バベルの図書館

書籍と雑誌の要約と解説

ガットの落とし穴

食品安全基準

装丁
ガットの落とし穴 食品安全基準 ガットの落とし穴 食品安全基準
神山美智子&伊庭みか子&田坂興亜
家の光協会
ISBN4-259-54407-1
1993/07/01
¥1262
解説
一九八三年(昭和五八年)、
外圧がらみで一挙に一一品目の添加物が指定されたとき、
反対署名、一万人集会、議会への請願など、規制緩和反対運動がまき起こりました。
しかしその後、多くの消費者たちは、大きな政治の流れのなかに呑みこまれて、
無力感にさいなまれてきたのだと思いました。

ガット(関税と貿易に関する一般協定)・ウルグアイラウンド(新多角的貿易交渉)で
突如浮上してきた「安全基準のハーモニゼーション」は、
そうした私たちの泣き寝入りをたたき起こしてくれるものでした。

この情報ははじめアメリカからもたらされました。
これまで食品添加物や農薬問題に取り組んできた人々、
とくに消費者運動にかかわってきた人たちは、
ガットが日本の農業に打撃を与えることはあっても、
食品の安全基準にまでかかわるようになっているとは思いもしなかったのがほんとうでしょう。
もともとこの「ハーモニゼーション」はアメリカから提案されたという事情もあって、
反対運動もアメリカがもっとも盛んです。
多くの市民団体、宗教家の団体、農民団体などが一緒に反対運動をしています。
しかし日本ではこれに関する報道もなく、
またガット交渉に反対している人の多くが農民だということもあり、
消費者側の反対運動はいまひとつ盛り上がりに欠けています。
いまでも日本にとってのガット問題はコメだと思っている人が大半ではないでしょうか。

そこでとにかく、ガット・ウルグアイラウンド交渉の対象になっている
「ハーモニゼーション」について早急に内容のまとまった本を出そうということになりました。
農業に携わっている人たちだけでなく、
一人でも多くの消費者にガットの場でなにが起こっているのか、
そして、いままさに私たちの命が脅かされようとしていることを知っていただきたいと思います。

目次
  1. 食の安全を脅かすガット・ウルグアイラウンド
    1. ガットがめざす自由貿易の表と裏
      1. だれのための“自由”なのか
      2. 自由貿易競争の果ての歪み
      3. 環境と安全性を重視するシステムに
    2. 食料輸入国に不利なガット提案
      1. 整合化(ハーモニゼーション)とはなにか
      2. 最終合意案の三つの問題点
    3. ガットからスーパー・ガットへ
      1. ガットの成立と今
      2. 破滅的なドンケル合意案
      3. ガットが“掟”となる日
    4. 見え隠れする食品企業の影
      1. 企業寄りのコーデックス委員会
      2. アメリカの基準とコーデックスの基準
    5. ガットvs消費者――対立の構図
      1. 疲弊するアメリカの農家
      2. 不安定な世界の食糧事情
      3. ウルグアイラウンド交渉の六つの課題
  2. 後退続く日本の食品安全行政
    1. 増え続ける輸入食品の危険性
      1. 安全を犠牲にした市場開放
      2. 主な違反食品
    2. 後退続く食品安全行政
      1. 一九八三年の一括改正法
      2. 基準・認証制度の改訂
      3. 一九八五年のアクション・プログラム
    3. 国民生活を犠牲にする自由貿易優先政策
      1. 残留農薬基準の改悪
      2. 基準緩和が予想される項目
        1. 食品添加物
        2. 抗生物質など
        3. 放射能汚染
    4. 日本における食品の安全規制
      1. 規制のしくみ
      2. 食品衛生法と規格基準
        1. 販売を禁止される食品(四条)
        2. 販売を禁止される食肉(五条)
        3. 新開発食品の販売禁止(四条の二)
        4. 食品添加物の規制(六条)
        5. 非合成添加物
        6. 規格基準(七条、一〇条)
        7. 表示制度(一一条)
        8. 輸入食品等の届け出制度(一六条)
      3. そのほかの安全規制
        1. 飼料安全法と薬事法
        2. 化審法
        3. 健康食品と機能性食品
  3. 主要食料輸出国にみる食品の安全基準
    ―輸出入と農薬などの規制―
    1. アメリカ合衆国の輸出用農産物をめぐって
      1. 穀類~ポスト・ハーベスト農薬の残留~
      2. かんきつ類~厚生省が発ガン・催奇性殺菌剤を許可~
      3. じゃがいも~発芽防止のための農薬・放射線照射~
    2. オーストラリアの輸出用農産物をめぐって
      1. 小麦~学校給食からもスミチオンを検出~
      2. 脱農薬への動きを促進するために
    3. EC諸国の輸出用農産物をめぐって
      1. 食品の残留農薬状況
      2. EC各国の基準値のバラツキ
    4. アジア諸国を含むその他の国々の輸出用農産物をめぐって
      1. 禁止農薬の残留
      2. アジア諸国の農薬使用状況
  4. 報道されない「国際食品安全基準」の落し穴
    1. アメリカ案=最終合意案に強まる反発
      1. ドンケル最終合意案の内容
      2. 日本政府はアメリカ案を支持
    2. 整合化は消費者への挑戦状
      1. “安全”よりも“貿易”を重視
      2. 安全を守ることが保護主義なのか
    3. コーデックスが振りかざす“科学”の信憑性
      1. 正当な科学に募る消費者の不安
      2. 消費者の選択権を尊重せよ
    4. 汚染食品を拒否できない輸入大国・日本
      1. 地方自治体もガット基準の対象に
      2. 輸出国に有利な紛争処理
    5. 各国の権利を否定し続けてきたガット
      1. マグロ―イルカ裁定の波紋
      2. 成長ホルモン剤をめぐるアメリカとECの対立
    6. 多国籍企業の世界戦略に不可欠な整合化案
      1. 国連基準より緩いコーデックス基準
      2. アグリビジネスとアメリカ政府の蜜月
      3. 環境を破壊するアグリビジネス
      4. 消費者の利益を優先せよ
  5. 農産物の自由貿易拡大はなにをもたらすか
    1. 自由貿易と農業・食料・環境破壊
      1. 日本の問題から世界の問題へ
      2. 国連での消費者・環境保護政策
    2. アメリカの法規制
      1. 食品添加物と農薬
        1. 食品添加物
        2. 農薬
        3. 農薬でありながら添加物扱いのもの
        4. 不良食品
      2. アメリカ政府も検討を開始
    3. 環境と健康を守るために
文献
  • 農林水産省『農業白書』
  • 総務庁『動物用医薬品等に関する行政監察結果報告・勧告』
  • 東京都『収穫後使用の農薬に関する調査報告書』
  • 小若順一『気をつけよう輸入食品』
  • 小若順一『ポストハーベスト農薬汚染』
  • 植村振作『農薬毒性の辞典』
  • 田坂興亜『アジア輸入食品汚染』
  • レイチェル・カーソン『沈黙の春』
  • 服部信司『ガット農業交渉』
  • T・ラング『世界と共生する食』[P.41]
  • 農林水産省『食料需給表』[P.60]
  • 『平成2年輸入食品監視統計』[P.62]
  • 『くらしの安全情報』1992年1月[P.38]
  • アメリカ合衆国会計監査院『国際的な食料の安全性 – アメリカとコーデックスの農薬基準の比較』1991年8月[P.41]
  • 『SUNS』1992年1月15日通信[P.50]
  • 『農業白書』90年度[P.58]
  • 『日本経済新聞』1992年3月7日[P.68]
  • 東京都生活文化局消費者部委託調査「収穫後使用の農薬に関する調査」1990年[P.113]
  • 『東京都立衛生研究所研究年報』1990年[P.139]
  • 『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』1991年3月10日[P.146]
  • 機関誌反農薬団体・PAN北アメリカ地方センター『グローバル・ペスティサイド・キャンペイナー』[P.202]
  • 日本弁護士連合会『自由と正義』40巻11号[P.213]

内容

  1. コーデックス会議は半数が企業家で占められている[P.40]
  2. アメリカの農家は日本への輸出を望んでいない[P.52]

コーデックス会議は半数が企業家で占められている[P.40]

コーデックス会議の参加者にはたしかに多くの企業が名前を連ねています。

前回の総会は九一年七月に行われました。
このときのスイス代表は一二人でしたが、その半分がネッスル社の代表でした。
アメリカは二七人中一七人が食品企業代表で占められていました。
日本の専門家は、日本食品衛生協会、日本食品添加物協会、
全国輸入食品安全推進協会のメンバーです。
それに先だって規格部会が行われましたが、
九一年四月の残留農薬部会の参加者は、政府代表のほかに農薬企業から五〇名、
食品企業からの一四名を含む一九七名でした。
このうち、消費者の代表はたった二名でした。

また、同じ年の二月に行われた栄養・特殊用途食品部会に、
スイスは、ネッスル社から二名、ワンダー社、ホフマン・ラ・ロッシュ社、
ミグロス、政府から各一名の計六人を、イギリスも、
ネスル社をはじめ三名の企業代表を含む六名を送っています。

アメリカの農家は日本への輸出を望んでいない[P.52]

九二年三月にアメリカで、アメリカの家族農家を代表する三つの組織の代表者らと話をしました。

「私たちは、日本に農産物を輸出して日本の農家をつぶしたくはない。
どんなにアメリカの農産物輸出が増えても、私たちには一ドルの増収もない。
私たちが求めているのは生産コストに合った正当な価格だけである」
と全米家族農家連合の会長。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です