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書籍と雑誌の要約と解説

子どもの薬

薬の使い方がわかる本

装丁
子どもの薬 子どもの薬
待田洋
三一書房(三一新書995)
ISBN:4380880001
1988/02/15
¥850
目次
  1. 子どもの薬
    1. 子どもの薬の使い方
      1. 小児医学は「治療学の孤島」
      2. 八〇%は安全根拠が示されていない
      3. 子どもの薬の使い方には多くの落し穴がある
      4. 子どもの薬の使用量の決め方
      5. 新生児には独特の用法を
      6. 子どもの薬を使うときの心得
    2. “かぜ”についてよく知ろう
      1. ウイルスに効く薬はありません
      2. かぜという診断で山ほど薬がだされる
      3. かぜから肺炎になる率
      4. ウイルスが原因の病気
      5. 気道感染症の場合
    3. 抗生物質の使い方
      1. 主な抗生物質の処方目的
      2. 抗生物質の主流・セファロスポリンの問題点
      3. 抗生物質をいつまでものんでいると
      4. 抗生物質併用投与の危険性
      5. 予防的に抗生物質を使うと
      6. 未知の新たな副作用が続出
      7. 抗生物質の乱用が作る耐性菌
      8. 抗生物質と菌のおいかけっこ
      9. 病気の原因は年々変わる
      10. 抗生物質の体内動態からみた選択
      11. 抗生物質を選ぶときの心得
      12. 日本の医師達のマチマチ医療
      13. 薬価のからくり
    4. 抗炎症剤(解熱鎮痛剤)の使い方
      1. 市民運動が支えるアメリカ
      2. 徹底したイギリスの対策
      3. さらに厳格規制の西欧
      4. まだまだ手温い日本の措置
      5. 発熱は生体の防御作用
      6. 主な解熱鎮痛抗炎症剤の処方目的
      7. 使用実績の長いアスピリン
      8. ライ症候群とは
      9. 小児用解熱剤の主流アセトアミノフェン
      10. 小児には使用禁のインドメタシン
      11. 水薬にまぎれこむメフェナム酸
      12. アメリカでは姿を消したスルピリン
      13. 抗炎症剤としての副腎皮質ホルモン(ステロイド)剤
      14. 副腎皮質ホルモン剤を使うときの注意
    5. その他のかぜ様疾患と薬の使い方
      1. 使いたくない制吐剤(吐き気止め)
      2. 主な制吐剤の処方目的
      3. 咳は止めなくてはならないか
      4. 主な鎮咳・去痰剤の処方目的
      5. 年長児に多くなる頭痛
      6. 主な精神安定剤の処方目的
      7. 自律神経過敏からくる腹痛
      8. 下痢症――薬で止めると危険
      9. 主な止痢剤の処方目的
      10. 熱性けいれん――慎重な診断を
      11. てんかん移行への危険因子は
      12. 抗けいれん剤使用の注意点
      13. 主な抗けいれん剤の処方目的
    6. アレルギーの実像
      1. 皮膚アレルギーを起こす化学物質
      2. アレルギーの成因と環境
      3. アレルギー発生のメカニズムと抗ヒスタミン剤
      4. 炎症の主人公かロイコトリエン
      5. 主な抗ヒスタミン剤の処方目的
      6. 気管支喘息と治療薬
      7. 併用投与は有効か
      8. 喘息時の副腎皮質ホルモン剤
      9. 喘息治療の注意点
    7. 予防接種
      1. 予防接種で予防できる病気は
      2. インフルエンザ予防接種はなぜかぜの予防に効かないか
      3. インフルエンザ予防接種が有効のデータをどうみる
      4. ワクチンでどうして被害が起こるのか
  2.  
    1. 主な治療薬の用量・副作用一覧表
      1. 主な剤の用量と副作用
      2. 主な剤の用量と副作用
      3. 主な剤の用量と副作用
      4. 主な剤の用量と副作用
      5. 主な剤の用量と副作用
      6. 主な剤の用量と副作用
      7. 主な剤の用量と副作用
      8. 主な剤の用量と副作用
      9. 主な抗ヒスタミン剤の用量と副作用
    2. 剤形別商品名一覧
    3. 商品名五十音別一覧

内容

  • 関西医療問題連絡会議に寄せられた小児科被害例[P.3-5]
  • 昔から小児科医学は「治療学の孤島」といわれてきましたが、そんないい方が、今なおまかり通っているのです。[P.18]
  • 小児医薬の80%は安全性を保証されていない[P.18]
  • 多くの医薬品は成人向けに調整されており、子どもが使用する場合の考慮がされていません。[P.19]
  • 頻繁に起きる投与量ミス[P.20-21]
  • ある種の薬(例えば抗生物質)では幼児に対して毒性が強く現れるといわれます。[P.22]
  • 幼若なほど肝機能や腎機能が未熟なため薬の代謝が進む時間が遅くそのため蓄積による副作用が現れやすくなります。[P.22]
  • 今日ではさまざまな効き目の強い薬がたくさん開発されていますが、子どもに対してどの様な薬をどの様に使ったら良いのかという研究はほとんど行われていません。[P.24]
  • 子どもに薬を投与する場合、そのほとんどの場合が薬を投与した結果引き起こされる不利益の方が多いということを、知っておきましょう。[P.25]
  • 多剤を投与したときに起こる相乗作用や相互作用については、まだほとんど何の研究もされていません。[P.25]
  • 風邪で受診するとほぼ確実に合成薬物を処方される[P.29-30]
  • 細菌性髄膜炎の治療では抗生物質を何種類か併用するより単一の薬で治療するほうが治療率が高いのです。[P.46-48]
  • 抗生物質の予防的処方は逆効果[P.48]
  • 抗生物質の有効率[P.51-52]
  • リウマチの治療にイギリスではほとんど考えられないステロイドを、日本では第一選択として用いています。[P.58]
  • 欧米では、子どもの解熱鎮痛剤としてインダシンやポンタールは使用が許可されていません。[P.76]
  • インドメタシンは子どもでの使用量がまだ確立されていません。[P.90]
  • メフェナム酸[P.91-92]
  • スルピリン[P.93]
  • ドンペリドン[P.98-99]
  • 外国の医学書には下痢の時に止痢剤(下痢止め薬)を投与するとはどこにも書かれていません。[P.113]
  • 子どものそばで平気でたばこをふかしたりする人をときどき見かけますが、気づかないままに子どもの生活環境を汚染してしまっていないかどうか点検して下さい。[P.132]
  • 予防接種のうち、効果と害作用を比較して受けた方がよいと思われるものとしては、専門家の意見もまちまちですが、百日咳(ただし高学年児では不要)、ジフテリア、破傷風(これらは三種混合がよく用いられていますが、単独でも受けられます)、結核(BCG)、麻疹などです。[P.143-144]

関西医療問題連絡会議に寄せられた小児科被害例[P.3-5]

最近、当方に寄せられた相談の中で次のような例があります。

一歳余の子どもで、かぜ様の吐き気があったため町の開業医につれて行き、
そこで出された制吐剤を使ったところ数時間後に死亡してしまったというのです。

この薬をよく調べてみると、
わずかニ~三年の間に使い方がどんどん縮小されているのです。
発売当初は「上気道感染症」(かぜ)に使ってもよいとされていたのが、
昨年の能書にはその項がはずされていて、
単なるかぜの時の嘔吐には使ってはいけない薬となっています
(つまりそれだけ事故が起こっていたのです)。

それにもかかわらず、医者のその時の処方は
一歳余の子どもに処方されるべき量の三倍を使用する指示がされていました。
事故を起こした町医者は、
この細かく指示変更された処方の限定を知らなかったのではないかと思われます。

もう一つ当方に相談のあった例を挙げますと、
検診で訪院した子どもを医療ミスで重症の脳障害にしてしまった。
ところがこれに対して医師の行ったことは、カルテを書き替え、
アスピリンが関係しているとだけわかっていて原因の未確立な
「ライ症候群」という病名をつけて、自分のミスを隠そうとしたのです。
今、「ライ症候群」という病名をつけられた人の中には
こんなケースが少なからず含まれています。

つまり、ほんらい患者と医師との情報交換の中で行われるべき医療が、
患者を無視した密室の中で行われているため、
事故が起こっても医者の思うままにもみ消されてしまっています。

今、医療に関する情報は氾濫していますが
肝腎の情報が肝腎のところに到達していない、
到達しない仕組になってしまっています。

薬情報を見張っているはずの厚生省がいくら良いこと(?)を決めても、
末端に行くと徹底されなかったり、
都合の良いように全くすり替えられたりするというようなことが、
日常茶飯に起こっています。

小児医薬の80%は安全性を保証されていない[P.18]

薬の使用法に関してもわが国で唯一の薬の使用法を集めた
「日本医薬品集」はもちろん、外国の成書、
例えばアメリカの Physicians Desk Reference(PDR――机上医薬品便覧)でも、
そこに収載されている医薬品の八〇%について、
新生児や乳児に対する安全な投与法を保証する根拠が示されていません。
それは動物実験のデータが子どもには全く当てはめることができないこと、
また薬物動態の研究には患者から何度も採血する必要があり、
倫理問題との関連で、なかなか容易にデータが得られない、
といったことがからんでいるからだといわれています。

それに加えて、わが国の場合は、
薬を投与しなければ医者が儲からない医療制度になっているため、
薬の使用法が外国にくらべて、よりルーズになっているからと考えられます。

頻繁に起きる投与量ミス[P.20-21]

パールスタインという人の報告によると、
九五人の看護婦の計算した投与量の八・三%が一ケタ誤っていました。
また、入院中六種類の薬をもらっていた新生児では、
三〇%の人が一度は一〇倍計算間違いした処方を受けとっていたといことです。

風邪で受診するとほぼ確実に合成薬物を処方される[P.29-30]

表3 受診者における投薬、注射や点滴、検査の施行状況
投薬 注射・点滴 尿検査 血液検査 レントゲン検査
母親
793人
受けた
受けなかった
736 92.8%
55 6.9
271 34.2%
504 63.6
221 27.9%
551 69.4
150 18.9%
624 78.7
130 16.4%
648 81.7
母親
423人
受けた
受けなかった
420 99.3
3 0.7
113 26.7
301 71.2
43 10.2
368 87.0
18 4.3
398 94.1
12 2.8
403 95.3
子ども
1021人
受けた
受けなかった
1016 99.5
4 0.4
40 3.9
926 90.7
71 7.0
926 90.7
29 2.8
974 95.4
21 2.1
979 95.9
表4 かぜ症候群に対する化学療法のアンケート調査
標榜科名 回答率 化学療法を行なう 化学療法は行なわない
積極的 適宜
内科 93/151
(61.5)
4 84 5
内科、小児科 18/103
(17.4)
0 18 0
小児科 14/19
(73.6)
5 9 0
内科、外科 9/78
(11.5)
0 9 0
135/351
(38.4)
9 117 5

表3をご覧ください。
これは、八五年一二月、京都在住の二〇〇〇人の主婦を対象にして行った調査です。
最近の一ヵ月以内に医者へ行った母親の七九三人中七三六人(九二・八%)が、
薬をもらって帰っています。
これをかぜだけでみると、
さらに九九・三%とそのほとんどがかぜに何らかの薬が処方されています。
子どもは二〇〇〇人の内一〇一六人(九九・五%)です。
この数字は確かに、わたしたちが病院に行ったときの実感です。

また表4はかぜの時に医師が薬を出すかどうかを尋ねたものですが、
これをみても、小児科医は薬治療に積極的であることが分かります。
かぜという診断で、抗生物質をふくんで多くの薬を出す理由として、
医師たちの上げる理由は、二次的な細菌感染を抑えるためといいます。

抗生物質の予防的処方は逆効果[P.48]

アメリカの調査ですが、
はしかの患者一三〇人に抗生物質を予防的に投与したところ、
約三〇%が重感染に罹りました。
ところが、抗生物質を投与しなかった二九八人のうち重感染に罹ったのは約一五%と、
むしろ少なかったのです。
また、延髄性灰白髄炎の患者一六五人では、
抗生物質の予防投与を受けないで重感染にかかった者は一六%であったのに、
予防的な処置を受けた六三人の患者では、五三人が重症となっています
(米国医師会雑誌一九七三年)。

抗生物質の有効率[P.51-52]

表7 薬剤感受性陽性率(入院患者由来菌)
グラム陽性球菌 グラム陰性桿菌
セファロスポリン
(CEPs)
57.5% 54.3%
ペニシリン
(PCs)
66.4% 37.0%
アミノグリコシド
(AGs)
58.3% 74.1%

田中恒明ら、医薬ジャーナル、23(’87)

表8 抗緑膿抗生物質の対緑膿菌感受性陽性率
(人数)
スルペニシリン
(SBPC)
33.3% (36)
ピペラシリン
(PIPC)
71.4% (42)
セフスロジン
(CFS)
77.8% (36)
ゲンタマイシン
(GM)
55.3% (38)
アミカマイシン
(AMK)
87.5% (8)
ミノサイクリン
(MINO)
0% (11)
セフオペラゾン
(CPZ)
87.5% (7)

田中恒明ら、医薬ジャーナル、23(’87)

表7は横浜市のある病院の入院患者から分離された菌に対して
抗生物質が有効であった比率をみたものです。
この表からわかるように、投与した薬が必ずしも全部有効に働いているとは限らず、
約四割から五割しか効いていないのです。
また、表8は厚生省が緑膿菌に対する適応を認めた
抗生物質の緑膿菌に対する有効率をみたものですが、
ミノサイクリンとスルベニシリンの有効率は、
それぞれ〇%、三三・三%とかなり低い値を示しています。

メフェナム酸[P.91-92]

白色の甘い液体で子どもにも飲みやすく、
小児科領域あるいは耳鼻科を訪れる乳幼児に解熱、
鎮痛を目的に頻繁に用いられています。
ところがこの薬剤はアメリカでは
「一七歳以下の子供に対する安全性は確立されていない」として、
子どもへの使用は認められていないのです。
また、月経困難症をはじめとして、
解熱・鎮痛、抗炎症を目的に大人に用いる場合さえ、
「価値の確立された他の鎮痛剤に比べて、特に優れた点はなく、
重篤な毒性をもつので、メフェナム酸の使用はすすめられない」
「使用するときは、七日間以上服用してはならない」として、
使用を限定しています。

スルピリン[P.93]

いわゆる「ピリン中毒」(ショック症状や発疹等)や
無顆粒球症をはじめとする重篤な骨髄障害も同様におこします。
この毒性のため、これらピラゾロン誘導体はアメリカでは、
今や臨床の場でほとんど用いられません。
アメリカ医師会編「薬の評価」によれば、

 ○スルピリンは、致死的な無顆粒球症や他の血液疾患
(血小板減少性紫斑病、再生不良性貧血)をひきおこす可能性があるため、
一般的な鎮痛薬、関節炎治療薬あるいは日常的に用いる解熱剤としては、
用いられない。
 ○ホジキン病のような難病疾患で、他の方法がなく、
非経口的な解熱剤の投与が必要な時のみ、限定的に用いられる。

とされています。

ドンペリドン[P.98-99]

よく処方される制吐剤にメトクロプラミド及びドンペリドンがあります。
これらはどちらもかぜのときの吐き気を止めるためによく出されます。
副作用として、どちらも錐体外路症状が起こります。
錐体外路症状とは、舌や顔あるいは上肢の筋肉が引きつる筋緊張、
筋運動の異常が起こり、そのため斜頚や開口、眼球転位といった症状が起こるのです。
そのことだけで死ぬようなことはないのですが、
これが体の衰弱や脱水症状と並行して起こったときは大変危険です。
薬の有効量と副作用の発現する量との幅が大変狭いため、
少し過剰投与になると副作用となって現れます。
これらの副作用は投与を中止しても持続することがあります。

ですから、子どもにはとくに過剰投与、連続投与を禁じています。
アメリカの薬局方では「小児への使用はなるべく避けること」となっています。
ドンペリドンは市販されてから副作用発生の報告が相次いだため、
何度も能書が変更されています。

中略

ドンペリドンは一九八二年に協和発酵KKからナウゼリンという名前で発売されましたが、
発売後一年も経たない間に、この薬によると思われるショック症状及び死亡例が、
企業からのものだけでも一一例にものぼりました。

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