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書籍と雑誌の要約と解説

どの歯医者がいいか?

あなたの歯を守るために――歯の110番リポート

装丁
どの歯医者がいいか? どの歯医者がいいか?
日本消費者連盟
三一書房(三一新書922)
ISBN4-380-82004-1
1982/03/31
¥800
目次
  1. ドキュメント「歯の一一〇番」
    1. 北海道「歯の一一〇番」
    2. 「二重請求」発覚
    3. 騙された脅された…
    4. 厚生省交渉
    5. 全国からの声
    6. 或る“被害者”の記
    7. 噴出する苦情
    8. 日歯“意見広告”
    9. 苦情処理委員会
    10. 週刊ポスト
    11. 歯界の動揺
  2. 数かぎりない被害……
    1. 削るな!
    2. さし歯は保険で
    3. “歯槽膿漏”の怪
    4. “歯抜き屋”
    5. 抜くナッ!
    6. 根管治療
    7. 「入れ歯被害」の記
    8. 「入れ歯」とは?
    9. 入れ歯を入れたら
    10. 前歯の金歯
    11. 麻酔
    12. レントゲン
    13. “歯”の原価は?
  3. これは犯罪です
    1. 歯科医キャッチバー論
    2. 「保険」の思想
    3. 自由診療とは?
    4. 金の“押し売り屋”
    5. 領収書
    6. 二重カルテ
    7. カラ診療カラ患者
    8. 無能!「審査委員会」
    9. 裏講習会
    10. 派閥抗争
    11. 歯科医師会
    12. 患者の“敵”厚生省
    13. 歯科検査機器(ME)
    14. 歯科医の言い分
    15. こんな歯医者はダメです
    16. 『金パラ』不正
    17. 三〇の提案
  4. さあ強い歯に!
    1. やわらか食品の弊
    2. 歯の汚れ
    3. ミュタンス菌
    4. 砂糖は“毒”です
    5. ヤクルトの“犯罪”
    6. 粉ミルク出っ歯
    7. 全身病に…
    8. 歯石
    9. 歯根膜
    10. シャーピーの繊維
    11. 歯ブラシ
    12. みがき方
    13. 歯みがき剤はいらない
    14. ザクトの悲劇
    15. ブラッシング治療法
    16. ウォーターピック(口腔洗浄器)
    17. ティースポリッシャー
    18. フッ素はよくない!
    19. ハブラシズム宣伝
    20. 生活のリズム
    21. 唾液
    22. 固いものを食べよう
    23. 食べもの革命
文献
  • 谷口清『歯の悪いヤツの顔が見たい』[P.57_75_81_92_178]
  • 谷口清『日本人の歯をダメにした歯医者』[P.75]
  • 織家勝『かしこい歯医者のかかり方』
  • 覚道幸男『歯を守る』[P.103_213_217]
  • 水川晴海『こうして守ろう歯の健康』[P.56_90_211_229_241]
  • 仁平真佐秀『歯――早く、安く、上手になおす』[P.107_109_227]
  • 仁平真佐秀『歯医者にだまされない本』
  • 加藤吉昭『入れ歯づくり、一番いい方法』
  • 河西一秀『歯がよくなる本』[P.226_229_245]
  • 西堀雅夫『歯は抜かなくてすむ』[P.209]
  • 峯田拓弥『入れ歯の悩みをなくす本』[P.87]
  • 織家勝『歯がバリバリ強くなる』[P.229]
  • 境『むし歯は防げる』
  • 青山士郎『食養・カルシウム強健法』
  • 篠原恒『年金保険・医療保険の実態と各党の福祉政策』
  • 医療制度を考える会『日本医師会と日本歯科医師会』[P.171]
  • 健保連『医療を歪める出来高払い方式』
  • 日本法令『社会保険の手引き』
  • 菅谷章『日本の病院』
  • 日本消費者連盟『あなたの歯は大丈夫?』
  • 大谷実『医療行為と法』[P.77]
  • 菊池武夫『荒廃する農村と医療』
  • 大西正男『虫歯についての基礎知識』
  • 歯科医事法研究会『歯科小六法』
  • 文部省『歯の保健指導の手引』
  • 歯科医師会『日歯広報』1979年5月25日[P.129]
  • 保険歯科医療研究会『社会保険・歯科診療』
  • ジュリスト『医事判例百選』
  • 高橋『フッ素と虫歯』
  • 口腔保険協会『世界の歯科医療制度』
  • 東京医科歯科大学・歯科東京同窓会研究室『歯の情報』
  • 社会歯科学研究会『社会歯科学評論』
  • 中村広次『ポストクラウンによる継続歯』
  • 『歯科ペンクラブ』1981年6月号[P.48]
  • 『歯科ペンクラブ』1981年5月号[P.49]
  • 『青歯会報』4月号[P.49]
  • 『日本歯科新聞』1981年4月1日[P.50_172]
  • 『日本歯科評論』[P.50]
  • 『読売新聞』「デタラメ歯科医検挙」1981年8月7日[P.51]
  • 『北海道新聞』1981年8月7日[P.52]
  • 『歯学』65巻5号1043頁[P.63]
  • 『歯界展望』第54巻6号[P.161]
  • 『日医ニュース』1979年1月20日[P.176]
  • 『壮快』1980年11月号[P.179]
  • 『全国保険医通信№41』1975年増刊号[P.181]
  • 『東京新聞』1981年6月14日[P.200]
  • 『ヤクルトは効くか?』[P.207]
  • 笹原浩『子どもの歯』[P.207]
  • 『読売新聞』1979年6月2日[P.212]
  • 『日経新聞』1981年6月1日[P.201_226]
  • 『朝日新聞』1981年5月20日[P.242]
  • 『歯科医師会・月報』1979年7月10日[P.255]
校正
  • どこから治療していいのわからない→どこから治療していいのかわからない。[P.56]

内容

札幌市西区蓮見歯科医院の二重請求事件[P.16-20]

一月一八日。直接専門家の必要なケースについて、
兵庫県宝塚市で歯科医の立場から一〇年間にわたって
フッ素による斑状歯問題に取り組んできた伊熊和也氏の協力を得て無料検診を実施。
計二四名の“被害者”が訪ねてきて伊熊氏の診察を受けた。
検診を受けにやってきた一人に笹島吉郎氏(自営業五〇歳)がいた。

笹島氏は、前年札幌市西区の蓮見歯科医院で義歯を入れた。笹島氏の苦情内容。
「自分は社会保険の本人であり、保険の範囲で入れ歯を入れたのだから、
治療費として支払うべきは初診料の六〇〇円’’’’’’’’だけでいいはず。
なのに、三万七千円も請求されてとられた。これはだまされたのでは?」というものであった。

伊熊医師が、笹島氏の口をのぞきこんで問題の「入れ歯」を調べてみると
間違いなく保険でできる「入れ歯」! 
笹島氏はまんまと三万六千円余りを、蓮見孝男歯科医(三八)にだまし奪られたのである。
完全な詐欺罪(刑法二四六条)。

巷間、ささやかれていながら公になることのなかった診察室を舞台にした
“歯科医の犯罪”の一端が露見したのである。
この動かぬ証拠をふまえ、
笹島氏は蓮見歯科医を「詐欺罪」で札幌地検に告訴することを決意した。

不正の限り、荒稼ぎの極みを尽くしていた歯医者たちに対する
これまで踏んだり蹴ったりの消費者の側からの怒りの第一矢であった。

<中略>

告訴直後――。
蓮見医師は、道消連のスタッフにたいして事実を全面的に認め、伊熊医師にカルテを示した。
提出されたカルテを見て道消連のスタッフは一様に声をあげた。

そこには、笹島さんが支払った金額とほぼ同額の診療報酬を
医師が「保険」に請求したことを示す“請求済み”の印がペッタリ押されていたのである!
――患者と保険の両方から「二重取り」していた……! 
呆れた悪徳歯医者といわねばならない。

この不正事実を重く見た札幌地検は、笹島さんの同医師にたいする告訴状を受理、
数百枚のカルテの押収などの捜査に入った。

ところが、この蓮見医師は、何を血迷ったか、二七日、突如、
被害者の笹島さんを名誉毀損・ぶ告・恐喝罪などの罪で、
さらに道消連幹部五名を名誉毀損などの罪で同地検に逆告訴した。その言い分。
「医師と患者は信頼関係で結ばれており、
詐欺罪で告訴する前になぜ私のところへきてくれなかったのか?」
「対抗手段としてやむなく告訴したが……」(「北海道新聞」81・1・27)

患者の笹島さんからの告訴という思いもよらぬ事態に動転した蓮見歯科医は、
これよりさかのぼる一月一九日、告訴取り下げを頼みに笹島氏宅をたずね、
町内会の人立会いのもとで頭を下げ、二〇万円を無理に置いてきている。
これを「恐喝された」と逆告訴の理由にしているがなんとも見苦しいかぎりである。

さらに、この蓮見歯科で働いていた女性職員から
“内部告発”の手紙が道消連事務局に寄せられ、
非常識極まりない歯科医院の経営ぶりが、あらためて浮き彫りにされたのである。

添付されてきたのは、同蓮見医師が、診療のたびに走り書きしていた“メモカルテ”。

これも本カルテに記載するときに、「やりもしない治療を水から記入」。
まさに「カルテは書くというより作っていた」わけで典型的な「二重カルテ」で
歯科医師法違反、かつ悪質なサギ犯罪――告訴されて当然の悪徳歯科医であったわけだ。
さらに、この元職員の手紙によると同医院では、
「従業員をお手伝いさんがわりにつかって、風呂そうじからマーケットへの買いもの、
子もりまでさせ、技工士には、車の掃除、庭掃除、草むしりまでさせていた……」
というから驚く。信じ難い歯科医の前近代的感覚がよくわかろうというものだ。

さらに、「ある時、税務署の人が、来院すると電話があったとき、
見られてまずいカルテや帳簿は技工室にある地下室にかくしました。
その地下には、カンの中にびっしりとカルテがしまってあります」。
いやはや、目に浮かぶようなドタバタぶりではないか。
これでは脱税も巨額なものにのぼるにちがいない。
職員のボーナスや退職金までごまかして、
「数百万円のジープを買って遊び歩いている」この歯科医師を、
この一人の女性は次のように痛烈に批判している。
「ここには、医者の立場を利用して無知な患者さんから
金をもぎとろうとしている守銭奴しかいないのではないでしょうか?……
私も協力できることがあればいたしますので、
このときに、みんなが安心できる歯科医療の確立をめざして、がんばってください」。

この患者(被害者)による医師告発という事態に驚愕したのか北海道歯科医師会。
この紛争のドロ沼化で歯科不正の法的責任追及問題に発展することを恐れた(?)
同歯科医師会が、収拾にのり出し、「医師が患者を告訴するとはもってのほか」と
双方に和解をすすめ、笹島氏も、歯科医が不正請求を認め
“取りすぎ”の三万六千円の返済を条件にこの和解をのんだ。
しかし、詐欺罪は、ぶ告罪にならないので札幌地検は捜査を続行。
蓮見歯科医院を家宅捜査し数百枚のカルテを押収した。
こうして、検察側は、他の患者からの苦情や歯科衛生士などの内部告発をもとに、
詐欺罪が成立するかどうか検討した。

この検察の検討結果をまたずして、北海道庁は、蓮見歯科医に対し「戒告処分」を行なった。
これだけの事実がはっきりしていながら、保険医の取消しにはならなかったのです。
いかに行政当局が歯科医師会の圧力に弱いかを改めて見せつけられた思いがします。

歯の110番[P.28-35_54-56_64-65_72]

強制的に全歯抜歯・総入歯で380万円を請求された女性[P.28-29]

ある五七歳の女性の例。
彼女は郷里の福岡で奥歯が痛むのでH歯科医で治療を受けたところ、
「他の歯も悪い」と次々に全部抜かれて、
アッという間もなく総入れ歯にされてしまった。
さらに、本人の同意も得ないで、陶歯に白金をかぶせた
“最高級(?)”の材料を使用し、ナ、ナント三八〇万円を請求してきた。

この女性は頭金一〇〇万円を払って、残額は交渉中。
この超高額入れ歯、専門家にいわせると三〇万円が限度という製品。
その一〇倍もふっかけているのだからソラ恐ろしくなる。

健康な歯まで抜いて儲ける悪徳歯科医師[P.30-32]

歯のつめこみ’’’’がとれたのを、治してもらいに行ったときのことです。
小生の話をききもせず、「すこし黙っていないと、調べられないじゃないか」という。

声を荒立てられると、もう医者を信頼して任せるほかありません。
なにしろ相手は“神様”であります。
機嫌を損ねると、ぞんざいな手当てをされないとも限らない。
当方としては、台風の通過をじっと待つにも似て、されるがまま、いい子でいるばかりです。
それでも、ちゃんと治療してくれるのなら、屈辱にもたえます。
しかるに、その結果はどうでしょう! 
驚いたことに、麻酔をうたれ、抜歯されてしまったのです。
なおかつ、隣りの歯と二本も! 事実は小説よりも奇なりとは、このことです。

………

説明を求めても「抜いたほうがよかったから」の一点張りです。

三日分とかの薬袋を渡して、あとは知らん顔です。

現在、その部分はどうなっているとお思いですか。
二本抜いたすきま’’’を、前後の歯が寄ってきて、うめつくしています。
ではよかったじゃないか、とお思いかもしれませんが、実はそのせいで歯並びが悪くなって、
食事にも上下が齟齬そごして、よくかめません。
カチッカチッという音。口の中の全体がねじれている気分。
あまりの不快さに矯正病院に診てもらったところ、
手術に四十五万円かかるというではありませんか! 
社会人一年生の小生にとてもそのような余裕はない。

糞! 殺してやりたい!

虫歯1本に160万円を請求された女子大生[P.34]

「池田市の女子大女性(一九)。
歯ぐきがうんで痛みに耐えかね、市内の歯科医へ行ったところ、
『ほうっておいたら二年で歯が抜けてしまう。
徹底的に治さなければならず一六〇万円が必要。
うみを飲み込んでいると、がんになる』といわれ、
治療はしてもらえず、銀行ローンの世話を執拗に迫られた」
(「朝日新聞」81・6・22)

この女子学生、伊熊和也医師の無料検診で悪いのは一本だけ、
それもその日のうちに治療して、痛みも一日で引いた。
危うく一六〇万円、脅し奪られる’’’’’’ところだったわけだ。

健康な歯まで削って儲ける悪徳歯科医師[P.55-56]

ある若い女性。親しらずの治療に都内京橋のH歯科に行った。
ところが、同医師は「奥歯八本全部ムシ歯です」との御託宣。

「女の子はお嫁にゆく前にきちんと治療しておかなくてはね、とおっしゃいました。
私は歯には自信がありましたし、別にどこも痛い所もありませんでしたので、
少し変だなとは思いましたが、やはり先生の言うことは信じるほかないと思い、
治療していただくことになりました。

レントゲンを見ながら先生はどこから治療していいのわからない。
でもまず一番ひどい所から手をつけましょう、
とうことで左の下奥二本を削ることになりました。
一番奥の歯一本だけは昔治療して少しだけつめてありましたが
この歯もけずってしまって奥の二本は、
ぽっかり大きな穴があいてしまいました」(都内足立区・Nさん)

こうして、ドンドン削られ、八本で二一万円かかりますといわれてビックリ。
翌日、別の歯科医に行くと削られた穴を見てびっくりして、
「どこにも他にムシ歯はないとのこと。
その上、ほんとうにいい歯をしていますね、
この二本の歯もったいないことしましたね、とくり返しおっしゃいました」

手抜き治療をする芽ヶ崎市緑ヶ浜水口歯科[P.64-65]

「芽ヶ崎市緑ヶ浜の水口歯科で二本のさし歯をしました。
そのとき仮歯を入れてる間、歯の根元が臭いので、
先生に『根元の治療をしなくていいのですか?』と聞きましたら
『大丈夫です』と言われ、そのまま、さし歯をさしてしまわれました。
それ以後、なんとなく気になる毎日でした」(神奈川県・芽ヶ崎市・Kさん)。
そして九ヵ月後、ついに歯ぐきから膿が出てきた。
「それで東京医大病院へ行きレントゲンで見てみると
『これは手術しなければならない――、顔がとても腫れますョ。
こんなことした歯医者に行って治してもらいなさい』と言われ、
水口歯科へ行き、医大で言われたことを言いました。
すると先生は『これは単純な化膿ですョ、
手術と言ってもお腹を切るようにはならない。簡単よ。』といって、
麻酔をして、少し表面だけを取ってくれ思いで慶応病院へ行きました。
すると手術をしようということで、一回目の手術、
約五〇分くらいかかり、七針(?)も縫うものでした。」

ナント歯科医がさし歯の事前の根管治療を怠ったために、
この方は七針も縫う大手術をうけるハメになったのです。
悲劇はさらに続きました。

「とうとう、最悪の状態――。膿がまた歯ぐきから出てきました。
一年足らず、一四万円(二本で)もかけて作ったさし歯が駄目になる。
そして駄目になるだけじゃなくて、また、何十万円かのお金がかかるのです」

健康な前歯4本を抜歯された少女[P.72]

彼女は中学三年のときに、自転車で三〇分もかかるT歯科医に、奥歯の治療に通っていました。

「ところが私は奥歯をちりょうしにいっていたのに前歯に手をつけるようになってしまったのです。
その歯医者の話によると、前歯が三本ムシ歯で一本は抜いて他の二本はちりょうで治すといったのです。
ところが私は、前歯を四本も抜かれてしまったのです。
一本しか抜かないといったのに私にいわないで勝手に四本もぬいてしまったのです。
私はもう死にたいくらいかなしい思いをしました。」

歯科麻酔の医療過誤[P.110-112]

「抜歯のため麻酔を左の上(犬歯のところだったと思います)へ注射をしたところ、
一番先に鼻にシビレがきて、次に口全体へシビレがきました。
そのあとすぐに吐きけがし、動悸がし、寒けがして止まらなくなり、
すぐに歯科医の先生が、近くの内科医へ連絡してきてもらい、
内科医の先生に診てもらったところ、血圧が二一〇まで上がり、
右腕がきかず、ブラブラしていたので、すぐ救急車で近くの病院へ運ばれ入院しました」

北海道の室蘭市の国本歯科で麻酔注射を打たれた直後、
強い副作用に襲われたIさんの北海道の「歯の一一〇番」への手紙の一節です。

副作用はさらに深刻になっていった。入院して三~四日目。
トイレに行こうとしてベッドから降りたが、右足に力が入らない。
歩けなくなっている……!

「次第に悪くなる一方で、トイレにも一人で行くことができなくなり、
また、人の手を借りても駄目でした。
廊下を這ってトイレに行ったことも何度もありました」。
原因は不明――。
幾度か入退院をくりかえし、現在は自宅から医者に通っている。
担当の内科医は、歯の麻酔が原因だとは絶対に言わない。
「私は納得がいきません。私は四〇歳になりますが、
今まで病気らしい病気をしたことがありませんでした。
それがなぜ歯科医院へ行った時からこんな体になったのでしょうか」
Iさんの訴えである。

近所の人の話では、問題の国本歯科で治療した人の中で
他にも麻酔注射で被害を受けた“被害者”もいるという。
たとえばある人は麻酔薬が漏れて直接のどに入り、
他の病院で三ヵ月もかけて喉の治療をしたという。

悪徳歯科医を擁護する日本歯科医師会[P.32-33]

「自分の子どもをさらし者にする親がどこにいますか。」

これは当日の、日本消費者連盟の悪徳歯科医一掃の申し入れに対する大浦理事の答弁。
続いて、佐藤裕一常務理事(同歯科医師会)、

「(除名、告発などの)ペナルティを課してしか
問題を処理できないというのでは人間としてさびしいことです。
法にも救いの精神はある。
(乱診乱療の実態も)それもひとつの医療問題なのだから、
指導によってなくすようトライすることが肝要ですよ。
とにかく救いの精神’’’’’です」

ポリサルホン樹脂醜聞[P.41-46]

<専門医も知らぬ入れ歯材料――健保適用オヤッ?!>
これは、朝日新聞(81・6・8)の社会面に躍っていた見出しです。
九段抜きのこの記事の中見出しは
<厚生省、認可一年はや決定、技工士ら一斉に反発>とあります。

この六月一日に、歯科の保険内容(診療報酬点数)に大きな改定が行われました。

その中で、歯科界を騒然とさせたのは、
ほとんどの歯科医が見たことも聞いたこともない新しい入れ歯材料が、
いつの間にやら’’’’’’’保険適用になってしまっていたからです。

この歯科材料の名前が、問題のポリサルホン樹脂。
これまでの入れ歯の台(義歯床)のアクリル樹脂より
薄く固く加工できるというふれこみで開発された“新製品”。
なにしろ、この新種プラスチックが歯科材料として厚生省から使用許可が出たのが、
一九八〇年の七月というから製造許可からまだ一年にもならない。
だからほとんどの歯科医はその存在すら知らなかった。
「学界でも臨床データを見たことがない」(日本歯科材料器械学界長、堀江港三日大教授)。
「学界で報告されたこともないものなので
開業の先生方から問い合わせを受けても答えようがない」(東京医科歯科大井上幸助教授)。
「保険が適用されると聞いてオヤッなぜだろうと思った」(東京歯大羽賀通夫教授)――
と一様に歯科専門医はキツネにつままれたような反応を示している。

このポリサルホン樹脂が唐突に保険適用となった背景の
黒い霧をうかがわせるに十分な次のようなエピソードがある。
舞台は日歯会館三階の会議室で“秘密理事会”を終えた日歯山崎数男会長は
急ぎ足でこの会長室に入ってくるなり、待たせておいた受話器を耳にあて
「もしもし、ウン、いやァ、うまくいった。
ニ~三の常務理事が何かブツブツいっとったけどね……成功、いや大成功!」。
これは「週刊ポスト」誌に寄せられた歯科医師会内部からの通報によるその場の情況。
この日歯会長の電話の相手は東北地方の歯科医師会の大ボスという。
この“大成功”がポリサルホン樹脂を保険適用範囲に押しこむ’’’’ことを
日歯理事たちに認めさせることに“成功”という意味であることはいうまでもない。

この二日後五月二三日、中医協(中央社会保険医療協議会)は全員懇談会を開催。
この場で厚生省から医療費引き上げと保険点数改正の諮問案が、
アッという間に承認されてしまった。
こうして、ポリサルホン樹脂の保険適用という筋書きは
アレヨという間もなく進行し決定してしまったのです。

このポリサルホン樹脂は
「歯科材料としての適格性について学問的に十分に研究されていない」
(日歯常務理事談)というシロモノ。

それに看過できないのは、この新歯科材料は、生産から義歯加工まで、
新潟市の『沖歯科要材株式会社』という一企業が独占。
この材料で義歯を作ろうとする技工士や歯科医はその会社の特約店→
特約技工所(六千万円の射出成形機設置)のルートを経ないと
注文できないシステムになっている。
この注文を受けるだけの特約店で三〇〇万円もの契約金を
「沖歯科要材」に“上納”しなければいけないという。
零細な経営の技工士にとって首をしめられるような大金である。
いわば“ネズミ講”式の歯科材料・機械販売組織といえる。

金儲け主事があまりにロコツなこの会社の独占商品
ポリサルホン樹脂の義歯の保険料がまた異常に高い。
材料価格で、一番安いアクリル樹脂のナント八倍。
これまでの材料を使った総入れ歯だと技工科・医師の技術料等
すべてで保険費用は五~五万五千円でできるものが、
このポ樹脂入れ歯だと保険点数は二倍以上、ざっと一〇万円もの歯医者の稼ぎになるという。

すなわちこの新材料樹脂を使っていなくても、
使っている’’’’’こととして保険請求すれば、
歯医者にとって空前の水増し請求の新たな温床になることはいうまでもない。

さらに、この新歯科材料の保険導入をめぐって疑惑の臭いがプンプンとしてくるのは次の事実。
このポリサルホン樹脂の独占メーカー及び販売会社の社長、木暮山人(五四)なる人物。
氏は、次の衆院選で新潟二区から立候補を表明している。
「木暮氏の周辺には、各種のうわさ話・憶測が多い。
最近では田中角栄との関係が中央政界の一部でささやかれた」(「新潟日報)81・6・18)。
すなわち、日本歯科医師会の大半の理事も首をかしげ、
歯科技工士会も寝耳に水の同樹脂の保険適用の決定。
さらには、新材料の保険点数が異常に高く木暮氏に入る収入は
莫大なものになることから同日報は次のような図式を推理している。

「①保険適用になんらかの政治力が加わった
②その中心に田中派幹部の某大物政治家が存在した
③そして、小暮氏が二区から出馬する
④このため、小暮氏はこの大物政治家を通じて、田中角栄氏に多大な献金をした
⑤小暮氏は、当選の暁は田中派に入ることになった――」

またもここにも角の影……といった腹立たしさがこみあげてくる。

このポリサルホン樹脂の保険導入の舞台裏をひと言でいえば、
「厚生省と日本歯科医師会の一部幹部とメーカー三位一体のゆ着の産物」と言い切れる。
それを背後で指示し動かした“大物政治家”の黒い存在があることもいうまでもないだろう。

このポリサルホン樹脂“醜聞(スキャンダル)”は
たんなる一つの歯科材料の問題にとどまらず、まさに、
現在の歯科医療を食いものにして肥え太っている歯科材料機器メーカー・金権政治屋――
これらと一部日歯幹部の黒いユ着の構造を見事に証明してくれたといえるのである。

このポリサルホン樹脂床、
歯科材料として使用許可が出て一年たらずですでにいくつか“致命的”欠陥を指摘されている。
まず①臨床例ではリベート(補修)や調整が不可能。
(カナヅチでも割レナイほど硬いことが裏目に? 致命的欠陥)
②陶歯が使えない。(一体成形のため)
③射出時に義歯床に墨のようにシミがつく。(三割ほど。審美上装着不能)
④射出時の失敗に保証ゼロ。(やりなおしでさらに九千円の外注料金を取られる)
⑤付随する検査が高い。(一〇〇~四〇〇万円もの検査機械も歯科医が購入しなければならない。
このポリサルホン用の検査もチャンと保険改定で点数に入れられているというから……。
機械屋を肥やし、不必要な検査を増やす温床になる)
⑥メーカーは、「アクリル、レジン床の三〇倍の強度」と謳っているが、
実際は、五割増していどしかない。悪質な不当表示。(東京歯科大、関根弘教授の証言)
⑦同様に、従来のレジン床の「数分の一の薄さに、成型可能」というが、
現実派、わずか一割ほどしか薄くできない。これより薄くすると
「残っている健全歯が、たわむたびに揺すられて抜ける可能性がある」という。
さらに、アゴの骨が溶けてゆき歯ぐきがへこむ「骨吸収現象」が起こる可能性もある。
(同関根教授の証言)
⑧歯ミガキ等のために義歯床がザラザラになる。
一〇日に一度塗る鏡面仕上げ剤の塩化エチレンは毒性が強い。
⑨義歯床が予想外の場所で割れたり、人工歯が飛んだりする例が相次いでいる。

当然、この利権優先のなりふりかまわぬ樹脂保険適用という独断専行に、
歯科界でも一斉に反発が噴出。日本歯科技工士会(酒井清二会長・会員一万三二〇〇人)で、
「一特定企業による独占は問題だ」と村山厚相に保険導入の延期の要望書を提出。
(「東京新聞」81・6・5)

さらに大阪府しか保険医協会(玉川和隆理事長、会員一四〇〇人)が、
「特定メーカーの利をはかるもの。再改定を望む」との決議を採択。
さらに府歯科技工士会もボイコットを決定。(「サンケイ新聞」6・12)

また、日本歯科医師会の働きかけで、厚生省はポリ樹脂の保険導入を検討したと主張している
(厚生省は、当初「歯科医師会の強い要望で保険適用」と記者発表)。
その後の信頼できる情報では、ところが現実は逆。
実際は、厚生省から山崎数男会長以下わずかニ~三名の幹部に秘かに打診があったというのが、
この“政治劇”の真相。新潟の角スジで、小沢辰男元厚相が厚生省担当者に“政治力”を働かせ、
日歯幹部をこの取り引きに巻きこんだという巷間、囁かれている図式が、裏づけられたわけだ。
さらに、厚生省が、保険導入の根拠(言い訳?)としていた約七千症例の全国歯科医の“臨床試験”も、
実は、たんなるアンケート調査にすぎなかったことがわかった。
この“臨床試験”と称して厚生省に提出された資料は、
用紙に歯科医が数字を記入しただけというシロもの。
まずメーカーが、都合の悪いデータを除外した疑いが濃厚で、
さらに、歯科医が正確な数字を記入した保証がない――
「適当に書いて出した」という歯科医の証言もある。
さらに、このアンケートでは、
他の歯科材料樹脂の“アンケート”といっしょくたになっており全く信頼性に乏しい。

赤字になる根管治療[P.91]

根管治療の保険点数はわずか二三二点(二三二〇円)にすぎない。
(一つの根管あたり)リーマーだけでも一万円以上する場合だってあるというのだから、
この保険点数では、根管治療などするナといっているのと同じである。
だから歯科医は根管治療といった面倒なことはやめて、
脱脂綿を詰め(綿栓根充填)、サッサと金属冠をかぶせてしまうか、
ひどい場合はヒッコ抜いて荒稼ぎできる入れ歯づくりにイソイソととりくむわけである。

歯科材原価[P.122-123]

「べらぼうに高い治療費のカラクリをあばくために、材料費・加工代の原価’’を公表する」

この方針を決定したのは、
義歯(入れ歯、さし歯等)の作成にあたる日本歯科技工士会(会員八七〇〇人)。
歯科治療の場合、補てつ(入れ歯、ブリッジなど)の九〇%以上を
歯科医院勤務の技工士や技工所が下請け’’’して作成している。
この下請け’’’代金とは比較にならないほど高額の医療費を
歯医者は患者からむしりとっているというのが、この“内部告発”の趣旨。
一九七五年三月二日、全国都道府県の歯科技工士会長会で
「悪徳歯科医とは対決も辞さない」との異例の声明文を採択。
その現場からの告発による歯の原価は次のとおり。

メタルボンドの高級品でも
ボンドゴールド(白金と金の合金)を二グラム使うとして材料費は四千八百円。
技工士が受取る加工技術料が九千~一万円で、原価は一万四千円程度でできる。
ところが、これが、医師が患者に請求するときは六~一〇万円にハネ上がる。
ひどい場合は原価の一〇倍以上ふっかける例もまれではない。
歯科医が法外な不当利益をピンハネしてポケットに入れているのは一目瞭然です。

「悪徳歯科医が法外な差額徴収の言い訳として
技工料が高いためだとの口実をデッチ上げているのは断じて容認できない」
「歯科医療に対する国民の不信や批判は非常な勢いで各地に高まり……
歯科医療の一端を担うものとして見の痛みを感じる」。
同技工士会の「声明文」の一部です。(「毎日新聞」75・3・1参照)

同様に今度は治療の現場から自費診療の「原価」を公表、
歯科医の儲けすぎを“暴露”したのは、青年歯科医たちのグループ。
一九七四年暮れに九州歯科大OBなどの若手歯医者たちが
「鹿医療改革推進本部」を結成。

すぐに彼らは全国一一〇名の歯科医師に克明なアンケート調査を実施、
さらに歯科医師会などのデータをもとに「常識的な歯の値段」を算出したもの。
それによると「入れ歯(有床義歯)」で白金加金の義歯を使っても
妥当な価格は六万四千円(歯科医の“慣行料金”は三五万円以上)。
金合金、五万八千円(同、一五万円以上)、
「全部鋳造冠(歯全体に金属をかぶせる)」
白金使用で一万七百円(同、二万円以上)、
「インレー(欠けた歯の一部修繕)」
金合金使用で五千八百円~八千二百円(同、二万円以上)――。

この勇気ある’’’’調査を行った青年医師たちの結論。
今の「歯科医は少なくとも二倍から場合によっては五倍以上も“儲けすぎている”」。
さて、異常に儲けすぎていると“告発”された側からの反論も載せるべきでしょう。
どちらが正当な主張をしているかを判断してください。

「このような経費の原価計算をして医療費を決める考え方は、医療の本質に反する。
そんなことをしたら患者との信頼関係は成り立たないし、医の尊厳に反する」
(日本歯科医師会・副会長斉藤静三氏談・「毎日新聞」75・3・17)

五億円を不正請求した武居歯科医院[P.150-152]

わずか、二年間で、五億円という空前絶後の巨額の金を健保組合に不正請求していた
超悪徳歯科医――それが東京都江戸川区の武居歯科医院です。
都民生局の執拗な調査で発覚した“歯科犯罪”の巨悪の手口をとくとご覧あれ。

まず「カラ診療」。
これは、ムシ歯を治して欲しいと患者Aさんがやってくるとそのムシ歯を治療して、
Aさんがこなくなった後、他の健康な歯も悪くないのに「書類上」
どんどん病気にしてしまう(当然Aさんは知るよしもない)。
そして、それを“治療した”ことにして毎月毎月、
健保組合に多額の“治療費”を書面で請求して増収をはかるというテクニック。

その書類上の“病気製造法”も念がいっている。
「Aさんの三二本全部をムシ歯にし終えたら、次はムシ歯が悪化したとして、
歯根膜炎にしてしまう」(都民生局)。
それを“書類治療”した次は「歯槽膿漏」に、さらに、
歯にかぶせものをする「歯冠修復」を三二本の歯に次々に
(書類上)施したことにして、保険に堂々と請求する。
こうして一人の患者の歯三二本を本人尾知らない間に書類上
<ムシ歯→歯根膜炎→歯槽膿漏→歯冠修復……>と架空の病気にしては
“カラ診療”で保険から莫大なカネをだましとっていたわけです。

この武居歯科医院、これらのカラ診療をあまりに機械的に進めたために、
都の職員が、一二九人の“患者”を綿密に調査して歩いた結果、
「死んでいた人やムシ歯どころか歯の一本もないおじいさんもいた」という。

まさに真夏の夜のミステリーゾーンとでもいいたい話だがさらに怪談じみるのが「カラ患者」の話。

これは、ムシ歯治療にきたAさんの保険証から、奥さんや子ども全部の生年月日、
氏名を秘かに引き写して、勝手に“患者”にしたてあげて保険に多額の“治療費”を請求する手口。
幽霊患者といってもよいだろう。
とにかく保険証の番号と氏名等がわかれば、
いくらでも病人に仕立てることができるのだから
「同医院の医師の派遣先である東京電力の江戸川・江東支社の患者まで
無断調達’’’’していた。」(「週刊朝日」79・11・30)

この「カラ診療」「カラ患者」による健康保険への不正請求事件は、むろん史上最高額。

最後に当の同医院武居篤美理事長(七四)の談話。

「多少の水増しがあったかもしれない」。

裏取引を持ちかける審査委員会[P.158-159]

歯科診療チェックの要の「審査委員会」そのものがもはや信じ難いほどに腐りきっているという。

すなわち、社保・国保の審査委員会人事は完全に歯科界の派閥のボスに握られている。

日本の歯医者の世界の最大最強派閥は日本歯科大学同窓会。
この勢力を背景にしたある元日歯理事のヤリクチを紹介しよう。

東京のある歯科診療所経営者の信じ難い“被害体験”である。

「彼の派閥の役員たちは自分の診療所に出入りする技工士や材料屋に、
“あそこには近く都の監査が入るそうだ”と耳打ちする。

噂は回り回って、またたく間に広がり、私の耳に入ります。
すると、すかさず、彼の派閥の幹部役員が電話をかけてきて、
“お宅に鑑査が入るようだが、私が片手(五〇万円)で話をつけてあげよう。
ついてはその片手は××さん(元日歯理事)に届けて下さい”というんです。
私自身、監査されるほどの悪どいことをした覚えはないから、即座に断わりました」
(「週刊ポスト」より)

呆れたことに、審査委員会の「監査」をゆすりのネタにしているのである。

はじめからありもしない『監査』の噂を吹聴して、「停めてやるがどうだ」と“片手”をせびる。
監査がなければ(当然あるはずないのだが)、「俺が停めてやった」と恩にきせる。

不正を指導する歯科医師会[P.162-163]

ある都内の歯科医の証言――。

「実は、数年前からですが、東京都歯科医師会(都歯)の幹部理事の何人かが組織的に、
保険点数制度の抜け穴というのか、水増しというか、
どうすれば“合法的”に点数アップを合理的にできるかを、
各地区を回って指導してきたわけです」(渋谷区の開業医)

あきれたことに、都歯科医師会の幹部が、保険への不正請求、
水増しのやり方などのアノ手コノ手を講習’’して歩いていたというのである。
この「裏講習会」なるものの存在をスクープした「週刊ポスト」誌の記事の
“衝撃的”歯科医たちの告白を追ってみよう。

「幹部理事がじきじきにお出ましになって、“パノラマ買ってハワイに行こう”とぶちあげて、
月五万のリース代など簡単にはじき出せるんだからぜひパノラマを入れなさい、
なんて督励されたんで意を強くしましたね」(港区の開業医)

「ウン、確かにそういう講習会に出たことはありますよ。
しかし、それが実は“裏講習会”であったことはあとになってわかったことで……」
(都歯科医師会・元理事)

「水増し請求はこうしなさいとはいわず、
逆に、こういうレセプトの書き方は指導対象になったりしますよ。といったいい方でした。
私たちはそれを聞いて、その一歩手前までは大丈夫なんだな、
と思い思いに理解し合ってましたよ。そのときは十万円くらいの謝礼を差しあげました」
(日本橋の開業医)

良心的歯科医を処罰する日本歯科医師会[P.171-172]

代議員(吉兼守・愛知県歯科医師会会長) 
……とくに、内部告発によって国民を惑わし、また、われわれに憤りを持たれる、
こういう人がもし現実にですね、本人であることが明らかになった時には、
少なくとも秩序を乱したというような原則論に則って、
裁定委員会(懲罰委員会)で処理していただけるものか。

山崎会長 
その通りにしたいと思います。
……そういうことがはっきりわかりましたら、それはもっともいけない行為でございます。

これは、一九八一年三月一八・一九日に開催された日本歯科医師会代議委員会での、
代議員と山崎数男会長とのやりとりである。(「日本歯科新聞」4・1より)

私たちの「歯の一一〇番」の開設以来、
「週刊ポスト」をはじめとする「サンデー毎日」「週刊大衆」など
マスコミの不正歯科医追求キャンペーンに苛立った代議員がマスコミ取材に協力した、
「内部告発者(?)」を処分しろと迫ったのに歯科医師会会長が答弁したもの。
不正請求等の犯罪を行った悪徳医師を懲罰委員会にかけろというのならわかるが、
歯科の荒廃を嘆き、真実を語ったまだ良心的な歯科医を
「それはもっともいけないこと」だから、懲罰委員会にかけます――
とこの歯科医師会会長は大真面目に答えているのである。

「これが歯科医師会の指導者同士の大真面目なやりとりなのである。
この人たちは本誌が提起している問題の問題点すら理解できないでいるのか」

「週刊ポスト」誌の一連の歯科不正追求キャンペーンのリポーター渡辺乾介氏の嘆きである。

厚生省は医師会の使いっ走り[P.174-176]

一九七九年一月二六日、厚生省から一通の通達が出されました。
宛先は、健康保険組合連合会、いわゆる保険「支払い側」です。
その内容は「『医療費のムダ排除運動』の自粛を求める通達」。
これは不可解至極の通達といわねばなりません。
健保連が行っている医療費通知、不正医告発運動も、
好きこのんでやっているわけではありません。
行政責任のある肝心の厚生省や即刻、取締るべき警察が、
不可解なことに’’’’’’’これら医療犯罪に動き出さないから、
やむにやまれぬ思いで、くりひろげている「運動」です。
よくやってくれていると評価こそして当然なのに、
その自粛を求めるとはいったいどういうことか?

その通達にいわく。
「確実な裏付けもなくみだりに告発するのは、
医師と患者の信頼関係を不当にゆがめ、医師個人の名誉を傷つけることになる」(!)
「医療費の額に不審な点があっても、だからといって直ちに不正があるとはいえない」。
言葉を失うとはこのことでしょう。さらに通達の文面は続く。
「医療費抑制を目的に告発を行ってはならない」
「厚生大臣と都道府県知事以外のものに調査権限はない――」。
底がわれたとはこのことである。
厚生省と乱診乱療の悪徳医とのユ着をこれほど鮮やかに示す文書を他に知りません。

これに対して、健保連は即日、常任理事会を招集。
「架空・水増し請求など不正請求を行っている医師のうち、とくに悪質なものは、
断固、告発(詐欺罪)を進める」と従来の方針を確認、
「厚生省への反発をあからさまにした」のです。

このあと八月二日にも、厚生省は、健保連に対して
「(悪徳医師の)告発は、取扱いに十分配慮し、事前に行政庁とよく相談するよう」
通達したというから開いた口がふさがらなくなる。
これも、その直前に、日本医師会が、
厚生省に「健保連の活動を放置している」とネジコンだから、
慌てて再度通達を出したというのが、その舞台裏。
こうなると国民の生命を預り、健康保険制度を守るべき立場にある厚生省も、
その内実は、金儲け主義の日本医師会の“使いっ走り”であることが、よくわかります。

横暴、無理難題、ゴリ押しのとどまるところを知らずというのが、
日本歯科医師会の兄貴分の、日本医師会のヤリクチ。
健保連が、一九七八年一一月大会で「医療費のムダ排除」運動に乗り出したことに反発、
ナリフリかまわぬ、健保連“敵視政策”を打ち出し、あろうことか、
「健保連解体」を求める要求を自民党につきつけた。
それは、①健保連を単なる保険料徴収期間にする、
②健保組合の保養所などに課税する――などで、
健保連を実質解体し「不正請求告発運動」などを封じこめるのがネライ
(「日医ニュース」79・1・20)。

まっとうな歯科医療では赤字になる[P.179-182]

「歯の治療はすべて保険でできるというたてまえの制度も、
戦後の食糧統制法に似て、どう考えてもやっていけないしろものです」
(歯科医師真坂信夫氏「壮快」80・11月号)。

<中略>

この真坂医師は、一つの試みを行った。
一九七九年、川崎市の商店街に“実験的”な診療所を開設したのである。
ユニット(治療台)六台、スタッフは医師三名を含めて一〇名。
開設費用は世間相場の半分というギリギリの線でおさえ、
基本方針として「保険診療」しか行わない。
(自由診療は、一切すすめず、患者の要求があったとき最低限行うだけ)。
領収書はレジスターを設置、必ず発行。
患者一人当たりについての診療時間は、
最低三〇分’’’’’はとり「歯科医としての誇りと責任のもてるレベル」は保つ。
こうして一年間。現在、この診療所の患者一人(三〇分)診療の平均収入点数は、
歯科医一人当たり三二四点。
ところが、真坂医師の試算する損益分岐点の必要収入額は、五六九点。
すなわち、保険による「理想的」な歯科治療を良心的に行おうとすれば、
収入と同程度の赤字を覚悟しなければならないということになるのです。
真坂氏は次のように強調しています。
「問題は、材質ではなく、時間なのです。この点が、最も患者に理解していただきたいのです」

次にあげるのは、いわゆる「歯科医師の悩み」です。
「歯科医師としての知識と技能が、発揮できない」
「できるはずのない低料金が堂々とつきつけられている保険の『補てつ』」
「診療しきれない患者さんの量」「診療に必要な従事者が足りないし、やとえない」
――そして最後に「歯科医師は心身ともに、くたびれている」
(「全国保険医通信」№41・一九七五年・増刊号)

この比較的良心的な歯医者さんの団体
「全国保険医団体連合会」の機関誌は次のように主張しています。
「日本の医療は医師と患者のぎせいの上になりたっている」

一九六一年、国民健保全面実施。
この中で、歯科医療は、医療全体の中でも、ママ子扱いされて今日に至る。
たとえば、保険医療費全体に占める歯科医療費の割合は、
一九五二年には一四・七%あったものが、現在は八%の枠内に押えこまれている。
そして、「処置」(抜かずに治すための治療)、
「補てつ」(入れ歯・ブリッジなど)ともにできるはずのない料金’’’’’’’’’’にしてある。
医療に対する国の支出はできるだけ少なくする。いわゆる低医療費政策である。
この政府の政策を、全国保険医団体連合会は、「福祉切捨て政策だ」と批判する。
「『通常必要とする治療は、保険診療として給付される』という、厚生省保険局長の通知は、
正直でなく、正確でもなく、真実をかくしています」。
厚生省のホンネは、
「現在の歯の治療の全てに『全額給付』していたら保険財源はパンクする」というもの。
こうして、「保険財政が苦しい」という理由’’で悪名高い
「差額徴収制」という異常な制度が生まれた。

これは、歯科への保険財源の枠はせばめるから、
あとは、勝手に「サガク」でふっかけ放題で稼ぎなさい――
というまことに無責任な制度であった。
これは、フンダクリ、ふっかけ自由の“制度”であったから、
当然、国民からごうごうたる不満の声がまきおこった。
こうして、この“悪制”は、一九七八年に禁止され、
今は「自由診療」という名で同様の荒稼ぎが行われている。

金パラ不正請求[P.188-189]

金パラ(金と銀とパラジウム合金)の場合。
金の含有量一二%以上が、保険で認められているが、
実際はニッケル合金でかぶせる冠などを技工士に作らせ、
歯科医はこの表面に“金メッキ”を施す。
これを患者の歯にかぶせる。
そして「金パラで歯冠形成」と保険に請求するわけだ。
金メッキが金パラに化けたわけである。

金パラ合金ひとつとっても、こういう姑息な“犯罪テクニック”が、
あたりまえのこととして日本の歯科医の間に“定着”してしまっていることは、
次のエピソードでもわかる。

厚生省のデータによれば、保険に「金パラ使用」として請求されてくる
「金パラ合金」の“総量”は、約九〇トン。
ところが、日本で年間に生産される金パラ合金はわずか約一一トン足らず。
それもアクセサリーなどの装飾用をふくめてというから、唖然としてしまう。
その差、八〇トンもの“幻の金パラ合金”が、水増し請求によることがレキ然である。
ある一人の若手歯科医は、なかば諦めたように言ったものだ。

「結局、まともに金パラで請求している歯医者は、一〇人に一人もいないということヤ……」

このように、合金の質を落として、
保険請求との差額で稼ぐ“テクニック”は日常化しているといえる。
「歯科用の金(五グラム)をこっそり銅とか亜鉛といっしょに溶かして、
純度を低く落として金歯材料に使う」という技工士の証言もある。

哺乳瓶だと噛む力が発達しない[P.208]

最近の小さな子どもたちはスパゲッティなどやわらかいものを好む半面、
肉のようにちょっと硬いものになると一〇分でも二〇分でも口の中に入れているという。
「かむ力が弱いんですヨ。昔はこんなことはなかった」。
これは武蔵野赤十字保育園長の兼田きみさんの指摘です。
「ムシ歯を含めてどうもこれは人工栄養のせいじゃないかしら。
哺乳ビンのミルクは母乳より労せずしてスイスイ口に入っていくでしょ」
(読売新聞「母乳復権」№四より)

赤ちゃんがお母さんのおっぱいを吸っている姿を見ると
一種の生命力というものさえ感じさせます。
汗びっしょりになって必死に乳首に吸いついています。
その乳首を吸う強さこそが、赤ちゃんの生命力なのです。
こうして、赤ちゃんのアゴや頬の筋肉、さらに骨も鍛えられ、強く発達していくのです。

ヤニ取り歯ミガキ[P.233-234]

愛煙家の歯でヤニだらけになっている人をときおりみかけます。
本人も案外気にしているようですが、こういうスモーカー向けに売り出されている
歯ミガキ粉がいわゆる「ザクト」や「スモカ」などのヤニトリ歯ミガキの類。
これは、おすすめできません。

これらのヤニ取り歯ミガキの成分のなんと九〇%ほどは、研磨剤。
はやくいえば、クレンザーで歯を磨いているようなものです。

おナベの底をクレンザーでこするとピカピカになるでしょう。
これは汚れを洗い落としたのではなく、
クレンザーの粗い粒子で、汚れも金属も削り落としたからです。

同じことが、ザクトなどの歯ミガキにもいえます。
これはヤニを洗い落としているのではなくて、
歯のエナメル質と一緒に削り落としているのです。
歯に冷たい水がしみるようになって当然です。
もちろんムシ歯にもかかりやすくなります。

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