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書籍と雑誌の要約と解説

ほんものの酒を!

あなたはニセモノを飲んでいる

装丁
ほんものの酒を! ほんものの酒を!
日本消費者連盟
三一書房(三一新書921)
ISBN4-380-82003-3
1982/02/28
¥850
目次
  1. 日本酒篇 – あなたはニセモノを飲んでいる!
    1. ほんらい酒とは?
    2. 清酒の造り方
    3. 五悪・六悪
    4. 原料用アルコール
    5. 三倍増醸
    6. アル添
    7. 糖添
    8. 合成添加物
    9. オケ買い
    10. 本醸造
    11. 「特級」「一級」
    12. 純米酒
    13. 純粋日本酒協会
    14. 清酒の表示
    15. 『剣菱』の没落
    16. 『越の寒梅』
    17. 吟醸酒
    18. 米ぬか糖
    19. どぶろく
    20. 秘伝どぶろく作り
    21. 蒸留酒
    22. 焼酎
    23. 「甲類」「乙類」
    24. 「純」
    25. 「樹氷」
    26. 聖乃真酒
    27. 凍結酒
    28. 名門酒会
  2. 洋酒篇 – 知的生き方は“サントリー拒否”から
    1. 焼跡から
    2. “色つきアルコール”トリス
    3. ウイスキーの特級・一級
    4. ウイスキー添加物
    5. 原酒
    6. サントリーを裸に
    7. 甘味・着香の“術”
    8. ポートワイン醜聞
    9. サントリーV.S.ニッカ
    10. 熟成
    11. カラメル着色
    12. 黒い“怪物”
    13. オールドの正体
    14. グレンウイスキー
    15. VERY RARE OLD?
    16. 焼鳥問答
    17. 水割り
    18. ザ・ウイスキー
    19. V・S・O・P
    20. 独禁法違反
    21. 原材料表示
    22. 正しい表示を!
    23. スコッチの誇り
    24. CO-OPウイスキー
    25. ビールとは?
    26. 麦芽の文化
    27. ビールの正体
    28. ニセ“生”戦争
    29. どういうわけか?
    30. エビスのすすめ
  3. 苦闘篇 – 笑って見すごすわけにはいかない
    1. たった一人の叛乱
    2. 弱い者いじめ
    3. 消費者直販
    4. 販売免許制
    5. 酒販免許裁判
    6. 「特売」規制
    7. 酒大学
    8. 酒税のオカシサ
    9. ワイン異聞
    10. 貴腐ワインペテン広告
    11. “水割り文化”拒否の会
  4. 変革篇 – これだけやればスッキリします
    1. 欧米のCM規制
    2. 酒のCM全面禁止を!!
    3. 自動販売機
    4. ボトルリサイクル
    5. 空ビン回収主婦奮戦記
    6. 国産米を酒に!
    7. 米ビール
    8. ヂ(地)ウイスキー
    9. 痛快!!「十勝ワイン」
    10. ミカンワイン
    11. みかんブランデー
    12. 手前酒
    13. スターマーク表示試案
    14. 酒販免許廃止を!
    15. 超安売り
  5. 愛飲篇 – いささかの和んだ生を愉しむために
    1. 酒のえらび方
    2. 地酒礼讃
    3. 全国「銘酒三三撰」
    4. 飲み方一考
    5. 酒器
    6. どれくらい飲むと
    7. 或る闘い
    8. 胎児アルコール症
    9. 酔態六段階
    10. 酒の効能
    11. 週休二日制
    12. ボトルキープ
    13. キャッチバー
    14. 損益計算書
文献
  • 坂口謹一郎『日本の酒』[P.10]
  • 穂積忠彦『酒学入門』[P.22]
  • 日本消費者連盟『ほんものの日本酒選び』[P.28]
  • 野添憲治『どぶろくと抵抗』[P.63_65]
  • 鳥井道夫『和洋胸算用』[P.112_121_125]
  • 佐治敬三『サントリーの経営』[P.125]
  • 明治屋本社『明治屋食品辞典』[P.132]
  • 藤井幹洋『やってみなはれ―サントリーの企業姿勢』[P.176]
  • 片山夕一郎『キリンビール独走の秘密』[P.178]
  • 坂口謹一郎『古酒新酒』[P.198]
  • 穂積忠彦『呑んべえが語る酒学入門』[P.211]
  • 日本の自治を考える会『乾杯!ワイン町長』[P.247]
  • J・アダムス『アルコール健康法―酒は大人の牛乳である』[P.293]
  • 穂積忠彦『ほろよいの美学』[P.320_327]
  • バーテンダー・トレーニングセンター『バーテンダー教本』[P.331]

解説

アルコール業界と愛飲家を震撼させた最大の告発書。
工業用アルコールが主体になっている合成酒を筆頭に、
サントリーの偽装表示やスナック・バーの不正行為も暴く。

内容

  1. 日本酒の五悪[P.15-16]
  2. 合成酒の起源[P.20-22]
  3. 原料用アルコール=工業用アルコール[P.18]
  4. ある有名メーカーの<甘口>を調べたところ、
    一升びんの中にグラニュー糖なら茶わん半分に相当する添加糖類が含まれていた
    (報知新聞、77・4・14)[P.27]
  5. ほんものの清酒「純米酒」は清酒の全生産量の約一%しか造られていない[P.40]
  6. 醸造用糖類米ぬか糖[P.54-55]
  7. 自家用酒醸造禁令(明治三二年)[P.59-62]
  8. 10%しかソバを使用していないソバ焼酎[P.74-75]
  9. ウイスキーの添加物[P.93-94]
  10. 酒業界の天下り[P.104]
  11. サントリーウイスキーの原料偽装表示[P.132-133]
  12. サントリーオールドのラベル偽装表示[P.134]
  13. 政府はサントリーの偽酒犯罪を擁護する[P.136-137]
  14. 原価三〇〇円の五万円ウイスキー[P.142-145]
  15. サントリーブランデーのラベル偽装表示[P.148-149]
  16. 独占禁止法に違反しているサントリー[P.150-153]
  17. カラメルが成分表示されないカラクリ[P.154-155]
  18. モルトでなくてもモルトと表示される[P.155-156]
  19. アサヒスーパードライの原料米は古古米[P.169]
  20. ビールの添加物[P.169-170]
  21. ワインの添加物[P.208]
  22. 現在の「菊正」や「大関」「松竹梅」などの“清酒(もどき)”は
    「米」五五%に「アルコール」(砂糖キビ廃糖蜜から作られる)四五%の割合で
    混ぜられて造られている。[P.231]
  23. 自由ヶ丘のとあるパブに入ってみるとメニューの隅に
    「ミネラルウオーター、一本一五〇円、氷一〇〇円」とあった。
    このミネラルウオーターなるもの「中味は水道の水」であることは今や常識という。[P.312]
  24. ボトルキープしたウイスキーは安物にすりかえられている[P.312-313]

日本酒の五悪[P.15-16]

日本の酒はメチャクチャになった、
と戦前からの酒通を酒場の隅で長嘆息させている日本酒の没落、
堕落の原因として、専門家は次の五点を指摘しています。
いわゆる業界でささやかれる酒の「五悪」である。

  1. 三倍増醸――ほんらいの清酒を水、アルコール等でうすめて三倍に増やして売る。
  2. アル添――醸造発酵による酒本来のアルコール以外に外からアルコールを多量に混入。
  3. 糖類添加――ブドウ糖や水アメをぶちこむ。
    甘ったるい酒<甘口>の氾濫と糖尿病などの原因に。
  4. 合成添加物――「水増し」をごまかすための「調味液」等に使われる。
    二〇種類以上のクスリ漬けの酒で悪酔い続出。
  5. オケ買い――大手メーカーが、地方の地酒メーカーから買い取り、
    自社ラベルを貼って「一流品」として出荷。酒業界の構造的ギ瞞。

合成酒の起源[P.20-22]

一九四三年、戦争も敗色濃厚となっていた。
ここ満州の地では、日本から送りこまれた開拓義勇軍の農民、
青少年、婦女子が見も凍る原野の開拓村で肩を寄せあって生きていた。

当時、満州国政府経済部の醸造技師であった長島長治氏のもとへ
関東軍司令部から「米以外の原料で清酒をつくる方法はないか」と矢のような催促がきた。
長島氏は、満州のコウリャンなどあらゆる穀類を試したがうまくいかない。
こうして試行錯誤のはて最後に行きついたのが清酒を水とアルコールで“のばす”という発想だった。
いいかえれば「エイ、うすめりゃいいだろう!」という荒っぽい方法である。

しかし、アルコールと水でうすめただけでは、まさに味もソッケもない「水っぽい酒」になってしまう。
そこで、ブドウ糖や乳酸、コハク酸などの「添加物」を加えると“清酒のような”味やコクが出てきた。
こうして、この非常時の酒の“増量”に「成功」したのである。

長島氏の「開発」したこの方法でうすめた酒は「第二次酒」と呼ばれた。
さすがに、清酒と呼ぶことは醸造技術者としての良心が許さなかったのだろう。
この「水増しの酒」は満州だけでなく、戦時下の国内でも大いにもてはやされた。

≪中略≫

この戦時下の庶民大衆のすさんだ心をいやした「第二次酒」は、
敗戦後の焼野原で注目された。目をつけたのは政府である。

敗戦後、二年目。国の政策として「三倍増醸法」が打ち出された。
一九四九年、一五〇軒の酒屋が選ばれて、試験的に三倍増醸酒を“つくらされた”。
「ただ、アルコールでのばすだけで、しかもブドウ糖で甘味がつけられるのだから、
当時の米不足、酒不足の時代にすれば、まずつくる側にとっての救いの神、大成功だった。
かくして翌年から、ほとんどすべての酒屋がこれをやるようになった」。
当時の大蔵省醸造試験所の技官であった穂積忠彦氏は告白する。
「それがいまもってつづいているんですよ……」

一九七五年に生産された「清酒」の総量は一四二万トン。
そのうち三倍増醸酒は四九万トンで約三五%を占める。
残る九三万トンも、その九割以上がアルコール添加(アル添)。

すなわち戦前では全ての酒屋が造っていた米と米麹だけの清酒(本来の清酒)を
造る蔵元はいまや百軒に一軒ぐらいに激減してしまった。
全国でも伝統的なほんものの清酒をつくれるのは三〇~四〇軒そこそこといわれる。

原料用アルコール=工業用アルコール[P.18]

キューバなどの砂糖の大生産地では、砂糖キビを搾って砂糖を精製し取り除いた後に、
真っ黒いドロドロしたコールタール様のカスの液が残る。
世界中で年間にナント三千万トンもできるそうである。
これは、豚の飼料などに混ぜると下痢を起こしたりしてほとんど使い途はなく、
昔は廃棄されていたという。
よってこの黒いドロドロは「廃糖蜜」と呼ばれる。
値段もタダ同然といってもよいほど安い。
やっかいなあまりものだが、日本はこの「廃糖蜜」の世界一の輸入国である。
何故か?この「廃糖蜜」から工業的に安価なアルコールを夥しい量、生産しているからである。
この他、サトウ大根(ビート)などの糖類原料、
サツマイモ、ジャガイモ、キャッサバなどの澱粉原料、
木材からパルプをとった後の亜硫酸パルプ廃液などを発酵させたモロミから、
エチルアルコールだけを大量に蒸留して生産する「連続式蒸留機」が発達し、
アルコールは今や安価な工業原料となってしまったのである。
これらは「原料用アルコール」というより「工業用アルコール」というべきだろう。
一〇〇%純粋のエチルアルコールで無味、無臭。
消毒用に「医科アルコール」としても使われる。
(ちなみに「焼酎甲類」のホワイトリカーは、これを水で薄めたもの)

醸造用糖類米ぬか糖[P.54-55]

ラベルの「醸造用糖類」の文字を見れば、ブドウ糖、水アメなどが入っているナとわかります。
そこでなんとしてでも酒メーカーは、この文字をラベルから消し去りたい。
そこで出たのがかわりに「米ぬか」を原料にする「米ぬか糖」を添加する“悪知恵”――。

この酒業界の「策動」の背後にあるのは、法務省の「ぬか=コメである」という“法的(?)解釈”。
これは理屈にもならない<理屈>です。
外部から糖類を添加していることに何の変わりもない。
悪ラツな脱法行為。げんに、この「米ぬか糖化機械」のメーカーは、
フル生産で、すでに一〇〇社以上の大手酒造メーカーが、この機械を導入設置したという。
こうして原料の糖類をすり替え、「糖類は無添加です」といった顔で大々的に売り出しています。
これもキチンと表示すべきです。

この米ぬか糖とは次のようなものです。
日本酒を造るときの平均的精白歩合は約七五%。残りの二五%が“ぬか”として出ます。
この“ぬか”は、精米機の砥石の摩擦熱で焼けて変質しているので
菓子などの原料の「米粉」とは品質的に異なります。
この“ぬか”を湯に溶かして、糖化酵素を入れて糖化させ、
その糖液をイオン交換樹脂を通してろ過精製したものが「米ぬか糖」です。

自家用酒醸造禁令(明治三二年)[P.59-62]

「酒を買わせた方が税金が多くとれる」ただそれだけの理由で、
数百万農家の自給自足の「生産活動」を禁止した。
これは、農民に味噌を造るな、しょう油を造るなというのと同じである。
無理は先刻承知の<禁止令>であった。

寝耳に水で驚いたのが農民たちである。
「自分で作った米を、自分で酒にして飲んで何が悪いだべ」。
素朴な疑問である。

しかし、税務署の「どぶろく」摘発は情け容赦なく行われた。

大正六年には、警察署、税務署連絡の上、次のような布告が、各地の家々に配布された。

<◎濁酒を造ることなかれ・濁酒を造るは犯罪人なり◎――
政府の免許を受けないで酒を造ることは法律で禁じられております。
・自分の米で自分が造って飲むのに何も悪いことはあるまいと
思ふ人もあるかもしれませんが、それは自分の金銭をやりとりする賭博をするのや、
自分の腹の胎児をおろすのと同様に悪いことであります。
・自分の町村からは、一人も心得ちがひのものを出さぬ様に注意して下さい。
大正六年八月>

≪中略≫

戦後になって、税務署側の対応は、さらに陰湿になってきた。
<密造酒を飲んでいる家庭の子どもの学力は?(と問いかけて)
○飲む家の子ども、「よくできる」二一%、
○飲まない家庭の子ども「よくできる」四二%と比較して、
見出しは、「農村の近代化生活改善はまず『密造酒』の追放から」とある>。
一五年程前、税務署が東北全県に配布した《どぶろく追放》のためのパンプレットの一文である。

また、<密造酒を飲んでいる人は「長生き」しない>など、
まさに“傑作な”おどし文句が、イラストといっしょに載せられていた。
また、<密造酒(どぶろく)は身体に悪い>
とていねいにネズミの実験例をあげて盛んに宣伝した。

10%しかソバを使用していないソバ焼酎[P.74-75]

「西日本を中心とする乙類焼酎の中でも、いも、そば等の表示とは裏腹で……
具体名を挙げるならば、雲海酒造の『雲海そば焼酎』の中身は、
そば約一〇%、残り九〇%は“イモ焼酎”である。『とうきび』『ひえ』も同様です。」
これは、乙類焼酎業界からの“内部告発”の一文。

九割がイモ原料で「そば焼酎」とは、呆れかえった不当表示である。
よくもシャアシャアと……本格焼酎よお前もかと、少しばかり情けなくなってくる。
さらに「これは業界内部ではすでに“公然”の秘密」というから腹立たしくなってくるではないか。
これは焼酎の原料表示義務等の規制措置がとられぬうちに「一発当てよう組」が、
小規模業者の間でも暗躍してきたからという。

ウイスキーの添加物[P.93-94]

  1. Lーアスコルビン酸(酸化防止剤)
  2. カラメル
  3. フマール酸(酸味料)
  4. DL-アラニン(呈味料)
  5. 重合リン酸塩(変退色防止剤)
  6. グリシン(粘ちょう剤、酸化防止剤)等々。
  7. 香料(二〇品目以上)

その他、活性炭(脱色用)、ケイソウ土(ろ過用)等々が使用されている。

酒業界の天下り[P.104]

国税庁から業界への天下りは、サントリーに限らずあらゆるところに根を張っている。
なかでも徹底しているのが、業界団体役員への天下りだ。
「小売酒販組合中央会と麦酒酒造組合の二つを除けば、
残りはほとんど組合の専務は天下りですよ」(「本醸造協会」の小川繁房氏)という。
それでも足りず、つい最近は、日本酒造組合中央会のPRセンターである
「日本酒センター」の館長に東京国税局鑑定官室長だった川島宏氏を送りこんでいる。

雑誌「選択」日本のサンクチュアリ84 81・12月号より

サントリーウイスキーの原料偽装表示[P.132-133]

サントリーのグレンウイスキーとは何だろうか?
正しいグレンウイスキーの定義は、ライ麦、トウモロコシなどの穀類を原料にしたウイスキーで、
イギリスの法律では三ヵ年の熟成貯蔵が義務づけられている。
穀物を原料とするから Grain Whisky なのである(『明治屋食品事典』酒類編より)。

≪中略≫

サントリーの、グレンウイスキーは、本来のグレンウイスキーとは非なるものだ。
サントリーのグレンウイスキーはなんと Glen(渓谷)Whisky なのである。

工場の山崎が谷間にあるので、英語の谷を意味する Glen をさがしてきてくっつけたのである。
ニッカの本格的ウイスキーに対抗しようとして意気がったのだろうが子供もびっくりする駄洒落である。

では、サントリーのグレン(谷)ウイスキーの正体は何か?
伝統的なグレンウイスキーは、約百年前からそのままの式蒸留機でつくるものだ。
人がつきっきりで作業し、品質にムラができるので、ねかさなくてはいけない。
だから味がよくなる。ニッカはこれでつくっている。
ところがサントリーはトウモロコシ等を原料に
大量生産方式のオートメ蒸留機でトウモロコシアルコールを大量に造っている。
いわゆるグレンアルコールである。
これを水で薄めただけで酒税法上はグレンウイスキーになるのだから信じられない。
トウモロコシから作ったたんなるアルコールを“ウイスキー”と称しているのだから。
サントリーは、グレンウイスキーの名前を“詐称”していることになるわけだ。

サントリーオールドのラベル偽装表示[P.134]

一九七八年、ひとつの小さな事件が起った。
これは、あまりに密かにとりおこなわれたので、大半の人は、気がつかなかったが、
その重要性を知る者にとっては、ひとつの“事件”だった。
サントリーがオールドのラベルからコッソリ
“VERY RARE OLD”の文字を取り除いたのである。
むろん「お知らせの広告」などなかった……。

この表示をやめさせたのは日本消費者連盟です。
この英文の表示の意味は「世にも稀なほどに古い」ということです。
すなわちウイスキーの基本成分、モルト(原酒)を非常に長い年月、
木樽にねかせてあります――という意味です。
ところが、このオールドは年々二割増の需要に答えてドンドン出荷している超売れっ子ウイスキー。
「世にも稀なほど古いモルト(原酒)をつかって」出荷することなど絶対不可能。
すなわち堂々たるサギ表示ということになります。

政府はサントリーの偽酒犯罪を擁護する[P.136-137]

原酒が一滴も入っていない色つきアルコールを
「ウイスキー」と称して販売したらヨーロッパやアメリカでは処罰される。
ウイスキーでないものを「ウイスキー」と偽って瓶に詰めて売れば、
これはもう立派な犯罪だというわけである。当たりまえの話だ。

ところが、サントリーなどは戦後一貫して
例のトリス等を売りまくることでこの“犯罪”を堂々と犯してきた。

≪中略≫

政府は、サントリーなどのこの“犯罪行為”をどう考えているのか?
この「にせウイスキー問題」が国会で論議されたことがある。

一九七八年六月一日、衆議院、物価問題特別委員会の質疑応答を再現してみる。

質問するのは、社会党、馬場猪太郎代議士である。

馬場(猪)委員長 全く原酒が入っていないようなものでも
(一般社会の)通念だったらウイスキーだと言っても差しつかえないということですか?

長谷川政府委員 鳥を全然つかっていない焼鳥というのが出回っておりますけれど、
これは鳥ではないということを皆さん十分承知されておるような場合は、
焼鳥ということで、直ちに不当表示とは言えないのではないかというふうに考えております。

原価三〇〇円の五万円ウイスキー[P.142-145]

時は一九七八年三月二九日の衆議院大蔵委員会の席上。
質問するのは只松祐治氏。
答えるのは国税庁関税部長、矢島錦一郎氏。

質問の主旨は、サントリーの五万円のウイスキーは不正競争防止法違反の
“虚位商品”ではないかというものである。

その根拠は次ぎのとおり。
たとえばこの『ザ・ウイスキー』には最高品質の一〇年ものモルト以外しかつかわれていないとする。
この世界最高品質のモルトは、一トン二〇万円の麦芽、四万円のトウモロコシを使い一〇年間熟成させ、
その間の金利を六%と見るとその価格は一L当り三二九円になる。
しかもこれを水で薄めて、
壜容量〇・七六Lにすると三〇〇円を割ってしまう信じられない安さになる。
“世界最高品質(?)”のウイスキーでも一本あたりの中身の原価は
タッタの三〇〇円以下になるのである(!)。
それがどうして五万円ナリの『ザ・ウイスキー』に化けるのか?

国会の席でも発言を追ってみよう。

只松委員 これは明らかに私がさっきから引用しております法律違反になります。
これは例を引くまでもなく、時計のインチキを“けいちゃん売り”といって、こういうことをやっておる。
当然にこれは犯罪を構成するとされております。
こういう嗜好品、あるいは、人間が酒を飲んでいい気持ちになる。
こういう弱点を利用して三〇〇円足らずのものが五万円に化けていく。
こういうふうに中身がきわめて安価である。
それが非常に高価に売られておるという場合には、不正競争防止法第一条にあります
『商品の品質内容・製造方法・用途若ハ数量ニ付誤認ヲ生ゼシムル表示ヲ為シ
又ハ之ヲ表示シタル商品ヲ販売スル行為』ということで、
これも違反行為に当たると書いてあります。
私はそういうふうに判断をいたします。(抜粋)

これに対する政府側答弁は、五万円の価格の中には、
酒税が一万七五〇〇円余り含まれているし、
酒というものは自由価格だからとまことに歯切れが悪い。
「所有自体に満足感を充足させるというものが
やはり嗜好飲料としての宿命でございまして……」(矢島政府委員)。
バカバカしい回答である。
消費者が五万円ナリのウイスキーを無理してでも買い求めるのは、その中身、
品質が対価に相当するだけの価値を持っていると信じるからこそ、金を払うのである。
中身が三〇〇円以下のシロモノだと分かっていれば、
どこにこのようなインチキウイスキーに
「プレスティージや格調を感じたり、所有自体に満足感を充足させる」
阿呆がいるものか。

その上、驚いたことに、
この『ザ・ウイスキー』の“贅を尽くした(?!)”ビン代がナント一万円もするという。

只松委員 中身が三〇〇円で外のビンが一万円だということになると、
これはウイスキーといえますかね。そんなのはビンとして売ったらいいじゃないですか。

そのとおりである。なんのことはない『ザ・ウイスキー』の愛用者は、
五万円出してビンを買っていたわけである。

≪中略≫

超高級品に見せかけて法外な値段をふっかけた
安物時計(ピンレバウォッチ)を売りさばけば、これは立派な犯罪である。
すなわち「品質、内容等ニ誤認ヲ生ゼシムル表示等」で販売したからである。
すなわち、サントリーの誇る“最高級品”『ザ・ウイスキー』も同法で禁止している
『虚偽の不正競争に該当』するインチキ商品以外のなにものでもない。

サントリーブランデーのラベル偽装表示[P.148-149]

本来の表示例にならえば、
サントリーのV・S・O・Pなど二〇年以上も昔のブランデーを今、売っていることになる(?!)。
あの安もののV・Oでも一〇~一二年前のものになる。(絶句!!)

そんなバカなことはないのであって、はっきりいえば、
ヨーロッパの由緒あるブランデーのランキングに、
目先きのきくサントリーなどのニッポンの洋酒メーカーがちゃっかり、便乗しただけのこと。

サントリーの広報室に問い合わせてみました。
電話の向こうの担当者のシドロモドロになりながらの“回答”です。
「あ、アッー……それは商品名でございまして……」
(Very Superior Old 等の略で、熟年度のランクを示しているのではないのですか?)
「いえ……何年ということではなくて、ウイスキーに、リザーブ、オールド、
角と名づけているのと同じ、商品の区別にすぎません。」
さらに、いろいろブレンドしているので、どのくらい古いとはいえませんが……と逃げる。
それも当然、国産“ブランデー”は、
本場のナポレオンなどとは似ても似つかぬ添加物だらけの偽ブランデー。
それでヨーロッパの由緒あるランク制を盗用してシレッとしている狡猾さにはあきれる。

独占禁止法に違反しているサントリー[P.150-153]

独禁法には次のような定めがある。
「第一位の事業者の占拠率が五〇%を超える。
あるいは上位の二社の占拠率があわせて七五%を超える場合」(第八条四項)

ところで、国産ウイスキー業界の巨大な“怪物”サントリーの市場占有率は、
ウイスキー部門で七二・五%。オールドは約九〇%(一九七五年)という
“驚異”の占有を行なって平然としている。
これは「一社で五〇%以上」といった生やさしいものではない。
見事な独禁法違反である。

≪中略≫

「自由経済の番人」公取委はその伝家の宝刀を抜くどころか触わる気配すらもみせない。
ただ、一九七七年一一月に、この一一条の規定運用のため、
ウイスキーについては市場占拠率の高い二六品目について、
市場占拠率を“調査しているところ”という。

≪中略≫

信じられないことに公取委委員長の諮問機関である「独占禁止懇談会」のメンバー二二名の中に、
親日鉄副社長・斎藤英四郎や三井物産専務・町田栄次郎氏などとともに、
そのサントリー社長・佐治敬三氏も名前をつらねていたのである。

カラメルが成分表示されないカラクリ[P.154-155]

一九八〇年七月三〇日、
公正取引委員会は日本洋酒酒造組合等から申請のあった「表示に関する公正競争規約」を認定。
この規約にもとづいて国内で販売されるすべてのウイスキーのラベルがかわりました。

≪中略≫

これまで知らん顔で添加していた“着色料”のカラメルも
〇・二%以上使うときには「カラメル」と表示しなければならない。

このカラメル着色の“上限値”には、次のような裏話がある。
あのコカコーラのカラメル着色の濃度は〇・四%。これであの焦げ茶色がでる。
〇・二%以上カラメルを添加すればどんな“真ッ黒け”のウイスキーができあがることか。
この一事をもってしても公取委は実際に“添加されるはずのない”
「上限値」をメーカーの圧力で決めさせられたことが見え見えである。

モルトでなくてもモルトと表示される[P.155-156]

英国のスコッチなどは、
「三年以上熟成したものでなければモルトではない」という厳しい法律に守られていますが、
日本ではほんの数ヵ月“寝かせた”ものでも「モルト」と表示してかまわないのです。
熟成期間を「○年」と併記させないと全く無意味。
“早起きモルト”が表示実施後も大量に使用されることでしょう。
一応規約では、「もし、熟成年数を表示する場合は、
混合された一番若いモルトの年数を表示すること」となっていますが、
業界では、この表示はやめましょうやと談合してあるというからおはなしにならない。

アサヒスーパードライの原料米は古古米[P.169]

酒評論家の穂積忠彦氏は次のように述懐する。
「かつて食糧不足時代には『ビールは穀物のクズ屋』とささやかれたほど、
貪欲にさまざまな雑穀をつかって今日の栄光を手に入れたのである。」

このように日本のビールに米が大量につかわれていることは業界では“常識”だという。
それもまともな米ではなくて品質の悪い「クズ米」である。
これが原材料の約四分の一も使われている(!)。
クズ米とは、正式には破砕米といい三年以上たった古古米で
「異臭を発したり、味が低下して」とてもごはんとして食べられないものを破砕して粉末にし、
みそ、しょう油や米菓子などの業務用に安く払い下げられているもの。

ビールの添加物[P.169-170]

  1. 酸化防止剤――L・アルコルビン酸
  2. 消泡剤――シリコン樹脂
  3. 呈味剤――(味をよくするため)グリシン―〇・一%
  4. 老化防止剤――(酵母臭を減らすため)DL-アラニン―一・五%
  5. 分散剤――(合成糊料、泡立ちをよくする)ポリアクル酸ナトリウム
  6. 安定剤――アルギン酸プロピレングリコールエステル―〇・〇一%
  7. 酸化防止剤――エリソルビン酸―〇・〇ニ%

ワインの添加物[P.208]

  1. 漂白殺菌剤――次亜硫酸ナトリウム他五品目
  2. 酸味剤――クエン酸
  3. 呈味剤、酸化防止剤――エルソルビン酸
  4. 着色料――タール系色素(一二品目)
  5. 消泡剤――シリコン樹脂
  6. 人工甘味料――ソルビット
  7. うま味増強剤――グルタミン酸ナトリウム
    (ナント、あの「味の素」なのでアリマス)その他、ニ品目
  8. 発酵短縮、酒質安定剤――重合リン酸塩
  9. 香料――アンスラニール酸メチル、エナント酸エチル。
    (ホンモノのような香りをつけるために)

その他、脱色のために活性炭がつかわれ、ろ過にはケイソウ土が使用されている。

ボトルキープしたウイスキーは安物にすりかえられている[P.312-313]

都内のスナックでアルバイトをしていた若い女性の体験談によれば、
オールドや角のキープボトルの中身は、スリカエられている(!)という。

最初のボトルは、客に手渡して開けさせるので、これは本物である。
ところが、このボトルが空になると「もう一本いれときますか」とくるので、
鷹揚に頷くと目の前でキュッキュッと開けて注いでくれるが、これがクセモノである。
二本目のボトルにはあらかじめレッドなどが詰められている、という。
聞き捨てにならない証言である。
そしていかにも新しい蓋を今、目の前で開けたかのように“演技”するのである。
こんなこと、この世界では「ジョーシキでしょオ!」といわれて考えこんでしまった。

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