バベルの図書館

書籍と雑誌の要約と解説

フッ素とむし歯

反フッ素宣言

装丁
フッ素とむし歯 フッ素とむし歯
高橋晄正(東京大学講師)
三一書房(三一新書886)
GTIN0236-780886-2726
1978/10/31
¥580
保健所→学校・幼稚園・保育園などをとおして、幼児たちの歯に濃厚フッ素溶液を塗ったり、
フッ素溶液でうがいをさせたりする動きが全国的に拡大している。
厚生省、歯科医、製薬会社などによって創りだされた「むし歯予防にフッ素」という神話が、
いつのまにか国民をおおい、幼児たちの肉体の中に、多量のフッ素が吸収され、蓄積されていく――。

「フッ素は安全なのか」編著者や全国青年歯科医師連絡会議の青年歯科医師たちが、
世界中のフッ素文献を検討し、その安全性を科学的に問うことによって、
歯、骨、内分泌障害、アレルギー、染色体傷害(ダウン症の多発)、
発ガンなどの害作用の危険性が明らかとなり、ここに、フッ素神話は打ち砕かれることとなった。

フッ素をめぐる市民運動の報告や、正しい虫歯予防の方法を加えて本書は、
フッ素塗布や洗口の推進について正しい批判の目を養う一助となろう。

解説
本書は、フッ素の安全性への疑問を主題とした第Ⅰ部と、
フッ素をめぐる市民運動を主題とした第Ⅱ部とから成り立っている。

第Ⅰ部は、
私が書き下ろす形になったが、これは主として、
私が青年歯科医師連絡会議の諸君とともに世界中のフッ素文献を集めて検討した結果であるが、
とくに第二章においては東北大学歯学部藤秀敏、
浅野淑子著の「歯界展望」発表の論文および手記を参考にさせて頂いた。
なお第六章は、松田政登(九州大学歯学部助手)が執筆した。

第Ⅱ部には、
新潟および宝塚でのフッ素をめぐる市民運動の生々しい現地報告に当てることとした。
第一章は、食生活改善普及会、子どもの健康を考える会、
上水道フッ素添加・集団フッ素洗口反対連絡協議会、
新発田食生活を考える会、小林淳一・小林マリ子(京ヶ瀬村)が、
第二章は梅村長生(宝塚斑状歯認定委員会)が執筆した。

本書が、フッ素の真実を国民の皆さんに伝え、保健所などによる濃厚フッ素溶液塗布と、
新潟大学予防歯科によるフッ素洗口の推進について正しい批判の目を養うのに役立つなら、
私たちのこれまでの努力の一端が報われたものとして、
私たちの喜びはこれにまさるものはないでしょう。

目次
  1. フッ素の科学――安全性への疑問
    1. フッ素はどのようにして浸透したか
      1. アメリカでのフッ素化実験
      2. フッ素化の世界への拡大と反撃
      3. わが国でのフッ素化実験――京都・山科地区と三重県朝日町
      4. WHOのフッ素化勧告決議(一九六九年と一九七五年)
      5. 宝塚斑状歯事件
      6. 新潟大学の蠢動と市民運動の激突
      7. 学会と歯科医師会の対応
      8. WHOバームズ部長、宝塚市を訪問
      9. 歯科医師会「見解」を発表
      10. 山梨で学童のフッ素洗口を中止
      11. 市民運動、IOCU世界大会へ
    2. フッ素は安全か――いつわりの安全性保証
      1. WHOのいつわれる安全性保証
      2. フッ素の分布と生体における代謝
      3. フッ素の栄養学的“必須”論
      4. フッ素の理論的安全限界――一日摂取許容量の推測
      5. フッ素の実摂取量――食習慣の違い
      6. 飲料水中のフッ素の経験的“至適水準”論の本質
    3. フッ素の害作用のかずかず――一般毒性
      1. フッ素による歯の傷害
      2. フッ素による骨の傷害
      3. フッ素による甲状腺などの内分泌障害
      4. その他の器官への影響
      5. WHOの安全性保証の全面崩壊
    4. フッ素の特殊毒性――アレルギー、染色体傷害、ガン
    5. フッ素による洗口、塗布、歯みがきの問題点
      1. フッ素洗口は有効か
      2. フッ素入り歯みがきは有効か
      3. フッ素の濃厚溶液の塗布は有効か
      4. フッ素錠内服の問題点
      5. フッ素洗口、塗布、歯みがきの危険性
    6. 新しいむし歯予防を求めて
  2. 告発――フッ素化への市民の疑問
    1. 新潟残酷物語
      1. “フッ素神話”造成の足あと
      2. 新潟市・M小学校“勝利”の代価
      3. 新発田市・残された行政不信
      4. 牧村・狙われた僻地の子どもたち
      5. 京ヶ瀬村の招かれざる客との闘い
      6. 弥彦小学校実験のカラクリ
    2. 宝塚斑状歯――フッ素公害ハクサリの惨状
  3. 誤れるアメリカ予防歯科学からの離脱
文献
  1. WHO『フッ素と人間の健康』[P.14_30_82_100_136_143]
  2. サットン『フッ素化―実験計画の誤りと手抜かり』[P.23]
  3. モーレンブルグ『水道水フッ素化―商業的成功と医学的誤り』[P.40]
  4. 生物影響委員会『フッ素化合物』[P.57_96]
  5. アンダーウッド『人間と動物における微量要素』[P.95]
  6. アメリカ国家研究委員会『栄養許容量基準』[P.100]
  7. WHO『人間の栄養における微量元素』[P.101]
  8. 塚田亀治『枯れ死の里より』[P.116]
  9. アメリカ健康教育福祉部国立歯科研究所『飲料水のフッ素化合物』[P.140]
  10. 武谷三男『安全性の考え方』[P.275]
校正
  1. 『フッ化と人間の健康』→『フッ素と人間の健康』
  2. 父母に許えてきた。→父母に訴えてきた。[P.227]

内容

飯塚喜一「斑状歯普遍存在説」[P.59-60]

宝塚の斑状歯を事実そのままに認めようとしない人びとに有力な“武器”を提供したのは、
神奈川歯大飯塚喜一氏の「斑状歯普遍存在説」(氏の論文中では白濁歯)であった。
彼の見た、左右対象で数歯以上のものは十数%はわが国ではどこにでも存在する、
という事実そのものは正しかったけれども、彼がそれらを非フッ素性と考えたのは、
「飲料水中のフッ素濃度だけがフッ素性斑状歯の原因である」という
アメリカ社会でつくられたディーンの説をう飲みにしたためであって、
それらの人びとの幼少時の尿中フッ素排泄量の定量成績に根拠をおく
実証的なものではなかった。

東北大の浅野の研究によれば、それらの斑状歯保有率は、
わが国でも飲料水中のフッ素濃度と比例しており、
ただディーンのデータから求められる回帰直線よりははるかに上位に存在するのである。
それは、飲料水以外(食品からと考えるべき根拠がある)から
一定量のフッ素が摂取されているという構造に一致している。
飯塚説の崩壊によって、宝塚斑状歯のフッ素原因説否定論の理論的根拠は、
ほぼ壊滅したということができよう。

フッ素化推進派の講演妨害工作[P.61-62]

一九七五年の一月二十六日、東京医科歯科大学の柳沢文徳教授は新潟市を訪れ、
谷美津枝さんの主催する食生活改善普及会主催の“フッ素を研究する会”で
フッ素反対の講演をおこなった。
このときの状況は、フッ素推進派である新潟大学予防歯科の人びとの誘いをうけて
会場に取材にきていたルポライターH氏が、
『暮しと健康』(保健同人社、一九七六年一ー二月)に
「むし歯をめぐるフッ素戦争」として書いている。

柳沢教授の講演会を訪れた人びとは、
会場入口で新潟大学予防歯科の人びとから「柳沢説の九項目の誤り」という内容のビラを配られた。
H氏のルポは、

――同教授は、このちらしに言及しながら、「私はよく知りませんから」とか、
「私はバカなものですから」とか、たびたびつぶやいていた。
そのため講演内容はいっそう非科学的になった――

と柳沢教授に決して好意的ではない姿勢で書かれている。

当日の柳沢教授の講演内容は、記録がないのでわからないが、
翌五十一年六月に、同氏が新潟医学会に招かれたときにおこなった講演は、
ほとんど非の打ちどころのない立派なフッ素批判の体系であった。

カルシウムが欠乏するとフッ素の吸収率が上がる[P.93-94]

ウェッドルとムーラー(一九五四)が、
ラットに毎日ニ・〇mgのフッ化ソーダを一二日間与えた研究によると、
カルシウムの濃度(%)が〇・〇一から〇・一をへて一・〇へと一〇〇倍増加すると、
体内に蓄積される量は三分の一になり、
これがマグネシウムイオンだと二分の一になり、
アルミニウムの場合だと三分の一になるという。
これらのイオンの〇・〇一%の場合は無添加の場合とほんのわずかしか差がなく、
与えられたフッ素の四三%ほどが体内に蓄積される。
したがって、カルシウム、マグネシウムの多い硬水では、
フッ素濃度が高くてもそれを飲用する人びとにフッ素の害作用は出にくく、
軟水では、それが強く出ることになる。

フッ素の平均排泄量[P.113_118-119]

東北大学予防歯科の浅野が、
お茶の飲用量と尿中フッ素量の関係を年齢の経過を追いながら追及した結果(図5)によると、
二〇―二九歳では、一日五〇〇㏄のお茶を飲み、尿中に〇・八mgのフッ素を排泄するが、
より高齢では、一定量のお茶の飲用にたいする尿中フッ素排泄率は高くなり、
一見フッ素の体内沈着率が低下するように見える結果が得られている。

*   *   *

すでにマックルとラージェント(一九四三)が、動物実験で明らかにしているように、
フッ素の実吸収量のほぼ半分が尿中に排泄されることがわかっている。
この研究を逆用して、尿中に排泄されるフッ素の量を二倍することによって、
フッ素の実吸収量を知ることができる。

わが国民について、
尿中フッ素排泄量を年齢層別に多数例について定量した報告はあまり多くない。
後に述べる浅野(一二四―五頁)や、滝沢(六三頁)なども参考になるが、
次の岩手医大の角田教授の研究は、もっとも広範囲にわたるものである。
これによると、大人の一日平均排泄量は〇・六五―〇・七五mgであるから、
一日平均吸収量は一・三―一・五mgとなり、
先に食物からの摂取量から推定した値にほぼ等しい(図7―表5)。

表5 日本人の平均1日フッ素吸収量=尿中排泄量×2
尿中量   吸収量
児童 男
児童 女
0.22mg/日×2=0.44mg/日
0.19mg/日×2=0.38mg/日
成人 男
成人 女
0.75mg/日×2=1.5mg/日
0.65mg/日×2=1.3mg/日

フッ素の平均摂取量[P.117-118]

アメリカ、カナダ、スイス、ノルウェーなどの第一群の国ぐにでは、
飲料水のフッ素が低濃度である集団について、
成人一人あたり一日のフッ素摂取量は〇・五mg/日程度である。
ソビエトがこれよりもやや多いのは、西欧と違う食生活のためかもしれないし、
またイギリスが飛び抜けて多いのは紅茶を愛用する習慣のためであると説明されている。

これらの国ぐにで、水道水を一ppmになるまでフッ素化すると、
その飲料水量を一リットルとして、フッ素の総摂取量は一・五mg/日となるものと推測される。
すなわち飲料水から入るフッ素の重みが食物の方から入るフッ素よりも大きくなるといえる。

日本人の場合には、例外的に幅の広い飯塚の報告を除けば、
一・三~ニ・七mg/日(平均二mg)という値が報告されているが、
これは、日本人は欧米人よりも魚や海藻を多く食べるという食生活が大きく効いているものと考えられる。
ただし、魚骨や小エビの殻に含まれているフッ素化合物は腸からの吸収率が少し低いことを考えて、
一日一・五mgほど吸収されているものと推定される。
次の項の角田のデータはその推定を尿中排泄量から実施している。
したがって実吸収量において、
欧米標準食の場合よりも一mg/日は多く摂っていると推測するのが妥当と考えられる。

このことは、たとえば魚を多食するイタリア沿岸漁民に斑状歯が生じたという報告や、
フッ素含有量の多いタロイモを主食とするポリネシア人にむし歯が少ないという事実からも裏付けられる。

日本では、低フッ素でもフッ素摂取量が欧米よりも一mg以上も多いから、
飲料水中のフッ素濃度だけからフッ素摂取量を定めることは適切でない
(次項の浅野の研究で、同じ飲料水中のフッ素濃度でも、
わが国ではアメリカよりも斑状歯の発生率が高いことが明らかにされているが、
これは、飲料水以外(食物)からのフッ素摂取量の多いことを示している)。

斑状歯保有率[P.126]

すでに日本人の食べものからのフッ素の摂取量は欧米人より一・五mgも多く、
尿中排泄量からみても一mgは多く吸収していることが明らかにされているから、
飲料水中のフッ素濃度が同じでも斑状歯の発生率が高いのではないかという
私たちの心配には十分な根拠があるということができよう。

これに答えたのが、東北大学予防歯科の浅野の研究である。
この研究は、一九六〇年以後に診断基準を明示しておこなわれた斑状歯検診の記録
(北津軽、藤沢、犬山、山科、宝塚、笹岡)から、疑症を含めた斑状歯保有率、
およびMまたはVM以上の斑状歯保有者率の二種類の数値を切り出し、
その地域の飲料水中のフッ素濃度との関係を両対数グラフに記入したものである(図10)。

それをいくつかの点で読んでみると、表6のようになる。

すなわち、予想のとおりわが国では、飲料水中のフッ素濃度が同じでも、
アメリカの斑状歯保有者率よりもはるかに高い数値を示しているのである。

表6 日本・アメリカの斑状歯保有率者率と飲料水中のフッ素濃度の比較
区分
フッ素濃度
疑症を含む 以上
アメリカ 日本 アメリカ 日本
0.1ppm
0.5
1.0
9%
30%
50%
25%
65%
100%
0.4%
5%
15%
5.0%
25%
50%

フッ素化地域では永久歯の萌出が遅れる[P.135]

一九四七年に水道水のフッ素化をした
アメリカのエバンストンでの調査成績を報告したヒル(一九五二)の論文では、
この市の六歳児、七歳児、八歳児たちのフッ素化前、フッ素化二年後、
四年後および五年後の第一大臼歯の平均本数を並べてみると、
六歳児では、フッ素化後年を追って平均萌出数が減ってきている。
萌出が進行した七歳児でもその傾向はみられるが、
八歳児ではあまりはっきりしなくなっている。
このように高齢児では萌出遅れがはっきりしなくなるのは、
フッ素化したときの子どもたちの歯牙の状態によって規定されていると考えられるが、
このような永久歯の萌出遅れは、歯根部の状況の局所的な変化のためであるのか、
全身的なホルモン系への影響を介してのものなのか、詳しい検討が必要であろう。

フッ素に暴露した歯は脆くなる[P.136-137]

ニュージーランドのクーパーとルードウィヒの研究(一九六五)によると、
フッ素化地域と対照地区を比較してみると、フッ素化によって歯の溝が浅くなり、
歯の形が偏平になることが認められている(WHOモノグラフ№59、二一二頁)。

そのほか、まだ成書には記載されてないが、
高フッ素地帯では歯列不整が多くなるとか、根管の形成異常が起こるということもいわれている。
いま一つ、長いあいだ無視されてきた重大な事実として、
フッ素によって化学変化(ハイドロオキシアパタイトからフルオロアパタイトへ)
を起こした歯牙は、もしむし歯になった場合には、その硬度の増大のために欠けやすく、
治療が困難で、結局は抜歯されてしまうということをあげなければならない。

私が九州大学に講演にいったときに会った一人の女子学生は、

「私も宝塚の出身で斑状歯なんですが、
むし歯を治療してもボロボロ欠けてどうしようもなく、みんな抜かれてしまうんです」と嘆いていた。
こうした話は、講演のあとでほかにも何人か子どもにフッ素塗布をしたお母さんから聞いたことがある。

最近、アメリカのフッ素化推進の中心人物であるマックレーアが、
初期の斑状歯研究を担ったブラックとマッケイの論文(一九六一)のなかに、
「斑状歯は、一たびむし歯になると、エナメル質が脆弱な状態であるので、
良好な充填をすることがきわめてむずかしく、結局は抜歯ということになる症例が多い」
と記載されていることを発見した。

フッ素は骨質欠損を生じさせる[P.138-140]

アメリカではじめて水道水フッ素化の実験のおこなわれた場所の一つとして、
有名なニューバーグ市がある。
その町で、一一年後の子どもたちの状態を調査した成績が
シュレージンジャー(一九五六)によって報告されている。
フッ素化しない対照地区は近くのキングストン市である。

その報告書のなかで目をひいたのは、
二つの市の子どもたちの骨のレントゲン所見を比較したデータであった。
それは、化骨の進行状況を示す指標となる
骨端部の化骨センターの硬化と手の種子骨の存在の比率が、
ニューバーグ市においてキングストン市の六〇~七〇%と低い値を示していることである。
また骨質欠損の比率は逆に八〇%も増加している。
これは統計的に有意である。

フッ素は心臓と腎臓を傷つける[P.149-150]

阿蘇の斑状歯地帯で、フッ素の害作用調査をした大阪歯大の川原教授によると、
高濃度のフッ素を含んだ飲料水は、心筋障害、骨ずい障害、貧血などを来しているというが、
一ppm程度のフッ素濃度ではこうした害作用は観察されていない。

腎臓については、動物実験では、
六ppmのフッ素を含む飲料水では顕微鏡的に異常所見が認められており、
骨軟化症の患者では腎臓障害が認められているが、
一ppm程度で害作用があるかどうかは明らかでない。
ただし、すでに何らかの原因で腎障害を起こしている人では、
フッ素の排泄がよくないので、フッ素の害作用が強くあらわれるといわれる。

ウィスコンシン州のアンチゴ市では、水道水のフッ素化をした頃から、
心臓死の率が変動しながら増加に向かっていることを示す
ヤンセン(一九七五)らのデータがある(図13)。

フッ素アレルギーの症状一覧[P.154]

水道水フッ素化、フッ素洗口、フッ素塗布などのあとに、
次のようないろいろな症状の見られることがウォルドボットらによって報告されている。

 皮膚粘膜症状 発疹、じんましん、鼻の充血
 消化器症状 口の渇き、口内潰瘍、吐きけ、腹痛、吐血
 筋肉骨関節症状 筋肉の萎弱、関節の痛み、手足の痛みを伴ったしびれ
 精神神経症状 頭痛、偏頭痛、暗点症、けいれん、性格変化、精神の荒廃
 泌尿生殖器症 膀胱炎、骨盤出血

フッ素はダウン症の発生率を増加させる[P.156-158]

アメリカのウィスコンシン大学精神科のラパポートは、
イリノイ州のダウン症の発生率と母親の居住地の飲料水のフッ素濃度との関係を調査し、
フッ素濃度の増加とともにダウン症の出生率が増加すると報告した。

<中略>

ラパポートの最初の報告は、出生統計と施設調査を中心としたもので、
全ダウン症を網羅していないという批判をうけた。
だが一九六〇年以後の彼の論文は、
公的に届けられている全症例について調査したものとなっている。
届出洩れの例が若干あるとしても、それが著しく大きな比率でないかぎり、
本研究の結論は、それなりの整合性があるので有効性をもつというべきである。

<中略>

第二に、フッ素推進派は、彼の調査した数値が絶対値として
低すぎることを挙げて調査が不完全であったかのように攻撃するが、
イリノイ州もほかの州や地方と同一でなければならないという根拠はない。
エリクスンら(一九七六)がアトランタ地区および
国立口蓋裂知能サービス(NIS)でおこなった調査でも、
三五歳以下の年齢層ではフッ素地域でのダウン症出生率は
非フッ素地域よりも明確に高い値を示しているが、絶対値はそれほど高くない。

彼の研究データをグラフに書いてみて注目される事実は、
人為的フッ素の添加地域におけるダウン症の出生は、
自然水中のフッ素濃度一ppmの地域でダウン症の回帰直線から
予想される値よりも二倍ほど多くなっているという事実である。

このことは、以前から言われているように、
自然水中のフッ素と人工添加されたフッ化ナトリウムが
果たして同一か否かという疑問にたいして、大きな支持を与えるものであり、
今後、フッ素の水中における存在形態について分析化学的に
十分な検討がなされなければならないことを示すものである。

フッ素の飲み込み量[P.166_176]

日本歯科医師会の「見解」に先立った「答申」の中で、
洗口・塗布・歯みがきに際して口腔内に残存する量
(結局は飲み込まれるか、粘膜から吸収されるかする)の概略を与えているが(表10)、
それは国際的にみてもほぼ妥当な値であるということができる。

表10 フッ素の洗口・塗布・歯みがき時の飲み込み量
フッ素濃度 1回量10㏄中 飲み込み・吸収量15%
洗口液 250ppm 2.5mg 0.375mg
500 〃 5mg 0.75mg
1000 〃 10mg 1.5mg
フッ素濃度 1g中 残留量30%
歯みがき 1000ppm 1mg 0.3mg
フッ素濃度 1回2㏄中 残留量30%
塗布液 9000ppm 18mg 5.4mg

*   *   *

東京歯大の田中ら(一九七三)の論文に示されているデータは、
東京都内の一〇~一一歳の学童一二六名に二万ppmの酸性リン酸フッ化ソーダ溶液を
塗布する前後の尿中フッ素濃度の比較をおこなったものであるが、
投与前二四時間の平均値は〇・三〇ppmであったのに、
塗布後二時間目の尿中濃度は平均四・二八ppmで、
一四倍にも達していることを示している。

この場合の体内摂取量がどのくらいであるかを推定するのに役立つデータとして、
ヘノンらが一mgおよびニmgのフッ化ナトリウム錠を内服させたのちに
尿中フッ素量を定量した成績がある。
それによると、一mg錠内服直後のピークはニ・五ppmに過ぎず、
ニmg錠内服後でも三・七ppmに過ぎないから、
二万ppmのフッ素溶液塗布後の体内吸収量の体内吸収量は
三―四mgに達していると推定することができる。

フッ素塗布無効報告[P.176]

エジプトのザーラン(一九七六)が、
カイロ郊外の農村地帯の七―九歳の学童一六五三名を学校単位で二分し、
一方には年二回二万ppmの酸性リン酸フッ素溶液の塗布を四年間にわたっておこない、
他方には同じような一般歯科サービスをおこなっただけとして
むし歯予防効果を比較した報告では、フッ素塗布の有効性はまったく認められなかった。
まとめのなかで、彼はエジプトの子どもたちのむし歯は咬合面に多く、
フッ素は咬合面のむし歯には有効でないためのマイナスデータかも知れないと述べている。

フッ素塗布の副作用[P.177]

東北大予防歯科の岩倉らの報告(表12)によると、
フッ素塗布をうけた子どもたちの約一〇%までに異常な自覚症状が認められるという。
最も多いのは口やのどの渇き、便のゆるみ、おなかが痛いなどであったという。

表12 フッ素塗布後の自覚的異常の有無とその内訳(重複回答を含む)
件数 回答者の割合
普段と全く同じであったもの 498 91.0
なんらかの異常があったもの
口やのどがとてもかわくようだった
もどしそうにしていた
もどしてしまった
便がゆるくなった
おなかがいたくなった
気分が悪くなった
その他
49
23
0
1
20
6
0
8
9.0
4.2
0
0.2
3.7
1.1
0
1.5

フッ素化推進派の学習会妨害工作[P.227-228]

五十年九月「むし歯予防事業推進会議」(新発田市主催)に参加して、
十月一日から集団フッ素洗口を実施する予定になっていることを知り、
その突然さに驚き、早速、市長に中止を要望した。

その頃、新潟市や弥彦小学校の実情が私たちにも伝わってきていた。

市中では、もう各保育園・幼稚園に洗口器具や、実施説明書が配布され、
街部公立幼稚園で説明会が開かれていた。
説明会には予防歯科の人たちがきていて、
疑問点や不安の声には閉会後追いかけてきて説得するという執拗さであったのである。

市保健課長はいくら申し入れをしても「決定済」の一点張りであった。
洗口実施を知らされてから実施するという十月一日まではいく日もなかった。
園児のお母さんたちは「フッ素洗口中止」の要望の署名を集めて提出したり、
チラシをつくって園や父母に許えてきた。
そうした中で、わずか、十月一日からの実施だけは抑えられた。

十一月、宝塚市の伊熊先生のお話を聞く会を持つことができた。
斑状歯に苦しむ現地の実情を知ろうと勉強会の意味で開いたのである。
いままで、推進者の説明は行政サイドで聞いていたが、
フッ素反対の意見は直接聞くことがなく、この日がはじめてなのである。
この会場へ境助教授が三人の若い人をつれてやってきたので、私たちは大変びっくりした。

当日は、伊熊先生も時間が少ししかなく、境助教授に
「今日は、あなた方の話を聞く会でない。私たちの学習会を妨害しないで欲しい」
と約束してもらったが、その約束も空しくかれらの挑戦的なヤジなどで、
フッ素以前にその人格への不信すら感じさせられた。

なぜこの講演会に予防歯科の人たちがきたのか。
それは、市の保健課に案内を出すと、それは予防歯科に直通するということであった。
閉会後、境助教授にお聞きした。
「もし被害が出たら誰が責任を負うのか。
賛否両論を聞いた上で選択するのは私たち市民ではないのか」と。
境助教授は、「私はすすめませんよ、決めるのはあなた方です」と答えられた。
ならばなぜに反対論を聞かせず、いきなりその有効性と安全性を強調して、
それだけを行政に持ち込んできたか。
十分検討してきたという市は、推進者の話を一方的に理解しただけではないか。

ヤブ校医小林清吾[P.235-236]

たまたま小学校二年生の男の子が、
スキー嫌いと担任の教師へのこわさから登校拒否(あとでわかったことだが)を起こし、
歯が痛い、足が動かないという症状をみせることがあった。
担任の先生のすすめで、校医もしている予防歯科の小林清吾医師に診てもらったところ
「むし歯のバイキンが全身にはいり、リウマチになったのだ。
歯、耳、腹、そして足にきて歩けないのだ。
新潟大学で全身麻酔で全抜歯した方がよい。
費用は研究費から出す。抜歯したあとの義歯については新潟大学で面倒をみる」という。

しかし、なんとなく不安があり、いろんな人のすすめで、
児童相談所や精神科の医者、そして労災病院に行ってみたところ、
歯が原因ではない、リウマチでもない、ということがはっきりわかり、
登校拒否であろうということになって、その対策をすることになった。
三年生に進学する時には、こわがった担任も変わり、
学校側と家庭の努力で一学期の終わる頃には兄といっしょに喜んで登校するようになった。

フッ素化推進派は協議会にサクラを送り込む[P.238]

五十二年六月十一日、
新潟市県民会館で「フッ素によるむし歯予防全国協議会」結成式、第一回大会で開催された時である。
予定された議事や発表が終わり質疑応答のとき、会場から一人の若い主婦が発言を求めて立った。
差出されたマイクに向かいその主婦は
「私は牧村の一主婦であらせているが、やはりむし歯はできる。
むし歯のできない丈夫な歯をつくるためにぜひ水道水のフッ素化を進めてほしい」と発言した。
会場の人はそれを聞いて、牧村の人は皆そう思っているのだろうと憶測したであろうが、
後日談がある。

あとで聞いた話によれば、大会前、その主婦の自宅に「守る会」の役員が再三訪れ、
大会で発現してくれるように頼まれたのだという。
最後には発言する内容を書いた紙さえ持ってきてくれたそうである。
断わるに断わり切れないで出席したという主婦の半紙に、
「守る会」の、目的のためには手段を選ばない悪らつさがみえるのである。

歯垢染色剤=合成着色料[P.263]

口内清掃度の検査に“中性紅”(ノイトラルロート)という歯垢染色剤を使っているが、
これは食品添加に用いられている合成着色料であるが、
厚生省ガン研究班の報告(福島大病理担当)によると
胎児毒性の証明されるものであるので、使用すべきではない。

フッ素を告発したことで迫害された伊熊和也[P.264-266]

わが子が斑状歯にかかっているという現実を目にして、
伊熊歯科医は「親が子どもを見捨ててはならない。医師が患者を裏切ってなんになる」
という気持ちの命ずるままに、昭和四十六(一九七一)年五月、
良元小、西山小などの学校検診データを掲示して地域社会の多くの子どもたちが
斑状歯にかかっている事実を公表したのである。

この事実は、当時のマスコミの大きく取り上げるところとなり、
事態は急激に全市をまき込む社会問題へと発展することとなった。
地名とさえなっている「ハクサリ(歯腐り)」」を過去の語り草と思い込んでいた市民、
とりわけ被害がわが子におよぶという現実を知らされた親たちにとって、
それは大きな衝撃となった。

当初よりある程度は予想していたとはいえ、自らが投じた一石が、
宝塚市行政当局、教育界、歯科医師会にとっていかに大きな波紋を投げかけたか、
伊熊歯科医のまわりに、同時に、しかも多発的に起こった
正体不明の迫害によって彼自身が知ることとなった。

脅迫電話が鳴り続け、家に石が投げ込まれる。
医院に通う患者は何者かによって絶えず監視され写真を撮られるといういやがらせがおこなわれ、
一夜のうちに氏の車は廃車同様にされるといった、怒りをぶつける相手すらもわからない日々が続いた。

この間、歯科医師会は、伊熊氏にたいして
「あらゆる連絡事項をストップする」ことを申し合せ、調査研究に関しては
「(斑状歯の問題が)大学の衛生学教室や病理学教室の問題になったら困る」
(歯科医師会議事録より)といった対応に終始し、彼をして孤立無援の立場へと追い込んでいった。

告発から一ヵ月足らずの間に、伊熊氏は自分の子どもたちが
学校に通うことすらできなくなってしまった事態が起こっているのを身をもって体験した以上、
もう宝塚には留まってはいられなかった。
子どもたちへの愛情から発したことが、
逆に自分の子から生活を奪う結果になったことは耐えられないことであった。
「私は、医師というより、人間としての最低限の条件を守っただけで……」
(46年7月『神戸新聞』)という言葉を残して、
氏は北の果て北海道への移住を決意した。

しかし、「歯科医師会は、北海道から九州まで一体だから、職を失うことになる」
といた言葉を裏付けるかのように、何者かの手によって、
彼に関する誹謗、中傷が移住地のまわりにも流布されていた。

サンスターと癒着する斑状歯問題研究協議会[P.270]

市、市議会、市保健所、医師会、歯科医師会の五者からなる「斑状歯問題研究協議会」は、
早速、「フッ素について」と題する市民向け啓蒙講演を開催した。

演者は、日本歯科医師会学術委員、
口腔衛生部長という肩書きをもった細見忠男氏があたり、フッ素効用論を説いた。

斑状歯被害をまのあたりにしている市民にとって異和感の強い内容であった。
だが、翌日になって、細見氏が、
実はサンスター歯磨会社の口腔衛生部長であると判明したとき、
市民の怒りは絶頂に達した。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です