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書籍と雑誌の要約と解説

ビールを飲んで痛風を治す!

薬学者が自ら成功させたビールを使った痛風撃退の秘策

装丁
ビールを飲んで痛風を治す! ビールを飲んで痛風を治す!
田代眞一(昭和薬科大学教授)
角川書店(角川oneテーマ21)
ISBN4-04-710131-9
2008/05/10
¥686
目次
  1. いきなりの激痛に襲われる
    1. 痛風発病
      1. 突然の激痛「これが痛風発作か!」
      2. 薬を飲んでも痛みが全くなくならない
      3. ビールで尿酸を洗い流すことに決めた
    2. これまでの道のり
      1. 高校時代に鍼灸に興味をもつ
      2. 薬学の先生のアドバイスで進路変更
      3. 富山でイタイイタイ病と出会う
      4. 研究者にならなければダメだ
      5. 京都大学大学院での過酷な生活
      6. 研究するにはもってこいの内分泌代謝疾患センター
      7. 私のモットーは「患者さんの役に立つ薬学」
    3. こわい脱水状態
      1. 学会が終わって仲間と飲みまくる
      2. サウナで脱水状態に
      3. なぜ痛風発作は親指に多いのか?
      4. 一度、発作を起こしたらビールは厳禁!?
      5. ビールにつきもののおつまみがよくない!?
  2. 痛風の基礎知識
    1. 高尿酸血症とは
      1. 富裕階層の「ぜいたく病」から誰でもかかる「生活習慣病」に
      2. 1960年以降に増加の一途を辿る
      3. 尿酸はプリン体の最終代謝産物という老廃物
      4. 尿酸はエネルギー代謝の過程でできる
      5. 人間などの霊長類には尿酸を分解する酵素がない
      6. 尿酸プールには1200mgの尿酸が常に貯蔵されている
      7. 尿酸値が7.0mg/dLを超えたら要注意
      8. 高尿酸血症には3つのタイプがある
      9. 食習慣や激しいスポーツで尿酸が増える「産生過剰型」
      10. 高尿酸血症のリスクファクター
      11. 過剰なストレスが尿酸値を上げる
      12. 増えている無症候性高尿酸血症
      13. 尿酸値の変化を把握することが重要
    2. 痛風の病態
      1. 自覚症状がないままに進行する高尿酸血症
      2. 2回目の痛風発作は忘れた頃にやってくる
      3. 発作を起こしたときの状況判断が大切
      4. 痛風発作の起きる部位は足の親指の付け根が多い
      5. 痛風結節の中身は増えすぎた尿酸結晶
      6. 発作のときの激痛と炎症は免疫細胞が尿酸結晶を攻撃する副産物
      7. 痛風と間違われやすい慢性関節リウマチは圧倒的に女性に多い
      8. 膝関節の軟骨の磨耗などが原因の変形性膝関節症も間違われやすい
      9. 痛風と同じような関節炎を発症する偽痛風
      10. 女性に多い足の親指の付け根が外側に飛び出す外反母趾症
    3. こわい合併症
      1. 高尿酸血症や痛風は生活習慣病のひとつ
      2. 痛風が進行すると腎臓に障害が起きる
      3. 痛風で尿路結石のリスクは飛躍的に高くなる
      4. 痛風と糖尿病のリスク要因は重なっている
      5. 高尿酸血症と脂質異常症の悪の連鎖
      6. 高血圧による腎機能の低下が痛風発作を誘発する
      7. 一命は取り留めてもさまざまな後遺症が残る脳卒中
      8. 動脈硬化で冠動脈が狭くなったり、詰まったりしてしまう
      9. 肥満が尿酸値を上げるきっかけに
  3. 中国で2回目の痛風発作
    1. 中国で痛風が再発した理由
      1. 中医学の先生の前で漢方について講演
      2. 中華料理にはプリン体がいっぱい
      3. 水道水で水分補給ができず痛風発作に襲われる
      4. 痛風の痛みには3つの種類がある
      5. 痛みの原因には物理的なものと化学的なものがありそう
    2. 中国でもビールが私の救世主
      1. 血液を使った薬理研究の開発
      2. 漢方薬の薬理を知るために血液を使った方法を確立する
      3. 中国でもビールが救世主に
  4. 高尿酸血症・痛風の診断と治療
    1. 高尿酸血症・痛風はどのように診断されるのか
      1. 痛風の診断基準はアメリカ生まれ
      2. 痛風発作の特徴をそなえているか、ほかの病気との鑑別をチェックする
      3. 問診で聞かれそうなことへの受け答えを頭の中でまとめておく
      4. 尿酸値は日を改めて複数回測定して平均値を出す
      5. 高尿酸血症には3つのタイプがある
      6. 尿酸クリアランスで腎臓での濾過機能がわかる
      7. 高尿酸血症による腎機能への影響
      8. 腎機能はいろいろな成分の濾過能力でわかる
      9. 超音波検査で尿路結石の存在や大きさを正確に診断できる
    2. 高尿酸血症・痛風の治療とは
      1. 高尿酸血症・痛風の3つの治療目的
      2. 痛風治療の目的は発作の痛みをとり除き、再発を防ぐために尿酸値を下げること
      3. 痛風発作の時期によって治療薬と用量が違ってくる
      4. 痛風発作の治療の中心は非ステロイド系抗炎症薬
      5. 非ステロイド系抗炎症薬が使えないときはステロイドの出番
      6. 痛風発作や合併症の有無で違ってくる高尿酸血症治療
      7. 尿酸産生過剰型を治療する
      8. 尿酸排泄促進薬を服用するときは大量の水分補給を
      9. 降圧薬のなかには尿酸値を上昇させるものがある
      10. 脂質異常症治療薬のなかにも尿酸値を上げるものがある
      11. 糖尿病治療と尿酸値
  5. おいしくビールを飲むために
    1. わたしのビール漬けの食生活
      1. 専門家が口をそろえて指摘するビールの悪影響
      2. 単身赴任の私の1日の食事
      3. どんどん飲んでどんどん出す
      4. γ-GTPが基準値上限の8倍近くてもそれだけなら大丈夫
    2. 本当にビールは痛風の犯人なのか?
      1. 「ビール悪玉説」の根拠はどこにあるのか
      2. アルコールは細胞を破壊して核酸代謝を盛んにする
      3. アルコールは尿酸排泄機能の低下をもたらす
      4. 真犯人はビールのパートナー!?
      5. ビールは痛風をおこすという疫学データ
      6. 自分の都合のいい解釈をする人は私の提案を実行しないほうがいい
      7. 鶏や豚、牛のレバーなど内臓にプリン体が多い
      8. たらこ以外の卵にはプリン体はそれほど含まれていない
      9. 気づかないうちに食べているプリン体もある
      10. おいしいラーメンは要注意
      11. 「パートナー真犯人」説の根拠がそろった
      12. どのアルコールにプリン体が多いのか?
      13. 軍配はビールに上がる
      14. 尿をアルカリ化する食品を積極的にとる
      15. 野菜や果物は尿をアルカリ化する
      16. 体内の水分管理が痛風発作を予防する決め手
      17. 水分補給は必要不可欠
      18. サウナは血液や尿の濃度を上げる原因に
      19. 静的栄養学から動的栄養学へ
  6. さいごに
    1. 「プリン体の入り」と「尿酸の出」のバランスをとる
    2. ビールを飲む分、我慢すべきことがある
文献

内容

  • 田代眞一の痛風体験談[P.14-19]
  • 毎日ビールを3L以上飲み続けても、痛風発作を起こさずに20年以上すごしてきました。[P.35]
  • は20年以上も前に、私自身の体をつかって調べたデータですが、ビールだけを飲んでいる分には尿酸値は確実に下がってゆきます。[P.47]
  • ビールを高尿酸血症や痛風の真犯人に仕立てるのには、少し無理があるのではないかと考えています。要は、ビールが悪いのではなくてビールを飲みながら脂っこい料理やレバーのようなプリン体を多く含むつまみを食べるような“飲み方”が問題なのではないでしょうか。[P.175]
  • 高尿酸血症の盲点・化学調味料[P.183]
  • 豚骨ラーメンにご注意[P.185-186]

田代眞一の痛風体験談[P.14-19]

痛飲した翌朝に足の親指の付け根が赤くれあがっていました。

「痛いっ」

部屋の時計を見ると、朝の8時を少しすぎた時刻です。

漢方薬の作用などを研究する学会である「和漢医薬学会」に集まった
仲間の研究者たちと痛飲して朝方4時半頃に床につき、
数時間しか寝ていませんでしたが、足の指の痛みで目が覚めました。
痛む親指を押してみると、赤く腫れ、腫れ上がった皮がテラテラと光っています。

「こりゃ、痛風だわ」

<中略>

翌朝からの議論に備えてアルコールを飛ばしておこうと、
サウナに入って汗を流したのがたたったようです。
その分、血が濃くなり、溶けきれなかった尿酸にょうさんが出てきたのでしょう。

時間がたつにつれて、痛みはどんどんひどくなっていきます。

和漢医薬学会は前日で終了していましたが、
この日は富山大学時代の恩師など何人かの研究者で立ち上げた
血清薬理研究会を開くことになっていました。
私は、その研究会の中心メンバーでしたから、痛みを我慢してお昼まで参加しました。

痛みは増すばかりで、とにかく当時勤務していた国立京都病院
(現 独立行政法人国立病院機構教徒医療センター)に帰って治療を受けるため、
どうすれば早く帰りつけるだろうかと考えを巡らしていました。
その年の研究会は、岐阜県の下呂げろ温泉が会場でしたから、
高山たかやま本戦と東海道新幹線を乗り継いで帰るのですが、
痛風関節炎(痛風発作)で腫れあがった親指に少しでも何かが触ると、耐え難い激痛が走る状態です。
痛風発作を起こすと、患部に「風が当たっただけでも痛い」と言われますが、
このたとえは決して大げさではないと実感しました。

とても靴を履くことなどできません。
しようがないので靴は手にぶらぶら下げて、裸足はだしでペタペタ、ソロソロと歩き、
高山線と新幹線の車内でも裸足のままでした。
まわりの人からは、胡散うさん臭そうな目で見られましたが、
私は痛みに耐えることで精一杯で、まわりの視線を気にしている余裕などありません。
とにかく、一刻も早く京都の病院に帰り着きたいということしか、
頭には浮かんできませんでした。
何しろ、じっとしていても何かにかんじられるような痛みがある上に、
脈を打つたびにズキズキ痛むは、歩くために親指が曲がるときにも痛むはで、
何も考えたりする余裕はありませんでした。

<中略>

その日は、処方された薬を飲みましたが、全く痛みがとれません。
そこで、次の日の朝、病院に出勤して、昨日診てくれた医長に、

「先生、尿酸を洗うために点滴をするわ。
薬、全然効かんし、ましてや尿酸を洗うぐらいに輸液を入れたら
薬もすぐ尿に出て行くから、もういらんわ」

と言って、自分の研究室の、天井からぶら下げたハンガーに輸液のバッグをつけ、
点滴をしながら仕事をしました。

<中略>

点滴をしているので、当然、おしっこがしたくなります。
しかし、痛い足を引きずってトイレに行くのが苦痛だったので、
トイレに行かないで済む方法はないかと考えました。
病院の私の部屋にあった机は、前板があり、
両横には引き出しがついていたので、人が来ても足下は見えません。
そこで、バケツを机の下に持ち込んで、
尿意をもよおしたらバケツにジャーと排泄するという具合にしました。

点滴の中身は、輸液と、「メイロン」という名前の炭酸水素ナトリウム液です。
血液が酸性に傾いていると尿酸が水に溶けにくくなり、
針状に析出することで痛風発作を起こします。
そのため重曹じゅうそうの水溶液(メイロン)でアルカリ性にし、
溶け出しやすくしたのです。
重曹とは、炭酸水素ナトリウムの別名で、重炭酸曹達ソーダ、略して重曹。
ベーキングパウダーとして使われる、あの白い粉です。

そんなふうにして、なんとかその日は仕事を終えて、家に帰るときに、昨日診てくれた医長に、
「先生、もう薬いらんわ。その代わり輸液とメイロンをもっと処方して。
家でも点滴するから」とお願いしました。

家でも一晩、点滴をしましたら、次の日の昼には大分痛みも軽快していました。
それでも、翌日もまた、病院にいるときは相変わらず点滴をして、
体の中の尿酸を洗い流し続けました。

ビールの摂取が血中尿酸値に及ぼす影響[P.47]

時刻 そのときの尿酸値(mg/dL.) 血中尿酸値
初日 09:00 飲酒前 7.3
12:00 ビール3L飲用後 7.2
17:00 6.8
第2日 09:00 飲酒前 7.1
12:00 飲酒後 7.1
17:00 6.6
第3日 09:00 飲酒前 7.0
12:00 飲酒後 6.9
17:00 6.6
第4日 09:00 飲酒前 7.1
12:00 飲酒後 6.9
17:00 6.4
第5日 09:00 飲酒前 6.5
12:00 飲酒後 6.3
17:00 6.1

※この間、食事は1日カロリーメイト3本のみ。水はのどが渇けば自由に摂取。作成:著者

高尿酸血症の盲点・化学調味料[P.183]

私たちが気づきにくいプリン体の多い食品があります。
それは、第3章の中華料理のところで述べた調味料です。
調味料の原料はグルタミン酸やイノシン酸というアミノ酸や核酸の成分です。
昆布味がグルタミン酸で、かつお味のほうが
イノシン酸やグアニル酸という動物の旨味成分は、なんと、プリン体そのものなのです。
かつお節には、100gあたり約493mgものプリン体が含まれています。
もちろん、一度に100gも使うことはないでしょうが、
中華料理には、調味料が結構たくさん使われています。

こうした化学調味料のこわいところは、食べるときに目に見えないことです。
レバーにプリン体が多いとわかっていれば、たとえ出されても食べなければすみます。
ところが、化学調味料やかつおの削り節は、何にいれられているかわかりません。
おいしいと思って食べている煮物や汁物などの料理に入っていることが多いのです。

豚骨ラーメンにご注意[P.185-186]

注意したいと思うのが、豚骨ラーメンです。
かつお節や煮干しなどなどからとったスープと、
豚骨をぐらぐらと煮込んだスープを合わせた味は、とてもおいしいといいます。
これを「ダブルスープ」というそうですが、
まさにプリン体のダブルパンチのようなスープといえます。

豚骨にしろ、鶏ガラにしろ、骨であり、旨味が凝集されているのは骨髄です。
骨髄は、赤血球などの血球をつくる役割を担っていて、
それだけに、とても活発な分裂を繰り返しています。
例えば、どんな速さ分裂をしていると思われますか。
何と、赤血球になる細胞だけでも、大雑把な数ですが、
1秒に200万個ぐらいもつくられているのです。
信じられない数だと思われませんか。
このように、私たちの体のなかで、もっとも細胞分裂が活発なのが骨髄です。
骨髄では、核酸代謝が盛んに行われているわけです。

その核酸の多い骨髄のエキスにイノシン酸を合わせたスープを飲んでいるのですから、
高尿酸血症や痛風の患者さんは、どんなに食べたいとしてもビールよりよほど悪い食べ物と認識し、
ビールをがまんするぐらいなら豚骨ラーメンは避けるべきでしょう。
豚骨ラーメンのスープ100mLに含まれるプリン体は約33mgというデータがありますが、
行列のできる店のおいしいラーメンはこんなものではないと思います。

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