バベルの図書館

書籍と雑誌の要約と解説

飲み水が危ない

東京大学の五月祭で行なわれた講演を加筆・再構成

装丁
飲み水が危ない 飲み水が危ない
中西準子(東京大学工学部都市工学科助手)
岩波書店(岩波ブックレットNO.144)
ISBN4-00-003084-1
1989/10/20
¥301
目次
  1. 水道水の中の発ガン性物質
  2. アメリカの規制と日本の規制
  3. リスクと効用
文献
  • 中西準子『下水道――水再生の哲学』[P.3]

解説

『飲み水が危ない』は一般書としてはいち早くトリハロメタンの問題を報告した。
発癌性および潜在的な危険性を指摘しているが具体的なデータは提示していない。

内容

  1. 塩素が生み出すクロロホルム[P.6]
  2. トリハロメタンの基準値[P.16-17]
  3. 有機塩素化合物の潜在的危険性[P.20-21]
  4. 水質測定をしない日本の水道局[P.28-29]

塩素が生み出すクロロホルム[P.6]

塩素処理によって発ガン性物質ができるということがわかったきっかけは、
一九七四年のハリスのレポートです。
ミシシッピー川の下流のニューオーリンズで
ミシシッピー川を原水としている水道水を飲んでいる地区の人たちの発ガン率が、
地下水を原水としている地区の人たちの発ガン率が、
地下水を原水としている地区の人にくらべて
一〇万人あたり三三人高いというのが、その内容です。

ではその水道水の中に、どんな物質が入っているのであろうかということを調べていった。
ちょうどその二年ぐらい前に、やはりライン川の下流のオランダで、
水道水を濃縮したものをラットに付けるとガンが起きるということがわかり、
さらにその中にクロロホルムという物質が入っているということがわかっていました。
そういうことがいっしょになって、
水道水の中にクロロホルムという発ガン性物質があるということがわかったわけです。

トリハロメタンの基準値[P.16-17]

ふつう、アメリカとか、WHOなどの国際機関で、
発ガン性物質についての基準値を決める時には、
一生飲み続けた時に一〇万人に一人が飲料水が原因でガンになる、
それ以下にしようということで、だいたいの基準値を求めています。
ところがトリハロメタンだけは一〇万人に四人の発ガン率を基準にしています。
日本がそうした理由はよくわかりませんが、
アメリカが割きに一〇〇ppbというのを決めたので、
日本もそれに追随したのではないかと思います。
西ドイツでは、ほかの物質と同じように一〇万人に一人という基準値、
したがって二五ppbという基準値を使っています。
WHOは、四捨五入して、これを三〇としています。
ただWHOの場合は、総トリハロメタンについては基準値を決めず、
クロロホルムについてのみ決めています。
なぜ、トリクロロエチレンとか、そのほかのものは一〇万人に一人なのに、
トリハロメタンは一〇万人に四人という基準値をつくっているのだろうかというと、
たぶん一〇万人に一人の基準値だと多くの水道水が違反してしまうからだろうと思います。

有機塩素化合物の潜在的危険性[P.20-21]

そもそも塩素がついた有機物は、
私たちが何かを殺すためにつくってきたものだということを知ってほしいのです。
BHCとかDDTとか、枯葉剤とかダイオキシンとか、
そういうものは全部塩素のついた有機物です。
塩素のついた有機物は、人間が他を殺すために開発してきたものです。
黴菌を殺すとか、ネズミをころすとか、戦争で他人を殺すとか、
それから草を枯らしてしまうとか、そういう何かを殺すためにつくってきたものが、
有機塩素化合物と言われるものです。
そういうものが、塩素を入れることによって、水道水の中にたくさんできてしまうわけです。

もういちどクロラールとかクロロ酢酸にもどりますが、
ともかくこれらがトリハロメタンと同じぐらいの量できるということがわかってきました。
そして、クロロ酢酸も発ガン性があることが、
一九八七年のレポートによって明らかになりました。

それからさらに、ハロアセトニトリル――アセトニトリルに塩素や臭素がついたもの――
と言われるものができているということもわかりました。
この量は、それほど多くはありません。
しかし、これも弱い発ガン性があることがわかっています。

さらに、クロロピクリン。これは発ガン性はわかっていません。

つぎに、シアン化塩素――シアンと塩素とが結びついたもの――が、
これはすべての浄水場ではないのですが、アメリカのいくつかの浄水場で検出されています。

水質測定をしない日本の水道局[P.28-29]

農薬は日本では、有機リンだけが規制されていますが、それ以外は規制されていません。
そういうものがどのくらい入っているか教えてほしいと、水道局に質問状を出した。
そうしたらその答えが、
「水質規制されていないから測定する必要がない。
測定する必要がないから測定していないので、わかりません」
と、こういう答えでした。

日本は規制項目がものすごく少ない。
では、それ以外のものはどうなのかということについては、
「規制がないから測りません」ということで、データがいっさい出てこない。
したがって汚染はいつまでもわからない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です