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書籍と雑誌の要約と解説

アジア輸入食品汚染

国内禁止農薬の逆輸入

装丁
アジア輸入食品汚染 アジア輸入食品汚染
田坂興亜(国際基督教大学理学科準教授)
家の光協会
ISBN4-259-54402-0
1992/12/01
¥1262
解説
この本では、「食の安全性」にかかわる問題点を、
特に、日本への食糧輸出が多いアジアの国々に焦点を絞って検討する。

そして、安全とはいえない現状から出発して、安全で健康な食環境を、
全地球的に取り戻していくために、どのような試みがなされているのか、
日本は、その方向でどのような貢献が可能なのかを模索してみたいと思う。

目次
  1. 飽食日本の払っているツケ
    1. 輸入穀物に高濃度の残留農薬
    2. アジアからの輸入農畜産物も農薬汚染
    3. 広がる食環境の汚染
  2. 激増する輸入食料と食卓の農薬汚染
    1. 食卓に押し寄せる輸入食品
    2. 農薬汚染の歴史と立ち遅れる規制
    3. 広がるポストハーベスト農薬汚染
  3. アジア各国の農薬使用の実態
    1. 概観 アジア各国の農薬事情
    2. タイ
      1. タイの農薬使用の実態と法規制
      2. 農薬汚染の現状
    3. 中国
      1. 農薬使用の実態と法規制
      2. 中国野菜による香港の農薬中毒事件
      3. 懸念される日本向け農産物の農薬使用
    4. フィリピン
      1. 輸出バナナの使用農薬と残留問題
      2. 農薬使用の現状と法規制
      3. 日本向け水産物の農薬汚染とブーメラン現象
    5. インド
      1. 農薬使用の実態と法規制
      2. 食品などの農薬汚染の実態
    6. インドネシア
      1. 農薬使用の実態と中毒事故
      2. 農薬使用と法規制の現状
    7. 台湾
      1. 農薬の使用、生産および輸入の実態
      2. 日本向け野菜・果実に残留農薬
    8. 韓国
      1. 農薬使用の実態と法規制
      2. 顕在化する農薬汚染の実態
  4. 日本での農薬規制
    1. 農薬登録制度と残留農薬基準
    2. 異なる各国の農薬規制と輸入食品の監視体制
    3. 甘い水際での輸入食品の安全性監視体制
    4. 規制緩い農薬の輸出と海外での現地製造
  5. 国際機関と民間での農薬をめぐる動き
    1. 国際農薬監視行動ネットワーク(PAN)の活動
      1. 問題多い「一八農薬」の禁止を求めて
      2. PANが取り上げた「一八農薬」の日本での法規制
      3. 主要国の「一八農薬」の規制状況
    2. 国連食糧農業機関(FAO)の一九八五年国際規約
      1. 国際規約策定に到る経緯
        1. 農薬の流通および使用に関する行動基準
      2. 国際規約の補足と解説
        1. 非政府民間団体の役割
        2. 政府のなすべきこと
        3. 農薬(製造、販売)企業のなすべきこと
        4. 総合防除について
    3. 日本、国際機関の「援助」と農薬
      1. いまだに続く第三世界への農薬輸出
      2. ODAなど農薬使用促進「援助」見直し
  6. 健康な食環境を取り戻すために
    1. インドネシアにおける「総合防除」の試み
      1. 「総合防除」の定義とその方法
      2. インドネシアの「総合防除」プログラムの成果
      3. 農薬だけに頼らない農民の闘い
    2. フィリピン、バングラデシュ、香港での有機農業の試み
      1. 農薬に依存しない有機農法の実践
      2. 農民の知恵を生かす農法の普及
      3. バングラデシュで有機農法を推進する農民組織GUP
    3. 日本国内の動き――生産者、消費者、行政が手をたずさえて
      1. 岡山県の有機無農薬農産物認証制度
      2. 農業協同組合の動き――安全で良質な食料・農産物供給指針
      3. 有機農法の経験を生かし健康な「農」の再生へ
  7. 第三世界の人々とともに
    1. 「食糧自立」国際シンポジウムと広がる農民交流
    2. 「アジア学院」のめざす第三世界の農村指導者育成
    3. 食品の農薬汚染問題が国際的な消費者運動へ
    4. 「地球市民」に健康な食環境をつくるために
文献
  • 有吉佐和子『中国レポート』
  • 植村振作『農薬毒性の事典』
  • 村井吉敬『エビと日本人』
  • 国際食糧農業協会『国際農業技術情報』
  • ロバート・バンデンボッシュ『農薬の陰謀』
  • 農林水産省熱帯農業研究センター『稲作における日本の農業技術協力の展開』
  • 山下惣一『タマネギ畑で涙して』
  • 日本消費者連盟『NOといわれる日本』
  • 山形・置賜百姓交流会『百姓は越境する』
  • 鶴見良行『バナナと日本人』[P.65]
  • 中村洋子『バナナから人権へ』[P.65]
  • 『朝日新聞(夕刊)』1988年7月7日[P.65]
  • 『東京衛研年報一九九〇』P.41_125-132[P.65]

内容

  • 調べてみると、タイに限らず、他のアジアの国々、また中南米の国々でも、日本ではすでに禁止された農薬が依然として使われている実態が浮かび上がってきた。[P.4]
  • タイ産鶏肉のディルドリン汚染騒動[P.16-17]
  • 大阪府立公衆衛生研究所の調査では、学校給食でパン食のときには必ずマラチオン、スミチオンなどの有機リン系殺虫剤が検出されている(8)。[P.37]
    『日本食品衛生学会第54回学術講演会講演要旨集』P.48
  • インド食品の残留農薬[P.77-78]
  • 台湾食品の残留農薬[P.93-94]
  • 全世界で毎年農薬中毒にかかる人の数はおよそ二〇〇万人にのぼり、死者は約四万人と推定されているが、死者の数はもっと多いと推測される。[P.131]
    “Development/Environment Trends in Asia and the Pacific: a Regional Overview.” ESCAP, Committee, on Indusry, Technology, and Human Settlements, Bangkok, 1983.
  • 業界関係者から構成される国際食品規格委員会[P.225-228]

タイ産鶏肉のディルドリン汚染騒動[P.16-17]

一九八八年には、
タイから輸入されたとり肉から高濃度のディルドリン(〇・四二ppm)が検出されて、
報道された事例がある(3)
ディルドリンは、BHC同様、有機塩素系の殺虫剤で催奇形性がある。
日本では、七一年に農産物への使用が禁止されたが、タイでは、その後も使われていたものである。
しかし、日本へのとり肉輸出の障害となることを恐れたタイ政府は、
その後ディルドリンの認可を取り消す措置をとった(八九年一月三一日の農業省告示)。

インド食品の残留農薬[P.77-78]

インドの場合、他のアジア諸国に比べて、食品の農薬による汚染のデータは、
かなり多数の集積があり、一九八七年にインド政府の科学技術庁に提出された
『残留農薬レポート』(英文)にまとめられている。
これを見ると、実際に食品の農薬汚染は大変深刻な状況にある。
集積された多くのデータの中から、比較的最近のものを抜き出してみたのが、次の表である。

この表の中で、「ミルク」とあるのは、すぐあとにベビー・フードの表が続くことや、
別に「牛のミルク飼料中の残留DDT、HCH(BHC)経年変化」の表があることから、
母乳のことかと思われる。
「インドの母乳中の農薬残留値は、他の国々に比べて一般に高いレベルにある」
という記述も見られる。

インドでの残留農薬と残留値
品名
(産地)
汚染試料数
全試料数
農薬 残留値
(ppm)
ジャガイモ
(ボンベイ)
1979 63/145 DDT
リンデン
ディルドリン
エンドリン
0.3ー7.04
0.2ー7.60
0.2ー1.40
1.1ー2.50
緑色野菜
(ハリアナ・ヒッサール)
1979 59/195 BHC
エンドサルファン
DDT
0.87ー6.03
0.61ー1.01
こんせきー1.52
小麦
(パンジャブ)
(ボンベイ)
1980
1979~80
28/28
17/19
DDT
BHC
ヘプタクロル
アルドリン
微量ー2.1
5.1ー13.9
0.07ー1.0
0.05ー0.1
豚肉
(パンジャブ)
1980 5/5 DDT
BHC
0.12ー0.93
0.11ー0.22
ミルク
(ボンベイ)
(デリー)
1978
1978
24/24
13/14
DDT
ディルドリン
DDT
56.0ー216.0
38.0ー126.0
0.02ー2.00

台湾食品の残留農薬[P.93-94]

日本では一九七一年の事典で登録抹消になったパラチオン、
メチルパラチオン等の急性毒性のきわめて強い農薬が、
台湾では、八四年の時点でまだ広く、多量に使用されていたわけで、
パラチオン(日本では「ホリドール」とよばれた)が使われていた当時、
日本で多くの中毒事件があったことを考えると、当然、台湾でも、
こうした農薬による中毒事件や食品中の残留などが、
八〇年代までにかなりあったものと推測される。
そのことを裏づけるデータが、九〇年の東京都衛生研究所年報に発表された(19)

それによると、一九八八年四月から九〇年三月にかけて東京都内に乳化した輸入野菜、
果実などを分析して調べたところ、
台湾産のライチーからパラチオンが〇・〇一から〇・一二ppmの濃度で検出され、
同じく台湾産の枝豆からも、パラチオン(〇・〇一ppm)、
エンドサルファン(〇・〇一~〇・〇二ppm)、EPN(痕跡~〇・〇三ppm)、
クロロピリホス(痕跡~〇・〇三ppm)が検出されている。
このほか、
台湾産のブロッコリーからエンドサルファンが〇・〇一六ppmの濃度で検出されている。

業界関係者から構成される国際食品規格委員会[P.225-228]

国連の下部機関である国際食品規格委員会は、各国から公正な立場の専門家が送られ、
科学的な根拠に基づいた公正な基準作りが行われているかのように、一般には信じられてきた。

ところが、今回のIOCU世界大会で、「国際的食料政策の決定に(消費者の)影響力行使を!」
というような分科会に参加してみると、この食品規格委員会に参加している数少ない消費者代表から、
これまで日本で一般に信じられてきたこの種の委員会の公正な姿とはほど遠い実態を知らされ、
強い衝撃を受けたのであった。

例えば、この委員会のアメリカからの参加者は、全部で二七名であるが、
このうち、政府代表は八名、消費者などの代表二名、あとは、
化学工業・食品企業などの業界の利害を代表する人たちである。
このため、委員会での決定には、業界代表の意見が色濃く反映されているのが実態であり、
日本の場合も同様の実態と思われる。
実際に入手した資料でみると、国際食品規格委員会の日本代表メンバーは、
全部で八名から成っているが、その内訳は、厚生省から一名、農水省から一名、
FAOへの日本代表が一名、同代理が一名、日本食品添加物協会から一名、
日本食品衛生協会から二名、輸入食品安全協会から一名、となっている。

日本食品添加物協会というのは、
主として食品添加物を製造・販売している業界から成る団体であり、
食品添加物使用の枠を拡大することが利益につながる業界である。
日本食品衛生協会というのは、『食品衛生研究』という雑誌を出している団体で、
主として、公的機関の食品衛生、分析担当者、官吏などが会員となっているようである。

したがって、日本代表の委員八名のうち、厚生省等の公的機関の関係者が七名、
業界関係者一名、ということになっており、公的な立場の者が大部分という点では、
アメリカよりは、かなりましな構成となっている。
しかし、日本の場合は、消費者を代表する者は一人も含まれていない。

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