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書籍と雑誌の要約と解説

続ほんものの酒を!

来たれ!美酒・名酒の時代

装丁
続ほんものの酒を! 続ほんものの酒を!
日本消費者連盟
三一書房(三一新書)
ISBN4-380-84004-2
1984/10/31
¥850
目次
  1. 感動篇 – 読んだ!判った「ほんものの酒」
    1. 「わたしの言い分」再録
    2. 全国からの反響
    3. 読んだ!わかった
    4. サントリーの“報復爆撃”
    5. スポンサーは神様デス
    6. 「東京漂流」異聞
  2. 日本酒篇 – 美酒を我らに……!
    1. 活性炭
    2. 米ヌカ清酒の公表を!
    3. 合成乳酸
    4. 有害添加物
    5. SAKE in USA
    6. 杜氏こそ人間国宝
    7. 名酒の殿堂
    8. 利き酒指南
    9. ニセ“生”酒横行
    10. 砂糖入り「焼酎」の怪
    11. ドブロク禁止は、憲法違反
    12. 酒米物語「亀の尾」
    13. 万歳!!ドブロク
  3. 洋酒篇 – これでいいのか?ウイスキー・ビール
    1. 香りの芸術
    2. 原酒の“結婚”「マリッジ」
    3. ウイスキーの利き酒
    4. アメリカン?
    5. “ニセ生”の夜明け
    6. 「生樽」はソン
    7. PETボトル
    8. ほんものの生ビールを!
    9. マドリッド協定
    10. 偽せシャンパン
    11. 地ウイスキー・ランキング
  4. 熱論篇 – <ほんものの酒を!シンポジウム>①
    1. いまだ戦後は終わらず<基調報告> 酒類評論家・穂積忠彦
    2. 酒文化の後進国ニッポン 陸橋大学教授(英文学)・船戸英夫
    3. 年ごとに美味になりゆく日本の清酒 作家・稲垣眞美
    4. 美酒・名酒は、ほんものの表示から 酒類評論家・小川銑
  5. 改革篇 – <ほんものの酒を!シンポジウム>②
    1. 幻惑CM商法のサントリーを斬る ジャーナリスト・平澤正夫
    2. 我ら消費者は、ほんものを求める 日本消費者連盟代表委員・竹内直一
    3. 疑問だらけの酒税法 静岡大学助教授(酒税法)・三木義一
    4. 酒売り、酒買う人の酒知らず 酒店経営「酒大学通信」発行者・長沢和弘
文献
  • 伊藤四郎『恐るべきサントリーの魔術商法』[P.20]
  • ジェフリー・キーリング『くたばれ、日本人』[P.42]
  • 情報センター出版局『東京漂流』[P.43]
  • 沢野広之『サントリー残酷物語』[P.297_303]
  • 谷村顕雄『食品添加物公定書解説書』[P.68]
  • 日本消費者連盟『ほんものの酒を!』[P.68_82_99_125_146_155_163_170]
  • 谷村顕雄『食品添加物の実際知識』[P.72]
  • 前田俊彦『ドブロクをつくろう』[P.118_119_121]
  • 穂積忠彦『美酒・名酒を語る』[P.128]
  • 平澤正夫『間違いだらけのウイスキー選び』[P.132]
  • 穂積忠彦『痛快!地ウイスキー宣言』[P.133_134_167]
  • 小泉武夫『酒の話』[P.143]
  • 坂口謹一郎『世界の酒』[P.158]
  • 山本祥一朗『日本産ウイスキー読本』[P.177_285]
  • 国税庁『やさしい酒税』[P.286]
  • 柴田忠『改正酒税法と解説』[P.291]
  • 佐藤恒男『設問式による新酒税法、物品税法の解説』[P.302]

内容

  1. NHKは嫌がらせを恐れて合成酒を告発しない[P.37]
  2. 合成酒を告発する酒蔵は国税庁に潰される[P.50-51]
  3. ヨーロッパで禁止されている合成乳酸[P.68-70]
  4. 砂糖添加焼酎[P.99-102]
  5. 幻の秘酒「どなん」に工業用アルコール表示を強要した国税庁[P.125-127]
  6. 酒雑誌の八百長[P.219-220]
  7. 木村功のオールド批判[P.263]

NHKは嫌がらせを恐れて合成酒を告発しない[P.37]

NHKの教養部の若手記者は『ほんものの酒を!』を一読感嘆。
「これを『ルポルタージュ日本』でとり上げます」と勇躍いさんで帰って行った。
そして約一ヵ月後、見るかげもなく肩を落としてやって来たこの記者氏は
「ダメでした……」とポツリ。訊けば、「こんな本当のことを放送して……
あの化粧品のときの騒ぎを忘れたか!」と部長に怒鳴られたというのである。

化粧品のときとは、同番組が化粧品による被害「肌への衝撃」を放映した後の騒動。
なんと半年余りも化粧品小売業界の受信料不払いなどの厭がらせが続いたという。

合成酒を告発する酒蔵は国税庁に潰される[P.50-51]

東菱対策こそは、国税行政の最大眼目と国税当局にいわしめるほどであった。

ある高級税務官僚は、公の席で、次のように公言して憚らなかった。
「オレの眼の黒いうちに必ず東菱を叩き潰すッ!」

そして、一九八三年五月一一日、未明――、
仙台国税当局からバス、乗用車合わせて八台の車が連なって出発した。
各車両に乗るは仙台国税局徴収官ら四五名。
向かうは福島県棚倉町の(株)東菱の本社である。
まさに“暁の襲撃”――。
東菱本社前に乗りつけるや一陣を指揮するS統括は、その場で「酒造作業の一斉停止」を命じた。
おりから同社工場では発酵を終えた原酒の火入れ、ろ過移動作業の真最中であった。
ついでSはタンク内等の原酒約二二〇万本分、製品(清酒)八万二〇〇〇本、
さらに原料米、製造機械、売り掛け金、
現金預金など総計二〇億円相当の財産を次々に差し押えにかかったのである。

発酵中の原酒を差し押えればみるみる変質して腐敗することは火を見るより明らかである。
とりわけ、庫出しのために調合済みとなっていたタンク二基分の清酒(約一〇万本分)は
すぐに火入れして瓶詰めしないと三日で確実に腐敗してしまう……。

なのにS統括はためらう部下の徴税官たちに対して「腐ってもかまわんから押えろ!」と叱咤した。

この無茶苦茶な強行にたまりかね「それでは私どもに死ねということですか」
と古市社主が詰問するとSは口角泡を飛ばして言い放った。
「そういうことだ……あなたのウルトラCで生き直ってみたらどうですか……
一人殺せば殺人だが、百人殺せばなんとやらというではないですかッ!」

もはやここに正常な法感覚というものはカケラもない。
あるのはドロドロした役人の憎悪感情のみである。

この空前の東菱襲撃によって、
国税当局は古市夫人のオーバーまで差し押えていったというから尋常ではない。
露骨な東菱潰しの意図が見え見えである。

ヨーロッパで禁止されている合成乳酸[P.68-70]

清酒は発酵の過程で、そのもろみの中の乳酸菌が乳酸を生成しています。
この乳酸が発酵中に雑菌が入るのを防ぐとともに深い風味の元ともなるのです。

ところが、ほとんどの清酒業者は、これを化学合成の乳酸で代替しています。

清酒(というより合成清酒)業者は、酒母やもろみのPHを下げたり、
雑菌の繁殖を抑えたり、風味をごまかすために
合成乳酸を速醸酒の仕込み水一八Lに対して一〇〇~二〇〇㏄ぐらいを加える。
また防腐剤としてもコハク酸と混合して清酒の〇・〇三~〇・〇四%ほどの量を添加する。

このように合成乳酸を秘かに添加するのは日本の清酒業界では常識なのである。
しかしながら、添加した合成乳酸と発酵で自然に清酒の中にできる乳酸とでは、
その風味にハッキリちがいがあるという。

ところが、この合成乳酸、
その毒性はモルモットのLD50(半数致死量・実験動物の半数が
一定時間以内に死亡する体重一㎏当たりの量)は一・八一g/㎏。

合成乳酸の使用方法を解説している「食品添加物公定書解説書」(前出)ですら
「乳酸は腐食性毒物である」と明快に言いきっているから驚く。
すなわち「ミルクに混ぜて飲ませた未熟児の中毒死における
所見によれば急性出血性ならびに壊疽性胃炎、
小腸結腸炎および腎炎が観察されている」という。

また「実験動物のラットに一日一・五g/体重一㎏の乳酸を三ヵ月連続して与えたところ
体重が著しく減少、さらにヘモグロビンと赤血球が減った」という有害性の報告もある。
民間の動物実験でも急性出血等の毒性が確認。
この合成乳酸は清酒以外にも乳酸飲料、お菓子、ドロップ、ゼリー、
アイスクリームなどの保存料として使われている。

この食品添加物としての合成乳酸の毒性についてFAO(国連食糧・農業機構)は
一九七九年九月一一日「幼児への安全性を保障するには証拠不十分」として
各国に使用禁止措置を呼びかけました。
これに呼応してヨーロッパ各国は即座に合成乳酸の新生児用食品への添加を禁止。
ところが、業界よりの日本政府はこのFAOの勧告(警告)を完全に無視したのです。

そもそも合成乳酸とは猛毒物質青酸(シアン化水素)等を原料として合成するために、
シアン化水素等が微量混在してくるのである。

砂糖添加焼酎[P.99-102]

焼酎への白砂糖添加が許されたのは一九六八年のこと。
アルコール度数二六度以下のものにかぎって認められたこの特例も、
焼酎がだぶついて売れなかった当時、
なんとか売上げを伸ばそうと考えられた苦肉の策であった。
「二%ギリギリまで入れてます。それも、コーヒーなどに入れる白砂糖を、です。
清酒ですら白砂糖の添加は禁止されています。
そこで清酒にはブドウ糖等が、平均四~四・五%『糖類添加』されているわけです。
白砂糖はブドウより甘味が強烈ですから、
実質、清酒と同じだけ糖分が入ってるのと同じなのです」

≪中略≫

それにしても砂糖入り焼酎など聞いただけで気持ちの悪くなる話だが
「ところが、砂糖を入れたほうが爆発的に売れてるんですヨ……
口当り、つまり砂糖にだまされてるんだナ」
これではコツコツと本格焼酎を造り四~五年と熟成させてきた真面目な乙類メーカーはたまるまい。

九州のある本格焼酎の主は語る。
「出荷高ベストテンのランクから見ても、
この三、四年の間に急激にのし上がったメーカーにかぎって白砂糖入り焼酎です」
また大分の麦焼酎は、「ほぼ一〇〇%白砂糖入り」というから、情けない。
また最近、下町の玉三郎ならぬナポレオンとして人気を呼んでいる
「いいちこ」(“いい子”の意)などは、地方で売られているのは白砂糖入りという。
都内で売られている「いいちこ」は砂糖無添加なのだから、残念なことである。
さらに信じられないのは、肝心の酒税法で焼酎とは
「アルコール含有物を蒸留した酒類」と定義づけていながら、
一方で「糖類二%を許している」点。国税当局もグルなわけだ。

これら白砂糖混入焼酎は簡単なテストですぐにわかる。
スプーンに二㏄ほどの焼酎を注ぎながら、ガスコンロの火に焙って蒸発させる。
すると砂糖入りのものは、最後に砂糖がカラメル化して、焦げ茶の輪ジミができる。

幻の秘酒「どなん」に工業用アルコール表示を強要した国税庁[P.125-127]

これまで六〇度の「どなん」は本土では販売が禁止されていた(これも不可解!)のだが、
一九八四年一月より、全国販売が許可された。
ところが、それに先だって八重山群島管轄の国税局は次のような不可解な行政指導を行ってきた。
すなわち「ラベルの酒の酒類の表示の『スピリッツ』の下に
『原料用アルコール』という文字を印刷しなければ本土で売ってはナラン」
というのである(写真)
一つの酒に二つの種類名が並んで表示される……。
これは明らかに酒類の定義を定めた酒税法第三条に違反する違法ラベル。
また「どなん」は完成した酒類(スピリッツ)であって
原材料(原料用アルコール)ではない。
こういうラベルを強要する国税当局は血迷ったか狂ったとしか思えない。
この珍無類のラベルを強要された「どなん」側はただ困惑するばかり。
「これ(『原料用アルコール』の文字)を入れなければ、
本土で売らせないっていわれて困ってるんですけど……」と生産者の金城信浩さん。
この「どなん」を取り扱っている日本名門酒会(二四九頁参照)の話は、
「一九八三年秋に国税当局に与那国島から本土への出荷を止められたこともあり、
やむをえず(ラベル表示を)認めた」と納得できない口ぶり。

この違法ラベルをよりによって国税側が押しつけてきた背景は次のようなものだろう。
この「どなん」こそは、特産の泡盛の中でも一番先に蒸留した品質も香りも高い
“ハナ”の部分のみを瓶に詰めたもの。原材料は米と米麹のみで当然、無添加。
いわば日本のスピリッツのエッセンスそのものなのである。

一方、日本の酒の業界は、“白い革命”と呼ばれる焼酎ブームで湧きかえっている。

これらのブームの中心は、
廃糖蜜から製造したモラセスアルコール(工業用アルコール)そのものの「焼酎甲類」である。

≪中略≫

ここに本格スピリッツとして世界に誇ってもよい芳香鮮烈の花酒「どなん」が登場してきたらどうなるか?
そのほんものの輝きの前に、ただの工業用アルコールの偽せ焼酎はたちまち光を失ってしまうだろう。

≪中略≫

よってこの「“原料用アルコール”ラベル事件」の背後には
「どなん(六〇度)」の本土上陸に慌てたサントリー、
日本蒸留酒酒造組合中央会等の策動があったと見るのが当然であろう。

日本のスピリッツ、焼酎の中でも最上品と思われるこの逸品の額にベッタリ
「原料用アルコール」の文字を貼りつけることで、そのイメージダウンを謀り、
本土での販売を葬りさろうとしたのである。
姑息というより卑劣な策謀である。
そして、今や大手酒業界の走狗となりはてた国税当局の役人達は、
その命のままにこの違法行政を遂行した――という図式であろう。

酒雑誌の八百長[P.219-220]

その人物が男性であるか女性であるかは、
はっきりさせるとさしさわりがあるやもしれませんので、
どちらとも申しませんが、とにかくかなり前から酒に関する雑誌など出していて、
その道では少しは知られた人のようですが、
中部地方の○○県のある酒蔵を訪れまして、そこの蔵元にいきなり、
「こんど、この県の酒の特集号を出すことにした。
ついてはウン十万円出しなさい。
そうしたら、あんたンとこの酒はこの県でいちばんいいと賞めてやっからナ」
と、のたもうたそうです。

その蔵元さんは、まだあいさつもろくすっぽしないうちにそんなふうに、
えらくダイレクトにいわれたんで、グッときた。
ツーカーで「じゃ、出しましょう」といえばまたちがったんでしょうが、
ある旧帝大の醸造学科か発酵学科を出たすぐれた酒づくりの技術者だったものですから、
ムッとした。腹のなかで、
「何をいうか。そんなウン十万など出して賞めてもらわなくても、ちゃんと鑑評会で金賞もとるし、
ほんとうに酒のわかる人に喜んでもらっているいい酒をつくっている。冗談じゃない」と思った。
そこで、「ちょっとそういうおつき合いはいたしません」

と正直に断ってしまったんですね。

すると、その男だか女だか、どちらか知りませんが、酒の雑誌を出している人物は、
「アッ、ソウ」おあいにくさま、という顔つきでプイと帰って行ったそうです。

その結果どういうことが起こったか。
翌月の件の人物の編集する酒の雑誌にデカデカと
「○○県にはうまい酒は一つもない」という記事が出たそうです。

つまりウン十万円もらえなかった腹いせに、そんな形で復讐したんですね。

木村功のオールド批判[P.263]

黒沢明監督の「七人の侍」などの名演で知られる今は亡き俳優木村功。
その懐旧談を放送記者K氏はしみじみと語る。
「彼は若い時からオールドの水割りを飲んでいたんだナ。
ボクも彼から水割りを教わったんだ。
で、昭和三〇年頃かナ、『功ちゃん、どうして水割りばかり飲むの?』と訊いたら
『このウイスキーは、こんなまずくて、水で割らなきゃ飲めないよ』だって。
冗談じゃなく本気の顔だった。

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