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書籍と雑誌の要約と解説

食品犯罪

厚生省を告発する

装丁
食品犯罪 食品犯罪
郡司篤孝
三一書房(三一新書706)
GTIN0236-700706-2726
1970/07/31
¥320
目次
  1. 食品行政
    1. 厚生省の見解(一)
      1. “低級な不徳漢”
      2. 誰が安全を確保しているのか
      3. 誰が充分に規制しているのか
      4. 微量だから安全という説
      5. 劇薬の食品添加物も安全か
    2. 厚生省の見解(ニ)
      1. 食品添加物指定等の基本方針
      2. 食品添加物は食品の製造加工に必要不可欠か
      3. 食品添加物は栄養価を維持させうるか
      4. 栄養強化は無意味で有害ではないのか
      5. 保存料は本当に必要なのか
      6. 食品添加物は食品を美化し魅力を増すものか
    3. 厚生省の見解(三)
      1. 食品を変装し欺瞞する食品添加物
      2. なぜ食品添加物は多いのか
      3. 食品添加物の分析は完全にできるか
    4. 無為無策の食品行政
      1. チクロ騒動異聞
      2. チクロ騒動の事後処理
      3. 禁止チクロまかりとおる
      4. メーカーの発言を斬る
      5. 厚生省の発言を斬る
      6. 食品添加物賛成論を斬る
    5. 外国の食品行政
      1. 日本では業者優先
      2. アメリカのグルタミン酸事件と日本
      3. アメリカのサッカリン事件と日本
      4. アメリカの臭素化油事件と日本
      5. アメリカの消費者保護行政
      6. 消費者の英雄
      7. WHOがうそつき食品に勧告
  2. 欺瞞食品
    1. 高度成長のかげに
      1. 人類は自滅?
      2. 経済繁栄とコカコーラ
      3. 企業傾斜と汚染牛乳
      4. 大企業のうそつき宣伝
    2. 科学の進歩とひずみ
      1. 繁栄と虚栄
      2. 冷凍食品は信用できるか
      3. 電子レンジは安全か
      4. 放射能食品は必要か
      5. 家畜飼料と抗生物質
  3. 食品による被害
    1. 緩慢なる進行
      1. 自分は大丈夫なのか?
      2. 寿命は伸びていない
      3. 肥満児と体力低下
      4. 給食センターは是か非か
    2. 子供を襲う奇病
      1. 奇形児の異常発生
      2. 未熟児の悲劇
      3. 「食品公害」と蒙古症
      4. 乳児の突然死
      5. 小児に増える奇病
    3. 原因不明の奇病
      1. 「成人病の予防と対策」
      2. ベーチット病の恐怖
      3. 奇病と抗生物質
      4. 突然病魔がやってくる
      5. 若年層に忍びこむガン
      6. スモン病を救うのは誰か
    4. 食品犯罪の実態
      1. 世界一の食品犯罪
      2. 五万人中毒のマーガリン病
      3. 砒素ミルク事件
      4. 後遺症の追跡
      5. 悲惨なライスオイル事件のその後
  4. 怒りをこめて告発する
    1. もっと怒れ
    2. 北海道婦人の怒り
    3. 消費者の真の叫び
校正
  • 腸でトハプシンという酵素の作用を受けて、→トリプシン[P.50]
  • (注――天然にはグルタミン酸ナトリウムは存在していない)→天然でも存在する[P.97]
  • チリー→チリ[P.199]

内容

  • 私個人としては、「食品公害」という表現には疑問を感じている。私に言わせれば「食品公害」ではなく、「食品犯罪」である。[P.7]
  • 私はこのごろよく考える。七〇年代安保問題をめぐって、全国的に学生運動が発生し、それは現在でもつづいているが、学問的に教育され、知性を訓練された大学生が、有害食品追放運動に一片の関心も示さないことが不思議なのである。[P.15]
  • 原沢某が、殺人に使った劇薬は、食品添加物の硫酸銅であった。[P.22]
  • ある県では、夏、県下の小学校長に、朝礼の訓辞を二分間以上やらないように、と通達したという。[P.39]
  • 製薬会社の主力製品はビタミン剤[P.40-41]
  • タール系色素は消化酵素に悪影響を与える(佐賀大学)[P.50-51]
  • 製薬会社に勤めている技術者はほとんど薬剤師であり、厚生省食品化学課の官史も薬剤師が多い。食品行政にたずさわっている官史が薬剤師が多くて、食品の専門家がいないという役所は、世界にも類がないという。どこの国でも食品行政は、食品の専門家が行なっているのである。[P.60]
  • 食品衛生調査会は御用学者が連なる[P.61-62]
  • チクロ検出過誤事件[P.67-69]
  • 被害者を見殺しにしたチクロ回収延期[P.73-74]
  • A大学B博士のチクロ被害発見談[P.74-75]
  • チクロ表示義務を無視する業者[P.79-80]
  • どのようになめられているかといえば、禁止になったチクロが、白昼堂々(?)と東京神田あたりの食品添加物問屋街で売買されていることで、禁止当時は一キログラム二〇〇円台であったのが、一、〇〇〇円前後で引く手あまたの売れっ子商品になっていることである。[P.83]
  • 徳島大学栄養衛生学講師佐原幸雄氏の珍説[P.93-94]
  • 共産圏諸国は食品添加物を原則として許可していないから当然であるが、そのほかの資本主義圏の諸国でも、食品行政にたいする業界の圧力などは、まず考えられないという。[P.96]
  • 四五年三月一六日、アメリカのウィスコンシン大学のジョージ・イ・ブライアン博士が、人工甘味料のサッカリンはガンの原因になり得る可能性が濃い、と発表したことによって、またまた日本の官界・業界が、大きなショックをうけることになった。[P.100]
  • だいぶ前のことになるが、国際連盟の事務局長をした人が、「イギリス人は歩きながら考える。フランス人は考えたあとで走りだす。スペイン人は走ったあとで考える。アメリカ人は走りながら考える。日本人は走ることしか考えない」と言ったそうである。[P.104]
  • 日本では事実上企業を上告訴できない[P.105]
  • 「メーカーは売上げ増進のため、母親が試食したときおいしく感じるよう、幼児の健康に害を及ぼす恐れのある物質を、平気で添加している。具体的にはグルタミンやナトリウムなどで、これらの物質は、高血圧その他の障害を起こす恐れがある」[P.107]
  • しづおかやとさいかやの牛肉偽装事件[P.108]
  • ウナギ大量怪死事件[P.114]
  • 「人類を破滅にみちびく核戦争は、あるいは避けられるかもしれない。しかし人類は、その前に環境破壊で自滅してしまうかもしれない」と言った国連スェーデン代表の言葉を、今こそ、かみしめて考えてみるときではないだろうか。[P.115]
  • 国産牛乳の農薬汚染と厚生省の隠蔽工作[P.121-125]
  • 通産省の電子レンジ公害保護と業者の欺瞞[P.140-142]
  • 放射線は微量でも危険である[P.143-144]
  • 農林省流通飼料課は、「市販のものには二〇ppmほどしか使われていないので心配はない」とか、同じ農林省畜産局では、「抗生物質を規制するデータもなく、下手に取り締まると畜産業界が崩壊する」とか、まったく消費者を無視した発言をしている。[P.150]
  • 抗生物質が、マグロのような魚に直接注射されて、鮮度を維持しようとしたり、
    バナナの皮やチーズにも使われているという。[P.151]
  • 団地っ子に肥満児は多いという。そして奇妙なことに、団地マダムには栄養失調症が多いのである。[P.161]
  • 騒音のひどい地域ほど未熟児の発生率が高い[P.173]
  • 亜硫酸ガスの大気汚染と喘息(市立二ツ橋学園)[P.181]
  • 小児喘息は鉄筋団地に多発する傾向にある[P.181-182]
  • くる病様症状[P.182]
  • アメリカのピッツバーグ大学放射物理教授のE・スターングラス氏は、「大気圏核実験による放射性降下物のため、少なくとも五〇万人の幼児が死んだ可能性がある」と発表して、全世界にセンセイションをまきおこした。[P.183]
  • ベーチット病にかぎらず、多発している奇病の犯人として、抗生物質が、もっとも疑いをもたれているものの一つである。[P.190]
  • 輸血と血清肝炎[P.194]
  • 貧血者がいかに多いかというと、あるデパートでは、全員三〇八人のうち、約半数の一四九人が、また東京都立高校の女性とでは、一六・七%にも達し、農村婦人では、山村、一〇~二〇%、平野部、三〇~五〇%の異常者を認めたという。[P.195]
  • 日赤血液センターで、四三年度の女性献血受付数は約七〇万八、〇〇〇人であるが、
    そのうち三四%の二四万人は採血不適格者であった。[P.195-196]
  • 四五年三月に開かれた厚生省のスモン病調査研究協議会では、「お金がないから、アメリカの学者に研究してもらいたい」というふうな、常軌を逸するような意見がでたという。[P.201]
  • スモン病諸仮説[P.203]
  • 膀胱ガンが発生した時点になっても、メーカー側はひた隠しに隠そうとし、労働省でも「直接染料には全く発ガン性がない。ベンジジンなどの製造中止は考えていない」と発表している。[P.207]
  • マーガリン病[P.209-212]
  • 森永砒素ミルク事件の追跡調査[P.215-217]
  • カネミ倉庫の悪辣な賠償対応[P.220-221]
  • 読者からのお便り[P.233-239]
  • 製薬会社の主力製品はビタミン剤[P.40-41]

    ビタミン剤が、製薬会社のドル箱であることは、もう誰も知らぬものはいない。
    製薬会社からビタミン剤をとったら、三、四流の中小企業になってしまう。
    それくらい、ビタミン剤の売上げと利潤は大きいのである。

    たとえば世界的な製薬会社である武田薬品工業の売上高は、
    年間約一、〇〇〇億円で、そのうちの売上比率をみると、

    ビタミン剤                               二四・五%
    食品(ポリライス、いの一番、プラッシー、グルタミン酸ソーダ、リボタイド)一五・〇%
    純良医薬品                               一三・九%
    農薬・化粧品・飼料・動物用薬品他                     四・八%
    化学工業薬品(食品添加物を含む)                     四・七%
    その他下請会社製造品                          三七・一%

    製薬会社とは、医師が病人を治療するために投与する医薬品の製造をする会社である、
    と思っている人が多いと思うが、この表をみてもわかるように、
    実際は一三・九%しか製造していない。
    残りの製品は、直接に病気を治療するためのものではなく、
    また国民生活に必要欠くべからざるものでもない。
    企業利益の目的のために存在しているのが大部分で、そのことは、
    ビタミン剤が自社製品の三九%弱を占めていることでも、一目瞭然であろう。

    タール系色素は消化酵素に悪影響を与える(佐賀大学)[P.50-51]

    タール色素は、発ガン性があるという確実な理由のほか、
    体内の消化酵素に悪影響をあたえるという実験が、
    佐賀大学農学部教授の榎本則行博士によって報告されていることは重要である。
    その報告を転記しておく(原文のまま)。

    「筆者の研究室では、体内の消化酵素に与えるタール色素の影響を試験管内で調べている。
    蛋白質系食品を口から摂取すると、まず、胃でペプシンという蛋白分解酵素の作用をうけて、
    ざっと分解され、腸でトハプシンという酵素の作用を受けて、さらに小さく分解される。
    さらに各種のペプチダーゼ(酵素)の作用をうけて、
    蛋白質を校正する単位であるアミノ酸にまで完全に分解される。
    以上の過程を消化というが、このように消化されたものが腸壁から吸収され、
    改めて自己に必要な蛋白質に組みたて直されることになる。
    体内での消化過程の主役を演じるペプシン、トリプシンは、
    タール色素の存在で、明らかに消化力が低下することが判った。

    われわれが口からとり入れた食物は、第一段階の消化が不十分であれば、
    それだけ体外に無駄に排出されることになり、
    栄養上ないがしろにはできないと考える。――」(以下略)

    食品衛生調査会は御用学者が連なる[P.61-62]

    食品添加物の許可禁止を決定するのは、厚生大臣の諮問機関である食品衛生調査会である。
    ところがこの調査会のメンバーが、ほとんど厚生省の御用学者か、
    メーカーに関係のある人だけで構成されている。
    消費者代表はほとんど入っていないし、中立にみられる人も数人にすぎない。
    しかも大部分は薬学博士なのである。

    チクロ検出過誤事件[P.67-69]

    昭和四四年一二月の初め。
    名古屋市のあるデパートの商品試験室が、無作為に加工食品を集めて、チクロ含有の有無を分析し、
    その結果が一二月八日付の毎日新聞名古屋版につぎのような表とともに発表された。

    <中略>

    ところが、毎日新聞が配達された直後からハプニングがおこった。
    というのは、槍玉に上げられた各社商品のうち、酒悦福神漬とオリエンタルカレーの両社は、
    いまだかつてチクロを使ったおぼえは一度もない、というのである。
    両社とも人命尊重を優先する社長の考えから、食品添加物を使わないことを社是とし、
    それを実行してきた会社であるから、ビックリしたのは無理もない。
    使っていないのに検出されるという、世にも不思議な現象となって現われたからである。

    このささやかな事件を引用したのは、
    信用あるデパートの試験室ですら、容易なはずのチクロの分析一つ、
    満足にできないという事実を知ってほしかったからである。
    もちろん両社とも、再び同じ商品を公立の検査機関にもちこんで、
    「チクロ検出せず」の証明をとり、問題は落着したけれども、
    大新聞に掲載されたことによる信用失墜の回復は、容易なことではなかったであろう。

    被害者を見殺しにしたチクロ回収延期[P.73-74]

    実は日光皮膚炎の臨床例が警告の意味で心ある医学者から厚生省に提出され、
    チクロ禁止の問題が発生する前から、担当官史の机の引出しの奥深く仕舞われていたのである。
    したがってチクロ入りかん・ビン詰の販売が七ヵ月延期されたと発表した時点において、
    厚生省の官史は、日光皮膚炎の恐ろしさを実例をもって承知していながら、
    閣議決定にたいして一言の異議をさしはさむことなく、回収延期に承知してしまったのである。

    A大学B博士のチクロ被害発見談[P.74-75]

    日本ではA大学のB博士が、昭和四三年の夏に最初の犠牲者を診察している。
    この患者は、まずおでこのあたりに、猛烈にかゆい湿疹が発生し、
    光線にあたると悪化し、汁がでるようになる。
    原因がわからないから治療の方法もなく、やがて一面に赤い斑点ができて、夜も眠れなくなる。

    この病気の原因が、薬用石鹸に殺菌料として添加されている
    ハロゲン化フェノールという薬品であるとわかったのは、
    B博士がアレルギーの専門医であったからである。

    そこで、患者が使用していた薬用石鹸を中止されたところ、
    まもなく、その皮膚炎は全快した。しかし日光皮膚炎はその人だけではない。
    B博士の二〇人例の患者のうち、五人例は薬用石鹸を止めさせても治らない。
    チクロのためではないかということになって、
    〇・一グラムの内服試験をしてみると強陽性反応が出た。
    ここでチクロと日光皮膚炎の因果関係が確立されて、
    患者の食事から、一切チクロを締めだすことによって、
    病気は全快への道をたどりはじめた。

    チクロ表示義務を無視する業者[P.79-80]

    四五年三月四日、
    主婦連が東京都内のスーパーマーケットや小売店で試買した
    三〇個のフルーツ・魚類かん詰のうち、表示ラベルがあったのは、
    たった一個だけであった。
    厚生省の条件は、案の定まったく無視されているのである。
    その証拠に、主婦連に問いつめられた小売店は、
    「そのようなラベルを貼ることなどきいていない」、
    あるいは、「九月まではそのまま売っていいことになっているのだ」と、
    なにも知ってはいないと、馬耳東風の感であったという。
    しかもこの罰則はたったの罰金五、〇〇〇円だけなのである。

    おひざ元の東京でこのとおりであるから、地方はまるでひどい。

    三月の初旬、私は北海道を一〇日間ほど旅行した。
    訪れた道内各地の食料品店で、気をつけてかん詰をみて廻ったけれども、
    ラベル貼付のかん詰は、一個も見出すことができなかった。
    小売店にきくと、ラベルを送ってこないのだそうである。

    禁止後もチクロの有害性を認めない全国かん詰協会[P.80-81]

    これは同協会が「チクロの入ったかん詰は心配ありません」という、
    大きな見出しをつけた宣伝用の印刷物で、
    「米国の動物実験を人間にあてはめると、
    チクロ入りかん詰(四号缶)を毎日五〇〇個以上食べなければ害はない。
    かん詰に含まれているチクロはごく僅かで、
    かん詰は大量に続けて食べるものではないから、保健の面ではさしさわりがない。
    だから引きつづき販売することが認められたのである」
    という要旨で、無害性を強調している。
    つまり、国の方針をまったく無意味なものだとしているのである。

    チクロ偽装表示事件[P.81]

    未回収の食品(禁止以前に製造した食品)にまで「チクロなし」の宣伝をして、
    つぎの組合が、公正取引委員会から警告をうけているのである。

    • 日本ハム・ソーセージ工業組合連合会
    • 全国醤油工業協同組合連合会
    • 全国清涼飲料工業会
    • 全日本缶詰協会
    • 日本粉末飲料協会
    • 全国ビスケット協会
    • 全国菓子協会
    • 全国トマト工業会
    • 全国漬物協会

    徳島大学栄養衛生学講師佐原幸雄氏の珍説[P.93-94]

    「サリチル酸の入っている酒を飲むと、頭が痛くなる、
    という話をきくと、こちらの方が頭が痛くなる」
    「食品添加物が指定許可されて、
    食品に添加することが認められたのちに、いかに毒性論議があったとしても、
    食品添加物を毒物と見做すことはスジとして間違っているのである」

    (以上、四四・一〇月号『諸君』)

    日本では事実上企業を上告訴できない[P.105]

    日本では消費者が、食品メーカーまたは食品添加物メーカーを、
    食品衛生法、または該当する法律の違反によって告訴し、
    かりに受理され、勝訴の見込みがたっても、相手が大企業の場合は、
    数千万円以上の製造禁止仮差押金を用意しなければならない。
    つまり、メーカー側がはっきり有害食品を製造しているとわかっていても、
    実際上告訴はできないのと同じことなのである。

    しづおかやとさいかやの牛肉偽装事件[P.108]

    昭和四四年、
    東京都町田市のスーパーマーケットしづおかやとデパートさいかやの肉売場で、
    牛肉と称してウサギを売っていたことがわかり、問題になった。
    ところが専門家によると、ウサギはまだよいほうで、ネコも売られているという。
    ソーセージにはカンガルーや大ネズミが使われる。

    ウナギ大量怪死事件[P.114]

    最近では静岡県下のウナギが、原因不明の奇病で怪死し、その損害は二〇億円以上に達したという。

    <中略>

    ウナギがなぜ一〇トン近くも、突然、怪死してしまうのか。
    学者によれば、過密養殖とか、栄養過多とか説明しているが、
    それも原因の一つになっているかもしれない。
    しかしウナギの飼料に石油タン白を使っていることも事実である。
    私たち消費者も、何年か後に食べさせられることになるかもしれない石油食品を、
    ウナギはすでに食べていたのである。

    国産牛乳の農薬汚染と厚生省の隠蔽工作[P.121-125]

    牛乳が農薬によって汚染されていることを、四四年一二月一九日、
    高知県衛生研究所が発表して、大きなショックをあたえた。

    それは、有機塩素農薬のうち、もっとも毒性の強い殺虫剤であるドリン剤の、
    ディルドリンがWHO(世界保健機構)の許容量以上牛乳に含まれているから、
    常用は危険であるというのである。
    この農薬はBHCやDDTと同じく、脂肪内に蓄積される性質があり、
    牛乳の場合のディルドリン含有許容量は〇・一二五PPMだが、
    同所の試験による市乳の脂肪には、約三倍の〇・三四PPMが残留していた。

    <中略>

    この事実は、高知県衛生研究所が発表したので明らかになったのであるが、
    実は厚生省では、監督官庁として、はじめから万般承知のうえであった。

    厚生省が、牛乳が農薬によって汚染されているということを知ったのは、
    四四年の春、やはり高知県衛生研究所の分析をみてからである。
    その事実は極秘とされ、この実験を担当した県の技師が、
    食品衛生学会での講演や学会への発表をさし止められてしまった。
    まして、この事実が新聞に報道されることも極度におそれ、
    たまたま一部の新聞に洩れて掲載されると、
    こんどは「全く不安はないのだ」と、記事の打ち消しに必死になっていた。

    たとえば四五年一月一四日、前に「汚染牛乳事件」を発表した高知県衛生部が、
    こんどは、手の平を返したように、「牛乳の残存農薬の心配ない」と発表したのである。
    しかも、慢性毒性が強いベータBHCが、ガンマBHCの約五〇倍も検出されているのに、
    これを隠して発表していることまでわかって、かえって疑惑を深める結果となった。
    つまり、厚生省から圧力がかかった、と判断するほかはないのである。

    また、全国の都道府県にたいして、食品化学課長、乳肉衛生課長の私信の形式で、
    「農薬汚染の牛乳はまったく心配はない」という文書を配送したのも、その一つの現われである。
    政府が私信という形式で、全国の地方庁に通達を出すという、まことに不思議な行政の姿勢である。

    <中略>

    厚生省の御用学者と業界代表で組織されている食品衛生調査会ですら、
    危険信号の警告を発しているというのに、金光環境衛生局長は、四月二一日の記者会見で、
    「いまの牛乳を飲んでも安全です」と、はっきり断言しているのである。
    なんという神経の持ち主なのであろう。

    通産省の電子レンジ公害保護と業者の欺瞞[P.140-142]

    電子レンジから、失明、皮膚炎、血行障害、
    不妊症などをおこす電磁波がもれることがわかって、騒ぎが大きくなった。
    これもチクロと同じように、四五年一月四日、アメリカ厚生教育省が警告を発したためで、
    自主性のない日本の行政の姿勢を、たまたま国民の前にさらけだした結果となった。

    それはともかく、松下電器、東芝、日立製作所、三洋電機、シャープ、ゼネラル、
    富士電機などの家電大手八社の製品がいずれも欠陥電子レンジで、
    完全に合格していたのはリッカー一社だけだった、という。

    それにもかかわらず、監督官庁の通産省では、公益事業局石井施設課長が、
    「電磁レンジの電波もれについては、電機用品取締法に規定がないので、
    メーカーに強制措置はとれない」
    「人体への危険はないことはないが、まず危険ではない」
    「法律違反ではないので、メーカー名、形式も公表できない」
    「正しい使い方をすれば危険ではない」
    「売れなくなると業界が困る」

    右のように言っている。

    最悪の場合は失明してしまうほどの害があることが、学問的にはっきりわかっているのに、
    この通産省の発言は、いったいどのように解釈したらよいのであろうか。
    怒りを覚えて、口も利けない思いである。

    しかも、メーカー側の団体である日本電機工業会では、
    「日本の電子レンジは安全です。安心してご使用ください。
    電子レンジの安全性について、一部にまだ誤解があるように思われますのでご説明させていただきます」

    右のような文面の新聞広告を、大々的に掲載しはじめた。

    この広告について、通産省が、みてみぬ振りをしていることは、
    消費者無視、業者保護の立場からして当然のことであるが、
    公正取引委員会だけが、「安全であるという、はっきりした証拠がない以上、
    このような広告を中止せよ」と厳重に警告したことをつけ加えておく。

    その後電子レンジの危険性が再び大々的に新聞にとりあげられたことは、すでに周知の事実である。

    放射線は微量でも危険である[P.143-144]

    アメリカ原子力委員会のゴフマン、タンプリンの両博士は、
    「現行の許容量基準の考えの背景には、ある基準以下の放射線なら人体に害がないという認識がある。
    しかし研究の結果、これは誤りとわかった。
    いかに微量の放射線でも有害である。
    たとえば、現在連邦政府放射線審議会の法定許容量の放射線を、
    生まれた時から人体に照射するとすれば、三〇歳になるまでに死亡率は五増加する」と発表した。

    騒音のひどい地域ほど未熟児の発生率が高い[P.173]

    「騒音のひどい地域ほど未熟児の発生率が高い」という研究結果が、
    児玉日本女子大名誉教授によって明らかにされている。

    この調査は、東京都立川市の病院と、
    昭和町の石原診療所で生まれた乳児について行なわれたもので、
    石原診療所では六八二人が生まれて未熟児は四四人。
    その発生率は六・四%であった。
    同じく立川病院では、一、〇七五人について五六人の未熟児が生まれ、これは五・三%であった。
    いずれも、前記の全国平均七%よりは低いが、
    騒音にたいする反応として、普通の乳児がほとんど反応を示さないのに、
    未熟児は、手足を動かし、目を堅くして泣くなどの不安を示す表情がみられたという。

    しかしこのデータは、どうして未熟児が生まれるかという、
    妊産婦との因果関係が明らかにされていないので、
    外見的な観察による推定にとどまっているように思われる。
    つまり、騒音が妊婦にどのような影響をあたえるか、ということこそが重要であろう。

    亜硫酸ガスの大気汚染と喘息(市立二ツ橋学園)[P.181]

    横浜市戸塚区の市立二ツ橋学園で、セキの日記をつけさせて、
    亜硫酸ガスの測定値と対比させたところ、

    (1)大気中の亜硫酸ガスが〇・一ppm以上にならないと発作は起きていない。
    (2)また、〇・二ppm以上でも短時間の場合には影響が薄いが、
    (3)〇・二ppmが四日以上つづくと、その一~ニ日後に発作が必ずおこる。
    (4)そして亜硫酸ガスの低下にしたがい、発作がとまる。

    小児喘息は鉄筋団地に多発する傾向にある[P.181-182]

    四四年一一月、福岡市で開かれた一九回日本アレルギー学会で、

    (1)発病年齢は三歳までが圧倒的に多い、
    (2)鉄筋コンクリートの団地住まいの児童に多い、
    (3)男児が女児の倍の発病率を示す、
    (4)季節の変わりめに多い、
    (5)住んでいる期間が長いほど発病率が高い、

    と発表されたもので、
    木造家屋よりも湿度と温度が高いことも理由の一つであろう、と発表している。

    くる病様症状[P.182]

    東京大田区の糀谷保健所では、
    「約一〇人に一人の乳児が、くる病様の症状を呈している」と発表している。

    それによると、三九年から四三年までの間の、毎年三月の乳児検診時に、
    生後に二~三ヵ月の乳児の三・二~一二・八%から、
    骨のつぎ目が凹型にへこむ、くる病特有の症状が発見されている。
    しかも血液検査では、くる病としての異常は認められないので、
    「くる病様症状」という病名を使っているのであるが、
    ここにも、不思議な得体の知れぬ病気のあることを感じさせる。

    輸血と血清肝炎[P.194]

    かつてライシャワー米国大使が、右翼の少年に刺され、
    輸血をうけて血清肝炎にかかった話は、大きく報道されて話題になったが、
    その後も全体として増加の一途をたどり、四三年には、上図のようになった。
    この%は、一年間で約一〇万人が輸血肝炎にかかっていることを示すものである。

    そのため厚生省では、評判の悪かった民間からの買血に代って、
    献血を伸ばす指導を行ない、四三年度には、買血がゼロになったという。

    ところが意外なことに、血清肝炎は減少するどころか、逆に増加しているのである。

    スモン病諸仮説[P.203]

    森下敬一博士は
    「下痢・腹痛をともなうスモン病は、食物と密接な関係がある。
    抵抗力の弱い人が、食品添加物で汚染された有害食品を食べると、
    決定的な胃腸障害を起こす。農薬・中性洗剤も同じである」

    馬淵通天博士は
    「造血器官が腸であり、
    血液が体内の全組織細胞をつくるという血液の積極的な働きを理解すれば、
    スモン病が、腹部異常から神経障害を起こすということが理解される」

    千島喜久男博士は
    「原因はビールス説ではない。
    農薬・医薬・中性洗剤などの化学物質であると考えられる。
    それらの相乗作用によって消化器官がおかされ、
    亜急性に持続する視神経、末梢神経障害ではないか」

    柳沢文正博士は、
    「主婦に多いスモン病は、洗濯や炊事などに水を多く使うし、
    胃腸障害の人に多発するので、だいたいの原因は想像できよう」

    横田良助博士は
    「腸内に発生する有害毒素が原因であろう。
    それは有害な化学物質が腸内にあるためで、中性洗剤、農薬はもとより、
    化学物質の食品添加物が体内に入ってきて、それらの相乗加算作用が、
    腸内有効バクテリアを殺し、造血作用を行なう腸機能に打撃をあたえる。
    その結果、異常な血液を生産し、腹部の異常を起こし、
    全身的な障害を現わしてくる。
    有害な食品添加物は、少量といえども禁止すべきである」

    マーガリン病[P.209-212]

    一九五八年から一九六八年にかけて、
    オランダ、スイス、西ドイツなどの諸国に、マーガリン病という奇妙な病気が発生した。
    マーガリンを食べた人、
    あるいはマーガリン工場で働く人から患者が出たため、この名称がつけられた。
    一種の流行性発疹のような皮膚病である。その経過をたどってみよう。

    一九五八年の夏から秋にかけて、小水疱病のような皮膚病が西ドイツに発生した。

    一九六〇年の八月から九月にかけて、こんどはオランダに、同じような皮膚病が発生した。

    いずれも原因がわからず、ウィルス性のものではないかという説が強かったことは、
    日本のスモン病の場合とよく似ていた。
    しかし一部の学者は、食物によるのではないかという疑いをもちはじめていた。

    一九六〇年八月一九日、ロッテルダムに住む皮膚科の開業医Treumiet氏は、
    五人家族のうち、母親と長男と長女の皮膚に、妙な発疹がでているのに気づいた。
    前から、ある種のマーガリンに警戒の目をむけていた同氏は、
    家族の食事を調べてみると、発病した三人はマーガリンを食べ、
    時分と次男だけは食べていなかったことがわかった。

    さっそく受けもっている患者たちにあたってみると、
    たくさんの患者が、同種のマーガリンを食べていることについてだけ共通していた。

    疑いのない事実なので、衛生検査官に報告され、
    その日のうちに、マーガリン工場の製造は禁止された。
    残念ながら、死者が出なくては騒がないという私たちの国とはだいぶ違っているようである。

    オランダ政府の調査によると、
    約六〇万人の人が同種のマーガリンを食べ、そのうち五万人が発病したという。
    大がかりな事件にまで進展した。
    患者の大部分は、成熟した婦人で、
    その発病率は男性に比較して七対一の割合であったという。

    マーガリン病の症状は、発疹が突発的に起こることからはじまる。
    二~二四時間以内に発疹は全身に広がり、
    激痛をともなう、顔面と手から、体幹、下肢へと広がっていくもので、
    ピンク色から鮮紅色の、ジンマシン様の個疹である。
    二~三日すると消褪する場合もあるが、
    ときには紫斑を呈し、癒合して奇怪な形を呈するようになる。
    なかには四〇度まで発熱し、結膜炎、咽頭痛、口唇の腫れまでを併発する。
    そして組織学的に、もっともよく見られた変化は、血管球の種々の程度の、
    主にリンパ球による浸潤と、赤血球の出血をともなった、
    皮膚の小血管の内皮膜の変化であったという。
    そして小水疱病という病名は適当ではないとしているのである。

    それでは、このマーガリン病をもたらした原因は何か。
    最初は遺伝的な素因、環境的な因子なども考えられたが、
    やはりマーガリンに加えられた化学物質ではないかという説が有力になった。

    オランダでは、マーガリンの乳化剤である
    「ME一八」という食品添加物に原因があることをつきとめた。
    「ME一八」は、一つの脂肪酸が環状になった脂肪で、
    Diels Adler 合成法の中のリンゴ酸の脱水物が定量で入っている直鎖の酸を含む大豆油を、
    イソマー化することによって生成したものである。
    このリンゴ酸の半ステアリン酸化されたものを、分離した技師が、
    接触皮膚炎にかかった事実がある。

    しかし、「ME一八」という乳化剤も、マーガリン病の原因たり得る決め手にはなり得なかった。
    発病の原因となったマーガリンが発売されなくなったことと、
    したがって々病気の発生がみられなくなったことが、原因の究明をむずかしくしたのかもしれない。

    ところが、マーガリン病はオランダだけで終焉をつげることはできなかった。

    それから四年の年月が経過して、こんどはスイスのチューリッヒに飛び火した。

    一九六四年秋、チューリッヒにあるマーガリン工場の従業員五名が皮膚病となり、
    W・ブルックハルト氏およびU・フィルツ氏という二名の皮膚科医の診療を受けたことから、
    マーガリンとの関連性についての追求が行なわれることになった。
    この二人の医師は、以前からマーガリンに添加されている酸化防止剤について、
    疑問をいだいていたのである。
    それは、没食子酸(プロガリン――Progalin)であった。
    いわゆる Propygallat, Octygallat, Dodecylgallat である。
    これを二%含有したマーガリンでの貼付試験では、
    三例のすべてが陽性で、発赤、膨脹、結節形成を生じたのである。

    会社側の供述によると、この酸化防止剤は、軍用マーガリンにのみ使っていたものを、
    最近になって一般用にも使いだしたとのことである。
    没食子酸のエスラスは、強い感作力をもっているので、
    マーガリンによる中毒が、スイス国内で発生することを恐れるものである
    (以上の文献は、オランダについては、
    The So-called margarine Disese――J.W.H.MALI AND K.E. MALTEN
    スイスについては、
    Antioxydantien in der Margarine als Ursache von Gewerbeekzemen
    訳・東大医学部佐藤幹二、中山至誠)

    ところで、オランダの乳化剤「ME一八」というのは、
    日本では許可されていない食品添加物であると思われるが、
    学名が記載されていないので、はっきりしたことはわからない。

    没食子酸のほうは、日本でも、没食子酸イソアミル(イソアミルガレード)と、
    没食子酸プロピル(プロピルガレード)の二種が許可され、
    前者は油脂バターに〇・五グラム以下(一キログラムにつき)、
    後者は油脂バターのほか、魚介乾製品に〇・一グラム、魚介塩蔵品に一グラム、
    魚介冷凍品、鯨冷凍品に一グラム(いずれも一キログラムにつき)
    までの制限をうけて使用されているのである。
    なお没食子酸イソアミルだけは、四五年五月食品添加物の指定を取り消された。

    森永砒素ミルク事件の追跡調査[P.215-217]

    砒素ミルク事件が発生して、一三〇人の乳児が死亡し、
    一万二、一三一人の中毒患者をだしたとき、
    阪大を主とする関西の医学界が、総力をあげて治療にあたったことは当然であるが、
    事件発生後わずか二年にして「後遺症はない」という結論が出て、問題の究明は打ちきられた。

    <中略>

    当時、治療の指導的役割を果した西沢義人阪大名誉教授(当時阪大小児科)が、
    現在でも、森永乳業がスポンサーをしているテレビの「小児と栄養」という番組で、
    レギュラー出演をつとめているという事実も、私流に解釈すれば、
    なにか割りきれない、不純な匂いをかぐことができるのである。

    その西沢名誉教授は、現在でも、
    「後遺症といわれる子供たちの知能のおくれや全身マヒは先天的なものであって、
    砒素中毒とは無関係のはずである。私が扱った五〇〇人の中毒患者は、
    三年後には全治しており、後遺症は考えられない」と、
    四四年一〇月三〇日の日本公衆衛生学総会の第五分科会で述べている。
    先天的なのか、後遺症なのかが、調べもしないでどうして断定できるのであろうか。
    そして西沢名誉教授の診察した患者だけが全治して
    (それも追跡調査してみなければわからないだろう)、
    森永砒素ミルク中毒事件後調査会の丸山博阪大教授の調査した患者たちが、
    程度の差こそあれ、八〇%近くも後遺症を起こしているという奇妙な事実を、
    どのように考えるべきなのであろう。

    丸山教授たちの調査結果によると、
    重度の脳性マヒ、言語障害、麻痺、ひきつけ、皮膚病などの症状が多く、
    知能低下がいちじるしくみられるという。
    難聴、弱視、骨の異常などもみられ、
    なかには足がO脚で白い斑点が全身に出ている中学三年の女子、
    皮膚が黒ずみ、赤い発疹が入浴時に出る男子、記憶力がにぶり、
    あるいは月に一度は必ず三八~九度の発熱をおこす男子などが、症状として現われている。

    また、阪大医学部飯淵助手は、出産のさい、
    「正常分べんだった者からも、脳性マヒ症状が出ていることは、
    砒素ミルクの影響が強く考えられる」と報告している。

    それによると、六三人の中毒患者の母親を死食べたところ、

    (1)脳性マヒ症状七例(一一%)の母親は全員異状なし
    (2)身体に異常な症状二五例(三九・六%)のうち一九人が正常分べん、六人が難産であった
    (3)不健康な症状一八例(二八・五%)のうち、一二人が正常分べんであった

    というものである。

    さらに、丸山博士によると、砒素は体内、とくに頭髪中に蓄積されて、
    神経、ホルモン系統を侵し、後遺症を残すという。
    これらの厳然たる事実にもかかわらず、西沢名誉教授や森永側は、
    前記のように、「これらの症状は先天的なもの」と反論しているが、
    追跡調査した六八人のうち八〇%にも、このような症状が、
    普通の状態で先天的に生じるものかどうか、
    自然科学者の言とはどうしても受けとれないのである。

    また森永側、および森永側についていると思われる医師たちの態度も、
    冷酷そのものである。ある小児科医の大学教授は、
    「生体解剖でもしなければ、そんなことはわかりませんよ」と言い、
    ある医師は、「これは治りません。味の素でもなめておけ」との暴言をはいている
    (四四・一〇・一九、『朝日』)。

    これと口裏をあわせたように、森永側でも、
    「後遺症対策には万全をつくした。これまで一人も出ていない」と断言しているが、
    それでは丸山教授の報告については、どのように解釈しているかというと、
    「事件発生当時に患者の名簿をつくり、カルテの写しもすべて会社で保管している。
    こんなに大量の後遺症患者がいるとは信じられない。
    後遺症も砒素以外に原因があるとの報告を得ている。
    砒素は脳には移行しないのだ」と、手前勝手な理屈をならべたてている。

    患者を救済しようとする意思は、みじんも感じられない発現である。
    しかも患者の名簿も、カルテの写しも、すべて保存していると言ってはいるが、
    大阪府衛生部では、これらの文書を四年前にすべて廃棄してしまって、
    大あわてにあわてているのである。
    森永側に保存してあれば、あわてる必要はないだろうに。

    カネミ倉庫の悪辣な賠償対応[P.220-221]

    事件当初、
    「私財を投げうって、たとえ乞食になっても、被害を補償する」と大見得をきった、
    カネミ倉庫加藤三之輔社長のその後の言動はどのようなものであるか。
    その答えは、被害者の会の代表との間に交された、つぎの門答によって明らかである。

    被害者代表「あなたは一〇月一四日に、
    全財産を投げだしてでも、被害者の救済にあたると言いましたが、
    今、救済のための金を、どれだけ持っていますか」

    社長「ハイ、数十万円持っています」

    この会談は一一月二一日であるから、
    大見得をきった日から三七日しか経過していないのである。

    その後、加藤三之輔社長は、言を左右にして被害者代表と会おうとしない。
    四四年二月二五日、粉雪の降る朝、患者を含む被害者六〇人の代表は、
    北九州市小倉区東港町の同社前に坐り込みを決行して、社長に面会を求めた。
    次はそのときの問答である。

     被害者代表「社長に会わせてくれ」
     会社側「広島に行っていて、いない」
     被害者代表「呼び返してくれ。帰ってくるまで待つ」
     会社側「私は全権を委任されている。私の言葉は社長の意志である」
     被害者代表「それならば、なぜ私たちの要求を聞いてくれないのか、
     仕事を休み、寒風に震えながら坐っているのだ」
     会社側「私は会社を防衛する立場の人間であり、あなた方と利害は一致しない。
     ただ言えることは、いま補償について話合ったり決めたりする時期ではないということだけだ」
     被害者代表「あなたでは話にならない。私たちは怒りをこらえかねている」
     会社側「あんた方は、顔も汚いが、心も汚いね」

    読者からのお便り[P.233-239]

    農村風景二、三    群馬県 G・M氏(無職)

    (2)半腐れのトマトを買いにくる商人がいるので、不思議に思って聞いてみたら、
    トマトジュースの原料にするとの答えであった。

    (4)霞ヶ浦のワカサギには肝臓ジストマが寄生しているから、
    生まや半焼きで食べてはいけないと発表した大学教授がいたが、
    そのため圧力がかかって大学を止めてしまった。

    (6)一万羽も飼っている養鶏場から、病鶏や死鶏を買っていく商品がいる。
    聞いたら鳥料理に化けるのだとのこと。

    (7)つい先週の話だが、ある農家が伊勢崎の野菜市場へ白菜を出荷したところ、
    その白菜を買った人だけが農薬に中毒してしまった。
    ところが驚いたことに、野菜市場では、その白菜だけを
    「只でくれてやるから誰でも持っていけ」と言ったという。
    今年は白菜の出来が悪く、したがって腐りが早いため、
    どこの農家でも農薬消毒に夢中になっている。
    しかし自分の家では、けっして食べない。
    全部を出荷してしまうのである。

    酒と痔        東京都 K・O氏(技術士)

    最近、日本酒を無サリ酒に代えたところ、何十年来の痔の状態が好転した。
    日本人に痔が多いのは、サリチル酸と関係があるような気がする。

    酢とサラダオイル   豊中市 A・Sさん(主婦)

    今まで使っていた酢は、チカチカと刺すような感じがしているので、
    高い米酢を買ってきて、コアジの酢づけをつくったところ、
    一日ですっかり味がしみ、やわらかくなった。
    前の酢では、二、三日たっても小骨が食べられない。

    サラダオイルも、カツやテンプラを揚げて食べると、
    家族全員の胃腸がおかしくなるので、使わないことにきめている。

    サラダオイルの被害  福岡市 M・K氏(新聞記者)

    杉靖三郎氏が、ある本に肥らない法というテーマで
    「サフラワーを原料にしたサラダオイルを一日三回、
    大さじ一杯ずつ飲めば肥らない。動脈硬化にもならない。
    カロリーがあるので米飯を減らしてもよい」と書いてあったのに共鳴して、
    リノールサラダオイルを約五年間、牛乳や味噌汁に浮かして飲んでいたら、
    二年目から、次のような症状が出てきた。

    腰から背部にかけて、カユくなってきた。
    始めは一二月頃であったが、だんだん早くなり、五年目は九月からカユくなった。

    五年目(四三年)九月下旬、
    両手の甲に皮膚角症が現われ、皮膚全体が乾いてきた。
    皮膚病薬の効きめは全くなく、ひどくなるばかりである。

    一〇月になって、カネミ倉庫のライスオイル事件を知り、
    愕然としてサラダオイルの使用を中止したところ、病状は軽快に向った。

    インスタントラーメンとサンマ  東京都(主婦)

    私の子供はインスタントラーメンが好きで、毎日、おやつ代りに食べていたが、
    そのうち軽い下痢がつづき、食後の腹痛を訴えるようになったので、食べさせないようにした。

    イチゴと農薬と農林省  東京都 M・Iさん(主婦)

    イチゴのシーズンも終りに近い頃、友人から親切な電話がかかってきた。
    それは、農林省に勤めている知人からで、
    「イチゴには多量の農薬が含まれていて、
    それは洗っても煮ても、どうしても除去することができない。
    この農薬は骨を溶かす性質があるので、成長期にある子供にはとくに害がある。
    このことは歴然たる事実なので、一般に公表しようとしたところ、
    生産者の強い反対のため、農協にのみ通知することにした」という内容である。
    この無気味な報道管制に、どこにも持っていき場のない、激しい怒りをおぼえた。

    農薬の被害を受けて    東京都 T・Kさん(主婦)

    昭和三五年に、私は東京から大阪へ移転した。
    その夏から急に食欲がなくなり、秋になると五四キロだった体重が四〇キロに減った。
    胃が重くなり、おできができ、年を越して春になると、こんどは月経ではない出血がはじまった。
    三〇歳をすぎたばかりの私の容姿が、五〇歳の人に間違われるくらいに老けた。

    もちろん、大病院の診察を受けていたけれども、病名はいつになってもわからない。
    症状は進行する一方であった。
    そのうち、咳したときの息苦しさ、胸のつまる思いを感じるようになって、
    ふと、農薬のせいではないかと思い、そのころ、
    農薬の被害状況を調査していた奈良県五条目町の梁瀬医師を訪ねた。

    ところが驚いたことに梁瀬医師は、治療らしいことはいっさい行なわず、
    「市場の野菜を買わないで、農薬を使わない手づくりの野菜を食べるように」
    と指示されただけであった。
    そしてそのとおりにしたことから、日毎に体力がついてきた。
    四〇年には全快して、現在では、普通の人以上の健康な生活をつづけている。

    トマトは食べない        群馬県 T・H氏(農業)

    当地区は、カンラン、ハクサイ、ダイコン、トマトを主力にしているが、
    私は自分でつくっていながらトマトは食べない。
    農薬の害が案じられるからである。
    そしてハクサイの軟ぷ病には抗生物質のマイミニを使い、カンランには砒素鉛を大量に使用している。
    私は、自分だけは食べないということを反省して、来年度からは全面的に農薬を使用しない方針である。
    そして一日も早く、人間に害をあたえない農薬がほしいと思う。

    九〇%が肝臓病        東京都 R・T氏(病院長)

    私の病院では、九〇%以上が肝臓の悪い患者である。
    原因は酒と食物と考えていたが、最近、食品添加物であることがはっきりした。
    外道日本、花盛りの世である。

    砒素ミルクの被害        尾道市 S・Yさん(女子高生)

    私は森永砒素ミルク事件の被害者の一人です。
    飲んでいるうちに体が黒ずんできて、中毒症状を起こすようになりました。
    幸い私は二缶くらい飲んだだけなので、死ななかったのだそうです。
    森永乳業から見舞いにきて、一万円だけおいて帰った、といいます。
    業者というのは悪どいですね。
    それからコカコーラの宣伝をしている加山雄三のことなんか書かないで下さい。
    本人が悪いんじゃなくて、会社からOKをとっているマネージャーが悪いんです。

    人造肉のうそつき広告        新潟県 S・I氏(食品商)

    人造肉が人体に有害であるとの理由から、当市の小中学校の学校給食に採用されていることの非を、
    地元新聞に投書したところ、反響があって、市、教育委員の間でお一時中止することになった。

    ところが、工場を新潟県二本木町にもっている日本曹達株式会社では、
    人造肉商品「テクスグランの件」と題する五段通しの広告を地元の『柏崎日報』に掲載した。
    その中に、

    (1)テクスグランは、大豆から作った肉様の蛋白質でありまして、
    その製造工程中に一切の化学処理は含まれておりません。

    (2)テクスグランは権威ある公的研究機関により、
    その栄養価、安全性、調理性などにつきまして慎重に検討していただき、
    肉の代替食品として立派に使用できることを証明していただきました。

    (3)発売以来関係各位の正しいご認識により、
    ほとんど全国的に各小中学校でどしどし使われるようになりましたことは
    誠に意義深いものがあると考えております。――以下略――

    右の広告文面が、すべて虚言、詐称、インチキ極まるものであることは、
    貴著『うそつき食品』に指摘されたとおりである。

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