バベルの図書館

書籍と雑誌の要約と解説

11番目の戒律㊤

P&G社の企業犯罪を問う!

装丁
11番目の戒律㊤ 11番目の戒律㊤ – 汚されたアメリカンドリーム
アレシア・スウェージー/Alecia Swasy(ウォール・ストリート・ジャーナル勤務)
岸本完司/藤松忠夫
アリアドネ企画
ISBN4-384-02258-1
1995/09/19
¥1500
解説
本書のかなりのページは、ショック死をひき起こした女性のタンポン
「リライ」を筆頭するPL(製造物責任)にかかわる訴訟問題や、
フロリダ州の河水のダイオキシン汚染事件にみられる環境問題に対する対応の仕方など、
P&G社のやり方の“汚なさ”を告発することに費やされている。

年々P&G社が費やしている宣伝広告費は二一億ドルという途方もない金額であるだけに、
同社のマスコミ界に対する影響力には並々ならぬものがあるはずである。
PL訴訟や環境問題その他に関してP&Gがさまざまな汚い手を使っても、
これまであまりマスコミに取り上げられなかったのもよくわかる。

それだけに今回のスウェージー記者の告発は“快挙”といえるだろう。
普通ならば巨額の賠償訴訟でつぶしにかかるP&G社も、
そのような手段に訴えることができず、
苦笑いしながら本書の売れ行きを眺めていることからしても、
この本がいかに周到な取材と資料に基づいて書かれているかがわかるだろう。

目次
  1. プロクトイドたち
  2. 闇のプリンス――「優良企業」P&Gの素顔
  3. ブランドという思想――P&Gの過去・現在
  4. ソープ・オペラの神話――宣伝戦略に潜むもの
  5. タンポン・ショック<前編>――事故とその対策をめぐって

内容

P&Gタンポン死亡事件[P.187-203]

リライ・タンポンを使いはじめて四日後、パット・ケームは二十五歳の若さで亡くなった。5
毒素性ショック症候群である。
彼女がシーダー・メモリアル墓地に埋葬されたおよそ二週間後、
P&Gはリライを市場から回収した。
パットの死因になった疾患との関連が疑われていたのである。6

回収というおおがかりな対策をとったことで、P&Gは賞賛された。7
アメリカ産業史上最大のリコールのひとつであり、
製造中止・回収にP&Gは七五〇〇万ドルを要した。8
「我が社の関連部門の人間が、
人命を守るという使命感につき動かされて行動したことを私自身誇りに思います」
と当時のP&G会長エドワード・ハーネスは従業員向けの文書で語っている。9

しかしP&Gに誇る資格はない。
この事件とそれに続く法廷審理をくわしく見れば、
P&Gのまったく違った素顔が浮かび上がる。
消費者の安全に不十分、いや無関心な横暴な企業の姿である。
P&Gはなにをおいても勝利を求める。
そしてそのためにはいかなる手段も厭わないとリライ事件は物語っている。

リライによる事故の全貌はいまだ明らかではない。
P&Gは法廷外の内々の和解で被害者や遺族のほとんどを黙らせたからである。
この賠償金・弁護費用にP&G、保険会社合わせて八五〇〇万ドルの費用がかかった。10
また毒素性ショックの科学的調査結果は、
P&Gから交付された数百万ドルによって秘匿されている。
公に発言する者は、助成金と引き換えに研究結果に口をつぐんだ。11
一九八〇年代後半までに、リライを原因にした
一一〇〇件以上の訴訟・賠償請求がP&Gを相手に起こされている。12
「P&Gはラッキーでした。
当時真実が明らかにされていたら、すっからかんにされていたでしょう」
毒素性ショックを研究しているニューヨーク大学のフィリップ・ティアーノ博士はいう。
「しかも、そうなって当然だった。彼らは宿題をやらなかったのですから」。
博士はリライを「毒素の温床」と形容している。13

<中略>

デンバーのジェームズ・トッド博士が初めて確認したこの症候群の特徴は、
高熱、日焼け状の発疹、嘔吐、血圧低下などである。
その後しばらくして手足の皮膚が剥離する。
呼吸が困難になり、肺に水がたまり、窒息または心停止にいたる。
毒素性ショック症候群(TSS: toxic shock syndrome)という名称は、
この疾患にともなう重篤で長期にわたるショックからつけられた。

科学者はこの症状を引き起こすのは黄色ブドウ球菌
(ブドウの房のようなかたちをした菌)であるとつきとめた。
一五%の女性の膣内に普通に見られるバクテリアである。
男性でも、また生理中でない女性でも、
膿腫感染でこの菌が産生する毒素から中毒を起こすことがある。
生理中の毒素性ショックでは、
このバクテリアがタンポンを絶好の棲家として急速に繁殖し、
きわめて有害な毒素を生成する。32

高吸収性合成物――カルボキシメチルセルロース(CMC)とポリエステル――
のためにリライはとりわけ危険だった。
その上CMCには分解性があり、バクテリアの成長を促進する。
CMCはアイスクリームの添加物に使っても安全だが、
バクテリアにどう反応するかをP&Gは検査していなかった。
「リライがある種の毒素産生の引金になったのです。
そして産生した毒素が血液に吸収される」
ティアーノ医師はそう説明する。33

<中略>

P&Gに口を封じられた学者のひとりにマーリン・バーグドールがいる。
ウィスコンシン大学の食品微生物学、毒物学教授である。
彼はタンポンその他の材料に黄色ブドウ球菌の菌株を植え、
養分の入った溶液で一晩培養した。
その結果、タンポンで増殖した菌から、
毒素性ショックの引き金と疑われている細菌性毒素が大量に発生するのをつきとめた。
リライのフォームもそうだが、
タンポンの吸収力を高めるためにタンポンに使われる化学物質は、
こうした細菌性毒素の生成に重大な影響を与えていたのである。

P&Gはバーグドール教授の研究結果を予備的なものと主張して、法廷に出そうとしなかった。
この実験結果が「ウォール・ストリート・ジャーナル」に報じられると、
興味深いことに、彼はその翌日、ニューヨーク・タイムズ紙上でこれに論駁した。
後にわかったのだが、彼はP&Gから数十万ドルの補助金を受け取っていた。63
権威ある「アメリカ医学会ジャーナル」は後に教授とP&Gのデータ隠しを批判している。

やはり研究者であるパトリック・M・シュリーヴァートは
リライ・タンポンは毒素性ショックと無関係と証言した。
リライを黄色ブドウ球菌の中でテストしたが、
「毒素性生成の有意な増大はなかった」というのである。
彼もやはりP&Gから補助金をもらっていた。64

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です