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書籍と雑誌の要約と解説

気をつけよう食品添加物

誰でもできる安全な食生活

装丁
気をつけよう食品添加物 気をつけよう食品添加物
小若順一(日本子孫基金事務局長)
学陽書房
ISBN4-313-88032-1
1986/11/25
¥1400
解説
おおかたの予想に反して、本書は売れ続けた。
食品添加物についての本はたくさんあるが、
さまざまな角度から広く安全性をとらえ、解決方法を示したものがないことと、
本書がきかけになって天然系食品添加物を含めた全面表示が実現したために、
ロングセラーになったらしい。

食品添加物の分野では、本書を書く前の一九八〇年代前半が、
もっとも公的な情報が出ていた時期だった。
厚生省食品化学課や日本食品添加物団体連合会はさまざまな調査を行い、
結果を公表していた。本書の一覧表はそれをもとにして作成した。
公式に調査していない場合でも、当時、連合会の専務理事だった吉野秀一郎氏は、
製造量などについて推定値を示してくれた。
業界団体の責任者が批判的な評論家に数字を示してくれることはめったにないから、
改訂版をつくっても、本書の表をすべて新しくすることはできない。
また、本書には、食品添加物の歴史的な変遷や、
私が追放運動を体験して考え方が変わっていく過程が書かれた部分もある。
このような部分は直しようがない。

その旨を説明して絶版にしてもかまわないと編集部に伝えたところ、
類書がないし、歴史的価値のある本なので、
七年間に変化したことを書いて増補新版にしようと提案があった。
私も、本書のような視点で食品添加物を見ている人がまだ多くないので、
その意味は充分にあると判断した。
そこで、新しく見つかった視点と資料を加え、
本書の限界を示したうえで、増補新版とすることにした。

目次
  1. 変わる食品添加物
    1. 合成から天然系へ
      1. 赤色二号とコチニール色素
      2. BHAからビタミンEへ
      3. 「無添加」漬物にも天然系保存料が入っている
    2. 天然系食品添加物とは何か
      1. 食品添加物の定義
      2. 天然系は野放しの日本の規制
      3. 天然系食品添加物の定義
    3. 「天然」ならば安全か
      1. 天然にも毒物がいっぱい
      2. 「健康食品」のはずが強力な発ガン性――コンフリー
      3. 避妊剤の開発に失敗して甘味料に――ステビア
      4. いまも純度の低いステビアが使われている
      5. 人造イクラに間接発ガン物質――カラギーナン
      6. 「抗生物質」が保存料に
      7. 安全性の確認が先決
    4. バイオの時代へ
      1. バイオテクノロジーが食品を変える
      2. グルタミン酸ナトリウムと酵素
      3. バイオでお砂糖作ります
      4. 伝統食品もニューバイオの時代へ
      5. クチナシ色素を作り出す
      6. 天然系も表示しなければ安全性は低下
      7. どうなるバイオ食品の安全指針
      8. 合理性に乏しい規制体系
      9. 登録制の導入を
  2. 危ない食品添加物
    1. これだけは避けようワースト添加物
      1. レモンに塗布する防カビ剤――発ガン物質・OPP
      2. 輸入柑橘類は食べないように
      3. 保存料は極力避けよう
      4. コカコーラ・ライト三本で許容量オーバーの恐れ
      5. 広く使われているソルビン酸
      6. 業務用マーガリンに使われているデヒドロ酢酸
      7. プロピオン酸・PG……
      8. これが甘味料の全容だ
      9. 発ガン性のあるサッカリン
      10. 砂糖にも発ガン性が
      11. D-ソルビット
      12. 食品添加物に薬効を期待するな
      13. さまざまな低カロリー甘味料
      14. 妊婦と子供はカフェインに御用心
      15. コーヒーと発ガン性
      16. 食べ物の化粧品、合成着色料
      17. ジンマシンを起こす黄色四号
      18. 黄色四号が子供を暴れん坊で勉強嫌いにする?!
      19. 着色料には何のメリットもない
      20. 見分け方が難しい発色剤
    2. 厚生省“公認”の発ガン物質
      1. カズノコにのみ使用――過酸化水素
      2. 安全になったパン――臭素酸カリウム
      3. 禁止が延期された酸化防止剤――BHA
    3. とくに注意すべき食品と対策
      1. スポーツ前には逆効果のスポーツ飲料
      2. 一本にごはん一杯分の糖が含まれている
      3. ドリンク剤のアルコールにご注意
      4. 清涼飲料をより安心して飲むために
      5. ハム・ソーセージ・ベーコンは食品添加物のオンパレードだ
      6. 安全なかまぼこ・ちくわの見分け方
      7. 珍味はつまみに避けよう
  3. 身近な食品添加物の話
    1. 味わわない食文化を創造した“味の素”
      1. うま味の成分と毒性
      2. 中華料理症候群
      3. 食文化を取りもどそう
    2. 加工食品の氾濫を演出したリン酸塩
      1. あらゆる加工食品に使用
      2. 野菜や水道水にも添加
      3. 森永ヒ素ミルク中毒事件の教訓
    3. 化学合成物質PGが食品の原材料に
      1. 溶剤から原材料へ
      2. PGの入っていないラーメンは札幌ラーメンではない
      3. 守られない自主規制
      4. PGの安全性
      5. 塩を防腐剤として使うようになった
    4. 食品添加物が減った食品もある
      1. 食用油には酸化防止剤が使われなくなった
      2. 標準タイプの醤油には合成保存料が使われていない
      3. 味噌も合成保存料が使われなくなった
    5. おいしいケーキなら安心してもだいじょうぶ
      1. ケーキの正しい作り方
      2. ケーキを買うのはウインドーベーカリーで
    6. やっとわかりつつある一日摂取量
      1. 不明だった一日摂取量
      2. 厚生省が調査開始
      3. 食品中に存在しない食品添加物の場合
      4. 食品中に同じ成分が存在する食品添加物の場合
  4. これも食品添加物
    1. 発ガン物質が原料のラップ
      1. ラップに発ガンの疑惑
      2. 「安心包装」も「心配包装」に
      3. 曇り止め剤で金魚が死んだ
      4. 無添加ポリエチレン製のラップを
      5. プラスチックには不安がいっぱい
      6. 金属缶も内面はプラスチック材料で塗装
      7. 天然材料も安心できない
    2. ろ過剤に発ガン物質の石綿
      1. 野放しに近い状態で使用
      2. フィルターやろ過剤の規制を
    3. くん蒸剤と放射線照射
      1. 収穫後にも使われる農薬
      2. 輸入農産物にくん蒸剤
      3. 放射線照射への動き
      4. 表示制度の充実を
    4. 食品関連化学物質にも注意を
      1. 化学物質の食べ物への残留
      2. 規制体系の整備を
  5. 転換期の安全性
    1. AF2事件と遺伝毒性の基準
    2. ガン遺伝子の解明
    3. 転換期の安全性
    4. 遺伝毒性の研究は次世代への責務
  6. 増える食品添加物
    1. 各国食品添加物事情
    2. 国際化に対応した食品添加物行政
    3. 規制緩和を通して考えたこと
    4. 正当性のある“解放”要求もある
    5. 安全な国際的規制体系の創造
  7. ちょうどいいのが、ちょうどいい
    1. 食品汚染物による障害を防ぐための一〇ヵ条
    2. 食品との距離で安全チェックを整理
    3. ちょうどいいのが、ちょうどいい
    4. いいかげんが、いい加減
文献
  • 『食品と科学』「天然添加物の動向」1986年1月号[P.16]
  • 日本栄養食品協会『がん予防と食生活』[P.30_70]
  • 『日刊工業新聞』「食品を腐敗から守ります微生物酵素を発見」1985年9月3日[P.33]
  • 『日本経済新聞』「腐敗を抑える特性発見海藻から取れるアガロオリゴ糖」1986年4月7日[P.35]
  • 精糖工業会『砂糖統計年鑑』1984年[P.66]
  • 『北のくらし』№200[P.77]
  • ベン・F・ファインゴールド『なぜあなたの子供は暴れん坊で勉強嫌いか』[P.87]
  • 『北のくらし』№187[P.103]
  • 浅井清郎『ドリンク剤でも運転機能は低下する』AAKK,1983年1月[P.104]
  • 谷村顕雄『食品添加物の実験知識』[P.121]
  • 科学技術庁『食品添加物の現状と問題点』[P.156]
  • 厚生省『食品添加物の一日摂取量調査に関する研究』[P.157]
校正
  • ごくわずか臭いがある。[P.132]

内容

  1. 天然添加物規制譚[P.ⅴ-ⅵ]
  2. 発癌性のなかった赤色二号[P.3]
  3. スイカの一部にコチニールを振りかけておいたところ、小さなアリはコチニールを避けて群がった。[P.4]
  4. 何か事件があってその問題がかたづいたとき、たいてい、その分野の食品添加物の総使用量は減っていない。[P.5]
  5. 健康食品に合成品が使用され、食品添加物に天然系のビタミンEが使用されているわけである。[P.8]
  6. サッカリン禁止に猛反対した漬物業界[P.9]
  7. グリシンは砂糖と同じくらい甘いから、保存効果のある調味液として使用されている。[P.12]
  8. 厚生省や業界の人は一般に「天然食品添加物」の方を使うが、後に述べるように「天然」といっても純然たる天然ではないので、私は「系」という言葉をつけ加えて使っている。[P.19]
  9. 発癌性健康食品コンフリー[P.23-25]
  10. 避妊剤甘味料ステビア[P.25-26_105]
  11. カラギーナンと潰瘍[P.30-32]
  12. 超古々米の五三年産米のうち、常温で保管されたものは「人間の食べ物ではない」と農水省食糧庁の幹部が言っていたにもかかわらず、こっそりとその米を人間が食べる市場に売りさばいていたことがあった。[P.35]
  13. 市販の味噌、醤油には、酒精(エチルアルコール)が保存料として使われるのが一般的になっている。[P.57]
  14. 安息香酸はコカコーラ・ライトがもたらした[P.60-62]
  15. 小田原のかまぼこ業者が「無添加にする技術はあるのだが、販売店の冷蔵庫の故障などで腐ったりするケースが万が一にもないとはいえない。その場合、すぐ営業停止処分をくうので」と、話していた。[P.62]
  16. 業務用マーガリンに使用されているデヒドロ酢酸[P.63-64]
  17. 一九八一年に米国で、マクマホン氏が、コーヒーの飲料と膵ガンの発生はほぼ比例していると疫学調査の結果を発表している。[P.81]
  18. カフェインの製法には合成法と抽出法があり、興奮剤、強心剤などの医薬品として用いられる場合は、どちらの製法のものでも自由に使うことができる。[P.82]
  19. 安息香酸で蕁麻疹の出る小若順一の知人[P.85-86]
  20. 食品添加物性蕁麻疹[P.86]
  21. 小若順一の化学調味料観[P.114]
  22. 減らない化粧野菜[P.122-123]
  23. 八六年七月に開かれた第四回国際毒科学会議では、東邦大学医学部の大本美弥子助教授が「マウスを用いた実験で、リン酸塩が腎臓障害を引き起こし、骨の量を少なくし、筋肉の委縮を引き起こした」と発表している。[P.123]
  24. 食品添加物公定書誕生譚[P.127]
  25. プラスチックラーメン[P.131-138]
  26. 味噌の中にはもともと酵母が作ったアルコールがあるから、それが一定の濃度(約二・五%)に達するまでアルコールが加えられ、製品として出荷される。[P.146]
  27. 味噌の覆いには殺虫剤がスプレーされている[P.147]
  28. ショートニングは、家庭用のものは無添加だが、業務用には乳化剤や酸化防止剤が使われているのが普通である。[P.151]
  29. 「ショートケーキ用」「パイ用」とさまざまに加工された業務用油脂が出回っているが、それらにどんな食品添加物が使用されているのかは不明。[P.151]
  30. ウインドーベーカリーは無添加[P.153]
  31. 米国では香辛料への照射が急速に進み、現在では照射されている割合は五〇%を超したといわれている。[P.184]
  32. 私はかつてブタの畜舎を見学していたとき、頭の上からカビ防止剤・OPPのシャワーを浴びせられそうになったことがある。[P.186]
  33. 水道管内部塗料にコールタールが使用されている[P.188_218]
  34. 運動家の中には、追放運動をしているにもかかわらず、その食品添加物を平気で食べ、威勢のいい発言をする人もいた。[P.224]

天然添加物規制譚[P.ⅴ-ⅵ]

現在は、天然系食品添加物は報告制度になっており、表示も義務づけられている。
この規制へのキッカケをつくったのは、本書だった。

本書を書いている時点では、
天然系食品添加物に表示が義務づけられる可能性は遠い将来のことだった。
厚生省の食品添加物表示検討会は八七年九月に最終報告を出し、
天然系食品添加物に関しては
「今後、個々の成分規格等の準備を図ったうえで検討することが適当と考える」とした。
この報告はガットに通報され、アメリカや韓国などから提出された意見を受けて、
八八年二月一日、「食品添加物表示に関する諸外国からの意見のまとめ」を発表した。
このとき、合成食品添加物と天然系食品添加物を
「同時に表示させるべきであるとの意見が多く出された」としながらも、
「最終報告に盛り込まれた内容に対する補足的な」意見だったとして、
天然系食品添加物の表示は見送る方針を示した。

その一週間後、アメリカ政府から調査を依頼された二人の弁護士が私のところへ
意見を聞きに来たので、私はこう話した。

「表示は、合成・天然系を同時に実施すべきだ。
合成食品添加物だけ表示させると、表示しなくていい天然系食品添加物が増加する。
そのため食品添加物全体の使用量は大幅に増加するが、
日本で製造された食品は無添加に見える。
一方、アメリカからの輸入食品は合成食品添加物が使用されているから添加物だらけに見える。
消費者は無添加に見える食品を選択するだろうから輸入食品は不利になる。
消費者を誤認させる表示が混乱を招くのだから、最終報告のとおりには実施しないほうがいい」

本書を読んでおくことが条件だったので、言いたいことはすぐに理解され、意気投合した。
翌日、アメリカ政府と厚生省の話合いがあるとのことだったので、
数日後、厚生省に電話を入れ、様子を聞いた。
すると、「天然系食品添加物に関しては、とくに希望はでなかった」と言われたので、
やはりダメだったかと思っていた。

ところが、五月一六日、食品添加物表示検討会は追加報告を行い、
「原則として天然添加物を三四七品目の食品添加物と同時に表示することが妥当である」
と、見解をひるがえしたのである。
その理由は、アメリカ政府から
「合成・天然系食品添加物の表示を同時に実施しなければ非関税障壁になる」
と文書が届いたためだった。
厚生省は、作業量が膨大になるので同時実施は避けたかった。
しかし、政府は「非関税障壁」という言葉に非常に弱い。
この言葉をアメリカ政府が使ったとたんに、
厚生省は、私の主張であった同時実施を採用させられることになったのである。

発癌性のなかった赤色二号[P.3]

米国での赤色二号の発ガン実験には、ミスがあった。
ミスの部分を除外し、統計解析をやり直して、発ガン性ありとされていた。
そのため、日本では食品衛生調査会が発ガン性なしと判定し、
厚生省は何の処置もとらなかった。
その後、赤色二号に発ガン性があるというデータが新しくでてきたという話は聞かない。
どうも赤色二号の発ガン性は、あるとしてもごく弱いものらしい。

サッカリン禁止に猛反対した漬物業界[P.9]

消費者団体はサッカリンの追放運動を始めたが、
漬物は合成・食品添加物で漬け込まれる製法のものが大半を占めるようになっており、
業界をあげてサッカリンの切替えに抵抗した。
このとき、漬物業界が政界に資金を出して
基準緩和を働きかけていたことが明らかになったので、消費者団体の標的になった。
サッカリンの切替えは遅々として進まなかったが、
スーパー・百貨店からサッカリンを使った漬物が締め出されたため、
徐々に漬物業界は表示義務のある食品添加物の使用を中止する方向に動き始めた。
そして、折から起こっていた健康食品ブームに乗って漬物を拡販するメーカーもでてきた。
その結果、現在のような「無添加」漬物が出現したのである。
しかし、漬物の「無添加」表示はほとんどインチキに等しい。

発癌性健康食品コンフリー[P.23-25]

コンフリーは、十数年前、健康にいい薬草としてブームになったムラサキ科の植物で、
現在でもテンプラにしたりして食べている人がいる。
ブームは去ったとはいえ、コンフリーの粉末や錠剤が「健康食品」として売られている。

<中略>

キク科、マメ科、ムラサキ科の植物には、
ピロリジンアルカロイドという毒物が多く含まれている。
ピロリジンアルカロイドには一〇〇以上の種類があるが、
そのうち一〇種類近くに発ガン性があることが、
藤田学園保健衛生大学の広野巖教授らの研究によって明らかにされている。
ピロリジンアルカロイドを含む植物そのものでも、
発ガン性が立証されるものがでてきている。
鎮咳漢方薬・フキタンポポの他、フキノトウ、コンフリーがそうである。

薬の安全性のレベルは、効果と危険度のバランスを考えて決める必要があるので、
いちがいに発ガン性があったらダメとはいえない。
フキノトウは季節が限られているし、
特定の人が大量に食べることも少ないから、あまり問題はない。

しかし、コンフリーは少し事情が違っている。
発ガン性も強く、国立衛生試験所の内山充・薬品部長が健康食品に関する各地の講演会で
「コンフリーの葉一六%、あるいは根一%をエサに入れてラットに与えると、
肝、ぼうこう、その他に、一年以内に多くのガンを生じる。
コンフリーを食べるのは好ましくない」と警告している。

避妊剤甘味料ステビア[P.25-26_105]

現地の住民はステビアの葉で甘味をとってきた。
ところが一方では、不妊・避妊剤としても用いており、妊娠障害を起こす植物として知られていた。
そこで避妊効果に目をつけた製薬メーカーが避妊剤を作るために研究を始めたのが、
現在の興隆の端緒である。
ネズミにステビアを食べさせて実験したところ、妊娠率が低下したというデータはでてきた。
しかし妊娠率をゼロにすることができず、避妊薬の開発には失敗した。
そのため、甘味料として売り出されることになったのである。

もしステビアが合成品だったら、許可されなかったにちがいない。
現に米国では、食品添加物として認められていない。

<中略>

私がステビアのことを知ったのは一九七八年で、突然変異を起こす物質としてだった。
資料では、純度五〇%のものに変異原性があり、
純度八五%のものには変異原性がなかったので、不純物に変異原性があるとされていた。
このデータを見て、いつものごとく、
食品・薬品メーカー、スーパー、百貨店に一〇〇通ほど質問状を出した。
日消連への回答の中には驚くべきものがあった
「動物実験によってステビアの避妊効果は否定されている」というのである。
人間に影響があるとされているものを、動物実験で否定するとは……。

<中略>

後になって、国立衛生試験所の石館基・変異原性部長に尋ねる機会があった。
「一〇種類ほどテストしたが、そのうち一種類に変異原性が見つかった。
そこで、メーカーに言ってやめてもらった」とのことだった。

この後、純度が高められ、
甘味成分のステビオサイドとレバウディオサイドが九〇%を越すものが多くなった。
そして、ステビア・メーカーの組織するステビア懇話会が大阪市立環境科学研究所に依託して、
高純度のステビアの発ガン実験(慢性毒性実験)が行なわれた。
その結果はシロだったと発表され、ステビア安全説の根拠となっている。

<中略>

さて、現在では、業界が言うようにステビアに問題はなくなっているのだろうか。
石館先生に話をうかがってから数年後、業界の資料を見た。
驚くべきことに、相変わらず五〇%純度のステビアが販売されていたのである。

清涼飲料やキャンデーは苦みを極端に嫌うから、純度が九八%前後のものが使われている。
これは確かに安全性が高い。
しかし、漬物、珍味、冷菓、菓子、水産練製品などの分野では、
九〇%以下の純度の場合が多い。
ステビアの葉そのものを使用しているケースもある。
これは安全性以前の問題と考えておいた方がいい。
デンプンの一種であるサイクロデキストリンとステビアを化合させ、
サイクロデキストリンに苦みを吸着させる製品もでてきた。
しかし、これとて苦み成分がなくなるわけではない。
最近の研究で、ステビアの分解物・ステビオールに変異原性が発見された。
高純度のものでも、本当に安全かどうかわからなくなっているのだ。

*   *   *

清涼飲料に使われるステビアは高純度のものなので問題はあまりないが、
妊婦は飲まない方がいい。

カラギーナンと潰瘍[P.30-32]

ひとくちにカラギーナンといっても、
単一の物質ではなくいくつかの化学構造を持つものの混合体であり、分子の大きさもまちまちである。
分子の大きいものは吸収されないので、安全性が高い。
ところが、カラギーナンをモルモットやラットに食べさせると、潰瘍ができることがある。
また、潰瘍が引き金になったと思われる腫瘍やガンができることもある
(厚生省公衆衛生局栄養課監訳『がん予防と食生活』日本栄養食品協会)。

このカラギーナンは、分子量が二万~四万で分解カラギーナンとよばれる小さい分子のものである。
分解カラギーナンは単独でガンを作るとは考えられていない。
潰瘍を作り、消化管内の細胞を発ガン物質に直接曝露させ、
発ガンを誘発した、と考える説が有力である。
「発ガン物質」ではないが、ガンができたことを重視して
「間接発ガン物質」とよぶのがふさわしいように思われる。

カラギーナンは腸内細菌によって分解されるが、ごくわずかといわれる。
したがって、低分子量のものを除外するように品質規格を設定すれば、事態は改善されることになる。
日本食品添加物協会はカラギーナンの成分規格を定めているが、
残念ながら分子量についてはふれられていない。

安息香酸はコカコーラ・ライトがもたらした[P.60-62]

日本では、一九八四年四月にコカコーラ・ライトが発売されるまで、
大手メーカーの清涼飲料には安息香酸ナトリウムは使用されていなかった。
それまでにも安息香酸ナトリウムが添加されているものはあったが、
炭酸飲料への使用が認められていなかったので、
プラスチック容器入りの飲料かドリンク剤だけに限られており、多量に飲まれる可能性は少なかった。
ところが、輸入された炭酸飲料から安息香酸が検出され、
廃棄処分されたり積み戻しされたりしたことから、貿易摩擦が発生した。
そして基準が改訂され、炭酸飲料に安息香酸(ナトリウム塩を含む)を使用することが認められた。

<中略>

日本コカコーラ㈱は、安息香酸ナトリウムを添加した理由を
「アミノ酸系の低カロリー甘味料・アスパルテームを使用したので、
バクテリアが増殖しやすくなったから」と説明している。
ところが、その後で発売されたアスパルテーム使用の
「三つ矢ライト・サイダー」には安息香酸が使用されていなかった。
衛生管理面での技術力の低さを、食品添加物でカバーしていたわけである。

業務用マーガリンに使用されているデヒドロ酢酸[P.63-64]

日本では、チーズ、バター、マーガリンに許可されている。
実際に使われているのは業務用マーガリンがほとんどで、
使用量は以前から比べると大幅に減って年間二〇トン程度になっている。

安息香酸で蕁麻疹の出る小若順一の知人[P.85-86]

私の知合いにも、食品添加物でジンマシンのでる人がいる。
彼の話から想像すると、原因物質はコカコーラ・ライトの項で述べた合成保存料の安息香酸らしい。
彼の場合は、外食したとき安息香酸ナトリウム添加の醤油を使った
料理を食べるとジンマシンがでるようである。

食品添加物性蕁麻疹[P.86]

慢性ジンマシンの頻度について長崎大学医学部の吉田彦太郎教授は、
「外国の報告では食品添加物が原因となっている慢性ジンマシン患者の頻度はきわめて高く、
四〇ないし六〇%とする報告もいくつかある。
しかしわが国の報告では一〇ないし二〇%とされ、外国でいわれているほど高くはないようである。
筆者の経験では七~八%程度と思われる」
(「毎日ライフ」一九八二年一二月号)と述べている。
吉田教授によれば、ジンマシンを引き起こす食品添加物は黄色四号、
黄色五号、赤色一〇二号、安息香酸ナトリウムなどである。

小若順一の化学調味料観[P.114]

消費者団体の中にはほとんど毒物に近いような言い方で批判しているところもあるが、
化学調味料はそんな物質ではない。毒性はあるが、「毒物」ではない。
多く使いすぎるから毒性が出てくるのだ。

減らない化粧野菜[P.122-123]

厚生省は、八六年六月に都道府県等に対し、野菜の漂白や発色のためにリン酸塩、
次亜塩素酸ナトリウム等の食品添加物を試用しないようにと指導通知を出したが、
それ以降も“化粧野菜”は減っていないと見られている。

食品添加物公定書誕生譚[P.127]

森永ヒ素ミルク中毒事件を契機として、
合成食品添加物に原則として品質規格が設定されることになったのも重要な変化といえる。
これで、不純物などの汚染による危険性は大幅に少なくなった。
「食品添加物公定書」は、このときに整備された規格をまとめたものからスタートしている。

プラスチックラーメン[P.131-138]

PGが問題になったのは、次のような経過からである。
厚生省はすべての食品添加物の発ガン性を洗い直すため、数段階に分けて、
疑惑の少ないものをふるい落としながら発ガンテストを行なっている。
第一次のテスト項目は三つあり、その中でPGは染色体異常誘発テストだけがクロと出た。
最終的には、発ガン性はシロとなったのだが、
七八年ごろは変異原テストでクロと出たことはかなりの重みを持っていた。

私は日消連で、化学物質から遺伝子を守ることを重視する運動を始めていたから、
このテスト結果を入手すると、すぐいつもの通り百貨店、
スーパー、食品メーカーに質問状を出して、使用実態を調査した。
そして、回答が返ってき始めた。

驚いたことに、使用量がパーセントで書かれている。
〇・六%、〇・八%、一%、一・二%……。
そうしているうちに、「生めんに二%」という回答が届いた。
そこで、テスト結果の内容をくわしく聞こうと、
クロと出た項目のテストを行なった石館基・国立衛生試験所変異原性部長に電話を入れた。

「小若君。染色体のテストは、ふだん僕たちが食べている食品に含まれている濃度より
ずっと濃いものを直接、細胞にかけて実験しているのだから、心配しなくていいよ」

「先生、どのくらいの濃度で実験されたのですか」

(調べてから)「三・二%」

「僕のところに、生めんに二%使っているという回答がきているのですが」

ここで、石館部長は「ウー」と言ったきり絶句してしまった。
日常食品には、
実験濃度の数百分の一から数千分の一以下のレベルで使用されているのが常識だからである。
さらに驚いたことに、数日して百貨店から、
五・二%添加した生めんを販売しているという回答が届いた。
そして、三%ぐらい添加された生めんはざらにあることもわかってきた。

PGは、無色透明なシロップ状の液体で、ごくわずか臭いがある。
濃いと苦味を感じるが、薄めると甘味に近い味になる。
ラーメンのめんをゆでたゆで汁に溶出しているから、
口に含むと「この味か」と思いあたる人も多いはずである。

札幌ラーメンの製造業者から、
「PGの入っていないラーメンは、札幌ラーメンではない」と聞いたし、
東京都の調査結果でも、
「札幌ラーメン」と名乗っているラーメンからの検出量は多かったから、
たぶん札幌ラーメンはPGによって名声を高めたのだろう。
PGはラーメンのめん質を引きしめるとともに、
シコシコとした口当たりや、のど越しを良くする効果を持っているのだ。

情報が集まってきている最中の七九年七月、
厚生省の藤井正美・食品化学課長(当時)に会うチャンスがあり、PGのことも話題に出してみた。
この時点では藤井課長はPGのことを全く知らなかった様子だったので、
一一月に正式にPGの規制を強化するよう申し入れに行った。
それから日消連の機関誌『消費者リポート』一一月七日号に記事を書いた。
編集部がつけた題は「プラスチックラーメン……?!」。

<中略>

翌年三月には全国製麺協同組合連合会(全めん連)が、
「原料小麦粉に対し生めん類では二・五%以下、皮類では一・五%以下」と自主規制した。
三%以上では、FAO/WHOが定めた一日摂取許容量(ADI)
をオーバーする可能性があったため、使用規制を行なったといわれている。

その後、東京、横浜、岐阜、北海道などの自治体や消費者センターでPGの検出テストが行なわれ、
その結果が発表された。
生めん、生そば、生うどん、ぎょうざ、しゅうまい、わんたん、
春巻からの検出率はおおむね五割を超えており、
検出されたもののうち生めん類では四割以上、
皮類では六割以上が自主基準をオーバーして使用されていた。
業界の自主規制がいかに効果のないものであるかが、実証されたといえる。

自治体のテストより少し遅かったが、
厚生省も八〇年六月から一一月にかけて大規模な調査を行なっている。
この調査では添加物の動向について非常に興味ある結果が得られており、
今後、添加物問題を考える際に貴重な指針となっている。
その概要は次の通りである。

 ①自主規制後の聞き取り調査であるにもかかわらず、
  製造業者の二〇~二五%が基準値を越えて使用していると回答。
 ②市場品を実測すると約五割が基準をオーバー。
  自主規制は無視されたか、知らない例が非常に多かった。
 ③聞き取り結果と実測値を比較すると、実測値の方が平均して三割程度多い。
 ④生めんの実測値の最高値は六・四八%。聞き取り値の最高値は一〇%。
  非常識な量を平気で使用している業者があることが確認された。
 ⑤仕様理由は、七三~九三%が日持ち効果と回答。
  つまり、実際には保存料として使用されていたわけである。
  次いで、保湿効果が五六~六七%だった。
 ⑥公正競争規約によって表示されていた「品質改良剤」としての効果は、
  一五~二〇%の業者が使用理由に取り上げただけ。

これで表示制度の欠陥が浮きぼりになった。
「品質改良」の概念には、保存性や保湿効果が高まることも含まれているとはいえ、
業者の多くは保存料的な効果を期待し使用していたわけである。
全めん連の話では、めん質を引きしめてコシを強くするためにPGを使っているとのことだったが、
個々の業者はそうは考えていなかったらしい。

<中略>

日本では一九八一年四月に規制が変わり、それまで法律上では無条件で使用できたのが
「生めん二%以下、皮類一・二%以下、いかのくん製二%以下、その他の食品〇・六%以下」
と使用基準ができ、「プロピレングリコール」または
「品質保持剤」と食品に表示する義務が課せられた。
この規制で食品への使用量はかなり減り、それまでの三分の一程度になったといわれている。

食品添加物としての使用基準ができてから二週間後には
「飼料安全法」(通称)の飼料添加物に指定されることが決まり、
仔豚や仔牛のエサに使用できることになった。
人間の食品から締め出された分が、動物のエサに回ることになったわけである。

<中略>

PGが規制された結果、食品添加物はどう変化したのだろう。

まず、生めん以外のめん類には、PGは事実上、使えなくなった。
〇・六%以下では使ってもほとんど効果がないからである。
PGは、まるで水が含まれているかのようにめんを柔らかくする。
そこで、PGを使うことによって「生めん」が誕生したわけである。
ゆでめんやむしめんの場合はもともと水が含まれているから、PGを使わなくても柔らかい。
PGは規制直前の時点では、多くのゆでめんやむしめんに使われるようになっていたが、
それがほとんど使われなくなったのである。

生めんには二%まで使用が認められているのだが、
驚いたことに、最近は生めんでも使われなくなってきている。

<中略>

最盛期には食品向けに年間九〇〇〇トンも使われていたPGが、
規制されて三〇〇〇トンに減り、さらに最近では一〇〇〇トン程度に減っている。
その減った部分の多くは、天然系食品添加物で代替されたのである。
新しい生めんは、天然系の糊料(増粘安定剤)、
たとえばローカストビーンガムを使って柔らかさを出し、
アルコール(酒精)と塩で防腐効果をもたせるようにしてある。

味噌の覆いには殺虫剤がスプレーされている[P.147]

かつて国民生活センターなどの調査で、
味噌の中からダニやネズミの毛が発見されて話題になったことがある。
現在ではこのような話は聞かないからよくなっているのかというと、必ずしもそうとはいえない。
このような「事件」が起こると、製造現場で、
それまでは覆いをしていなかった味噌の上にビニールをかけたりするようになる。
それだけならよいのだが、さらに殺虫剤をかけたりしている。

ウインドーベーカリーは無添加[P.153]

東京都洋菓子組合の浅見晋氏は
「ウインドーベーカリーでケーキを作るとき、
合成保存料などの食品添加物を使うことは絶対にと言っていいほどない」と話している。
東京都立衛生研究所や百貨店の商品試験室の人にケーキについて尋ねても、
高級洋菓子店のケーキからは合成保存料は検出されないとのことだから、
使用されていないことはほぼまちがいない。
ウインドーベーカリーはその日に並べたものはその日に売りきるのが原則だから、
酸化防止剤や安定剤も使う必要がない。

水道管内部塗料にコールタールが使用されている[P.188_218]

五年ほど前、遠藤英美先生(現帝京短大教授)から、
「水道の配管の内側に、エポキシ樹脂にコールタールを混ぜたものを塗っている。
食品添加物を取り締まっているものの目で見れば信じられないようなものが、
この他にも使われている」と聞いたことがある。

*   *   *

本書初版を出して約三カ月後、水道管のJIS規格を見るチャンスがあった。
驚いたことに「水道用塗覆装鋼管」には、
アスファルトかコールタールエナメルのどちらかを用いるようになっていたのである。
これでは、水道水は道路の上を流れているのと同じではないか。
塗覆装鋼管は、浄水場から細い管に枝分かれするまでの部分に使われている。
水道本管の総延長に占める割合は〇・五%だが、
それでも、ろ過された水は何キロか十何キロもコールタールエナメルの中を通っている。

この話を日本子孫基金(準)の通信第一〇号に書いたところ、
刈田貞子参議院議員が決算委員会で取り上げてくれた。
そして、刈田議員は厚生省から、コールタールエナメルを
「使わなくてもすむような内面塗装について、関係の業界と話し合いを進める」
という回答を引き出したのである。

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