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書籍と雑誌の要約と解説

医学常識はウソだらけ

分子生物学が明かす「生命の法則」

装丁
医学常識はウソだらけ 医学常識はウソだらけ 分子生物学が明かす「生命の法則」
三石巖(分子栄養学の創設者)
祥伝社(黄金文庫)
ISBN4-396-31489-7
2009/07/30
¥619
三石理論がもたらす、画期的な成果        渡部昇一わたなべしょういち

これまでの医学常識の迷妄めいもうを打破し、分子生物学に基づく真の医学的アプローチによる
「健康への道」をひらかれた三石先生の業績は、画期的である。
不勉強な医師たちのマニュアル治療を徹底的に論破してくださった。

三石理論を読むと、それが科学至上主義につらぬかれているとわかる。
なるほど、人体を一つの物理化学反応体系として、徹底的に考察せずして、真の栄養学は生れない。

私が今、鶏卵を安心して食べられるのも、塩分摂取せっしゅに過敏にならずに済むのも、
甘いお菓子を楽しめるのも、三石先生のおかげである。
ヒトフードとメガビタミン主義は、私の家族の食生活の基本をなしている。

本書は、三石理論の最も重要なところを、最も網羅的もうらてきに、かつ解りやすく説いている。
長寿で知的活動を目指す人々の「必見の書」としておすすめする。

目次
  1. 「医学常識」はウソだらけ
    ――だから薬は効かず、病気は治らない
    1. この「医学常識」は命取り
      1. 「食塩を摂りすぎると高血圧になる」のウソ
      2. リンゴの生産地で高血圧が少ない理由
      3. 高血圧には、まず良質のタンパクが不可欠
      4. 血圧降下剤は血栓を惹き起こす
      5. 高血圧は栄養改善で治すのが一番
      6. コレステロールは、本来“健康の味方”である
      7. コレステロールを善玉・悪玉に分けることの危険性
      8. コレステロール降下剤が胆石を作る
      9. 保健医療の点数制の問題点
      10. 適正体重の患者に減量を指示する愚かさ
      11. 遺伝の要素を忘れては、健康は守れない
      12. 小太りのほうが長生きする
      13. はたして血糖値を下げれば糖尿病は治るのか
      14. 糖尿病の合併症退治こそ真の治療
      15. 合併症は「スカベンジャー」で避けられる
      16. 「動脈硬化は治らない」という医学常識のウソ
      17. 動脈硬化は分子栄養学なら治療できる
      18. 脳血栓の再発は“純粋のアスピリン”で防ぐ
      19. 痛風にはビタミンAが有効
      20. 脂肪肝は酒をやめなくても治る
      21. 胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、まずピロリ菌を疑え
    2. 薬で病気は治らない
      1. 風邪に特効薬はない
      2. 風邪を予防する知恵
      3. 発熱に抗生物質、解熱剤を使ってはいけない
      4. インフルエンザには活性酸素対策を
      5. アレルギーや免疫の正しい知識がない医者が大半
      6. 三石式花粉症撃退法
      7. 動物性タンパクの不足が不眠症を招く
      8. 腰痛・肩凝りにはたっぷりのビタミン
    3. 難病も「分子栄養学」なら乗りきれる
      1. C型肝炎の特効薬・インターフェロンの怖い副作用
      2. グルタチオンの効果に注目
      3. O-157に感染する人・しない人
      4. 関節炎・骨粗鬆症には、カルシウムよりもまず、タンパク質
      5. リウマチの痛みはスカベンジャーで消える
      6. 貧血には鉄分よりタンパク質
      7. 更年期以降の女性のために
  2. 分子生物学こそ、本当の医学
    ――二十世紀最大の科学的成果がもたらした福音とは
    1. 分子生物学・三石理論の卓効
      1. 医者も見放したケロイドが高タンパクで治った
      2. 人体のフィードバック作用の驚異
      3. タンパク質の摂取は「量」より「質」が決定的
      4. 九種類の不可欠アミノ酸をどう摂るかがカギ
      5. タンパク源として卵と大豆、どちらが優秀か
      6. 古い材料のリサイクルより、新品の材料こそ重要
      7. 分子栄養学は「個体差」の栄養学
      8. なぜ、人間は病気になるのか
      9. なぜ、メガビタミン主義が「健康の元」なのか
    2. ガンの真因も「活性酸素」にあり
      1. 老化や病気の元凶は活性酸素
      2. 活性酸素は細胞の「電子ドロボー」である
      3. 活性酸素は「人生の伴走者」
      4. 細胞がガンになるメカニズム
      5. ガンの発病には、本来、二〇年もかかる
      6. 病気を発症する人・しない人
      7. はたしてガンは遺伝するのか
      8. ガン予防に不可欠なスカベンジャー
      9. なぜ、医者は不勉強なのか
      10. 末期の肝臓ガンがスカベンジャーで完治
      11. 三石理論の「三種の神器」
      12. 体を守る軍隊、ナチュラル・キラー細胞
      13. ストレスはガン細胞を二重にサポートする
    3. 「ガン常識」も間違いだらけ
      1. 発ガン物質を恐れすぎる必要はない
      2. 注意すべきは、やはり活性酸素の暗躍
      3. タバコと肺ガンとの間に因果関係はない
      4. 喫煙者がかかりにくいアルツハイマー
      5. ベータカロチン信仰の罠
      6. 食物繊維を大量に摂れば健康にいいというウソ
      7. ビタミンA不足が胃ガンなどの「上皮性ガン」を招く
      8. ビタミンAの過剰症は恐れるに足りない
  3. 「健康常識」もウソだらけ
    ――「木を見て森を見ない健康法」の蔓延こそ大問題
    1. あなたの健康常識は危険がいっぱい
      1. 「動物性脂肪は体に悪い」のウソ
      2. 常識の逆――肉を食べない人は脳卒中になりやすい
      3. 動物性脂肪より植物油のほうが問題
      4. 「体にいい」「体にやさしい」は、疑ったほうがよい
      5. 「栄養のバランスが大切」というウソ
      6. 「一日三〇品目を食べましょう」のウソ
      7. ビタミンの必要量も、かなりの個体差がある
      8. まず、自分の肉体の弱点を知ること
      9. マーガリンとショートニングは“健康の大敵”
      10. 「バターやラードは体に悪い」のウソ
      11. 「卵はコレテロールの元」というウソ
      12. 生卵には要注意
      13. タンパク質の補給は昼よりも夜
      14. 無農薬野菜には発ガン性の危険あり
      15. 有機野菜は寄生虫の温床
      16. 玄米食は貧血を促す
      17. 砂糖を摂れば頭の回転がよくなる
      18. なぜ、砂糖罪悪論が広まったのか
      19. はたして浄水器は健康の味方か
      20. アルカリイオン水ほど愚かな飲みものはない
      21. お酒を「百薬の長」にする上手な飲み方
    2. 「スポーツで体が若返る」のウソ
      1. 早朝のジョギングやゴルフが命を奪う
      2. 激しい運動も活性酸素を大量に発生させる
      3. 有酸素運動は息が荒くなったところでやめる
      4. ダンベル体操は時間の無駄
      5. 筋肉は、どうすれば強くなるのか
      6. ストレッチが有効な筋肉とは
  4. 医学で病気は予防できない
    ――分子栄養学による「健康自主管理」こそ急務
    1. 今の医学には病気を予防する力はない
    2. 人間ドッグが信用できない理由
    3. 「異常あり」が八二パーセント、日本は病人国家か
    4. 栄養学の導入なしに医学の近代化はない
    5. 病気予防の“三種の神器”
    6. 健康管理に関する調査結果の意外性
    7. 「笑い」は膠原病をも治癒できる
    8. 猫にはキャットフード、人間には「ヒトフード」
    9. エイズ発病を抑えるカギも分子生物学にある
    10. 「快眠・快食・快便」は、ブタの生き甲斐
文献
  • 三石巖『脳細胞は甦る』[P.181]
  • ノーマン・カズンズ『笑いと治癒力』[P.271]

内容

  1. 点滴の使い方すら知らない医者[P.28-30]
  2. 食塩の過剰摂取が原因で高血圧になる人はいる。ただし、それが原因になっているケースは、高血圧患者100人のうちたった一人か二人という割合なのである。[P.35]
  3. 同じ東北地方でもリンゴの産地では高血圧が少なかった。[P.38]
  4. 血圧のコントロールにはカルシウムとマグネシウムの摂取比も大切である。動脈の収縮にカルシウム、弛緩にマグネシウムが関わっているからである。[P.39]
  5. 遺伝的にかならず高血圧になるはずのネズミに、良質タンパク、カルシウム、マグネシウム、カリウムを大量に摂取させたところ、寿命を全うするまで高血圧にならなかったという実験結果もある。[P.40]
  6. 魚の脂肪に含まれているエイコサペンタエン酸も、効果があるようだ。血圧の微調整を行うプロスタグランディンという物質を体内で作る際に、エイコサペンタエン酸が原料になるからである。[P.40]
  7. アテロームはコレステロール自体が原因ではない[P.50-52]
  8. コレステロールはレシチンによって排泄される[P.52-54]
  9. コレステロール降下剤と癌[P.54]
  10. 私の場合は、鉛中毒による糖尿病である。品電公害と一九七三年に明るみに出た鉛汚染が原因でこの病気になった。[P.61]
  11. 高尿酸血症でも痛風発作が起きない秘訣[P.76-77]
  12. 抗アレルギー作用のあるサプリメント[P.95-96]
  13. フランスとドイツでは、医者が患者に出す薬の中で、イチョウの緑葉エキスを成分にしたものがトップだという。[P.96]
  14. 肝炎の特効薬グルタチオン[P.107-108]
  15. ステロイドは骨を消失させる[P.116]
  16. ステロイドを作る副腎皮質は、もともとほかの臓器よりもビタミンEやビタミンCを多く持っている。したがって、より多くのステロイドを自力で作らせるためには、EやCを十分に摂るべきだろう。[P.116-117]
  17. スカベンジャーを摂取するには、もちろん、ビタミンEを患部に直に塗るのも効果的だろう。ビタミンEは脂溶性なので、皮膚から体内に染み込んでいくのである。[P.117]
  18. 医者の処方する鉄剤では貧血が良くならない[P.119]
  19. 栄養療法でケロイドから回復した新宿バス放火事件の被害者[P125-127]
  20. ビタミンカスケード理論[P.143-146]
  21. 発ガン物質と呼ぶのがふさわしいもの、つまり、私たちが警戒しなければいけないものはたった二つ、免疫抑制剤と放射線だけである。[P.175]
  22. 喫煙者のほうがかかりにくいとされている病気もある。そのメカニズムは今のところ不明だが、アルツハイマー、パーキンソン病、それに潰瘍性大腸炎などの患者には、喫煙者が少ないというデータがある。[P.181-182]
  23. とくに私が絶対に口にしないのは、バターの代用品であるマーガリンと、ラードの代用品であるショートニングである。[P.211]
  24. マーガリンの毒性メカニズム[P.213-214]
  25. 無農薬批判[P.224]
  26. 砂糖有害説の起源[P.233]
  27. 結論から言えば、水道水をそのまま飲んでも健康には何ら差し支えない。[P.234]
  28. 栄養療法を導入すると病院の収入が激減する[P.264-265]

点滴の使い方すら知らない医者[P.28-30]

強度のつわりや内臓手術などで食事が摂れず、栄養剤の点滴を受けた患者が、
ウェルニッケ脳症になった例は日本では二〇例を越えるらしい。
なかには亡くなった方もいる。
妊娠中に発症したある女性は、発症後に長男を出産したが、
その記憶さえ失われ、子どもに愛情が持てないという。

あなたは、この忌まわしい出来事をどう捉えるだろうか。
なぜ、医者が点滴にビタミンを入れなかったのだろうか。

これこそ、「医原病」の最たるものである。
医者の無知が、人を重病にさせ、命を奪うことさえやっているのである。
無知な医者は、点滴の使い方すらわかっていない。
必要なときには、点滴の中にビタミンを入れると使用書にすら書いてあるのに、
その判断もつかないのである。

そしてその背後には、厚生省(編集部注・現厚生労働省。以下同)の犯罪もある。
一九九二年に、医療赤字を抑えるため、ビタミン投与は原則的に保険適用から外してしまった。
それによって、億単位の赤字が埋まるという話である。

たしかに、食事で栄養を摂取できない患者へのビタミン投与は、適用対象になっている。
しかし、勉強不足の医者は、患者にビタミンを使うなら自費だと告げる。
患者のほうは、まさかビタミンを点滴に入れないことによって、
自分が重病になるなど思いもよらないことだろう。

保険の適用外なら、使わなくていいと言う人も出てくる。
そして、悲劇が起こるのである。

アテロームはコレステロール自体が原因ではない[P.50-52]

アテロームは、脳梗塞の原因にもなる厄介物である。
その厄介者を調べたところ、中にコレステロールが溜まっていたために、
コレステロールが目の敵にされるようになった。
そこでコレステロールの値が高いと、医者はすぐに降下剤を飲ませるが、
これには胆石という副作用が待ち受けている。

これまでの説明でおわかりのとおり、実は問題はコレステロールそのものではない。
活性酸素によってリポタンパクが破壊されて、
コレステロールが本来の流通経路からこぼれてしまうことが問題なのである。

コレステロール自体は必要な物質なのだから、
それを減らすことを考えるより、リポタンパクが破壊されない方法か、
あるいは破壊されてゴミになってしまったコレステロールを体外に出す方法を考えるべきだろう。
「悪玉」と呼ばれるLDLも、正常に運ばれているかぎりは体にとって貴重な資源なのである。

リポタンパクを守るためには、活性酸素という悪党を退治してくれる物質を摂取すればいい。

コレステロールはレシチンによって排泄される[P.52-54]

体内の不要物は、大便か尿に混じって排泄されるのがふつうだ。
ところが水に溶けないコレステロールの場合は腎臓で処理できないため、
胆汁に混じって捨てられるのである。

ただし、それには条件がある。
レシチンという物質と一緒になったとき、コレステロールは胆汁として出ていってくれる。
このとき、ビタミンC、Eが加勢する。

コレステロール降下剤と癌[P.54]

コレステロール降下剤に胆石という副作用があることは医者もわかっているようだ。
ところが、その対策がさらにバカげている。
肝臓でコレステロールを作っている酵素の働きを阻害する薬を使うようになったのである。
とにかく、コレステロールを減らすことしか眼中にないのだろう。

高尿酸血症でも痛風発作が起きない秘訣[P.76-77]

近くに糖タンパクがあると、尿酸はそちらと結合する。
そのためナトリウムとは結晶化せず、痛風にならないのである。

ならば、痛風の予防策は尿酸値を下げることではない。
尿酸値はそのままでも、体内で十分に糖タンパクを作れるようにしてやればいいわけである。
そこで必要なのは、まず例によってタンパク質。
さらに、糖を作るためにはビタミンAが欠かせない。
この二つを食事から摂取することで、痛風は自力で克服できるのである。

抗アレルギー作用のあるサプリメント[P.95-96]

  1. ビタミンCは、マスト細胞の中でヒスタミンが作られるのを抑制し、細胞の外へ出てきたヒスタミンの働きも失わせる。[P.95]
  2. 近年の研究によれば、ビタミンH(ビオチン)にも抗アレルギー作用があるといわれている。[P.95]
  3. イチョウの葉にはテルペノイドという成分が含まれている。このテルペノイドが、抗アレルギー作用を持っている。[P.96]

肝炎の特効薬グルタチオン[P.107-108]

グルタチオンの効果が明らかになったのは、
ある養殖場でハマチやタイが大量死したのがきっかけだった。
死因を調べてみると、魚の肝臓が壊死している。
そこでグルタチオンを大量に与えたところ、
魚の肝機能検査値(GOTとGPT)が下がって、肝炎が減少したのである。
肝炎魚に投与されたグルタチオンは、体重一キロあたり一グラムの量だった。
現在、ハマチやタイのほか、ヒラメやフグ、
車エビなどの養殖にも大量のグルタチオンが使われている。

ところが厚生省は、このグルタチオンの使用を制限している。
体重六〇キロの人間に、わずか二〇〇~三〇〇ミリグラムしか使用を認めない。
これでは、肝炎の治療に必要な量にはとうてい満たない。
彼らは私の説く分子栄養学の観点がまるでないのである。
肝炎の専門医の中には、こうした制限に疑問を抱いている人が少なくない。

効果のない高額なインターフェロンは見切り発車させ、
有効なグルタチオンを規制するのだから、何ともちぐはぐな対応ではないか。
薬害エイズのように、ここでも、何かしら製薬会社の思惑が
作用しているのではないかと勘繰りたくもなるというものである。

ステロイドは骨を消失させる[P.116]

ステロイドを長く使い続けた人は、骨がもろくなることが多い。
外見的には、脂肪が顔だけにつくムーンフェイス
(満月のようなまんまるの顔)になり、手足はやせてしまう。
そういう人が亡くなって火葬されると、
ほんの一握り程度の骨しか残っていないそうである。

医者の処方する鉄剤では貧血が良くならない[P.119]

ヘモグロビンが出来上がるまでには、
ビタミンB6とB12、葉酸、ビタミンC、銅、ニコチン酸などが求められる
(主なビタミンの供給源は、115、121ページの表を参考にしてほしい)。

たしかに鉄分も必要な成分の一つだが、医者が出す鉄剤には、
タンパク質もビタミン類も銅も何も入っていない。
そんなもので貧血がよくなると思っているのだから、なんとも能天気な話である。

栄養療法でケロイドから回復した新宿バス放火事件の被害者[P.125-127]

一九八〇年に起きた「新宿バス放火事件」は多数の死傷者を出した悲惨な事件だった。
その被害者の一人に、杉原美津子さんという方がいる。
彼女は、この事件を題材にした作品でドキュメンタリー作家としてデビューしている。

彼女は、命からがら逃げ出したものの、
全身に大火傷を負い体中にケロイドができてしまった。
医者には「一生治らない」と宣告されたそうだ。

私が杉原さんのことを知ったのは、事件から一四年後のことだった。
ひょんなことから彼女のご主人と知り合い、彼の口からケロイドのことを聞いたのである。

顔に火傷を負わなかったのは不幸中の幸いといえたが、
それ以外はほぼ全身がケロイドに覆われたままだという。
しかし、ケロイドの隙間にはわずかながら正常な皮膚も残っているとのことだった。
ただし正常な皮膚からは、夏になると汗が出る。
それが痒くてたまらず、掻きむしってしまうために全身が血だらけになるというのである。
不幸な事件に巻き込まれた挙げ句に、一四年間もそんな苦痛を味わっているのだから、
まったく気の毒としか言いようがない。

その話を聞いた私は、「治らない」と言った医者とは正反対の意見を述べた。
ケロイドはできていても、おそらく皮膚の遺伝子そのものは壊れていないだろう。
だとしたら、必要な「材料」を与えてやれば正常な皮膚が作られるはずだ、と私は考えた。

もちろん、過去に私がケロイドの治療経験を持ったわけではない。
彼女のケロイド自体、手や腕のあたりを見せてもらっただけで、
全身の状態を見たわけではなかった。
つまり、私は経験や印象によってではなく、純粋に分子生物学の理論的な立場から、
彼女のケロイドが「一生治らない」などということはありえないと判断したわけである。

では、ケロイドの治療に必要な「材料」とは何か。
それは、良質なタンパク質とビタミンである。
先ほど、DNAとは人体の「設計図」だと書いた。
もう少し厳密に言うと、この「設計図」とは、
タンパク質の構造を暗号化したものだということになる。
したがって設計図が壊れてさえいなければ、与えられたタンパク質という「材料」が、
DNAの指示どおりの正常な皮膚に作り上げられるはずだ。
また、ビタミンが必要なのは、
それがタンパク質を作るうえで補助的ではあるが重要な役割を果たすからである。

もっとも、理論的に言えるのは「いずれ正常な皮膚が再生する」ことだけである。
なにしろ治療の経験がないために、回復までにどれだけ時間を要するのかもわからない。

私はそのことを彼女に告げ、自分が作った良質タンパクと
タンパク質の体内利用をスムーズに働かせるのに必要なビタミン群、
さらに皮膚がとくに要求するビタミンAといった「材料」を与えた。
それを気長に摂取しつづけて結果を待つしか、治療の方法はない。
すでに一四年間もケロイドに悩まされているせいか、
彼女も焦りを見せることはなく、素直に私の意見を受け入れてくれた。

朗報がもたらされたのは、私自身も驚くほど早かった。
タンパク質とビタミンの摂取を始めてからわずか二ヵ月後に、
少女時代から指にあったペンだこが消えてしまったという。
皮膚が再生しつつある証拠である。

やがてケロイドも治りはじめ、
半年たったころには少し残しただけでほとんど回復してしまった。
「一生治らない」と宣告した医者の顔を見てみたいものである。

ビタミンカスケード理論[P.143-146]

私は「ビタミン・カスケード」というモデルを考案した。
「カスケード」とは、もともと「段々滝」を意味する英語である。
それが転じて、化学の実験で液体が次々と流れ落ちるように
容器を階段状に並べるようにした方法も、カスケードと呼ばれるようになった。

ここでは容器の代わりに、たくさんの水車が上から下に向かって
階段状に並んでいる様子を想像してもらいたい(145ページの図参照)。
この水車がまわればタンパク質が合成される。
上から流れ落ちる水がビタミンである。

生体内で一〇万種類のタンパク質を作るために起こる化学反応は、
三〇〇〇種類以上あると言われている。
つまり、このカスケードには一〇〇〇のけたもの段数があることになる。
段々に並べられた水車は、人によって順番が違う。
たとえばインシュリンの水車が一段目にある人もいれば、いちばん下にある人もいる。
この順番の違いが「個体差」である。

流れ落ちる水の量が少ないと、上のほうにある水車は勢いよく回転するが、下のほうの水車は動かない。
ビタミンの摂取量が少ないと、下のほうにあるタンパク質をうまく作ることができないことになる。

しかも順番には個体差があるから、たとえば微量のビタミンでインシュリンを作れる人もいれば、
インシュリンのところまでビタミンが届かない人もいる。
前者は糖尿病になりにくく、後者はなりやすいわけである。

かつて私の妻は、とても風邪をひきやすい体質だった。
一方、私は六〇歳のときに白内障はくないしょうわずらっている。
何十年も同じような食事をし、同じようにビタミンを摂取しているのに、
私は滅多に風邪をひかないし、妻は白内障にならなかった。
つまり、私は風邪を予防する水車が上のほうにあり、
妻は白内障を予防する水車が上のほうにあったわけで、そう考えればつじつまが合う。

一〇〇〇桁もの段数がある水車のいちばん下の段まできちんと回転させるためには、
それに見合った大量の水を流さなければならない。
こう考えると、ビタミンの大量摂取が必要である理由がよくわかるだろう。
ミリグラム、マイクログラム単位の微量のビタミンで済ませていると、
下のほうにあるタンパク質が十分に作られず、いつまでも弱点として残ってしまうのである。

マーガリンの毒性メカニズム[P.213-214]

マーガリンの何が有害なのか。
それについて私は以前から、こんな仮説を持っていた。
分子の立体形が変わったために、体内でプロスタグランディンを作れなくなることが、
有害性を生む要因ではないかというものである。
そして最近になって、イギリスの学者の論文に、私の仮説とほぼ同じことが書かれていた。

<中略>

このプロスタグランディンの生成を、
マーガリンやショートニングといった硬化油が邪魔をするのではないかと私は考えていた。
もちろん、ヤマカンや当てずっぽうでそう考えたわけではない。
理論的に考えていけば、必然的にそうなるはずだと推論したのである。

その仮説が、イギリスの学者の研究によって実証されることとなった。

無農薬批判[P.224]

食生活に対する意識の高い人が、
うっかり手を出してしまう食品の典型が、有機野菜や無農薬米の類である。
そういう人の頭の中には、どうも「食べ物は自然のままの状態のほうが体によい」
という発想がこびりついているようである。
だから当たり前のように、農薬を使っていない食品を選んでしまう。

だが、私はそれが体によいとはけっして思っていない。
むしろ百害あって一利なし、しかも値段が高いくせに味がよくないという、
とんでもない食べ物だと思っている。
野菜など、便利なスーパーで売っているものを買ってくればよい。
わざわざ注文して取り寄せるという面倒なことまでして体に悪いものを食べるのは、
愚か者のやることであろう。

砂糖有害説の起源[P.233]

そもそも、砂糖が体に悪いという説が世界中に流布したのは、
政治問題がその引き金であったという説が有力である。
キューバ危機に際し、ケネディ大統領はキューバと全面対決する決心をした。
一方、キューバ経済は砂糖の輸出に大きく依存している。

そこで、砂糖を罪悪視している医学論文はないか、ケネディのスタッフは躍起となった。
そしてようやく、何ら科学的根拠のない粗雑な論文に彼らは出会ったのである。
この結果、悪化は良貨を駆逐するの例えどおり、
ケネディ・サイドのキャンペーンは見事に世界に広まっていったのである。

栄養療法を導入すると病院の収入が激減する[P.264-265]

私の友人に、本永英治もとながえいじ氏という医者がいる。
彼は沖縄の離島にある診療所に赴任した際、
私が提唱している分子生物学に基づいた栄養療法を採り入れた。
その結果、それまでよりも診療の効果が上がるようになり、
評判を聞きつけた患者がわざわざほかの島からも訪れるようになったという。

ただし、患者が増えても病院の収入は増えない。
栄養療法を採り入れれば、当然、薬の使用量が激減する。
そのため、その診療所でも売上げが彼の赴任前の一〇分の一にまで減ってしまったそうだ。
その結果、彼は監督官庁から大いに文句をつけられたとのことである。
しかし、診療効果が上がり、医療費負担が減ったのだから、
これほど世のため人のためになっていることはない。
められることはあっても、文句を言われる筋合いはないだろう。
そういう本末転倒な価値意識が、この国の医療行政にはこびりついているのである。

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