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書籍と雑誌の要約と解説

ポストハーベスト農薬汚染

『気をつけよう輸入食品』の続編

装丁
ポストハーベスト農薬汚染 ポストハーベスト農薬汚染
小若順一(日本子孫基金事務局長)
家の光協会
ISBN4-259-54389-X
1990/07/01
¥1262
解説
一九八八年三月、ポストハーベスト農薬をアメリカ連邦規則をもとに解説し、
問題点を世界で初めて指摘した『気をつけよう輸入食品』(学陽書房)を出版した。
その後、一九八九年三月に東京都立大学工学部の高松修助手とアメリカを調査し、
さらに日本子孫基金(JOF)のメンバーと九月から一〇月にかけてアメリカを、
一九九〇年一月から二月にかけてオーストラリアを調査し、現地で購入した食品や、
日本で買った輸入食品を横浜国立大学環境科学研究センター
(加藤龍夫教授、花井義道助手)などに依頼して残留農薬の検査を行った。
その結果、想像以上に危険な食品があることがわかってきた。

そこで、現地で歩いて見て聞いた情報と、残留農薬のデータをおり混ぜながら、
ポストハーベスト農薬の実情を紹介し、併せて、
輸入食品の安全性をめぐる諸問題を解説した本を出すことにした。
前著でポストハーベスト農薬の重要性は多くの人に理解されたが、
問題が大き過ぎて、どう取り組んだらいいのかわからないとよく言われたので、
本書では解決への道筋を示したつもりである。

目次
  1. アメリカ農産物の危険度を検証する
    1. 発ガン性殺菌剤「キャプタン」が検出された輸入イチゴ
      1. チェックされない違反農薬
      2. 「イチゴの神様」を訪ねる
      3. アメリカ人が食べるイチゴは安全
      4. 小さくて白いうちに採ったまずいイチゴがケーキに
      5. ついに農薬の散布現場を見た
    2. レモンになぜ枯れ葉剤を使うのか
      1. ベトナム戦争で使われた枯れ葉剤
      2. カリフォルニア州の規則を研究するのが早道だ
      3. 長期間貯蔵する場合に2・4-Dを使う
      4. 期待できる脱農薬への道
    3. 農薬に浸すアメリカのサクランボ
      1. サクランボの残留農薬の検査
      2. サクランボから三種類の殺菌剤が検出された
      3. 日本向け以外にはポストハーベスト農薬を使っている
      4. 「日本にポストハーベスト農薬を認めるよう要望」
    4. 牛肉の発ガン性農薬は野放し状態
      1. 農薬で一年で五〇〇〇人が発ガンする
      2. 輸入牛肉で一年に二三人が発ガンの可能性
    5. 日本人には大豆が一番危険
      1. 問題点の多い輸入大豆
      2. 大豆が子どものアレルギーの最大原因?
      3. 餌づけを始めてから奇形猿が発生した
      4. 大豆には臭素が残留しやすい
      5. 大豆には微生物農薬・BTが使われている
    6. 催奇形性農薬が使われている輸入トウモロコシ
      1. 「ガンがいいか、奇形がいいか」
      2. 食用より多くの農薬が含まれる飼料用トウモロコシ
    7. 日本米よりはるかに高いアメリカ米の農薬残留値
      1. 籾米は殺虫剤で燻蒸する
      2. カリフォルニア米から殺虫剤を検出
      3. 虫が入りやすい米貯蔵倉庫
      4. 残留農薬の検出される割合が高く量も多い
      5. 日本の米はかなり安全だ
      6. 在庫と関係するポストハーベスト農薬
      7. 流通制度を改め、消費者の信用を得るべきだ
    8. 小麦ではいくつかの対応策が考えられる
      1. 小麦粉・小麦粉製品から殺虫剤が検出された
      2. 「一〇年間、害虫がつかないことになっている」
      3. 希望が持てるオーストラリアの小麦
      4. 各国の小麦粉から何が検出されたか
      5. 安心して食べられる小麦製品の選び方
      6. 除草剤と殺菌剤をかけられるジャガイモ
  2. 農産物輸出大国の虚像と実像
    1. 野菜・果物の積み出し施設を見る
    2. 穀物の輸出施設――ターミナル・エレベータ
      1. 積み出し施設には殺虫剤のタンクがあった
      2. 施設全体にも殺虫剤を散布している
      3. 清潔だったオーストラリアの小麦輸出施設
      4. 穀物運搬船の中でも使われる殺虫剤
      5. 輸入穀物は三回以上燻蒸される
    3. プレハーベスト農薬を見る
      1. 日本では禁止された農薬も使われている
      2. オーストラリアでは完全な輪作を行っている
    4. 食品の加工中にも農薬が使われている
      1. ブドウの乾燥中に殺菌剤を使用
      2. ノーチェックの輸入加工食品
  3. 恐るべきポストハーベスト農薬汚染
    1. ポストハーベスト農薬とは何か
      1. ポストハーベスト農薬はどんなときに使うか
      2. 穀物の保管方法に問題がある
      3. ポストハーベスト農薬の使用方法
    2. 日本の法規制
    3. アメリカの農薬規制の体系
      1. アメリカでも農薬の使用実態はよく知られていない
      2. アメリカでの許可品目と使用の現状
      3. アメリカの許容値は非常に甘い
    4. 的外れの残留農薬検査
      1. 外国基準の受け入れに動く厚生省
    5. 脱ポストハーベスト農薬への道
      1. 進む脱農薬の実用化研究
  4. 日本列島に氾濫する輸入食品
    1. 外食産業は輸入食品を多用
    2. 輸入食品に頼る学校給食
    3. 増加する輸入食品
    4. 空港・港の検査体制
      1. 成田空港
      2. 横浜港
文献
  • 『衛生試験所報告』1983年[P.36]
  • アメリカ連邦研究会議『食品中に残留する農薬の規制―デラニー・パラドックス―』(1987年)[P.59]
  • 『REGULATNG PESTICIDES IN FOOD』[P.60_62_64_65_154]
  • テレビ朝日『がん戦争PART7』1990年2月1日[P.65]
  • 『連邦公文書記録』53巻202号(1988年10月19日)[P.66]
  • 『消費者運動ニュース』362号(1989年)[P.92]
  • 『横浜国立大学環境科学研究センター紀要』第16巻1号[P.93]
  • 『横浜国立大学環境科学研究センター紀要』第14巻1号[P.96]
  • 『月刊消費者』1989年2月号[P.97]
  • 『愛知県衛生研究所報』№32(1982年)[P.102]
  • 『日本農業新聞』1983年5月20日[P.124]
  • NHK『おはようジャーナル』1989年10月[P.178_210]
  • JETRO『八九年のわが国の食料輸入』[P.197]
  • 『日本農業新聞』1990年5月28日[P.211]

内容

役人の都合で行われている無意味な燻蒸[P.50_54]

我々はサンフランシスコから約一〇〇キロ東のストックトンにある
サクランボの大手出荷会社、O・G・パッキングを訪ねた。
時間どおり会社に着いたが誰もいない。
どうしようか、と話していたら、車が入ってきた。
車から出てきたのは、アル・J・ゴッテリ社長、
ジョセフ・M・オガワ(小川実)・カリフォルニア大学教授、流通会社社員の計四人。

オガワ教授は、ケーダー教授が「農薬のことはオガワ教授に聞くといい」と推薦した人で、
論文を見ると果物のポストハーベスト農薬ではピカ一の専門家らしい。

*   *   *

出荷場の写真を撮っていると、「これから日本部屋に案内しよう」と言われ、いったん外に出た。
臭化メチルで燻蒸するため、
日本向けサクランボ処理場の建物には燻蒸倉庫が併設されていて、太い煙突がついている。
イチゴの燻蒸倉庫はコンテナを利用したものだったから、こちらは一〇倍以上の体積がありそうだ。
人の入り口は、網の二重扉になっており、害虫のコドリンガが侵入しないように厳重に造られている。

ゴッテリ社長は「コドリンガはいないから、こんな二重扉は不要なんです」と言う。
オガワ教授も、「このあたりにコドリンガはいない。
またネクタリンにコドリンガはつかないから、
農水省がサクランボやネクタリンに燻蒸を義務づけているのに、合理的な理由はない。
輸入量はコントロールするための言いがかりだ」と言う。
議論が終わって、もう打ち解けていた私は、オガワ教授に
「もし、臭化メチルの使用に合理性がないなら、
世論を喚起して農水省に使用中止を働きかけたい」と答えた。
ところが、「農水省の役人は、カリフォルニアにバカンスに来たいんだ。
その権利を放棄するとはとうてい思えない」と言われた。

米はリン化アルミニウムで燻蒸されている[P.84-88]

我々はサンフランシスコの約二〇〇キロ北に位置する稲作地域グレンにある民間の米研究所、
ライス・リサーチャーズ(株)を訪ねた。
ここでは、アメリカ最高の銘柄米「コクホー(国賓)ローズ」
(国府田農園が開発)の研究を行い、種籾を販売している。
研究アシスタントのマイケル・L・ムーア氏に、米の収穫後の取り扱いについて話を伺った。

「一般には、農家は米を収穫すると、白米にするときの歩留り率をはかってから、
ビンという小さい金属製の貯蔵庫に入れ、籾で保管する。籾貯蔵は味の劣化が少ない。
売れるまでに時間がかかる場合は、リン化アルミニウムで燻蒸する。
なかには黄色い液体(殺虫剤)を混ぜ込む農家もある。
コクホーローズは、味がよく、非常にきれいなので、いい値ですぐ売れる。
売れると精米所に持っていき、白米にして出荷する」

ここでは種籾を扱っているので、春に米は出荷してしまうから、
ポストハーベスト農薬はほとんど用いていない。

次は少し引き返して、サンフランシスコから一四〇キロ北のアーバックルにある精米所、
カリフォルニア・パシフィック・ライス・ミリング(株)を訪ねた。
二〇戸の大手農家が設立した会社で、精米所はカリフォルニア州最大、
一〇キロほど離れたところに巨大な貯蔵倉庫や飛行場も持っている。
セールスマネージャーのラリー・バルシエガ氏に話を伺った。

「農家は収穫すると、籾米をサイロに持ってくる。
サイロに入れた米は、リン化アルミニウムで燻蒸して貯蔵する。
それを順次、精米所に運び、精米して出荷する。
燻蒸は普通一回しか行わないが、必要があれば精米所でも行う。
精米して、籾殻を取った米は燻蒸しない。
昔は燻蒸に臭化メチルを使ったが、いまは使っていない」

<中略>

カリフォルニア州は、全体に合理的でよくやっている印象を受けた。
特に学ぶ必要があると感じたのは、味を重視して籾貯蔵していることと、
燻蒸にリン化アルミニウムを用いていること。
臭化メチルは、農産物を傷めるだけでなく、発ガンの疑いが指摘されているうえ、
言われていたほど完全には分解しないことがわかってきた。
そこで、燻蒸に時間はかかるが、農産物を傷めにくく、
発ガン性や残留も指摘されていないリン化アルミニウムに移行しているものと考えられる。
化学薬品を使って農産物を保存することは好ましいことではないが、
臭化メチルを使うより合理的な選択と言っていいだろう。
日本では、虫が見つかった輸入農産物の燻蒸にまだ臭化メチルが用いられている。

アメリカ米の残留収穫後農薬[P.86-87_91-95]

一九八八年六月、大阪の環境監視研究所(所長・中南元)が、
カリフォルニア産米から有機リン系殺虫剤のマラソンを〇・一六ppm検出したと発表した。
これが、アメリカ米の残留農薬を検査した最初のデータと思われる。

<中略>

同じ時期に行われた日本農村医学研究所のテストでは、
カリフォルニア米からスミチオンが検出されている。
検出量は〇・〇〇六~〇・〇一二ppmと少ないが、三検体のすべてから検出された。

*   *   *

一九八九年一月、全大阪消費者団体連絡会(事務局長・下垣内博)が
アメリカから持ち帰った米を環境監視研究所に持ち込んで調べた結果を発表した。
表13のように検査した米のすべてから殺虫剤が検出されている。

表13 アメリカ産長粒米の有機リン剤
番号 種類 ブランド名 入手先 ダイアジノン マラソン
1 白米 ライスランド アーカンソー
(リトルロック)
0.01 0.03
2 白米 オータムハーベスト テキサス
(ヒューストン)
0.16 TR
3 玄米 コリンコ カリフォルニア
(ロスアンゼルス)
ND 0.11
4 パーボイルドライス(ベルギー向け) テキサス
(ヒューストン)
ND 0.02
5 パーボイルドライス(アフリカ向け) ND 0.03

〔出典〕 消費者運動ニュース1989年第362号
〔注〕 定量限界:0.01ppm 検出限界:0.005ppm ND:検出されず TR:痕跡

*   *   *

環境監視研究所がカリフォルニア米から殺虫剤を検出したことを知ったとき、
高松先生のアドバイスで、検査するならアメリカから輸出された米をテストすることにし、
友人に入手を依頼した。
一九八九年一一月に、とうとうアメリカからヨーロッパに輸出された米を手に入れた。

その米を、横浜国立大学環境科学研究センターの加藤龍夫教授、
花井義道助手に持ち込んで検査を依頼した。
検査の結果は表14のとおりで、「自然米」と「理想米」というブランドの米から
マラソンが〇・一七ppm、〇・〇二一ppm検出された。

表14 米に残留する有機リン系農薬測定結果(単位:ppm、- 不検出<0.005ppm)
番号 種類 ブランド名 入手先 ダイアジノン
1 Golden Reis アメリカ 西独
2 Ideal Reis マラソン 0.021
3 Natur Reis マラソン 0.017
4 Long Grain Patna Rais オランダ
5 Gorden Reis アラスカ
6 Botan Galrose Rice アメリカ
7 NISIKI
8 Dynasty(玄米)
9 il riso BERETTA イタリア
10 Long Grain Rice(SB) アメリカ
11 HINODE
12 Mahatma
13 S&W(玄米) マラソン 0.062
14 S&W
15 TOWN HOUSE
16 TOWN HOUSE(玄米)
17 WILD RICE
18 あきたこまち 秋田県 横浜
19 ささにしき 山形県
20 雪国(胚芽精米) 山形県
21 ささにしき 宮城県
22 こしひかり 新潟県
23 かおり 宮城県

〔出典〕 横浜国立大学環境科学研究センター紀要第16巻1号
〔注〕 購入は、1~5:1988年冬、6~17:1989年春、18~23:1989年夏。

アメリカの穀物貯蔵庫には隙間がある[P.86_91]

カリフォルニア州は乾燥しているので、米の貯蔵に適している。
我々が見た近代的な倉庫に入れて密封し、燻蒸して貯蔵すれば、虫の心配はないと感じた。
しかし、農家の庭にあった比較的小さな金属製のビンと呼ばれる倉庫は、
壁と天井の間に隙間があった。

*   *   *

私はアーカンソー州の米農家のビンが、
カリフォルニアと同じように隙間があいているかどうかを見たかったので、
簡易階段を四~五メートル上ってビンの屋根の上についている蓋を取って中を覗いた。
すると、一五センチぐらい隙間があるのが見えた。
イリノイ州やカンザス州で見たビンにも隙間があったから、
どうもアメリカのビンはすべて屋根と壁の間に隙間があいているらしい。
これでは、ビンで貯蔵する穀物は、
夏を越す場合はすべて殺虫剤を混ぜ込まねば虫にやられてしまう。

輸入小麦粉の残留収穫後農薬[P.103-104]

サンフランシスコから中南部のニューオーリンズに飛び、ルイジアナ州立大学で取材中、偶然、
穀物のポストハーベスト農薬の専門家であるジャック・L・ベイジェント教授に会うことができ、
小麦にマラソンとレルダンがポストハーベスト農薬として使われていることを知った。
アメリカ連邦規則では表18の農薬が小麦にポストハーベストとして許可されているが、
実態の一部がようやくわかった。
それで、日本に帰ってから小麦粉と小麦粉製品を買い集め、
横浜国立大学環境科学研究センターの加藤龍夫教授、花井義道助手に持ち込み、
有機リン系殺虫剤の検査を依頼した。

表18 アメリカで小麦に収穫後使用できる農薬
マラソン(マラチオン)
アレスリン
メトキシクロール
シアン化カルシウム
ピペロニルブトキサイド***
ピレトリン*
青酸
リン化アルミニウム*
DDVP*
リン化マグネシウム
EDB
二硫化炭素
四塩化炭素
EDC
クロルピクリン
クロロホルム
塩化メチレン
プロピオン酸
酢酸
イソ酪酸
ホルムアルデヒド(飼料用)
二酢酸ナトリウム
レルダン

〔注〕 (1)* 日本でも収穫後の使用が登録されている。
    (2)** 日本では食品添加物として使用できる。

表18 アメリカで小麦に収穫後使用できる農薬
製造または販売者 レルダン マラソン
薄力粉(無添加)
①日本製粉
②日精製粉 0.037 0.054
③ 〃
④ 〃 0.012
⑤日本生活協同組合連合会
⑥ 〃 0.031 0.053
天ぷら粉(添加物有)
⑦日精製粉
⑧ 〃
⑨昭和産業 0.037 0.054
⑩ 〃
ホットケーキミックス(添加物有)
⑪日本生活共同組合連合会 0.027 0.019
⑫日精製粉
から揚げ粉(添加物有)
⑬日精製粉 0.023 0.029
⑭ 〃 0.018 0.021
⑮ 〃 0.018 0.059
中力粉(無添加)
⑯日精製粉
⑰白麦粉(内地麦100%)
⑱生協(埼玉県)
強力粉(無添加)
⑲日精製粉 0.010 0.016
⑳日本製粉

〔出典〕 横浜国立大学環境科学研究センター(1989.9.2)(花井義道,加藤龍夫)
〔注〕 測定対象成分:有機リン系農薬全般。検体は1989年7月末に東京で購入。

輸入作物は何度も燻蒸されている[P.142]

燻蒸に使用されている殺虫剤は、リン化アルミニウムと臭化メチルである。
日本では、五三年産米が問題になったとき、
臭化メチルで繰り返し燻蒸が行われたために臭素が多量に残留していた、と批判された。
米の燻蒸は中止され、麦も一回以下しか燻蒸されないことになった。
それで、一つの穀物に行われる燻蒸は一回以下にしたはずだった。
ところが、アメリカに行ってみると、日本に来る穀物や豆類は平気で何度も燻蒸されていた。
虫が出ると一年に何回も燻蒸するし、業者の手を経るごとに穀物は燻蒸されていた。
業者間で販売するとき、虫がいない証明書を添付するので、信用を守るために業者は、
すでに燻蒸された穀物をまた自分で燻蒸しているからである。
日本に来る穀物は、
カントリー・エレベータ、リバー・エレベータ、ターミナル・エレベータで燻蒸されるから、
平均して少なくとも三回以上燻蒸されていると考えられる。

加工助剤農薬[P.151]

ポストハーベスト以外にも、アメリカでは収穫後の農産物に農薬を使用できる制度がある。
なんと加工中の農産物に農薬を、食品添加物として使用できるのである。
加工食品に農薬を使用できるとは、日本の常識では考えられないが、これも事実である。

ブドウを例に挙げてアメリカの法制度を説明しよう。
栽培中のブドウに農薬を使用する。ここまでは、日本も同じである。
この後、収穫後のブドウにも農薬を使用できる。
これがポストハーベストで、ブドウには五農薬を使用できる。
ところが、問題はこの先にもある。

アメリカでは農産物が「生」かどうかを重視する。
ブドウを乾燥して干しブドウにすると、生ではなくなる。
生でない農産物は加工食品と扱うことは、日本もアメリカも同じである。
ところがアメリカでは、乾燥を始めて生でなくなったブドウにも、
食品添加物と称して農薬を使用することができるのである。

ブドウには、殺菌剤のキャプタン(輸入イチゴの項を参照)を使用できる。
キャプタンは、ブドウの栽培中に使用でき、収穫後にも使用でき、
乾燥させる加工工程でも使用できる。
残留許容値は、どのケースの場合も五〇ppm。
乾燥させると農薬の濃度が高くなるから、許容値をオーバーするケースが出てくる。
オーバーした場合は、乾燥したブドウを水洗いして五〇ppm以下にすることになっている。

アメリカでは加工食品も臭化メチルで燻蒸されている[P.153]

日本では五三年産米で問題になった臭化メチルも、
アメリカでは加工食品の燻蒸に用いることができる。
しかも、すべての加工食品に使えるのだ。

ルイジアナ州立大学のベイジェント教授にインタビューしている最中、
「米から虫が出た場合は、精米後に燻蒸することも多い」と教授は話した。

高松先生が「精米後はプラスチックの袋に入っているはずだが」と尋ねると、
教授は「プラスチック袋に入ったままでも燻蒸できる」と言い、
さらに「シリアル(コーンフレークやオートミール)のようなものは、
箱に入ったままでも燻蒸する」と続けた。

シリアルの製品から虫が発見された場合、日本ではそのロット全体が廃棄処分される。
ところが、アメリカでは段ボール箱のまま、そのロットをすべて燻蒸倉庫に入れ、
臭化メチルで燻蒸する。
臭化メチルは、段ボールを通り抜け、化粧箱の厚紙を通り抜け、
プラスチックの袋を通り抜けて、シリアルについている虫を殺すのである。
ガスが入ったため、プラスチック袋はパンパンに膨れ上がるが、
出荷して流通している最中にガスが抜けて、消費者が手にするころにはガスはなくなり、
燻蒸したことはわからなくなっている。
燻蒸剤の残骸は残留しているが、
それも許容値が甘いから、アメリカで違反が出ることはないのである。

日本のポストハーベスト史[P.164]

昭和二〇年代の初め、敗戦後の混乱期には、DDTを米麦や魚に直接散布する人も現れた。
これに対して厚生省は昭和二三年に「絶対に禁止する」として、
有害・有毒な物質が含まれる食品の販売等を禁止した食品衛生法第四条第二号か、
違反食品添加物を取り締まる第六条で処理するよう通達を出した。

脱ポストハーベスト農薬の技術は確立されている[P.184-185]

カンザス州にある農務省(USDA)農業サービス研究所の
リチャード・L・ダンクル研究所長とウイリアム・H・マックゴイ主任研究官は
「どの国でも殺虫剤を使わずに穀物を貯蔵することはできないだろうから、
農薬を使っていると思う。世界全体を見回すと、アメリカは、
農薬規制の厳しいほうに入る」と言いながら、
一方で「農薬を使用しない方法も研究している。
新しい農薬が許可される方向にないので、別の方向の研究開発が必要だ」とし、
「農薬を使用しなくても穀物を長期間保管できる技術はすでに存在している。
酸素を少なくする方法は燻蒸剤の三~五倍コストがかかるが、
これは機械が試作機だからで、実際に導入されるとこれより安くなる。
ただし、リン化アルミニウムによる燻蒸は三日ですむが、低酸素だと三〇日かかる」と話した。

ファミリーレストランの食材はほぼ輸入食品[P.190]

ファミリーレストラン業界の草分け的存在で業界の最上位に位置する
(株)すかいらーくの芽野亮社長は、農政ジャーナリストの会の研究会での席上、
「食材で肉類は九三%が輸入であり、ハンバーグなどのひき肉は一〇〇%近く輸入に頼っている。
ステーキ用、焼き肉用はほとんどアメリカから、鶏肉はタイからの輸入である。
野菜でも、タマネギだけは台湾などから入っている。
フレンチフライポテトはアイダホ州(アメリカ)から、魚介類も九〇%が輸入。
魚介類で国内のものはホタテ貝とシーズン中のカキのむき身である」
と答えている(「日本農業の動き」№90「食品産業の新市場戦略」より)。

腐敗した輸入食品が学校給食に引き取られている[P.196-197]

一九八九年の八月に名古屋で開かれた「第三五回日本母親大会」で、
輸入塩蔵野菜の問題が取り上げられたときに、横浜、名古屋、神戸などの港で野積みされ、
異臭を放ち、ポリ容器の中はブツブツと発酵状態にあり、
商品価値などゼロに近いマッシュルームの引取先会社が、
学校給食用のマッシュルームを製造している会社だったという報告である。
この会社は、「学校給食用」と印刷した段ボール箱にマッシュルームを詰めて、
商社から全国各地の学校給食会に送っているという、なんともショッキングな報告であった。

野積輸入食品問題のその後[P.209-210]

数年前、輸入された塩蔵野菜が、
横浜港に一年以上も野積みされたまま放置されている問題を
テレビや雑誌などが大きな問題として取り上げたことを記憶されている方も多いことと思う。
これが大きな社会問題となったのは、港に働く人たち(港湾労働組合)の告発がきっかけであった。
その後、事態は改善されているように見えるが、表面的に改善されただけで、
山菜の入ったドラム缶は地方に持っていかれて、
加工工場の近くに野積みされているケースも発見されている。
常識では考えにくいことだが、最初にとられた改善策の一つは、
地上での野積みをやめて、ビルの屋上に移すことだった。
これで一般の人の目には触れない、というわけだが、
そのことがばれると、転々と場所をかえるようになった。

輸入食品が名産品と偽装表示されている[P.210]

一九八九年一〇月、NHKテレビの『おはようジャーナル』が
横浜湾に入った山菜のゆくえについて取り上げた。
輸入された山菜は長野の加工工場に運ばれ、味を調整してパックされる。
このパックはラベルがはられないまま全国に販売され、
そこで各地の名産のラベルがはられて土産物店などに並んでいたのである。
ソ連や中国の山菜が○○名産として販売されているのは、
内容に重要な変更を加えたところが原産国になるという
表示制度の欠陥を業者に悪用されている典型的な一例である。

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