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書籍と雑誌の要約と解説

続あぶない化粧品

美しくなるために

装丁
続あぶない化粧品 続あぶない化粧品
日本消費者連盟
三一書房(三一新書)
ISBN4-380-81000-3
1981/01/31
¥800
目次
  1. 素肌爽快!!――自然派「ノーメイク」体験集
    1. 日頃の疑問がすっきり
    2. 意外や意外、お肌がツールツル
    3. 洗顔するとものすごくさっぱりして
    4. 親友の奥さんとははげましあって
    5. 友だちに「きれいになったね」といわれて
    6. 二〇冊の本を私の愛する人たちへ
    7. お肌をいじめるのは「いちぬーけた!!」
    8. まだ、十五歳ですもの!
    9. 化粧品メーカーの圧力?
  2. まだ なにが?
    1. はじめに
    2. サイモンピュアの中身
    3. 無公害化粧品
    4. 流動パラフィン
    5. ラノリンかぶれ
    6. 経皮毒性
    7. ニトロソアミン
    8. 副腎皮質ホルモン
    9. フロンガス
    10. ACS化粧品
    11. ミノン
    12. 殺菌洗顔
    13. 漢方化粧品
    14. CO・OP化粧品
    15. ソニー化粧品
    16. フレッシュパウダー
    17. マッサージ痩身術
    18. 栄養シャンプーの正体
    19. エメロンシャンプー
    20. ヘアドライヤー
    21. ビタミンC
    22. オリーブ油
  3. これだけひどいめに
    1. 戦前から
    2. 肌あれ
    3. 吸収? 浸透?
    4. 化粧品一一九番
    5. 腹立たしさ
    6. 試供品かぶれ
    7. ホルモンクリーム使用始末記
    8. ステロイドホルモン
    9. 心臓弁膜症
    10. 日光皮フ炎
    11. エイボン
    12. 軟こうかぶれ
    13. 治療法
    14. お子様化粧品
    15. オーデコロン
    16. マスカラ
    17. パオンの破裂
    18. ニドー
    19. 美容整形
    20. クリーニング
    21. アデランス
    22. 訪問販売
    23. キャッチセールス
  4. おかしいことだらけ
    1. 不当表示
    2. 栄養には?
    3. 始末書
    4. 注意表示
    5. アメリカの表示
    6. 厚生省は?
    7. 政治家
    8. 医者の責任
    9. 「光と皮膚」
    10. 圧力
    11. 口止め料
    12. 大阪の化粧品裁判
    13. 医薬部外品
    14. 美容部員制度
    15. 美容業界
    16. 素肌有情
    17. 夜討ち朝がけ
    18. ポーラ
    19. ビューティチェッカー
    20. ヒューマンドキュメント
    21. キャンペーンソング
    22. CMディレクター
    23. 新卒者美容講習会
    24. 男性向け美容講習
    25. イオナ社長独白記
    26. “美顔器”狂躁曲
    27. マンナン食品
    28. 東南アジアで
    29. 化粧品文献批判
  5. もっと美しく
    1. 自然な食物を
    2. 繊維質
    3. 海草
    4. いらだち
    5. 姿勢
    6. 紫外線
    7. 化粧容器リサイクル
    8. 自然美容法
    9. ヘチマ水
    10. せっけんのPH
    11. 素肌は美しい
    12. 女性タレント
    13. もっと美しく
文献
  1. 『朝日新聞』1979年12月7日[P.44]
  2. 『あぶない化粧品』78頁_194頁[P.48_250]
  3. 『日本工業新聞』1978年12月15日[P.48]
  4. 平凡出版『popeye』[P.69]
  5. 『健康ファミリー1978年5月号』[P.102]
  6. 『ロサンゼルスタイムス』1979年2月22日[P.119]
  7. 『コスメポスト』1979年11月1日[P.135]
  8. 『朝日新聞・夕刊』1980年5月28日[P.156]
  9. 『朝日新聞』1980年1月23日[P.159]
  10. 『東京新聞』1979年12月21日[P.176]
  11. 『読売新聞』『毎日新聞』『北海道新聞』1979年10月30日[P.209]
  12. 『薬発第1341号』1980年10月9日[P.239]
校正
  1. 化粧品110番⇒化粧品119番[P.83]
  2. をはいていたら素足といわないのと同じです。⇒靴下[P.178]

内容

化粧品ニトロソアミン発生事件[P.42-43]

多くの化粧品に乳化剤・浸透剤としてトリエタノールアミンという薬品が多用されています。
このトリエタノールアミンが不純物として含まれています。
このジエタノールアミンと化粧品の製造過程で混入した亜硝酸塩が化合、
そして生成されたのが有毒発ガン物質ニトロソアミンというわけです。

米国では二九の化粧品中二七品目から検出!

米国では、一九七七年FDA(米食品医薬品局)が実施した調査で、
二九品目の化粧遺品のうち、なんと二七品目にこの発ガン物質、
ニトロソアミンが含まれていることがわかりました。
この調査は、米マサチューセッツ州のサーモ・エレクトロン研究センターの
デビッド・H・ファイン博士の指導のもとで大々的に行なわれたもの。

槍玉にあがった化粧品メーカーは、
エイボン、ヘレナ・ルビンスタイン、マックスファクター、
P&G社など大手メーカー総崩れの有様。
この報告を受けFDAは、
全米ガン研究所で実験中のヘアダイ(毛染め)の安全性についても
FDAとしては保証できなくなるだろうと明言。
全米の化粧品メーカーに一大衝撃を与えています。
化粧品の安全性の神話はアメリカで大きく崩れさったのです。

三万点中、二〇品目だけ検査して「問題ない」と胸をはる厚生省

さて日本の厚生省のニトロソアミンに対する考え方はこうです。
「ニトロソアミンは検出されてもごく微量で問題になる量ではない」。
ようするに心配いらないといっているわけですが、
これまで厚生省が分析した市販化粧品のサンプルは、わずか二〇品目。
それにくらべて年間、
厚生省に各化粧品メーカーから製造申請が出される化粧品は約三万品目。
三万点中タッタの二〇コを分析して「心配ない」と厚生省に“太鼓判”を押されても、
わたしたちはとても安心できない。

日本でも市販の乳液から一五・八ppmの高濃度検出

日本の市販の化粧品からも高濃度のニトロソアミンが検出されています。
同志社大学の西岡一教授は、国内化粧品メーカー八社、
三八品目をアメリカと同じ熱エネルギー分析装置で実験。
その最終実験報告によれば、国内化粧品メーカー八社、
一八品目に発ガン物質ニトロソアミンを検出、うちA社の乳液は
一五・八ppmという驚くべき高濃度のニトロソアミンを含有していたのです!

検出結果は次のとおりです。(ppbは1/1000ppm)

  • 一〇~三〇ppb ………… 六コ
  • 三〇~二〇〇〇ppb ……一〇コ
  • 二〇〇〇ppb以上 ……… ニコ

(うち一コは一五・八ppm)

西岡教授はさらに一七品目の化粧品に亜硝酸塩を添加してみたところ、
なんと八品目にニトロソアミンが生成されたことを示す強い反応があったというのです。

すぐにトリエタノールアミンを全面使用禁止に

各メーカーの反応は次のとおりです。
カネボウは「いまのところトリエタノールアミンの使用をやめる考えはない」。
資生堂は「トリエタノールアミンの使用を減らし、
将来は全廃の方針で非イオン界面活性剤にきりかえていく」という回答。
(「朝日新聞」七九年一二月七日)

一九七九年一二月八日、私たちは厚生大臣宛に、
ニトロソアミン生成の原因物質である
トリエタノールアミンの全面使用禁止を文書で申し入れました。

フロンガスのダブルスタンダード[P.49-50]

エイボン社の例を見てみましょう。
一九七七年夏の同社のフロンガス問題についての態度は、
「指導的メーカーとして、率先して米国FDAの(使用制限の)決定にしたがう」
と胸を張っています。
現に、エイボンのカタログから次第にエアゾール製品は姿を消してゆき、
代替品のポンプ式のものがでてきています。
アメリカに本社を持つ同社としては賢明な対応だったといえます。

ところが、約一年後、態度を急変、
「オゾン層云々の学説は疑わしいから」と当分フロンガスを使い続けることを表明しました。
アメリカのエイボン社はフロンガスを使用中止。
日本のエイボン社は使い続けるというのです。
なんだかヘンな話です。

日本エイボン社をふくめ日本の大手の化粧品メーカーが加盟する日本エアゾール協会から、
参加会員に発信された「フロン(ガス)問題について」と題された文書の一部をご紹介しましょう。
――無用の混乱を招き、ひいては消費者にまで誤解をきたすような言動を慎むとともに、
われわれの商品(フロンガス製品)については不動の自信をもって…中略…
この(フロンガス)問題の結論が得られるまでに業界の環境を整備するため、
関係官庁との連携の強化実現につとめ……どうか、
当業界の安定発展のために事情を十分にご理解いただきたい、
なお一層の協力団結を…――(「日本エアゾール協会」会員各位、昭和五三年三月一七日発信)

アスベストドライヤー[P.68-69]

アメリカ、WRCテレビの女性ニュース・キャスター、リー・トンプソン嬢は、
自分の番組で「市販されているヘアドライヤーの五台に一台は、
発ガン物質、アスベスト(石綿)を使用している」とスッパぬいた。
この発ガン物質の微細な粉末を熱風で顔に吹きつけているというのである。
その発見のキッカケは、彼女の助手のカメラマンが、
現像した写真の乾燥を急いで手許のヘアドライヤーを使用したところ、
印画紙の表面にアスベストの微細な粉末が付着していたからというのが面白い。

ガ然、職業意識に目覚めた彼女は市販されているヘアドライヤーを
なんと三六種類も買い集めて試験所でテストしてもらった。
その結果、六種類のドライヤーがアスベストの微粉末を吹き出している
ということがわかったのである。
自信をえた彼女のブラウン管を通じてのキャンペーンに米議会も公聴会を開催、
米国民もこの勇気ある女性キャスターの証言を見まもったという。

市販ドライヤーでも絶縁材にマイカ(雲母)を使用しているものと
アスベスト(石綿)をつかっているものの二種類がある。
スイッチオンしてブローしている排気孔をのぞいてみて灰色に見えるならアスベスト、
光る物質だとマイカで一安心という。
さて、お宅の愛用のドライヤー、一度のぞいてみたら……。

灰色高官ではないが、グレイに見えたら用心して使いすぎないほうがいいだろうというのが、
海のむこうからのニュースの教訓でしょう。

*平凡出版社「popeye」参照

化粧品119番(1979年3月1日~3日)[P.83-86]

化粧品119番の結果(3月1日~3日、受付総数318件)
症状別
しみ (95人)
黒皮症 (46人)
かぶれ (35人)
はれ (29人)
しっしん (23人)
かゆみ (17人)
ひりひり (9人)
赤紫 (4人)
髪が弱くなる (2人)
目が赤くなる (2人)
アレルギー (2人)
いたみ (2人)
年令別
10代 (1名)
20代 (27名)
30代 (91名)
40代 (73名)
50代 (24名)
60代 (1名)
70代 (1名)
80代 (1名)
メーカー別
資生堂 106(件)
ポーラ 53
カネボウ 45
マックス
ファクター 17
小林コーセー 15
ジャパン
オリリー 15
メナード 9
ちふれ 7
レブロン 5
ジュジュ 5
シーボン 4
ハイム 4
リベーヌ 4
デュポン 4
ヤクルト 3
セザンヌ 3
ピアス 3
クオレ 3
イオナ 3
パオン 3
アルビオン 2
リマ 2
エイボン 2
マノン 2
ジュミネス 2
ニベア 2
ポンズ 2
ヒノキ 2
ウデナ 2
地域別
東京 113(件)
神奈川 47
千葉 26
埼玉 39
群馬 6
栃木 3
茨城 4
長野 4
北海道 2
福岡 5
富山 1
名古屋 1
新潟 2
奈良 1
静岡 1
愛知 1
滋賀 1

▼江戸川区・Tさん(英文タイピスト・二八歳)
口紅をつけたら夕方、むずがゆくなり、三~四倍に腫れあがった。
かくすためにマスクをして通勤していたら、
下が見えないので地下鉄階段を踏みはずしてネンザ。
皮フ科と整形外科にあわせて通い、足は温泉治療でようやく完治。
メーカーは一万円の口止め料を持ってきた。(口紅=カネボウ)
▼神奈川県・Tさん(ジャーナリスト・四三歳)
シャンプー、リンスをつかったら夫婦そろって、
即頭部がカイセン状皮フ炎になってハゲた。
メーカーは三万円で示談を申し出てきた。
▼逗子市・Hさん(主婦・五一歳)
ハイケーキをつけ外出したら、日光が熱くしみるよう。
タオルでふくとピリッとする痛み。
洗顔後、真っ赤になり、医者のステロイド軟こうで赤ら顔に。
暖房さえも痛い。(ハイケーキ=ピアス)
▼横浜市・Kさん(家事手伝い・一九歳)
まぶたにシコリができて、ウミをもち、ものもらいみたいに腫れちゃった。
(マスカラ=資生堂・アイライナー=小林コーセー)
▼船橋市・Yさん(主婦・三一歳)
七年前から目の下にシミができた。
オキシドールでうすくしたらやけどみたいになった。
化粧品をつけないと出られない。
(ビコーリアルティ=カネボウ、シミにいいとすすめられて)
▼千葉市・Aさん(男性・二六歳)
男性用乳液をぬったらヒリヒリした後、眉の上に五ミリくらいの黒ずんだシミができた。
(MG5スキンコンディショナー=資生堂)
▼品川区・Mさん(主婦・四四歳)
四年前からポーラをつかってピリピリしたが、
なれるまでつかいなさいといわれて次々につかってきた。
顔が黒っぽくなってきた。
二〇年ぶりに会った友人に、
色白だったのにどうしてそんなに黒くなったのといわれてショックを受けました。
(基礎化粧品類=ポーラ)
▼足立区・Nさん(会社員・三九歳)
目の下にシミができて友だちにパンダのようだといわれた。
医者に行ったら、眼のわきと背中を一㎝ずつくらい切りとられて検査をされた。
メーカーのカネボウからは二万円もらって一筆入れさせられた。
(基礎化粧品等=カネボウ)

▼横浜市(匿名希望)
口紅で唇にシミができて五~六コ、ホクロみたいになった。
(口紅=カネボウ)
▼千葉県・Nさん(主婦)
コールドと漂白クリームをまぜて一時間、顔にぬっておくことを一〇年間やってきた。
冬になると肌がひどくつっぱる。
栄養オイルをつかったらカユイ、イタイ
(コールドクリーム・栄養オイルなど=ポーラ)
▼川崎市・Iさん(主婦・五七歳)
毛染めの後、手が赤くなり、顔も赤くなった。
病院に通院しているうちに墨をぬったような色になり、
最近はかゆくなったり、痛みを感じたり…。
(粉末染毛剤<ヘアダイ>=パオン)
▼長崎市・Nさん(主婦)
ポーラで二〇年間、化粧してきました。
そして去年の夏、黒皮症に。
鉄のナベの黒いのと同じです。
サンダース自然化粧品で五~六万円もつかってかくしています。
(基礎化粧品類=ポーラ)
▼匿名(二二歳)
マユズミ・アイカラーをつかっていたら毛がなくなってきた。
(アイブロウ・アイライナー=資生堂・カネボウ)
▼渋谷区・Sさん(主婦・四六歳)
ヘアスプレーをつかっているが、頭髪が二~三㎝で切れてしまう。
毎日ブラシをするとかならず一〇本ずつくらい切れるのです。
(VO5=サンスター)

試供化粧品の実験台にされた主婦[P.87-88]

東京の豊島区の主婦内田さん(三九歳)のお宅の玄関先に
品のいい四〇がらみの婦人が立ったのが、昭和五三年の春さき。
「新製品として売り出す前のテスト品です。つかってみて感想をお聞かせください」
と真っ白い箱に入った乳液とアンケート用紙を置いていった。
箱は二つで、A・Bと記号がふってあった。
「このご近所十軒ほどをまわっておねがいしているのですのよ」
という言葉を信用してしまったのだ。
一週間ほどつかってみたが、スベスベして調子がよかった。
一週間後、例の婦人がまたやってきてアンケート用紙を回収、
かわりにプラスチックのオムスビバッグをお礼として置いていった
(チャチなオマケではある)。

その乳液を高校生の娘さんも、その後もつかっていた。

その娘さんの手が三ヵ月をすぎた夏ごろから異様に荒れだしベソをかきはじめた。
皮フ科医に急いで連れていくと「なにか刺激物を塗ったはず」という。
例の乳液以外に原因歯考えられない。乳液をやめても荒れた手は治らない。
寒くなってくるとベロベロに皮フがむけ、ケロイド状になって血が出てきた。
テニス部に所属しているこのお嬢さんは、今ではラケットを持つのもむずかしい。
右手の指の内側の皮フがケロイド状に固まってしまったからだ…!

この母親を幾度となく医者のもとへ駈けずりまわらせた
「アンケート調査」の業者名は未だにわからない。

化粧品性心臓弁膜症例[P.95-96]

もう一〇年も前のことです。
横浜市に住む主婦、Hさんは当時三六歳でした。
ある春の一日、
カネボウレモン乳液を顔にのばして“お手入れ”したあと家族づれで遠足に行きました。
ところが、直射日光にあたった顔一面が赤くなりはじめ、みるみる腫れ上がり、
風船かなにかのようにパチンパチンに腫れあがってしまったのです。
あわてて病院に駆けこんでも原因はわからない。
出がけに塗った乳液が原因とは夢にも思わなかったのです。
鏡台のレモン乳液が犯人だと気づいたのは三回目に、同じように顔をひどく腫らしてからです。
わずか三ヵ月の間に三度も顔が腫れあがったため顔一面に大ジワができ、
六〇歳のお婆さんにまちがわれるほど老けて見られるようになったのです。
また、それから半年後、心臓がおかしくなりゼンソクの発作に襲われるようになりました。
医者の診察の結果は、心臓弁膜症。
「すぐ手術しないとあぶない」。
それまでプールに定期券で通うくらいの健康ハツラツだったスポーツ奥さんが、
一転して心臓弁膜症という重病の診断をくだされたのです。
口に出せないほど痛い大手術の後は階段を昇るのも苦しく、
「辛い毎日がはじまりました。お風呂も肩までつかるともう苦しくなってしまうのです。
大好きだった水泳も、もう一生できません」。

化粧品で顔を腫らして、心臓が悪くなる――十分考えられることです。
リュウマチ熱という病気があります。
体が腫れて高い熱が出ます。
熱が出るというのは体内の病原菌が異常増殖し、それと白血球が闘っていることを意味します。
また、リュウマチ熱の後遺症で突然、心臓弁膜症の発作に襲われることがよくあります。
おなじようなことが、他の熱病にもいえます。
Hさんの症例についても医者の解説は、
顔が腫れたりしてリンパに異常がくると腎臓に負担がかかり、
最後に心臓が悪くなりうる――ということでした。

カネボウの社員は何度か来て謝っただけ。
問題はなにひとつ解決していません。
Hさんを診察した医師の話では当時は何でもレモンばやりで、
レモン乳液や化粧水にかぶれたという苦情が殺到してきた記憶があるそうです。
Hさんは、今もゆっくりゆっくり歩きながら「被害を考える会」の集まりに足をはこんでおられます。

ビニルポリマーが皮下に入り毛穴から出てきた化粧品被害例[P.98-101]

問題の化粧品は「アコラーデジェル洗顔クリーム」です。
メーカーはエイボン。
ある三六歳の女性は、この“洗顔クリーム”を入浴時に愛用していました。
朝夕二回、顔にクリームをつけマッサージをしてティッシュペーパーでふきとり、
その後化粧水で軽くパッティング。
使用して一日目から皮フが“つややか”になり、化粧ののりもよくなってうれしかったのです。
がんらい日光や香料にまけて湿疹が出やすい肌だったのですが、
この洗顔クリームで“つややか”になってからは、まけないようになった。
ところが使用をはじめて二週間もすると
「熱が夕方にかけ三七度二~三分くらい出て」
「心臓が時計のふりこのようにドキドキして」
立ちくらみや頭痛をおぼえるようになる。

洗顔後なんとなく顔がべとついて水で洗ってもおちないので
「不思議だな」と首をかしげながらもこのエイボンの“洗顔クリーム”をつかっていました。
べとつきも乾くとツヤツヤしてなんとなく素敵だったからですが……
そのうちに全身の皮フが“つややか”になって身体全体が
「ロウ人形のような」青白い光沢をおびてきました。
身体のだるさはつづき「のどの奥に水疱ができ異物感」があり
「風呂に入ってもすっきりしない」「汗が出ない」。
さらにたんのう、すい臓が腫れ通院。
体重も一〇kg以上落ち、みるかげもなくやつれてしまった。
四~五ヵ月後、顔は黒ずみ毛細血管が浮いて寝ている間に顔から出血。
さらに、太腿をなにげなく押さえるとキラキラ光るものが毛穴から出てきて驚く。
顔もマッサージするとピンピンと米ツブの半分くらいの白いものが出てくる。
顔を触るとザラザラして皮下に粒々の異物があるようだ。
さらに入浴時、顔と首が赤くなり毛穴から水のようなものがにじみ出てきた。
とっておくと二~三日で乾く。
米ツブ様のものが出ないところは水疱になり、水疱がつぶれた後は黒ずむ。
あまりの異様な症状に気も狂わんばかりになり、
この女性は十数ヵ所の病院を駈けずりまわっている。

この皮下から出てきた“異物”はなんだったのでしょうか?
エイボンからの“洗顔”クリームの成分表を検討した都庁薬務部の証言は、
白い粒状のものは「カルボキシビニルポリマー」という添加物。
皮フからにじみ出た液は「流動パラフィン」であるという。
共立薬科大などの専門家の所見も同じ。

化粧品に原料としてつかわれていた化学物質が体内に浸透し、
毛穴などから排泄されてきたのです!

そのメカニズムは次のようなものです。

使用説明書どおり“洗顔クリーム”を塗ってマッサージした後、
化粧水でパッティングしたため、成分のカルボキシビニルポリマーと流動パラフィンが
化粧水中のアルコールに溶かされて皮下細胞に浸透。
一部は皮下腺、皮下脂肪に蓄積され、毛穴から米ツブ様になって出たり、にじみ出てきた。
そのため「顔からの出血」「毛細血管の浮き出し」「酒サ性皮フ炎」「発疹・水疱」
さらに「異常発汗・呼吸困難」の原因になったのです。

皮下に浸透した一部のこれら“異物”は、皮下の静脈をつたって、
心臓、たんのう(たん汁で排泄しようとする)、皮下脂肪、すい臓、
などの内臓に到達、さまざまな症状をおこしたのです。
この女性を不安に落とし入れた
「心悸亢進、たんのう肥大、皮下の異物感、体重の激減、容貌の急変、すいぞう肥大、じん炎」
などもこれらカルボキシビニルポリマーや流動パラフィンが
内臓障害の引きがねになったからでしょう。

カルボキシビニルポリマーとはなんでしょうか? 
厚生省に登録されたエイボンの成分表では“一・四%”配合していることになっています。
この化学物質、調べてみておどろきました。
これは一種の合成樹脂です。
用途を見てあきれました。
「絵画のツヤ出し(皮膜効果)」
「塩化ビニル貼り椅子などのコーティング(被膜効果)」
「ポリウレタン系接着剤(酸化されて強力な接着効果)」
「印刷用インク、機械グリス(増粘・粘着効果)」etc――。

油絵のツヤ出し剤を顔にぬっていたのです。

お子様化粧品事件[P.110-111]

昭和五三年春。
大阪大丸百貨店のオモチャ売場に五歳の女の子の両親から一つの苦情がもちこまれました。
ウテナの「キャンディキャンディ・お子さま化粧品セット」を買ってあげ、
その子が乳液を顔につけたら、あくる日に顔中に赤いブツブツができたというのです。
買った化粧品は、その他クリーム、リップクリームなどでセットになっていて、
価格は三三〇〇円ナリ。
お子様レンチというのは聞いたことがありますが、お子様化粧品とは初めて聞きました。
オモチャもここまでといった気がします。
慌てた大丸デパートは、日本産業皮フ衛生試験所というところに安全性のテストを依頼。
この研究所で苦情の乳液を、大人二〇人の腕に塗り、
二四時間後、顕微鏡で調べたところ、
うち六人に皮フのシワが深くなるという“異常”が確認されました。

大丸のとった処置は迅速でした。
一〇月二二日付け、同社内通達で、
一切の子供用化粧品を永久に販売しないように全国の各店に指示しました。

大丸が販売中止した理由は次のとおりです。
①子どもの肌はそのままで十分美しい。よって子どもに化粧品は必要ない。
②子どものときから化粧のクセがつくと大人になって黒皮症などをひきおこす恐れがある。
③市販の化粧品は大人用を含めて安全性が十分確認されているとはいえない。

まさに正論である。
大丸の措置にならい、年末から暮れにかけて
伊勢丹・西武・三越・ダイエーなども次々に子ども用化粧品の全面的販売停止、
あるいは一部商品の販売停止の手を次々に打った。

このお子様用化粧品。
これまでクリスマスなどの贈り物シーズンなどによく売れて年間三八億円
(化粧品全体の約五%)もの売り上げがあったそうです。
化粧セットにすれば一〇〇万セット。
それがすべていたいけな子どもの顔に塗られてきたことになります。

子ども用化粧品を販売しているメーカーはウテナのほかに、
ダリヤ、セフラの二社がありますが、ダリヤ社の場合も、
一九七八年暮れ「お子様化粧品セット」で
四歳の女の子の頬と目の下がはれあがるという苦情がメーカーにもちこまれています。

人工植毛詐欺[P.116-122]

人工植毛という聞きなれない言葉が、
雑誌広告などで見かけられるようになったのは、四年ほど前のことです。

現在は最大手の「ニドー」を筆頭に、九社五一店もが営業しています。

この人工消耗のやり方、次のようなものです。
読んで字のごとく、頭皮のハゲた部分に人工の毛を植えこんでいきます。
毛はポリ塩化ビニル製(ポリエステル系樹脂のものもある)。
この人工毛の先がちょうどクジラを獲るモリの先のようになっていて、
一回、頭皮に撃ちこむと、皮下組織まで刺さり抜けなくなる。
やり方は、看護婦のような人が細い針で
一本一本目にもとまらぬ速さで機械的に“植えて”いく。
麻酔はなしである。副作用があるからというのがその理由。
体験者(被害者?)の話によれば、一本埋めるたびにすごい痛さで血が噴き出してくるという。

<中略>

問題は、この血まみれの“毛植え”にとどまりませんでした。
“毛”が抜けてきたのです。
せっかく、数十万円もの大枚を投じて植えた人工毛が、植えて三週間後くらいから、
クシのたびに四本、五本と抜け落ちはじめ、三ヵ月もたつと六割方が抜けてしまった。
北海道の三六歳の男性は、一七〇〇本植えた毛が半年で一本残らず抜けてしまった。
それだけでなく「植毛施術後の化膿がひどく通院」
「脱毛と一緒に皮フまでむけた」
「脱毛後植えたあとが黒くへこんだ」等々、
目を覆うばかりの後遺症の被害者が続出、
ついには「被害者の会」まで結成されるにいたった。
すでに六〇件ほどの被害事例が同会のもとまでよせられ、
最終的な被害者数がどれくらいになるか予想もつかないという。

<中略>

「人工植毛」の問題は「植えた」「抜けた」の悲劇だけにとどまりません。
一九七九年一月一二日に発表された
アメリカの皮フ科医ウイリアム・ハンク氏らの報告があります。
この論文によれば人工植毛をうけた患者二〇症例の診断の結果、
これらの植毛は「一〇週以内にほとんど抜け落ち」
さらに、生体切片検査を行なった結果
「皮フ繊維とリンパ管の炎症を伴った『異物肉芽腫』が確認された」というのです。
生体内の異物肉芽腫は悪性肉腫、すなわちガンに移行する恐れがあるといわれています。

ワセリン豊胸死亡事件[P.124]

昭和四六年秋の日本形成外科学会で行われた報告は、
まさに“衝撃のリポート”と呼ぶのにふさわしいものでした。
それは、日本医大病院に入院していた五二歳の女性が突然、
発熱、血沈促進といった異様な症状を示し、苦しみながら死亡したというのです。
解剖してみると両腋窩のリンパ腺・脾臓・肝臓から、
骨髄にまで異物(ワセリン)が入りこんで細胞に大きな壊死巣をつくっていたのです。
この女性は、それより一一年前に豊胸手術を受け、
バストに大量のワセリンを注入されていたのです。

香水によるクリーニング脱色事故[P.127]

東京クリーニング科学研究所という機関があります。
ここに年間、約千件もちこまれるクリーニング事故の原因の約四〇%は液状化粧品。

“被害”発生のしくみは次のようなものです。

衣服の染料はアルコール分に溶けやすいものがかなりあります。
ところが、オーデコロンや化粧水などの液状の化粧品には
ほとんどアルコールが添加されています。
たとえば化粧氏を使うとき、うっかり胸元にたらしたとする。
本人はそれに気がついていない。
化粧水のアルコール分は次第に繊維と結合していた染料を浮かしてしまう。
見た目には変化はなくても、一~二ヵ月後クリーニング屋に出すと
染料が洗い流されてしまいこぼした部分だけ脱色したり変色する。
それでお店とモメルことになるわけですがクリーニング屋には一切責任はありません。

『東京化粧品被害を考える会』の厚生省訪問[P.153-155]

さる昭和五三年一一月一日
「化粧品被害を考える会」の奥さんたち約十名が厚生省の古い建物をたずねました。
前もって薬務局長や薬務担当四課の課長さんに列席をお願いしていたのに
古ぼけた会議室に現れたのは三十前後の若い役人ばかり。
借りてきた猫のように向いの机に座ったのは、
薬務局企画課、審査課、安全課、監視指導課の課長補佐ら六名のお役人。

とりあえず緊急に厚生省に行なっていただきたいと、
次のことを要求する「申し入れ書」を手渡しました。

一、黒皮症・シミなどの化粧品による被害についての責任は、
製造販売したメーカーと許可をあたえた国にあることを認めること。

二、化粧品の広告での次の四つの表現を禁止しなさい。

①肌あれを防ぐ、
②栄養をあたえる、
③シミ・色黒・ニキビ・ソバカス・小ジワ等に効果がある、
④日焼けを防ぐ

三、効能・効果に関する薬務局長通知第(四四号)の即時撤回
(メーカーのウソツキCMも顔負けのデタラメの化粧品の“効能効果(?)”を羅列しているから)

四、成分表示・製造年月日表示等の実施――他

これに対する厚生省側の“回答”です。

「国が許認可を与えたからといって、被害の責任を取るのは難しいでしょう」
(大木企画課長補佐)。
それでは続発する化粧品障害を見のがしてきた監視指導行政が
全く怠慢だったことについての責任はどうなるのですかと尋ねれば黙ってうつむくだけ。
厚生省のヤル気のなさは、同省が昭和五二年に把握した化粧品被害の件数が
全国でタッタの十一件であることからもよくわかります。
二番目の化粧品の全くウソの広告表現の禁止についても、
「今日は課長から話だけ聞いてこいといわれておりますので、
意見としてうかがっておきます」と恐る恐る言って沈黙。

厚生省の化粧品行政の“原典”となっているまちがいだらけの化粧品の効能効果を羅列した
「諸悪の根源」の薬務局長通知の即時撤廃についても
「役所的言い草で、申し訳ないが、
間違っているルールでも、それにしたがわざるを得ないのです」
(監視指導課、山本氏)と答え、これには被害者の奥さんたちもア然。
ルールがまちがっていたらルールを改めるのが先です。
厚生省の役人の頭の感覚を疑わせるような発言です。
「化粧品の被害者が、こうして厚生省を訪れたのは何回目ですか」と聞けば、
記憶にあるかぎり戦後はじめてだと思いますと答えて奥さんたちをあきれさせる。
薬事法改正などについて化粧品メーカーとは会っているんですかと聞けば、
「エエ……業界の方とはしばしばお会いしてご意見をうかがっています。」
と正直に答えたあとあわてて口をつぐむ。
誰のために厚生行政をやっているかをはっきり白状したこの日の厚生省の態度でした。

化粧品業界と癒着する斉藤栄三郎代議士[P.155-156]

大阪の化粧品被害を受けた奥さんたちが某メーカーに抗議したときのことです。
その責任者がはしなくも口にしたそうです。
「あんたたち、いくらやってもムダだよ。
われわれは斉藤栄三郎センセイに四億円積んでいるんだから……」。
いかが思われますか? 
一兆円を超える“サギ商品”の莫大な売り上げを維持するためのカネとしては
安いものかもしれません。
彼を推すのは化粧品メーカーの他、全国の化粧品小売業の業界団体、「全粧連」。
もう一人化粧品業界を地盤にしている代議士の名前をあげておきます。
歌のおばさんこと安西愛子さんです。

この化粧品業界とのユ着を斉藤栄三郎氏自ら明らかにしています。
一九八〇年六月の参院選を控えて
「あまりにもカネのかかりすぎる選挙の実態を知ってもらうため」というのが、
その“自己批判”の動機。
選挙準備をはじめた前年の二月から公示直前の約一年半の間に「後援会活動」の名目で、
同氏の懐に入ったカネは「……『中規模の収入』としては、二回開いた『励ます会収入』と、
化粧品業界の寄付金がそれぞれ四千万円……。」(「朝日新聞」一九八〇年五月二八日夕刊)。
同氏は、公示前にすでに事前運動で「五億円つかった――」と公言してはばからない。
とにかく、これまでささやかれた化粧品業界のユ着が、
はしなくも白日のもとにさらされたわけで、
同氏が、代議士時代に厚生省薬務局に、日参していたという噂もうなずける。

皮膚科医は化粧品被害を飯の種にしている[P.157]

どちらかといえば、消費者サイドに立つ良心的皮フ科医といわれる
宮川秋医師(虎の門診療院)と講演会でご一緒したときの話です。
宮川氏は、講演の終わりに次のようにしめくくられました。
「化粧品が売れなくなったら日本の皮フ科医の半分はオマンマの食いあげでございます」。
会場の奥さんたちの間に声にならない驚きの気配がたちこめました。
氏の横顔には、苦渋とも自嘲ともうけとれるかげりが色濃く漂っていました。

皮膚科医は巻き添えを恐れて化粧品カブレの診断書を出さない[P.159]

田園調布のある開業医の皮フ科医を訪ねたある奥さん。
十数種類の化粧品のパッチテストではっきり陽性(+)が出たので
「診断書に書いていただけますか?」と頼むと戸惑って曰く、
「これまでに診断書を出したことがある。そうしたら非常に迷惑をこうむった。
ぼくの一生にかかわる問題だから出せません」

資生堂100周年記念学会[P.160-161]

ここに一冊の書籍があります。タイトルは「光と皮膚」。
監修、東京遁信病院副院長、小堀辰治・東邦大学教授、安田利顕と表紙にあります。
出版社は金原出版㈱。
この三〇〇頁余りの厚手の“学術書”の題字の下に
「資生堂創業一〇〇年、光と皮膚のセミナー講習記録集」という金文字のサブタイトル。
「資生堂創業一〇〇年……」、見逃せない見出しです。
なんとこの本は、資生堂創業一〇〇周年を記念して発刊された“学術報告書”なのです。
この国際シンポジウムが開催されたのは一九七二年一一月一〇日・一一日。
場所は「帝国ホテル・富士の間」。
主催は(もちろん)株式会社資生堂。
後援がなんと毎日新聞社(これも問題アリ)。
この資生堂主催の“皮フ科学会”の会長、安田利顕氏以下、
日本の皮フ科学界のソウソウたる顔ぶれが居並んでいます。

<中略>

来賓として祝辞をのべているのが、当時の厚生省医務局長、滝沢正氏。
続いて東京医科大学学長の祝辞。
行政責任者、皮フ科学界と資生堂との緊密な関係を証明するのに
これほど恰好の“証拠”はないのではないでしょうか?

化粧品業界の圧力の前に成す術のないマスコミ[P.162-164]

新聞社の収入に占める購読料収入は、全収入の約1/4。
残りは全て広告掲載による企業からの広告料収入です。
営業面からいえば、読者より広告を載せてくれる企業のほうが
“大事なお得意さん”ということになります。

たとえば、わたしたちが、化粧品の障害を防ぎ、
アピールするためにメーカーとの対話集会を開いたとします。

各新聞社からも記者が相当数取材にきます。
皆、被害を受けた主婦たちにインタビューして、
「そりゃヒドイな」と、ことの深刻さに眉を曇らせます。
そういうとき、メモ用紙に走らせる鉛筆の動きも速くなります。
そんな記者たちが、社に帰って書き上げた原稿もたいていボツになってしまうのです。
運よく載ったとしても削られ、修正されて、
社会面の隅に一〇行記事だけ“報道”されることが多いのです。
その一~二日後に、バーンと資生堂なら、資生堂の半頁大の広告が堂々と掲載されて、
ハハンなるほど、わたしたちもウラのかけ引きを想像してしまうのです。
朝日新聞のある記者が、わたしたちの化粧品の虚偽、不当表示の摘発のアクションを受けて、
資生堂・カネボウなどの実名を挙げて記事を書きました。
この新聞報道の後、彼は上司から肩を叩かれてこういわれたそうです。
「イヤあの記事で一千万円以上の損失だヨ」。
資生堂あたりが、広告掲載を拒否してきたということでしょう。

広告料は、慢性的赤字に苦しむ大新聞としても
ノドから手が出るほど欲しいものにちがいありません。
その足許をみすかして、広告掲載料をちらつかせて記事内容にまで圧力をかける。

<中略>

ある新聞記者は、化粧品問題のウラにある陰湿さに驚き、
盛んに矛盾を指摘する記事を書きつづけたところ、
突然、社会部からスポーツ新聞に“飛ばされ”ました。
また別の記者は「少しは営業の広告取りの苦労も考えろ!!」
と上司からどなりつけられたそうです。

「化粧品問題の集会を取材して帰ると、
その時になるときまってドーンとメーカーから広告が入るんだから……」
とはある女性記者の嘆きです。
某新聞社のエライ人がこういったそうです。
「化粧品メーカーでもどこでも、広告を載せてくれればお得意サマですヨ。
お得意サマのことを悪く書けるはずがないでしょう」。
これが現代の新聞人の平均的な感覚といってよいようです。

天下の大新聞からして、おっかなびっくりの腰つきですから、週刊誌などは推して知るべし。
大阪の化粧品公害被害者の会が、提訴した直後、某週刊誌記者が取材に来た。
三週にわたってこの問題を連載しますとはりきって取材して帰ったそうですが、
結局一行の記事にもならなかった。
提訴直後「資生堂が週刊誌を発行している各出版社を回って
『どうか記事にはしないでほしい」とたのみ歩いている」
というウワサがマスコミ業界でささやかれたのも根拠なしとはいえないようです。

昭和五四年三月一日から三日間、わたしたちは「化粧品被害一一九番」をやりました。
泣き寝入りしている方たちの声を少しでも聞きとどけたいという、
必死の思いがあったからですが、マスコミへの反響も大きいものでした。
新聞社、テレビ局、ラジオ放送局などから取材申し込みが相次ぎました。
某大手民放報道部はその中でも真っ先に取材申し込みをしてきた局です。
ところが予定の時刻になっても現われない、そのかわり電話がかかってきました。
報道部デスクのA氏開口一番「お察しいただけると思いますが、
ある社内事情でダメになりました。まことにめんぼくない!」。

化粧品被害者に対する資生堂の嫌がらせ[P.179-180]

「肌についてお悩みのこと、化粧品についてお分かりにならないことなど、
どんなことでも、お気軽にお電話ください。
もちろん無料で、心ゆくまでおこたえいたします」

最近の資生堂の新聞広告の中の一文です。
しなやかなイラストの指先きが、ダイヤルを回しています。
しかし、この売り上げ第一位の化粧品メーカーの優しい語りかけに対して、
私たちは眉に唾をつけざるをえないのです。
昭和五三年一〇月一八日のメーカーとの「対話集会」に
トップ企業はぜひ出てきていただきたい。
被害を受けた主婦の顔を実際に見て、
体験談に耳を傾けていただきたい。それが私たちの願いでした。
トップ企業としては当然のことだと考えていました。

ところが資生堂は
「どうしても都合がつかない」の一点ばりで当日会場には姿を現しませんでした。

ところが翌、一九日夜。
「都合がつかない」とつっぱねた資生堂山本課長以下、社員三名が舌の根もかわかぬうちに、
集会に参加して資生堂化粧品の被害体験を語ったHさんの自宅に押しかけ、
ぜひ話を聞きたいと面会を強要したのです。
人をたずねるときは、あらかじめ電話等で相手の了解を得て訪問する。
これは小学生でも知っているエチケットです。
「辛く腹立たしい体験は、一八日の集会で話しました。
なぜそのとき来てくれなかったのですか? 
お会いする時と場所はこちらからお知らせします。
夜中に来られても迷惑です。もう来ないでください」
と丁重に断わっても、「ぜひお話を……」と玄関口から立ち去ろうとしない。
家の回りを三〇分以上もうろついて家の中を窺う。
二一日、二四日、二七日と連夜のように、断っても断ってもやってくる。
足音をしのばせて来て突然ブザーを鳴らして、吃驚させる。
不審な男に尾行され、喫茶店の会話を盗み聞きされる。
近所の人からは「サラリーローンの取りたてにあっているのですか」と勘違いされ、
今夜もまた来るのでは……と恐くて夜も眠れない。
ソファーの上で毛布をかぶり朝まで一人で震えている。
「昼も夜も誰かにつけまわされて、気が狂いそう……」と、
Hさんはとうとう連盟の事務局まで訴えてきました。

もう一人の重傷の黒皮症の被害者、Yさんの場合。
集会で勇気をふりしぼって体験を話した翌日から
「ちょっと近所を通りかかったものですから……(?)」
という資生堂社員三名ほどの夜討ちを受けはじめる。
夜になれば、家の近くの道路から家の中を見張られる毎日。
明りがつくと玄関のブザーを鳴らされるので、真っ暗な中で子供をお風呂に入れたり、
また、車で買物に出かけると遠くの街角に停めてあった黒塗りの乗用車が、
慌てて後を追っかけてきたり……。
「あの資生堂が……、まったく呆れたワ」とこの奥さんは頭をふる。

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