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書籍と雑誌の要約と解説

あぶない水道水

「蛇口の神話」を問う

装丁
あぶない水道水 あぶない水道水
有田一彦(大阪府水道部勤務)
三一書房(三一新書1151)
ISBN4-380-96017-X
1996/09/15
¥777
目次
  1. 水道のパラダイム
    1. 『蛇口の神話』って何?
    2. 水道のパラダイムとは?
    3. パラダイムの定義
    4. ドン詰まりの水道パラダイム
    5. 水道のパラダイムシフト
  2. 水源が危ない
    1. 受託の幻想
    2. 水源保護は水道の基本
    3. 危機的な水源状況
    4. 琵琶湖の富栄養化
    5. 水源の非保護
    6. 水源法は名前だけ
    7. 水源保護区域と農業規制 – 外国の水源保護
    8. ハルトホフの思い出
  3. 水質基準、ここが問題
    1. 『蛇口の神話』を補強する水質基準
    2. 水質基準とは
    3. 続々登場する危険性
    4. 未解明な生物汚染
    5. 農薬の基準は?
    6. 放射能基準は要らないの?
    7. 水質基準の根拠
    8. 危険な鉛
    9. 不可解なヒ素基準
    10. ご都合主義のpH基準
    11. 水質試験の頻度
    12. 隠される水質データ
    13. 基準違反に責任なし?
    14. 水質基準は飲み水基準か
  4. トリハロメタン狂騒曲
    1. 水道水に発ガン性物質
    2. トリハロメタンと消毒副生成物
    3. 原因は何?
    4. トリハロメタン登場!
    5. USEPA基準とその反発
    6. 日本でもトリハロメタン基準
    7. WHO八四年基準と米国の再実験
    8. WHO九三年基準と日本の新基準
    9. WHOの発ガン性基準
    10. WHOの基準緩和
    11. 塩素注入の目的と効用
    12. 高めの塩素注入
    13. 前塩素は見直し可能
    14. 塩素副生成物のリスク
    15. 確率的な危険と現実的危険認識
    16. 水道の責任
  5. 高度処理の光と影
    1. 高度処理とは?
    2. オゾン・活性炭処理の効果
    3. 東京都のオゾン・活性炭処理
    4. そこそこの除去?
    5. 生物の漏れ出し
    6. おいしい水はレトリック?
    7. 水質の安全ガード
    8. 日本の高度処理は対症療法
  6. 給水白書
    1. 浄水場から蛇口まで
    2. 赤水
    3. アスベスト管
    4. ライニング材のはく離
    5. 鉛汚染は深刻
    6. 給水管にも問題あり
    7. 汚い受水槽
    8. 平塚でクリプトスポリジウム
    9. 配管トラブルにも要注意
    10. 水道当局は蛇口の水に責任なし?
    11. マンションの水に薬剤注入
    12. 給水管問題の再確認
  7. オー!ミネラル
    1. 売り上げ伸ばすミネラルウォーター
    2. 売れる理由
    3. マスコミの支援?
    4. ミネラルなくてもOK
    5. 水質基準の欠如
    6. カビ入りウォーター
    7. 飲み残し分の細菌汚染
    8. ビン詰め水・パック水の条件
  8. 浄水器、その傾向と対策
    1. どんどん売れる浄水器
    2. 妥協の浄水器規格
    3. 水をきれいにする仕組み
    4. 細菌と中空糸膜
    5. 市販浄水器の能力は?
    6. 生かすも殺すも個人の責任?
    7. 浄水器の価値再考
    8. 望ましい浄水器の条件
    9. パラダイムシフトか水道の補完か?
  9. 浄水器もどきにご用心
    1. 浄水器もどき
    2. ミネラル水とは?(セコム事件顛末記)
    3. アルカリイオン水
    4. パイウォーターって何?
  10. 地獄がくれば
    1. 考える葦の謙虚さ
    2. 悪夢の阪神・淡路大震災
    3. 神戸市の責任
    4. 水道にも大打撃
    5. 「地震に強い」の諸さ
    6. 水がないと火が消せない
    7. 消火用水の今後
    8. 水道管給水に頼らない水の確保
    9. ノースリッジ地震はリハーサル?
    10. チューリッヒの非常時対策
    11. 地震は天災、震災は人災
  11. 渇水の処方箋
    1. 窮水
    2. 虚構の渇水
    3. ダム操作のミスに数字のマジック
    4. 高松市の悲劇
    5. 水の浪費
    6. 節水機器プラス節水意識
    7. 自己水源の確保
    8. 雨水活用を探る
    9. 地下水源の確保
    10. 身近な水源の復権をめざして
  12. 明日の水を求めて – パラダイムの転換
    1. 新しいパラダイム
    2. 水情報のコミュニケーション
    3. パラダイムシフトの主体
    4. なま水を飲むな
    5. 蛇口の水質を測る
    6. 『蛇口の神話』からの脱却
文献
  • トーマス・クーン『科学革命の構造』
  • ジョエル・バーカー『パラダイムの魔力』
  • 日本水道協会『日本水道史』
  • 堀越正雄『井戸と水道の話』
  • 鈴木紀雄『飲み水を考える』
  • 小林康彦『水道の水源水質の保全』
  • 琵琶湖環境権訴訟弁護団『飲める水と呑めない話』
  • 鯖田豊之『水道の文化』
  • J.T.Lisle,J.B.Rose ‘Cryptosporidium contamination of water in the USA and UK: a mini-review’ AQUA vol.44. No.3
  • G.A.McFeters『飲料水の微生物学』
  • 植村振作『残留農薬データブック』
  • WHO “Guidelines for drinking-water quality” vol.1
  • 和田功『産業化学物質、環境化学物質』
  • 厚生省『水道便覧』
  • 萩原浩一『水質衛生学』
  • 厚生省『水道法逐条解説』
  • 山本庸幸『注釈製造物責任法』
  • 厚生省『喫煙と健康』
  • 岡本浩一『リスク心理学入門』
  • 鯖田豊之『ラインの文化史』
  • 日本水道協会『水道のあらまし』
  • 日本水道協会『日本の水道生物』
  • 小島貞男『おいしい水の探求』
  • 廣瀬俊之『食品Gメンが書いた食品添加物の本』
  • 日本水道協会『水道維持管理指針』
  • 斎藤充功『水が無い』
  • 福岡県自治体問題研究所『水の博物誌』
  • 嶋津暉之『水問題原論』
  • 地下水を守る会『やさしい地下水の話』

解説

水道公害を論じる上で最も重要な入門書。
塩素などの有害物質はもとよりその背景にある水源や法律の問題、
さらには水道水に関連した悪徳商法にまで踏み込んでいる。
『あぶない水道水』は水道文献を読み進めて行く上での土台となるだろう。

内容

  1. 水源を保護する気の無い日本の水道事業[P.23-24]
  2. 水源についての権限が無い水道当局[P.28]
  3. 形だけの水源法[P.33]
  4. 水道水の病原性原虫汚染[P.46-47]
  5. 日本の水質基準には放射能も入っていない。[P.48]
  6. 乳幼児の血中鉛濃度と水道水中の鉛には一定の因果関係があるとみなされている(文献五)。[P.50]
  7. 汚染状況に合わせて設定された水道水の鉛基準[P.51-52]
  8. 情報公開されない水質試験[P.56-57]
  9. 水道当局は罰せられない[P.57-59]
  10. 上限が設定されていない日本の残留塩素基準[P.83]
  11. 日本におけるトリハロメタンの平均濃度は、三カ所を除いて0.080mg/l以下である。[P.85]
  12. 水道管の内部からは錆やアスベストだけでなく、いろんなものがポロポロ剥がれ出しているのである。[P.114]
  13. 厚生省はその場所を公開していないので場所を特定できないが、大都市圏のような比較的水道施設が古い地域などでは、確実に鉛汚染が進行していると考えていただいて間違いない。[P.115]
  14. セコム安全水ホームユニット事件[P.169-177]
  15. 悪徳商法パイウォーター[P.181-182]

水源を保護する気の無い日本の水道事業[P.23-24]

水処理の基本は水源環境の保護・保全であるにもかかわらず、
日本における水源環境の保護は無きに等しい。
むしろ逆に、浄水処理を過信するあまり、水源環境の破壊や汚染の進行に無頓着になり、
破壊や汚染させても全然気にしないかのような感じすらある。
たとえば、

  • 水源ダムのド真ん中で、リゾート事業と称した開発事業を展開
  • 浄水場の取水口のすぐ上流に、下水処理場や屎尿処理場の排水口を設置
  • 水源上流に産業廃棄物処理場やゴルフ場を許可・運用
  • 水源地域の大規模埋め立てや開発事業の推進などなど

水源についての権限が無い水道当局[P.28]

水源環境の破壊や汚染状況に対して水道当局がもの申すということは期待できない。
というのも、水源である河川・湖沼それにダムの法律上の管理責任者は水道当局ではなく、
国・建設省や水資源開発公団などである場合がほとんどだからだ。
土建利権の元締めである建設担当部局では、水量確保をお題目にした建設事業が目的なので、
水源保全が達成されることはまずない。

形だけの水源法[P.33]

九四年に成立した水源法の対象になったのは、
生活排水対策事業とトリハロメタンに関する規制だけである。
審議会の報告の中で検討された水源の区域指定どころか、
農薬対策もないという、さんざんな無いようだった。
残りは既存の法体系の運用で対処せよというのであろうが、
それでは従来とどこも変わらず、水源保護保全をめざす法律という看板に偽りありである。

水道水の病原性原虫汚染[P.46-47]

英国や米国では既にクリプトスポリジウムによる水系感染被害が発生しており、
とくに、九三年米国ミルウォーキーでは
四〇万以上の感染者(推定)を出すという驚くべき被害となっている(文献一)。
日本でも一九九四年神奈川県平塚市で発生が確認されている。
元来クリプトスポリジウムという原虫はどこにでもいる生物で、動物の糞便から環境中に出てくる。
塩素耐性のムシで、感染すると下痢、腹痛を引き起こしたりするため、やっかいである。
また、免疫不全状態の患者にとっては深刻な影響があるため、慎重な注意が必要となる。

懸案の生物問題はクリプトスポリジウムだけではない。
水系感染症の原因となる寄生原中ジアーディア(giardia)
による事件も多数報告されているし(文献二)、
ウイルスによる水系感染についての研究も端緒についたばかりである。
微生物の研究者はずっと以前から原虫問題を指摘していたが、
真剣に考えようという機運が生まれたのは、ミルウォーキー事件等がきっかけである。
日本でも九四年に平塚市、九六年六月に埼玉県入間郡で
大規模なクリプトスポリジウム感染が発生したため、
対岸の火事ではすまされず、やっと重い腰をあげつつある。

また、水源の富栄養化に伴い、
毒性プランクトンの発生も考えなければならない状況だが、これまたノーチェックである。

汚染状況に合わせて設定された水道水の鉛基準[P.51-52]

実のところ、奇妙な日本の鉛基準の根拠は、はじめに〇・〇五mg/lありきなのだ。
全国の水道水の鉛データ(一九九二年度)を見ると、
〇・〇五mg/lのボーダーラインに五五カ所、
それ以上が4カ所となっているが(文献六)、
〇・〇一mg/lでは二〇〇カ所を超える水道事業体で鉛基準違反となる。
つまり、現在得られている知見に基づいてWHOや米国並みの基準設定を行うと、
かなりの場所で水質基準違反になってしまう。
厚生省は当初WHO並の〇・〇一mg/l以下を基準にすることも考えていたが、
水道事業体の猛反対で妥協したという話も漏れ伝わってくる。

情報公開されない水質試験[P.56-57]

あなたが自分の地域の水道水の水質試験の結果を知りたいと考えたとしよう。
市町村の水道当局に尋ねたら、ちゃんと教えてもらえるだろうか。
堅いことを言わずに水道当局を信用してほしいと茶を濁されるか、
あからさまに面倒がられて答えてもらえないか、そんなところが関の山かもしれない。
例外的に試験報告書を図書館に置いて一般公開している事業体もあるが、非公開の方が圧倒的に多い。
水質試験についての「情報公開」は他の行政情報同様、極めて後ろ向きであるといってもよい。

厚生省水道整備部監修の水道統計というデータブックがある。
その統計書は毎年二分冊となっており、一冊が事業関連統計、もう一冊は水質試験結果一覧である。
その水質試験結果の方には日本全体の水質一覧のまとめと各事業体の原水データが載っている。
しかし、浄水、つまり浄水処理をした後のデータには、
全国分布表があるだけで各水道事業体のデータがない。
個々の水道事業体がいったいどんな水を消費者に送っているのかわからないのである。

水道当局は罰せられない[P.57-59]

仮に水道当局が水質基準に違反した水を配ったとする。
一般社会の常識では、
法律や規則を守らない者には罰則でのぞむというのが当たり前だが、水道法は例外である。
水道法には「供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知った時には、
直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に
周知させる措置を講じなければならない」(第二三条)とある。
しかし、ここでいう「人の健康を害するおそれ」とは、
「水質基準に適合しない場合ではなく、その水を使用すれば直ちに生命に危険を生じ、
又は身体の正常な機能に影響を与えるおそれがある場合」
のことだと厚生省は説明している(文献八)。
つまり、水質基準違反に対する罰則規定は、水道法には存在しない。

≪中略≫

過去の判例をみると、水質基準違反の水道水の給水によって
住民に被害を与えたにもかかわらず、一切のおとがめなしという事件があった。
西宮市や宝塚市(兵庫県)の水道原水中の高濃度フッ素が原因で、
水道水に基準を越えるフッ素が含まれ住民に斑状歯を引き起こしてしまった事件である。
斑状歯とは、歯のエナメル質表面にフッ素で侵された斑模様ができ、
それが食べ物カスなどといっしょになって褐色になるというものである。
被害者はそれぞれの水道局に損害賠償を求めて裁判を起こしたが、
大阪高裁では水質基準の違反を承知しながらも水道局の過失責任は一切認められなかった
(それぞれの高裁判決は一九八九/一九九一:文献九)。

細かい話は省くが、フッ素の水質基準に違反している水でも、
それを給水しないと公共の利益に反するため仕方がない等というのが裁判所の言い分である。
宝塚市民の訴えを控訴棄却した大阪高裁の言い分はさらに驚くべきもので、
被害者はフッ素入り水道水で斑状歯ができることを知っており、
蛇口に除去装置をつければよいことも知っていたのだから、
対策を取らなかった水道局の非を問うことはできないという趣旨であった。
もうめちゃくちゃである。

上限が設定されていない日本の残留塩素基準[P.83]

水道法では、末端給水栓において残留塩素を〇・一mg/l以上としている。
〇・一mg/l以上というのは、〇・五でもいいし一・〇でもいいし二・〇以上でもいいことになる。
さすがの厚生省も九二年の水質基準の改訂時に、一・〇mg/l程度以下(快適水質項目)と通知しているが、
この上限通知は基準ではない。

飲料水の残留塩素基準
残留塩素の基準
EU 安全に支障がないこと
ドイツ 0.3mg/lをこえないこと(1969)
少なくとも0.1mg/l(1986)*どちらも有効
オランダ 国の基準には記載なし
0.2mg/lをこえないこと(オランダ水道協会基準
スイス 0.1mg/lをこえないこと
ベルギー 0.25mg/lをこえないこと
日本 0.1mg/l以上(水道法第16条衛生上必要な措置)
1.0mg/l程度以下(快適水質項目として通知)

セコム安全水ホームユニット事件[P.169-177]

セコムが「安全水」ホームユニット(図9の1)を発売したのは、一九九三年一〇月一日。
その前後から新聞やテレビにおいて、
作家のC・W・ニコルや俳優の渡辺文雄を起用した大々的な広告・宣伝を展開した。
店頭販売なしで直接セコムに申し込むという販売形態も特徴的であった。
そのうたい文句は、「わが家でつくる、ミネラル水」、
「自家製ミネラル水を飲む時が、やってきた」、
「雑菌の繁殖を抑える抜群の制菌力。常温で六カ月の長期保存できるとても安全な水」、
「水道水から三時間で、五リットルのミネラル水」などなどである。

≪中略≫

「六カ月、ふたをしない状態でも味や安全性を損なうことはない」
というセコムの宣伝は、どう考えてもおかしい。
ふたをしない状態では、空気中の細菌が水にも入ってくる。
それでも腐らない水があったら、それは魔法の水である。
ところが、これにお墨付きをつける学者がいるのだから、困ったものであった。

≪中略≫

九三年の秋このコマーシャルがマスコミに流れ始めた頃、
関西の消費者団体である安全食品連絡会(以下、安食連)の山中純枝さんから、
「セコムの安全水ってどう考えたらいいんでしょうか」という電話が筆者にあった。
ちょうどその年、安食連ではアルカリイオン整水器や類似製品の情報収集をしていた最中で、
セコムの水もおかしいなぁと、会員の中で問題になってきたという話だった。
「セコムの商品はインチキくさいですね」と答えると、
山中さんは「じゃ安食連で調べてみましょう」ということになる。
さすがというか何というか、筋金入りの消費者団体は決断も速いし行動力もあるものだと感心したが、
その時はまさか、後日新聞沙汰にまで発展するとは考えてもいなかった。

安食連がまず確かめたのは、
常温でも六カ月間保存可能という宣伝文句が正しいかどうかという点である。
安食連のメンバーは、水の採水方法・採水ビンの消毒など、
水質分析の基礎から勉強しはじめ、分析試験期間の選択・運搬方法まで、
何度も何度も筆者に電話で確認しながら話を煮詰めていく。
そして、セコムが試供用に配っていたボトル入り「安全水」を入手し、
九三年末からその水を実際に安食連会員宅の食器棚などに放置し、
九四年二月末に兵庫県保険環境衛生センターに試験を依頼した。

結果は、一般細菌数で水一ミリリットル中に六六〇個。
予想どおりとはいえ、飲み水の基準が一〇〇個以下であることを考えると、
制菌効果どころか、水道水よりも水質が悪いことが明らかになったわけである。
念のために、開封前のセコム試供水も調べてみると、
今度は一万個以上という、とんでもない結果まで出てきた。
安食連は三月一六日すぐさまこれらのデータを添えてセコムに質問要望書を送り、
同時に関係官庁にも指導要請を依頼した。
この件は地元の神戸新聞と朝日新聞大阪版に載ったため、
安食連には問い合わせの電話が殺到したという。

≪中略≫

四月六日、セコムと安食連との対話集会が神戸市青少年会館で開催された。
セコム側は、担当子会社の中村社長やセコム本社の安田広報室長以下八名、
安食連は一〇名前後、それに筆者とマスコミ数社も同席した。
セコム側は「安全水ユニット」の商品説明を行い、
安食連が分析したのは、販売している「安全水ユニット」で作ったものではなく、
別の業務用機器から採った水であり、セコム側の分析では一万個もの細菌は出ていないと弁解した。

≪中略≫

セコムは、自社製品には制菌効果があるとか、六カ月も保存できるとか、あれこれ宣伝してきた。
しかし、これらが全く根拠のないことであったことも安食連との対話集会で明白となった。
制菌力の根拠になった試験は(財)日本食品分析センターのデータだが、
当のセンターは試験期間の名前を出すことを断ったという。
一般細菌の分析データを勝手に枯草菌とか大腸菌のデータだと読み替えた勝手な解釈なので、
表に出すようなものではないと判断したのであろう。
セコムが唯一の根拠にしていたのが、そんな話だったというのも信じられない話だ。

この説明会ではもうひとつの事実が安食連側から紹介された。
セコムの「安全水ユニット」を実際に使用している家庭の水を分析したデータである。
その試験結果によると、その家庭の水道水にはほとんど細菌が出ないのに、
セコムの装置を通すと一ミリリットル当たり三九〇〇個もの細菌が出てくるというものであった。
説明会当日その当人であるTさんも出席し、セコムを信じたのに騙されたと怒りをぶちまけた。
試供品のデータについては言い逃れしようとしていたセコムも、
自社製品の実態を明らかにする水質データを目の前につきつけられ、
逃げ場がなくなり当惑したような感じでもあった。

≪中略≫

セコムの制菌力にお墨つきを与えた綿貫邦彦・東大名誉教授は、
安食連やマスコミの問い合わせに対してセコムのデータを信じて推測しただけだと言い、
セコムのデータがインチキだとしたら自分も被害者だ、などと開き直った。
世間では、こういう人のことを御用学者という。

≪中略≫

さて、セコムは販売中止を説明した九四年四月六日以降も、
販売用フリーダイヤルで注文を受け付けていた。
また、セコムグループ調査室津崎・鶴谷両名が、
細菌汚染について健康に影響がないと説明した文書が一部の消費者に提出されている。
セコムの安田広報室長にいたっては、その後のマスコミ取材に対して
「新製品製造中のため品切れ状態。だから注文に応じられないので広告も中止している」
等と言い、自らも出席していた説明会でのセコム見解を反故(ほご)にしている。
いったいセコムの舌は何枚あるのだろうか。
そのセコム、九六年八月から「安全」の文句をはずした
「セコム水ホームユニット」の販売を開始した。
いくつかの改善点はあるようだが、
一般消費者に対して旧製品の細菌汚染を曖昧にしたままの販売再開である。

悪徳商法パイウォーター[P.181-182]

パイウォーターを作る装置として売られている据置型の浄水器は、単なるろ過装置にしか過ぎない。
これはヤシ殻活性炭をろ過材に使い、コーラルサンド、
セラミックやカルシウムそして磁性鉄等も加えているという。
要するに活性炭ろ過とその他のものがごてごてとついているだけである。
(内部のろ過材構成は、セコムの商品と似ている)

国センが行った試験(『たしかな目』一九九三年五月号)によると、
浄水性能が低く細菌汚染も程度がひどいことが明らかになっている。
また、この浄水器には植物の成長促進や鮮度保持効果あるいは殺菌効果があるという触れ込みだが、
水道水と大差なく特別な効果はないことも確認されている。

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