けられ、
外村教授も臨時委員として遺伝部会に入った。

当時も今でも同じだが、どんなに強い変異原性があっても、
動物に投与してガンをひきおこすことがわからなければ、
その物資は発ガン物質として認められない。

<中略>

「ところが、遺伝学というのはガンとちがって、
どうして突然変異がおこるかということは理論的にかなりよくわかっています。
DNAに傷をつければ、当然、突然変異をおこすわけですから、
何も実際にネズミにやってみせなくても危険性があるかないかはわかるわけです。
それで、われわれがそのことをいうんですけれどもネズミで実験しなければだめだ、
というわけです。」(外村教授)

臨時部会のメンバーは、ほとんどがガンの専門医だったので、
外村教授が遺伝学のことをいくら話しても、理解されなかった。
その間、国立衛生試験所は、AF2をネズミに投与し、発ガン性があるかどうかを調べていた。
「臨時部会の方が、いつまでたってもらちがあかないでいるうちに、
国立衛生試験所でAF2をハツカネズミにものすごい量を投与したんです。
それは、今でも不明なんですけれど、そこでガンができたということで、結局禁止されたんです。
それより一カ月以上に、突然変異の方の部会はなんとか説得して、
AF2は突然変異をおこす物質であると、部会として結論を出していたわけですが、
それは厚生省がおさえてしまった。
それで結局、発ガン物質であるということで八月二十日に臨時部会は終わったわけです。
それまでは、ガンはおこさない、ということでまとまっていたんですけれども、
それがいっぺんにひっくり返って、発ガン物質であるということになり、それですぐ禁止になった。
ですから、AF2というのは、突然変異をおこす物質だから禁止になったのではなくて、
ガンをおこすから危険だ、ということで禁止になったのです。」(外村教授)

いずれにせよ、AF2の使用は昭和五十年に禁止された。
日本環境変異学会で変異原性のあることが発表されてから、二年もたってからのことだった。

AF2が誕生することになった背景[P.28-30]

AF2は上野製薬が開発した、ニトロフラン系の化合物。
ニトロフラン系とは、フラン(図4)とニトロ基(―NO2)を持つもので、
AF2が使用される前には、ニトロフラゾーンやZフラン
(ニトロフリルアクリル酸アミド)という添加物が殺菌剤として、
アイスクリームやハム・ソーセージなどに使われていた。

しかしニトロフラゾーンは、慢性毒性があって、
さらに肝臓肥大や神経障害をおこすことがわかっていた。
またZフランも同じような毒性があった。
アメリカでは、ニトロフラン系の化学物質の多く(二五種中一七種)には、
発ガン性があるということで、食品添加物としての使用は適当でないとの判断を下していた。

にもかかわらず、日本がニトロフラン系の化学物質を添加物に使っていたのは、
日本独特の事情があった。
当時の昭和三十年代、日本はやっと戦争の傷跡もいえて、
朝鮮戦争による特需をきっかけに、これから再建を図り、
欧米に追いつき追いこそうという気運がおこり始めていた。
しかしそれにしても欧米人と日本人の体格の差はあまりにも歴然としていて、
欧米に追いつくには、まずこの体格の差を縮めなければならないと考える人も多かった。

この差の原因として、栄養学者は、
日本人は欧米人に比べ動物性タンパクが少ない点を強調した。
しかし当時は牛肉や豚肉は高価で、一般庶民が口にすることは難しかった。
そこで注目されたのが魚肉である。
四方を海に囲まれた日本は漁業資源は実に豊富だった。

日本では以前から、魚肉をかまぼこやちくわに加工して食していた。
しかしこれらは若い人にはあまり人気がなかった。
日本人の体格を向上させるには、
若い人にたくさん動物性タンパクを摂ってもらわなければならない。
そのためには、ハム・ソーセージといった若い人に人気のある形に、
魚肉を加工しなければならなかった。

<中略>

ここで注目されたのが殺菌剤であり、Zフランは昭和二十九年に許可されてから、
ハム・ソーセージ、さらにかまぼこなどに使われた。

しかしこれは殺菌力が弱く、先のような障害を生む可能性があったので、
薬品メーカーはもっと殺菌力が強く、しかも毒性の少ないものの開発に力を入れた。
その結果生みだされたのがAF2である。

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