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書籍と雑誌の要約と解説

次世代タンパク質コラーゲン

動物の起源の謎からバイオオーガンまで

装丁
次世代タンパク質コラーゲン 次世代タンパク質コラーゲン
久保木芳徳(北海道大学歯学部教授)&畑隆一郎(東京医科歯科大学難治疾患研究所講師)&吉里勝利(北里大学医学部助教授)
講談社(ブルーバックスB-650)
ISBN4-06-132650-3
C0247
1986/05/20
¥540
目次
  1. 不思議なタンパク質との出会い
    1. コラーゲン、構造の時代から機能の時代へ
    2. 太古にさかのぼるコラーゲン研究
    3. 皮なめしから生命科学へ
    4. コラーゲン、新しい舞台へ
    5. 三本鎖の発見
    6. コラーゲン研究における仮説と証明
    7. プロコラーゲンの同時発見(一九七一年
    8. ミラーの発見、コラーゲンは一種類ではない
    9. グロスのひらめきと幸運――コラゲナーゼの発見
    10. クロスリンク説の登場
  2. コラーゲンとは何か――生物学の目で見る
    1. コラーゲンと生命
    2. 形と生命
    3. 生体タンパク質の三分の一はコラーゲン
    4. コラーゲンがないと身体はバラバラ
    5. 結合組織――コラーゲンはビルの支柱
    6. コラーゲン――高等動物への道
    7. コラーゲンは動物のセルロース
    8. コラーゲンの体内分布
    9. コラーゲンの仲間たち
  3. コラーゲンの素顔――化学の目で見る
    1. タンパク質の変わりもの――コラーゲン
    2. コラーゲン分子の持つ情報
    3. プロコラーゲン――コラーゲンの少年期
    4. プレプロトプロα鎖――生まれたばかりのコラーゲン
    5. プロトプロコラーゲン――コラーゲンの幼児期
    6. マトリックス社会――コラーゲンの成熟、老化そして死
    7. コラーゲンは大家族
    8. コラーゲン遺伝子は不連続
    9. 分散しているコラーゲン遺伝子
  4. 人間の一生とコラーゲン
    1. コラーゲンのない胎児は生きられない
    2. 細胞の分化とコラーゲン
    3. 皮膚はなぜはりついていられるか
    4. 傷口はなぜ元にもどる
    5. 角膜はなぜ透明なのか
    6. 人間の骨はなぜ丈夫か
    7. 骨のコラーゲンは入れかわる
    8. コラーゲンは老化に関係しているか
    9. 高齢者の骨はなぜもろくなる
  5. コラーゲン病
    1. コラーゲンと病気
    2. 膠原病とコラーゲン病
    3. 炎症性のコラーゲン病
    4. コラーゲンが作られすぎると大変
    5. コラーゲンが少なくても大変――壊血病
    6. 結合組織の構造異常――顎関節症
    7. 先天性コラーゲン病
  6. コラーゲン研究の近未来
    1. 可能か? 人工肝臓――肝硬変は治せる
    2. 人工皮膚はあと一歩
    3. 血管再生が可能になる
    4. ガンの転移は防げる
    5. 遺伝子導入によるコラーゲン病治療

要約

人間の先祖が誕生したのは200万年前だがコラーゲンは10億年前から存在する。
線維状の細長い形をしており、全長300nm、幅1.5nm、分子量30万である。[P.13]

主に線維芽細胞で作られ、肝細胞、内皮細胞、平滑筋細胞でも必要に応じて作られる。
身体の至る所(上皮細胞、結合組織、細胞間質)に偏在していて、[P.16-17]
結合組織では密に集まっているものを硬組織、
ゆるやかに集まっているものを軟組織と区別する。[P.18]

肝臓を通る血管にコラゲナーゼを注入すると肝臓はバラバラになってしまう。[P.73]

結合組織にはコラーゲン、エラスチン、プロテオグリカンの他に
糖タンパク質(ラミニンやフィブロネクチン)が重要な役割を果している。[P.88]

コラーゲンの前駆体はプロコラーゲンと呼ばれる。[P.100-107]

内容

コラーゲンは“生命を形作り、安定化させるタンパク質”[P.62-63]

肝細胞を培養してみよう。
この細胞は、非常に多彩な機能を持っていて、
その機能を維持させたまま長期間培養することは不可能で、
通常一~ニ週間以内に死んでしまう。
ところが、コラーゲンなどを含む細胞間物質と一緒に培養すると
かなり長期間正常機能を保持して培養することができる。
つまりこの場合は、
細胞の分化機能の安定化に決定的な役割を持っているようである。

細胞の形と生化学的機能は密接な関係にある[P.65-66]

正常な状態では、軟骨細胞はⅠ型コラーゲンを絶対作らない。

さて、この軟骨細胞を体外で長く培養するとか、特別な試薬で処理すると、
丸い細胞が細長い細胞となって、外見上、線維芽細胞のようになってしまう。
ここで質問。

「この変化した軟骨細胞は何型のコラーゲンを作っているか」

中略

細胞に答えを聞いてみよう。正解はⅠ型なのである。

人体の諸器官のコラーゲン含量[P.82]

器官 コラーゲン量(g/100g 乾燥重量)
骨(ウシ) 23
骨(無機物を除いたもの) 88
腱(ウシ) 86
軟骨(ウシ) 46-64
皮膚 72
10
心筋 6
肝臓 4
脳(ラット) 約0.5

コラーゲンの体内分布[P.83]

  • 頭蓋骨、Ⅰ
  • 耳軟骨、Ⅱ
  • 鼻中隔軟骨、Ⅱ
  • 喉頭軟骨、Ⅱ
  • 気管(支)軟骨、Ⅱ
  • 肋軟骨、Ⅱ
  • 推間板
    • 髄核、Ⅱ
    • 線維輪、Ⅰ>Ⅱ
  • 関節軟骨、Ⅱ
  • 軟骨膜、Ⅰ
    • 角膜、Ⅰ、Ⅴ、Ⅵ、(Ⅱ)
    • デメス膜、Ⅳ
    • 水晶体嚢、Ⅳ
    • 硝子体、Ⅱ
    • 網膜、Ⅱ
    • 強膜
      • 線維性、Ⅰ、Ⅲ
      • 軟骨性、Ⅱ
    • 象牙質Ⅰ、Ⅲ
    • 歯肉、Ⅰ、Ⅲ
    • 歯周靭帯Ⅰ、Ⅲ
  • 肺臓、Ⅰ、Ⅲ
  • 大動脈、Ⅰ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅵ
  • 心臓、Ⅰ、Ⅲ
  • 脾臓、Ⅰ、Ⅲ
  • 肝臓、Ⅰ、Ⅱ、Ⅴ
  • 腎臓
    • Ⅰ、Ⅲ
    • Ⅳ(糸球体基底膜)
  • 腸、Ⅰ、Ⅲ
  • 大腿神経、Ⅰ、Ⅲ
  • 骨格筋、Ⅰ、Ⅲ、Ⅴ
  • 皮膚、Ⅰ、Ⅲ
  • 長骨、Ⅰ
  • 半月、Ⅰ
  • 滑膜、Ⅰ、Ⅲ
  • アキレス腱、Ⅰ

脳にはコラーゲンが少ない[P.85]

ほとんどの臓器が乾燥重量の三~一〇パーセントのコラーゲンを含んでいる。
例外的に少ないのは脳であり、一パーセント以下であると考えられる。
これには理由がある。
大脳皮質は、外胚葉由来の神経細胞(人の場合、一五〇億個といわれる)と、
グリア細胞がぎっしりと詰まっているし、
髄質は、神経線維とグリア細胞が詰まっている。
したがって脳の結合組織といえば、脳をつつんでいる脳膜、
脳中の血管の結合組織と基底膜、グリア細胞の基底膜などである。
また神経と神経の間のシナプスには、
神経‐筋シナプスとちがって基底膜がないことも、
脳にコラーゲンが少ないことの一因だろう。

コラーゲンの型[P.112-114]

コラーゲンの種類を型と呼び、
ローマ数字で、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型、Ⅴ型などと呼び、
現在Ⅹ型までが認知されている。
一番量が多くて、また古くから知られているのはⅠ型コラーゲンで、
皮膚や腱に多く存在する。

中略

Ⅰ型コラーゲン分子のα鎖には二種類あり、
α1(Ⅰ)と呼ばれる鎖二本とα2(Ⅰ)と呼ばれる鎖一本で三本ラセンを作っている。
このⅠ型コラーゲン分子は特にお互いに集まりやすく、太く長く丈夫な線維を作る。

Ⅱ型コラーゲンは軟骨に含まれている。
Ⅱ型コラーゲンは一種類のα鎖が三本で作られている。
Ⅱ型コラーゲン同士はお互いにあまり仲がよくなく、細い線維しか作らない。
Ⅱ型コラーゲンは、しかしプロテオグリカンとは仲がよく、
Ⅱ型コラーゲンとプロテオグリカンは結合して圧縮力に強い軟骨を作る。

血管や胎児の皮膚にはα1(Ⅲ)鎖の三本よりなるⅢ型コラーゲンがある。
これもⅠ型コラーゲンより細い線維を作るが、組成に柔軟性を与える役割がある。
上皮細胞層の下には基底膜がある(第二章八節参照)。
この基底膜のコラーゲンはⅣ型コラーゲンと呼ばれ、
二種類のα鎖、α1(Ⅳ)とα2(Ⅳ)からできている。
コノコラーゲンは細長いコラーゲンと
普通の球状タンパク質の間にできた合い子のようなもので、
棒状のコラーゲンの三本鎖ヘリックスの途中と両端に球状の部分があり、
この部分がお互いにつきやすいために
他のコラーゲンのような細長い線維でなく網目状の膜を作る。
細胞の表面とか、他のコラーゲン線維の表面にはⅤ型コラーゲンが存在する。
これは他の物質に付着しやすく、ものとものを接着する役割がある。
これはα1(Ⅴ)、α2(Ⅴ)とα3(Ⅴ)の三種類の鎖からできている。
このようにコラーゲンはお互いに似てはいるが、
その存在部位、役割の違いによって少しずつ異なっている。

血圧とコラーゲン[P.170]

血圧が上昇すると血管壁の細胞はこれに対抗するために、
コラーゲンを多く作り、コラーゲンの合成に必要なブロリン水酸化酵素の活性も上昇する。
降圧剤を与えて、血圧を下げると、コラーゲン合成活性も酵素活性も低下する。
このように血圧と血管壁のコラーゲン合成速度は密接な関係にあるようだ。

ビタミンCとコラーゲン[P.172]

コラーゲンにはヒドロキシプロリンが多く、
このアミノ酸がコラーゲンの三重ラセンに必要なことは先に述べた。
ビタミンCはプロリンをヒドロキシプロリンに変換する
プロリン水酸化酵素が活性を発揮するのに必須の成分である。
だからビタミンCが不足すると完全なコラーゲンができなくなり、
血管をはじめ全身の組織に影響が出る。
それゆえ、壊血病はまたコラーゲン欠乏症であるともいえる。

コラーゲン推薦図書[P.200]

著者「三つだけ、紹介しておきましょう。

①『老化はなぜおこるか』(藤本大三郎著、講談社ブルーバックス、一九八四年)。
コラーゲンが主題ではありませんが、コラーゲン研究の第一人者の手になる本で、
コラーゲンに関するものが多く登場し、しかもわかりやすく解説されています。

②『コラーゲン 代謝と疾患』(永井裕、藤本大三郎編、講談社、一九八二年)。
解説書といっても、専門家向けです。
しかし本書の内容を前提にすれば、よく理解できます。

③『コラーゲン――化学・生物学・医学』
(野田春彦・永井裕・藤本大三郎編、南江堂、一九七五年)。
少し古くなって、コラーゲン研究の現代の動向の解説はありませんが、
副タイトルが示すように、コラーゲンの多彩な面を知るには、格好の高度の本です」

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