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書籍と雑誌の要約と解説

コラーゲンの話

健康と美をまもる高分子

装丁
コラーゲンの話 コラーゲンの話
大崎茂芳(奈良県立医科大学教授)
中央公論新社(中公新書1917)
ISBN4-12-101917-2
C1245
2007/10/25
¥720
解説

コラーゲンは、体のなかでどのようにしてつくられているのだろうか、
そして、体のどのような機能に関係しているのだろうか。
これらの疑問は、生命の仕組みを考える上で非常に興味深く、かつ重要なものである。
しかし、それに対する答えは長年秘密のベールに覆われていた。

本書ではこの秘密のベールをはがす努力を行ってみたい。
まずは、私とタンパク質、コラーゲンとの出会いに始まって、
コラーゲンのミクロな構造について触れ、
体内でどのようにコラーゲンが生成されるのかについて考えてみよう。
同時に、読者の関心が高いと思われる、
「コラーゲンが食べると、本当に体のコラーゲンになるのか」という疑問についても、
近年の多くの研究結果を踏まえながら答えたいと思っている。

私はコラーゲン線維の並び方に注目し、長くその研究を進めている。
人間の肌のしわについては、老化との関係で関心を持たれることはあるが、
しわの原因となる生体組織でのコラーゲン線維の並び方については議論されてこなかった。
いや、皮膚がさまざまな方向に動くのは、
コラーゲン線維が特定の方向に並んでいないためであるとさえいわれていたのである。

コラーゲンの研究過程で、
私はコラーゲン線維の並び方を迅速に測定できる新しい方法を見いだした。
それを生体組織に適用したところ、面白い並び方が分かってきた。
本書では、動物の皮膚やヒトの器官など、
生体組織におけるコラーゲン線維の並び方がどのようになっているのかについて、
初めて見る秘密のベールのなかの様子を確かめてみたい。
また、それらの生体組織において、
コラーゲン線維の並び方が運動機能に影響を与えることが分かってきたことから、
その仕組みの驚きを味わってみたい。
次に、地球環境問題の一つにもなっている危険な紫外線の問題、
また線維の並び方と皮膚の動きに関係した若さや美しさに加えて、
喜怒哀楽を表現できるヒトの顔の問題についても、
答えのヒントを得たいと思っている。
最後に、新しい測定法を紙や不織布に適用した例についても触れてみよう。
[ⅱ-ⅳ]

目次
  1. コラーゲンと人体
    1. コラーゲンとの出会い
    2. コラーゲンとは何か
      1. 動物の大型化への道を開く
      2. 顔とコラーゲン
      3. しわとコラーゲン
      4. 変身するコラーゲン――ゼラチン
    3. コラーゲンは本当に体に良いのか
      1. コラーゲンを構成するアミノ酸の特徴
      2. コラーゲンはこうしてつくられる
      3. コラーゲンと病気
      4. 食べたコラーゲンはそのまま体のコラーゲンになるのか
      5. コラーゲン料理をどう食べればいいのか
      6. 海洋性コラーゲンをつくる
      7. コラーゲンとBSE問題
      8. 多糖類のコラーゲン
    4. コラーゲンの構造はどうなっているのか
      1. コラーゲンは三重ラセン
      2. コラーゲンの分子構造を見る
      3. コラーゲン研究小史
  2. タンパク質の役割
    1. 生体組織に含まれる高分子
      1. ヒアルロン酸――効能と副作用
      2. キチン、キトサン――傷の治りを速める
      3. エラスチン――ゴムより強い弾力性
      4. ケラチン――皮膚を守る
    2. タンパク質とは
      1. ポストゲノムはタンパク質の時代
      2. タンパク質分子の大きさ
    3. タンパク質からアミノ酸へ
      1. 食べたタンパク質のゆくえ
      2. アミノ酸どんな味?
      3. 必須アミノ酸――魔法の二〇種類
      4. 栄養素としてのタンパク質
      5. 栄養素としてのアミノ酸
  3. 動物とヒトにおけるコラーゲン
    1. コラーゲンの並び方
      1. コラーゲンの集合体
      2. マイクロ波測定法でフィルムをはかる
      3. マイクロ波方式を生体組織に適用する
    2. 牛革におけるコラーゲン
      1. 牛革におけるコラーゲン線維の並び
      2. 牛革で自動計測してみる
      3. 背側と腹側で異なる並び方
    3. コブラ革におけるコラーゲン
      1. コブラとの出会い
      2. 連続的に計測する
      3. コブラ革の力学的性質
      4. コブラは背面運動ができるのか
    4. ベニヤ板構造をしたエイの皮膚
    5. ヒトの器官におけるコラーゲン
      1. 老化する血管を目前に
      2. 大動脈と大静脈の大きな差
      3. 運動に適した骨における配向
      4. 肺における配向で分かること
    6. 美しさを保つ
      1. 化粧と衣服
        1. 化粧――白への憧れ
        2. アミノ酸を利用する
        3. 衣服の役割
      2. 紫外線の働き
        1. フロンとオゾンと紫外線
        2. 紫外線にも浴び方がある
        3. 日焼けをとめる二つの方法
      3. クモは紫外線を上手に使う
      4. 皮膚移植法の提案
        1. 毛穴から配向性が分かる
        2. 新しい皮膚移植法――配向性を考慮して
      5. 若さと美しさとコラーゲン
    7. 分子や線維の並びはどうして分かるのか
      1. 紙シート、不織布、フィルムにおける配向性
        1. 紙シートの反りと縮み
        2. 不織布を調べる
        3. フィルムの変形と収縮
        4. 分子配向をどうコントロールするか
      2. 紆余曲折の研究へのステップ
        1. 大学で初めての研究
        2. 高分子に強誘電体はあるのか
        3. 新幹線のなかで見つけた新しい測定法
        4. 趣味としてのクモの糸の研究と結びつく
文献
  • 味の素株式会社『アミノ酸ハンドブック』(2005年)
  • 藤本大三郎『コラーゲン物語』(2003年)
  • 日本必須アミノ酸協会『アミノ酸セミナー』(2005年)
  • 日本水産学会『魚類タンパク質』(1959年)
  • 岡村浩『新版皮革科学』(1992年)
  • 関口清俊&鈴木信太郎『多細胞体の構築と細胞接着システム』(2002年)
  • 白井邦郎『コラーゲンと美容健康を語る』(2002年)
  • 服部道廣『スキンケアの科学』(2003年)
  • 大崎茂芳『なぜクモは糸から落ちないのか』(2004年)
  • 菅原努&野津敬一『太陽紫外線と健康』(1999年)
  • 津田紀代『お化粧と科学』(1998年)
  • 大崎茂芳『クモの糸のミステリー』(2000年)
  • 『魏志倭人伝』[P.113]

内容

大崎茂芳がコラーゲン研究者になった経緯[P.2-3]

私は整形外科学のモデル実験としてニワトリの腱の力学的強度の測定も行っていた。
腱がコラーゲンの塊のようなもので、
力学的に非常に強いことに強烈な印象を受け、また同時に研究を進めていた、
コラーゲンの集合体であるラットの尻尾の強靭さにも驚かされた。
コラーゲンの不思議さに関心を持ちはじめたのはこの頃である。
しばらくして、私は粘着との関係からクモの糸の研究を始め、
その魅力にとりつかれて、いまだに続けている。

私がコラーゲンの研究に本格的に取り組むようになったのは、
柔らかさ、しなやかさ、強さを同時に求められる
ヒトの血管や牛革を扱うようになってからのことである。
大学院を修了してから八年ほど経っていた。
これを機会に、私は次第にコラーゲンの面白さにも引き込まれてしまった。

摂食したコラーゲンは体内でコラーゲンにならない[P.24-27]

ヒドロキシ化されたプロリンとリシンはコラーゲンを構成している独特なアミノ酸であるが、
これに関してはステッテンとショーエンハイマー(ともにコロンビア大学)
による興味深い実験がある(一九四四年)。

コラーゲンのアミノ酸組成は三分の一がグリシン、
一五~三〇%がプロリンと4-ヒドロキシプロリンを合わせたものである。
コラーゲンのなかには3-ヒドロキシプロリン、
5-ヒドロキシプロリンなどのヒドロキシアミノ酸もあるが、量としてはわずかである。
放射性同位体を用いた実験によると、
これらのヒドロキシアミノ酸は体内におけるポリペプチド合成過程で
コラーゲンには取り込まれない。

ステッテンらの研究によると、
放射性4-ヒドロキシプロリンをラットに与えたところ、
合成されるコラーゲンは放射性を持たなかったが、
放射性プロリンを与えたところ放射性のコラーゲンができた。
これはプロリンがコラーゲンのペプチド鎖が合成されてからヒドロキシ化されるためである。
つまり、プロリンやリシンはポリペプチド鎖に取り込むことができるが、
体内にヒドロキシプロリンがあったとしても、
ポリペプチド鎖の合成には役に立たないということになる(図1-11)。

中略

動物の肉からコラーゲンを摂ると、体内で分解されてできたグリシンやプロリンなどは、
ふたたびコラーゲンを合成するためのアミノ酸として役に立つ。
しかし、コラーゲンを分解して生じたヒドロキシプロリンやヒドロキシリシンは、
体内でのコラーゲンの形成には組み込まれない。
DNAの塩基配列には二〇種類の決められたアミノ酸を組み立てる設計図は存在するが、
ヒドロキシプロリンやヒドロキシリシンをタンパク質に組み込む設計図はないのである。
その点からも、細胞内でコラーゲンをつくるためにはプロリンやリシンが細胞内にすでに存在し、
それらが合成に寄与しなければならない。

ヒドロキシ化されたプロリンやリシンがコラーゲンの合成に寄与する可能性はなく、
口に入れたコラーゲンを分解しても、それから細胞内では少量のコラーゲンしかつくりだせない。

鯉のコラーゲン比率[P.28-29]

久保田穣教授(東京水産大学)によれば、
コラーゲンはコイでは全タンパク質中の六分の一を占める。
組織ごとに調べられた全タンパク質中のコラーゲンの割合は、
鱗では九七%、皮では七四%、筋隔膜では九五%、骨では六八%とかなり高い。
ところが、腹肉では三%、背肉では一・八%、腎臓では七・八%、
肝臓や膵臓では五・六%と、一般に臓器ではコラーゲンが少なくなっている。
一方、腸では二五%と比較的多く含まれている。

コラーゲン研究史[P.38-39]

一九四〇年代の初めに、
コラーゲン線維が約七〇ナノメートルの周期構造を持つことが示された。
一九五五年にはドーティはコラーゲンの分子量が約三〇万であり、
長さが三一〇ナノメートルという結果を得ている。
一九五六年には、ホールが電子顕微鏡を用いて
コラーゲンの一個の分子を観察することに成功し、
長さが二八二ナノメートル、直径が一・五ナノメートルであることを示した。

その後、一九六〇年にはホッジとシュミットがコラーゲン線維の四分の一ずれモデルを、
一九六一年にリッチとクリックはコラーゲンが三重ラセン構造をとるモデルを提出している。
同年に、ピーズは分子量が約三〇万のコラーゲンは
分子量が約一〇万の三本のポリペプチド鎖から構成されていることを報告した。
そして、コラーゲンのα鎖の全アミノ酸配列が決定されたのは一九八三年のことである。

中略

一九八五年、私はマイクロ波方式による分子や線維の配向測定法を見いだし、
コラーゲン線維の配向に関する研究結果を報告しはじめた。
以降、一九九〇年代に入るとコラーゲンの研究、
特に細胞外マトリックスの研究が世界的にも増えている。
これに関しては、関口清俊と鈴木信太郎に編著に一部記載されている。
また、医学的応用をめざした筏義人教授(奈良県立医科大学)
らのコラーゲンの化学的架橋についての研究がある。

ヒアルロン酸[P.42-44]

医薬品としては、関節軟骨部の潤滑をよくする効果、
ならびに軟骨基質の構成に関与して、炎症を抑える効果や、
疼痛を緩和する作用が確認されている。
そこで整形外科などでは、加齢で軟骨が磨り減った人に、
膝の関節内にヒアルロン酸(図2-1)を注入している。
また、ランニングによって発生した
アキレス腱付着部での炎症を緩和する効果も確認されている
(奈良県立医科大学高倉義典教授)。

中略

國安弘基教授(奈良県立医科大学、分子病理学)によると、
一〇年ほど前からヒアルロン酸ががん細胞を運動しやすくする
との研究が報告されはじめたという。
國安教授もその領域の研究を展開しておられたことがある。
ツールの論文(二〇〇二年)をはじめ多くの研究者の報告によれば、
ヒアルロン酸はがんの転移を促進することが分かってきている。
がんの有無をチェックしないまま使用されている場合が多く、
がんのある人に対してのヒアルロン酸の使用には注意が必要といわれる。

エラスチン[P.46-49]

エラスチンは、皮膚の真皮のみならず、肺、膀胱、動脈、靭帯、
結合組織などに見られる弾性繊維を構成しているタンパク質である。

弾性繊維の芯はエラスチンでできていて、周囲は微細線維で取り囲まれている。
その微細線維の直径は一〇ナノメートルで、糖タンパク質のフィブリンでできている。
コラーゲン線維より細く、分岐した網状構造をつくっている。
エラスチンはコラーゲン線維と比べて知名度は低いが、
老化に関係する皮膚の弾力性などに大いに関係しているのである。
組織染色により、弾性繊維はコラーゲンとは明白に区別できる。

エラスチンと糖タンパク質のミクロフィブリルから構成される弾性繊維は、
丈夫で非常に強い線維を形成するコラーゲンとは違って、
ゴムのような弾力性のある網目をつくっている。
そのため、力を加えると初期の長さの約一五〇%まで伸ばすことができるし、
力を除くと初期の長さまで戻る。

エラスチンのアミノ酸組成では、グリシンが全体の三分の一を占める。
ついでアラニン、バリン、プロリン、ロイシンなどの疎水性アミノ酸が多く、
システインは含まれていない。
またメチオニンも少なく、含流アミノ酸の含量は低い。
エラスチンにもコラーゲン同様にプロリンとリシンが豊富にあり、
ヒドロキシプロリンも少しだけ含まれているが、ヒドロキシリシンは含まれない。
この点がコラーゲンとは異なっている。
また、エラスチン特有のデスモシンとイソデスモシンは一・六%程度含まれている。
ほとんどが疎水性のアミノ酸からなっていることから、エラスチンは全体として疎水性である。

弾性繊維は。結合組織にある線維芽細胞、血管平滑細胞、弾性軟骨の軟骨細胞でつくられる。
弾性繊維はエラスチンというタンパク質からなり、
通常では見られない共有結合でできた架橋がプリペプチド鎖間で形成される。
ここで特徴的なのは、どの方向にも伸びることのできる
エラスチンネットワークをつくっていることである。
異なったエラスチン鎖に属する四つのリシン残基が、
互いに共有結合してデスモシン架橋をつくり、
それによってエラスチン鎖同士が結合している(図2-3)。
伸びることのできるヘリックス構造と強調して、
ゴムのように弾性力に富んだ構造になっていることが分かる。

弾性繊維の存在意義は、
生体に弾力を要求する運動機能に対応していることにあると思われる。
動きを伴う衣服の素材に、伸び縮みを考慮して合成繊維のウレタンが
数パーセント含まれているのは、このエラスチンの機能とよく似ている。

エラスチンにおけるポリペプチド鎖間の架橋もまた、リシンの側鎖に由来している。
ゴム状タンパク質であるエラスチンの架橋は、
エラスチン線維が伸長後に元の大きさにまで復帰するために必要と思われる。
これは、ゴムにジスルフィド結合(-S-S-)を導入して架橋することによって、
弾性的な性質を示す範囲を長くすることとよく似ている。

コラーゲン配向性は洋服を断裁する際に重要な要素となる[P.84]

革コートをつくるときの断裁の仕方に関しては、
牛革のどこの箇所から切り取るかによって寸法安定性は大きく違うはずである。
コートの右半分と左半分の革部でコラーゲンの向きが九〇度異なっているとするならば、
長い間ハンガーに吊っていると左右の伸びが革の自重で異なることが予想され、
そのうちに左右いびつなコートになってしまうだろう。
質の良いコートをつくるためには、
コラーゲンの向きを慎重に考えなければならないのである。

コブラ革のコラーゲン組成[P.94-95]

コブラ革はコラーゲン線維からなっているといわれているが、
それでははたしてどのようなアミノ酸組成になっているのだろうか。
コラーゲンが含まれていれば、
ヒドロキシプロリンやヒドロキシリシンが含まれているはずである。
そこで、研究室のY教授が革の一部を酸で分解して、
その液体のアミノ酸分析を行った。

その結果、グリシンが三四・九%と非常に多く、
次に、アラニンが一三・二%、プロリンが一二・七%であった。
しかしプロリンとヒドロキシプロリン(五・八%)を合わせれば
一八・五%も占めることから、グリシンの次に多い含有量となる。
コラーゲンの特徴であるプロリンとリシンのヒドロキシ化物の割合を調べてみると、
プロリンとヒドロキシプロリンの合計に占めるヒドロキシプロリンの割合は三一%であり、
リシン(二・八%)とヒドロキシリシン(〇・七%)の合計に占める
ヒドロキシリシンの割合は二〇%であった。

血管のコラーゲン配向性[P.103-106]

ヒトの大動脈からの測定用サンプルの調整に予想以上に手間取り、悪戦苦闘の末、
やっと一つの血管の配分測定のデータが得られた。

このデータと、血管組織の特製との関係で矛盾がないかどうかを検討するため、
山下先生と一緒に高知県南国市にある高知医科大学
(現、高知大学医学部)の山本教授を訪問した。
山下先生、山本教授と測定データおよび血管の解剖学的知見を交えての議論から、
私は年齢の異なったヒトの大動脈の配向性を測定してみることにした。

動脈の組織は工業製品のように均質ではなく、
ヒトによって厚さも少しずつ異なっているので、
サンプル調整とデータの補正には苦労の連続であった。

測定に用いたのは五〇歳以上から九〇歳近くの年齢までの血管である。
透過マイクロ波強度の角度依存性に相当する
配向パターンから得られたデータを眺めてみると、
五〇歳程度における配向度は一・一五と大きな異方性を示したが、
九〇歳近くになると、一・〇近くに低下したのである(図3-13左)。
一・〇といえば、線維が無配向であることを意味する。
すなわち若い人の配向性は大きいが、
高齢者になると配向性は低下するという結果が得られたのである。
もっと若い人の動脈にも私は興味を持ったが、
当然のことながら測定できたのは高齢者が多く、調べようがなかった。

次に、大動脈と比べて厚さの薄い大静脈の配向性を調べることにした。
ところが大静脈に関しては、年齢の高低にかかわらず配向性はほとんどないことに気づいた。
測定データが間違っているのではないのかと疑い、他のサンプルも測ってみたが、
それらのサンプルでも配向性は低い。
つまり、静脈では配向性は小さく、
しかも年齢に依存しないことが分かった(図3-13右)。

血管の壁は、基本的には同心円状の三層、
すなわち最内層から内膜、中膜、外膜からなっている(図3-14)。
動脈と静脈の測定から、
動脈は若い頃はコラーゲン線維の配向がしっかりと保たれているが、
老化とともにコラーゲン線維の並びは崩れて、配向性は低下していることが分かった。
心臓から血液を送る動脈は、その構造上円周方向になり伸縮するため、
配向性のあることが要求される。

高齢になると、動脈の機能が低下するとともにコラーゲン線維などの間に架橋
(分子間がところどころ化学結合によってつながる)が起こるために、
配向度が低下するものと思われる。
若いときの動脈は配向性があるゆえに、
ポンプとしての機能を充分果たし得るのであろう。
このように、動脈における線維の配向性は老化と密接に関係のあることが分かってきた。

一方、静脈は血液が心臓に入る役割を果たすので、
それほど筒を伸縮する必要はないために、配向性は低いものと思われる。

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