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書籍と雑誌の要約と解説

危険な食品

これだけは知っておこう

装丁
増補 危険な食品 増補 危険な食品
郡司篤孝(元日本経済新聞社広告部長&元東京食品原料商会社長)
三一書房(三一新書618)
GTIN0236-680618-2726
1968/07/23(1983/01/31)
¥650
目次
  1. 主食にご注意
    1. 豚も食べないパン
    2. 肥料を飲む
    3. 中毒ラーメン
    4. シナチクラーメンの毒
    5. 白米亡国
    6. 官史と農薬
  2. 調味料天国
    1. 醤油は合成される
    2. 合成醤油と砒素
    3. 味噌と塩化アルミニウム
    4. ソースと糊
    5. 合成食酢と石油
    6. 白い魔の手、砂糖
    7. 精製白砂糖の前癌説
    8. 精製食用油と癌
    9. 疑問の化学調味料
    10. 石油を食べる匂いの毒
  3. 子供のおやつ
    1. 甘い菓子にはトゲがある
    2. 菓子と食品添加物
    3. 毒を加えた菓子
    4. 一本一円のアイスクリーム
    5. 錫を飲むジュース
    6. 事故は遠慮なく起こる
    7. 粉末ジュースは食物か
    8. 粉末ジュースの秘密
    9. 褐色の爆弾コカコーラ
    10. コカコーラの疑惑
  4. 牛乳のない国
    1. 本当の牛乳が飲みたい
    2. 牛乳のカラクリ
    3. 牛乳のお化け
    4. 牛乳に混ぜる
    5. 牛乳とオキシフル
    6. 牛乳と抗生物質
    7. 乳酸菌飲料とは
    8. でたらめな含有量
    9. 雑菌がウヨウヨ
    10. ヤシ油は牛乳か
  5. おかずさまざま
    1. 細菌培養器のカマボコ
    2. 殺人カマボコ
    3. 肉の忍者・ハム、ソーセージ
    4. 火薬の素
    5. カルシウムとリン酸塩
    6. 製造日不明
    7. 燻煙と発癌性
    8. 中味がマチマチのラード
    9. 薬で固めたマーガリン
    10. ウソつき食品の雄・ジャム
    11. カレーの謎
    12. ゴマ化し即席スープ
    13. かん詰の亡霊
    14. かん詰の危険性
    15. かん詰の見分け方
    16. 細菌いっぱいのサラダ
  6. 日本人は嗜好飲料がお好き
    1. ニセ茶
    2. コーヒーは有害か
    3. サイダーは食物か
    4. 不思議なハチミツ
    5. 酔っぱらい天国の悲喜劇
    6. 酒の害はアルコールだけか
    7. 酒の有害添加物
    8. でたらめな酒の級別
  7. 自然食を荒すもの
    1. パラチオンと野菜
    2. 砒素の入ったヨモギ
    3. 硫酸で里芋を洗う
    4. 硫黄とカンピョウ
    5. 果実の皮は死の皮
    6. 自然食品と放射能
    7. 抗生物質と食品
    8. ダニの入った「ふりかけ」
    9. 漬け物は毒の掛け算
    10. 信用のおちた卵
    11. 豆腐を毒するもの
  8. 輸入食品不信任時代
    1. 急増する輸入食品
    2. 死の輸入アンズ
    3. ホウ素と輸入チーズ
    4. 返される輸入食品
    5. 冷凍輸送は細菌輸送
    6. 獣肉の解凍も危険
    7. 汚染の原因
  9. 健康食は花ざかりだが
    1. にせもの朝鮮人参
    2. いんちきコンフリー
    3. 栄養のない栄養食品
  10. 消費者不在の食品行政
    1. ある日、厚生省で
    2. 食品添加物を決める人たち
    3. 食品Gメンの一日
    4. 怠慢の勤務評定
    5. 各界の圧力
文献
  • 厚生閣『食品添加物』
  • 厚生閣『食品衛生の化学』
  • 広川書店『毒物学』

内容

防腐剤と漂白剤に汚染されているパン[P.13-15]

豚も食べないパン。
それは、食品添加物としてパンの防黴(カビ止め)、
防腐(腐り止め)のために許可されているプロピオン酸のためである。
プロピオン酸の入った飼料を豚は食べないのである。
鶏は食べるが、産卵率が低下してしまうという。

では、なぜこのようなクスリを、パンに許可したのか。

プロピオン酸を申請したのは、奇しくも、ニトロフラン誘導体の許可をとった飢えの製薬であるが、
厚生省はこの審議にさいして、パンの専門家の意見を求めないで、独自の立場で許可してしまった。
それまでは、主食には食品添加物は許可しないと、再三言明していたのである。

<中略>

パンのもう一つの罪悪面は、すでに御存知の稀釈過酸化ベンゾイルによる漂白である。

稀釈過酸化ベンゾイルは、かなり毒性が強く、
一キログラムのネズミなら約四グラムで、その半分が死んでしまう。
パン用小麦粉には、一キログラムにつき〇・三グラムしか使わないから害はない、
というのが、業者の勝手な言い分である。
しかし、無漂白に反対する製粉業者の本当の腹は、
稀釈過酸化ベンゾイルを使えなくなると、虫がついたり、熟成期間が長くなったり、
そのため保管料が高くなったりして、利益が薄くなるからであった。

しかし、世論の力は何物にも増して強い。
巨大資本の製薬会社と同一歩調をとっていた厚生省も、
ついに正しい声に押しきられ、学校給食用のパンに関する限りは、
無漂白のパンに切り換えられるようになった
(註・英国では七五%以上の歩どまり精白をすると体刑で処罰される。
他の文明国もほとんど漂白していない)。

インスタントラーメンのスープ原料は肥料[P.16-18]

所用があって、郊外の友人の家を訪ねた帰り、ある工場の前を通りかかった。
その門の前を通りすぎようとすると、エンジンを吹かして、大型トラックが入ってきた。
静岡のナンバーの、その車が門の前に止まると、実にいやな臭いが流れてきた。
「なんだろう」

荷台をみると、それは大きな麻袋に入っているが、肥料に間違いなかった。
魚肥特有の臭いである。
何年か前に見学したことのある焼津の魚肥工場の臭いと全く同じであった。

同時に彼は、もっと驚かなければならなかった。
門の表札が、インスタントラーメンの別添スープも、
五グラムから六グラム入りの小袋が、毎日五〇トンから六〇トン作られている。
インスタントラーメンは、八〇グラムから一〇〇グラムくらいまでで、
市場価格は一五円から二〇円の間だから、工場原価は、六割の九円から一二円とみてよい。
これは、粉や油や生産経費で、ギリギリの価格だ。
とても別添スープにまで余裕がない。
しかし、ただで作るわけにはいかないから、製造し得る限りの最低の線で作っている」
「なるほど。原価はいくらなの」
「一グラム三〇銭、五グラム入りなら一円五〇銭くらいで、ラーメン会社に納めているのではないかな。
これから利益や経費を引くから、最高に見積っても、材料費は一グラム二〇銭というところだ。
現在の日本で、一グラム二〇銭で買える食品があると思うかね。
一番安いグルタミン酸ソーダでも三〇銭はする」
「魚肥を使っても、衛生上の害はないのかね」
「今のところ、中毒事故もでていないから多分ないのだろう。
しかし、長い間には判らないね、とにかく肥料だから。
それに彼らは絶対に別添スープの配合を明らかにしないよ。
食品に関する限り、すべて配合率は届出制にすべきだと思うのだが。
それに、最近、食品加工の技術が非常に進歩した結果、
妙なところにまで悪用されて、あの臭い魚肥でさえ、
脱臭、脱色されて、おいしいスープに化けてしまうのだ。
その脱臭脱色するのに、どんなクスリを使っているかも、皆目わからない」
「恐ろしいことだね」
「その通りだ。
調味料では世界的な会社の味の素が、のり出そうとして調べてみたが、
肥料を原料にしたスープを作るなどということは、体面上できなかった。
キッコーマンもヤマサ醤油も同じだ」

インスタントラーメンの揚麺は酸敗している[P.18-19]

インスタントラーメンを製造するには、油処理をしなければならない。
その油を、初期の頃は、一回使うと二度と再使用しないで棄てていたから、
油の変敗による中毒事故は全然起きなかった。
それが競争が激しくなると、コストを下げなければ、
企業として成り立っていかなくなったため、同じ油を繰り返して使うようになった。

<中略>

昭和三八年夏、関西地方を中心に静岡、長野の各県に、六九人の中毒患者が発生した。
いずれもはげしい下痢、嘔吐、めまい、強い腹痛を訴える、典型的な症状を示した。

その後、中毒事故は相次いで各地に起こり、三九年には二一件、四〇年には三〇件に達した。
そのほか、世間に発表されない事故がつづいている。

明星食品のシナチクラーメン事件[P.20-21]

昭和四一年二月一日、各新聞の社会面に
「明星食品のインスタントラーメンに、規定外(法律違反)の防腐剤入りシナチクを発見、摘発さる」
という記事が掲載された。
この記事を読んで、真偽をいぶかった人も多かったという。
なぜなら、明星食品は、インスタントラーメン四大トップメーカーの一社で、
生産高こそ二位か三位であるが、生産管理もよく、品質の優秀さでは、
もっとも信用の高かった会社だからである。

そんな会社が、法律違反のソルビン酸を入れたシナチクを、インスタントラーメンに使っていたのか。

およそ、食品を製造する会社で、シナチクにソルビン酸を使ってはいけない、
ということくらいは、百も承知のはずである。
ところが、明星食品の専務ともあろう責任者が、
「シナチクは佃煮の一種だと思っていました。ウカツでした」と、
記者団の質問に答えているのである。

シンガポール捕虜収容所の白米衰弱事件[P.22-24]

終戦の時、シンガポールの捕虜収容所にいた約三万五、〇〇〇人の英国人が、
半病人の状態で本国に帰ってきた。
さっそく、心理学、精神病学、栄養学その他の専門家が集められて、彼らの健康の調査をはじめた。

日本軍には、べつに捕虜虐待という国際法違反は見出せなかった。
すなわち、はじめの三年間は、白米五〇〇グラム、小麦粉五〇グラム、砂糖五グラム、脂肪五グラム、
肉または魚五〇グラム、新鮮な野菜一〇〇グラム、かん詰牛乳一五グラム、
塩一〇グラム、茶などで、カロリーはニ、一〇〇~二、五〇〇であった。
この間、不足していたものは、ビタミンB1、たん白、脂肪、カルシウム、ビタミンAとCであった。
最後の半年はカロリー的にも一、五〇〇~ニ、〇〇〇と下がり、
なかば飢餓状態におちいったが、日本軍はもっと食糧に不足していた。
はじめから終りまで、ビタミンB群がもっとも不足していて、これが重大意義をもっていると報告された。

そこで調査団は、べつに一〇〇人の健康な英国人に、収容所時代と同じような、
白米を主食とする日本食をあたえて、くわしく調査することになった。
ところが、しだいに日時が経過するにつれて、
健康な英人たちが、つぎつぎに精神的あるいは肉体的病気にかかるようになった。

そこで、一九四五年から五一年まで、くわしい研究がなされた結果、
ビタミンB1群の欠乏が主な原因であることがわかり、
このようなB1欠乏の白米を長期間食べつづけていると、
人間が心身ともに病気になるということを知って、次の五つにまとめて発表した。

白米を食べつづけると、
(1) 人間の判断力が低下する。
(2) 排他的利己的人間になる。
(3) 脚気症状があらわれる。
(4) 心臓、血管病がおこる。
(5) そのほか、いろいろな病気が続出する。

このため英国政府は、前記したように、英国人の主食である小麦にまで考えを及ぼして、
「小麦粉は七五%以上、歩どまり精白をしてはいけない。犯したものは体刑に処する」
という法律を国会で議決した。

白米を常食しているフィリピン人には脚気が多い[P.24]

フィリッピン人は、白米を常食しているため、脚気患者が多く、
全住民の一二・七%も占め、死亡率も高かったので、
一九四六年、アメリカのウィリアム博士が、バターン半島の、約九万人の住民に対して、
ビタミンB1、B2を添加した強化米を試食実験させた。
その結果、二年後には死亡率は絶無になったという記録が残っている。

合成醤油[P.29-32]

合成醤油は、戦後、日本に進駐してきたアメリカ軍が、
アメリカの提供による大豆を、醤油の原料とするに当って、
一年以上も要する醸造醤油に代って、製造を命じたことにはじまる。
これは、合成醤油がニ~三日間で製品になり得るためで、
アメリカ国民の税金による供給大豆を、早く換金化したいためであった。

当然のこととして、サッカリン、ズルチン、乳酸、グルコン酸、コハク酸、氷酢酸、
安息香酸、パラオキシ安息香酸などの食品添加物が、ふんだんに使われるようになった。

これは、アミノ酸だけでは醤油の味をなさないから加えられるもので、
現在でも使われており、かなりの毒性があるものも含まれている。

<中略>

この合成醤油は、家庭用としてよりも、業務用に多く使われている。
一流メーカーの醸造醤油が一・八リットルで二三〇円とすると、合成醤油は、その半額に近い。
そのため、福神漬、佃煮などの加工用に多く使われ、
その生産量は全国醤油生産量の四割に近いといわれている。

<中略>

合成醤油のもとは、アミノ酸である。
これを作るには、大豆タン白質その他のタン白質原料を塩酸で加熱分解したのち、ソーダ灰で中和する。
このほかに、醤油粕を原料とする新式一号、脱脂大豆を原料とする新式二号、
両者を併用する新式併用法などの製造法があるが、いずれも塩酸で分解することに変りはない。

合成味噌[P.33-34]

仕損じ品とか、品質が粗悪で販売に困っているような味噌を安く叩いて仕入れると、
醸造元と一緒になって、その味噌の改善にかかる。
つまり、ズルチンで甘みをつけ、タール色素で赤い色を一定にし、
退色を防ぐため塩化アルミニウムを混入し、最後にソルビン酸を入れて腐り止めとする。
なんのことはない、食品添加物の固まりのような味噌ができ上がるわけである。

ところで、これらの食品添加物は、全部味噌に許可されているものばかりである。
味噌一キログラムにつきズルチンは〇・一グラム、
塩化アルミニウムは〇・五グラム、ソルビン酸は一グラムまで。
そしてタール色素やサッカリンに制限はないのである。

<中略>

塩化アルミニウムには結晶と無水とがあって、
結晶はアルミニウム屑と熱塩酸から冷却し晶出させるもので、
無水物はボーキサイト(アルミニウムの基礎原料)から製造する。
素人には、全く味噌に関係がない軽金属と思われるが、
このアルミニウムが、味噌や酒の退色防止用として使用されるのである。
つまり味噌に入れると、明るい黄色に仕上げ、その色が長い間もつのである。

合成ソース[P.36-37]

ほんらい、ソースは、トマト、玉葱、人参、ニンニク、
ショウガなどの果実を原料としているのであるから、
適当な濃度があるわけなのであるが、業者はコストを下げて競争に対抗するために、
糊(ノリ)であるCMCを使って粘度をあげている。

CMCは、正式には繊維素グリコール酸ソーダといい、簡単にいえば、
パルプにモノクロル酢酸と炭酸ソーダを作用させて製造するもので、
いわゆる、事務用の糊と同じ糊である。
パルプそのもののようなものであるから、これを食品の中にニ%も許可して、
全国民に否応なく食べさせている政府の考え方がわからない。

食品添加物の危険性を心配する製造元メーカー[P.51_61]

日本の厚生省は、クマリンやサフランのような有害香料を、世界で日本だけ許可しているのである。
この二種の香料は、香料組合ですら、
「有害だから食物には使用しないように」との申し合わせをしているのである。
ジャム組合が、ジャムにズルチンの使用許可が延ばされたとき、
「有害だからジャムには使用しない」と、自発的に返上したのと軌を一にしている。

*   *   *

ジブチルヒドロキシトルエンは、ビーエイチティという名称で、
非常に多く使われているが、体重一キログラムについて、
ネコは九四〇ミリグラム、ウサギは二、一〇〇ミリグラムで死亡してしまう。
毒性が強いので、厚生省は何とも言っていないのにもかかわらず、
製造元の日揮ユニバーサルの方が「有害なので禁止になっても止むを得ない」と、
まるで逆のようなことを言っている。
メーカーの方が私たちの健康を心配している。
厚生省とはそういう役所なのだ。

違法食品添加物食品[P.56-57]

それは昭和四二年七月、夏の不良食品の一斉取締りをおこなっていた神奈川県相模原保健所が、
一キログラム当りソルビン酸〇・五六グラム、
同じくデヒドロ酢酸〇・〇四八グラム入っていた菓子パンをみつけた事件である。
これは東京都大田区大森南一ー一九武島製パンが製造したもので、
このようなパンを長期にわたって食べると、子供たちは肝臓病にかかってしまうのである。

同じころ、こんどは子供の大好きな甘納豆に、
漂白剤の二酸化硫黄が一キログラム当り〇・ニニグラムと、基準量の倍も入っていて摘発された。
これは川崎市の上光商店で製造したもので、同商店は三日間の営業停止処分をうけた。
たった三日間である。

そのつぎの新聞のはもっとひどかった。
甘いヨーカンに、驚くなかれ、許容量の五〇倍にも達する二酸化硫黄が添加されていた。
このようにたくさん入ったヨーカンを食べると、
胃腸障害をおこすことはもちろん、多量の場合は心臓にも障害をおこすという。
このメーカーは、

  • 株式会社「みつぼ」沼津市下香貫下障子三二一〇
  • 有限会社鈴木製菓 沼津市大岡二四六八

このときの、「みつぼ」の社長の弁解は、
手違いで入れてしまったと謝まっているが、その手違いとは、
仕入れたあん屋で規定量の漂白剤を入れていたのに気がつかず、
さらに入れてしまったのだという。

医療用殺菌剤入り菓子事件[P.62-63]

昭和四二年七月六日に、東京都衛生局が摘発を発表した「毒ガス菓子」がある。
しかも、摘発された四社が、いずれも代表的メーカーであるため、
心ある人に、根強い菓子への不信感をうえつけてしまった。

<中略>

毒ガスの名は、病人の衣服や医療機器の殺菌消毒に使われている
「プロピレンオキサイド」である。
製菓業者の悪徳商魂も、ここに極わまれりというべきであろう。

彼らの商魂がとくに腐りきっているということは、この毒ガスを、
カステラやケーキなどの半なま製品にだけ使用したことでもわかる。
半なまだから一〇日ぐらいで腐敗しはじめる恐れがある。
公定の防腐剤では効果がないから、悪いと知りつつ、プロピレンオキサイドでガス殺菌をして、
一ヵ月以上も保存させようとしたのである。
こうすることによって、カステラやケーキを、全国の果てまで販売することができる。

土入りアイスクリーム事件[P.65]

アイスクリームに土を入れる。
これに驚いた京都府衛生部長が、つぎのような照会を厚生省あてに発している。

今般、当府下において、
「モンモリヨナイト」と称しケイ酸アルミニウムの乳濁液を氷菓子の原料として
製造発売方出願するものがありますが、本品は一種の土であるので、
社会通念上食品の原料となり得ないものと認められ、また、
でん粉その他栄養価を有するものを原料とした良心的な製品を販売する者を
価格その他の点で圧迫し、ひいてはこの種食料品の品質を一般的に
低下せしめる原因ともなり、かつこの様な不消化物を摂取することにより
消化器にムダな負担を課することともなり、
衛生上好ましからざる結果を招くものと認められるので、
本品は許さるべきものにあらずと認められますが、
貴局のご意見承りたく差し迫った事情がありますから、
至急何分のご回報をお願い致します。

ヤシ油水増し牛乳[P.104]

昭和四〇年に、大阪市立食品衛生研究所が市販牛乳三五件を調べたところ、
八件が酪酸価が低く、落第とわかったが、まぜものの本体まではわからなかった。
まぜもの牛乳が騒がれだしたのはこのころからである。

しかし、本体がわからなくてはどうしようもない。
そこで開発されたのが、大阪府立公衆衛生研究所栄養化学室の研究になる
「乳脂肪の鑑別――トリグリセライドのガスクロマトグラフィーおよび
熱分解ガスクロマトグラフィー」というものである。

<中略>

こうした新しい装置の出現もあって、ヤシ油混入の悪質な行為が、ぞくぞくとあばかれてきた。

肉の発色剤=火薬の原料である硝酸カリウム[P.116-117]

切断された各肉片には、かなり多量の血液や漿液が残っているので、
これを血絞りしなければならない。
その場合、五%の食塩と〇・二~〇・三%の硝酸カリをよく混合して、
肉片の表面にこすりつける。この硝酸カリが問題である。

硝酸カリは、硝石ともいい、火薬や花火の原料である。
したがって毒性も強烈で、猫の静脈に、
その五~一〇%溶液をわずか〇・一グラム注射すると即死してしまう。

<中略>

この強い毒性のため、肉類への使用は厳重に禁止されていたが、
どうしたわけか、昭和三三年に許可になった。
もっとも食品一キログラムについて〇・〇五グラム(魚肉ハム、ソーセージ)、
〇・〇七グラム(食肉および鯨肉製品)しか使ってはいけないと規制されてはいるが。

この火薬の素のようなクスリを加えると、肉の色がきれいな鮮紅色を呈するようになる。
そしてその色は、なかなか消えることなく、製品の商品価値をいつまでも保たせるのである。
その反面、私たちはごく微量ながら、毎日火薬の素を食べさせられることになるのである。

偽装製造年月日[P.123-124]

横浜市保土谷区川辺町一五の鎌倉ハム村井商会の製造するプレスハムが、
昭和四二年五月一日、東京都世田谷区の玉電用賀駅近くのスーパーマーケットに、
驚いたことに五月ニ五日の製造日付を明記して販売されていた。
大衆雑誌ではあるまいし、なんとも不思議な話で、五月二五日までにはまだ二週間もある。

<中略>

この事件の結末が、また馬鹿げたものである。
それは鎌倉ハム村井商会の管理課長と販売課長が、
最初は「製造日付の先付けは一切やっていない」と強く否定しながら、
最後に「製造日付は必ず製品ができ上がり、包装をした日に機械でラベルを打ちこむことにしている。
問題のハムは四月二五日の製品と思われるが、
職員が四月と日付を打つべきところを五月と打ちあやまり、
そのミスが検査係でも発見されないまま、市場に出てしまったらしい」と白状した。
それでも「らしい」とお茶をにごしている精神は大したものである。
それに、一枚や二枚ならともかく、大量に間違った日付を打っていて、
気がつかないような馬鹿を使っているような会社では、
正規のハム、ソーセージでも信用できなくなる。
醜を天下にさらしたわけである。

清涼飲料水の異物混入事件[P.156-157]

サイダーを殺菌するには、低温殺菌法と瞬間殺菌法とがあって、
これを完全におこなっていれば、細菌が入りこんでくることはないが、
小さなメーカーが粗雑に取り扱うと危険なことになってくる。
また、ガスの圧力が不足すると、細菌が増えやすくなり、変質するようになる。

その実例として、昭和四二年六月、東京都衛生局が
不良清涼飲料水の一掃をはかるためにおこなった一斉検査の結果を記して、参考に供したい。

これは、東京都内の一五六製造業者の、約二、二〇〇種類にのぼる清涼飲料水で、
このうちの一八二件の清涼飲料水に、細菌、ハエ(蝿)、カ(蚊)、ガラスの破片などがまじっていた。
これはたいへんな数字で、サイダーを飲んだ一〇〇人のうち六人は、ハエやカを飲んでいたことになる。
そして次の業者は、もっとも悪質であるとして、その理由とともに発表された。
同じ危険を繰り返さないためにここに明記しておく。

  1. アポロ食品(東京都杉並区松ノ木町一二四九)製造の「いちごカップ」 濃縮で、
    使用禁止になっている赤色のタール系色素を使っていた。
    この着色料を多量に口にすると肝臓障害をおこす危険がある。
    しかも銅製品は、製品、工場名などが不明確で、標示違反もおかしていた。
  2. ナポロ飲料会社(東京都千代田神田神保町三ノ一七)製造の「ナポロジュース」と、
  3. 神田食品研究所(東京都新宿区下宮此町三)製造の商品は、
    使用量の制限が決められている防腐剤のデヒドロ酢酸を規定量より多く使っている。

清酒と塩化アルミニウム[P.166-167]

一部の専門家ならともかく、
酒の中にアルミニウムが入っていると知って飲んでいる人は、おそらくないであろう。
だが、清酒一リットルについて、〇・一グラムまで使用が許可されているのである。

<中略>

目的は着色防止と風味保持の二点であるが、塩化アルミニウムを入れなければ、
色が着いたり、味が落ちたりするような粗悪な酒はつくらなければよいのである。

それでも、厚生省より業者の方が、すこし利口のようで、
せっかく〇・一グラムまで許可してくれているのに、
「そんなに入れたら酒がまずくなる」といって、
許可量の半分くらいしか添加していないとのことである。

酒用の水はマンガンで浄化されている[P.167-168]

これは、水の浄化にさいして、
一〇〇リットルあたり一~三グラムの過マンガン酸カリウムを投入するもので、
アルコールの精製にも使用される。
しかし、最近はアルコールの品質がよくなったので、これにはあまり使われなくなった。

過マンガン酸カリウムの入った蒸気や粉塵を吸うと、
たちまちマンガン中毒となり、中枢神経をおかされて種々の症状があらわれ、
またこれを飲むと、胃腸、腎臓に障害をおこして貧血になってしまう。

酒用の水は、もっとほかの方法で浄化すればよいので、
なにも過マンガン酸カリウムを使ってまで、消費者の健康を害することはあるまいと考える。

硫酸が残留している皮むき里芋[P.177]

友人は鞄の中から一通の書類を取りだして、翼四郎にさしだした。
それは厚生省の示達事項であった。
その示達の中には、野菜仲買人の処理の方法が説明されてあった。

それによると、里芋を水桶に入れてから、かきまぜながら摩擦を加えて、表皮を除くのであるが、
その水の中にチオ硫酸ソーダ飽和溶液約二〇〇ccと、
濃硫酸約一〇ccを入れて、一時間も浸しておくのであり、
その里芋を調べてみると硫酸イオンが検出されたというのである。

つまり私たちは、硫酸のついた里芋を食べさせられていたわけである。

フリカケには多かれ少なかれダニが混入している[P.190-192]

国立衛生試験所が市販の「ふりかけ」をあつめて調べた報告があるので転記しておいた。

この克明な調査表をみて、驚かない人はいないだろう。
子供たちが毎日のように食べている、あの「ふりかけ」に、
ひどいのは一万五、五八七匹のダニが、ネズミの毛や昆虫片と同居しているというのだ。
業者がいかに抗弁しようとも、この事実は動かすことができない。

お菓子には昆虫が混入していることがある[P.192-193]

国産のチョコレートやビスケットから、ガ(蛾)や甲虫が、
ぞくぞくと発見されたというショッキングな記事が、『朝日新聞』によって報道された。

これは、厚生省国立衛生試験所内にある日本食品衛生学会の貯蔵食品害虫研究運営委員会の、
一年間の調査によるもので、東京都内の各食料品店から、
チョコレート一六五、混入コレート一三六、ビスケット・ウエハース類八五、
ナッツ入りキャラメル一八、その他九の計四一三点を買い集めて試験したものである。

その結果、ノシメコクガ、ノコギリコクヌスト、ケナガコナダニなどの害虫が、
一二点の菓子から発見された。

<中略>

これらの虫は、東京よりも気温の高い地方に多く、
各地方から、これらの害虫の寄生が報告されているとのことである。
寄生の経過は、菓子工場の製造過程で発生するものではなく、
菓子問屋の売場などで寄生し、包装紙のスキ間や包装紙を食い破っていくのである。

解凍肉は急速に細菌が増殖していく[P.221]

東京都衛生局の冷凍肉の解凍条件と細菌、揮発性塩基窒素の消長という発表によると、
昭和四一年七月から一二月の間に箱詰めした畜産振興事業団の冷凍輸入豚肉を、
摂氏一〇度で解凍したところ、解凍直後は一グラム当り一、〇〇〇個から一万個程度の細菌が、
四日後には一〇〇万個にふえ、一三度では四日後に一億個にもふえた。

塩基窒素も、解凍直後の八~一三ミリグラムが、保存温度一〇度で四日目には一四~一六ミリグラム、
一三度では二六~四五ミリグラムとなり、悪臭、変色がひどくなり、腐敗の一歩前という状態になった。
このふえ方は冷凍しない生肉の約二倍で、
「冷凍肉は解凍後の変質が早く、解凍後の保存にはとくに注意すべし」
というのがその結論であった。

長崎県産アジの大腸菌検出事件[P.222-223]

昭和四二年七月に、長崎県衛生研究所などが、長崎県五島付近でとれたアジを、
鮮魚特急にのせて一昼夜で東京の魚市場に運び、三回にわたって細菌を検出したことがある。
その結果、アジの皮から、一cc当り約一〇〇の大腸菌群が検出されたが、
調べたところ長崎港で水揚げのとき付着したものとわかった。
そこで、そこの海水を検査したところ、一cc当り一、八〇〇個もの大腸菌群が検出された。
これはカキを養殖するときの海水に照らしあわせても、食品衛生上から無視できない数といわれる。

このとき副産物として、魚による食中毒の原因の半数を占める腸炎ビブリオも、この海水から検出された。
魚獲した魚は氷づめで漁港に運ばれ、そこで港内の海水をかけて、
魚槽に魚を浮かし水揚げするのが普通であるが、
この水揚げに使う港内水によって魚が汚染される、との結論がでたのである。

ズルチンメーカーの禁止妨害工作[P.247]

日本だけで許可しているズルチンを禁止することに、
厚生省の意向がまとまり、いよいよ厚生大臣の決裁をあおぐまでになった。
これを知ったズルチンメーカーが、反対運動に立ち上がったことはもちろんである。
そして、当然のように、古くからズルチン組合の顧問格である、
自民党の実力者、国務大臣のA代議士に泣きついた。

A代議士は、早速厚生大臣室へ出向いていった。そしてB大臣に向って、
「ズルチンで死んだ人があるか。禁止だなんて止めろ」と迫ったという。
人工甘味組合から政治献金を受けていたから意識的にトボけたわけでもあるまいが、
ズルチンのため死亡した例は幾つもあるのに、
それを知らなかったA代議士の無智もわらうべきだが、鶴の一声もあって、
全面禁止を使用制限でお茶をにごしたB大臣の徹底した伴食振りも、物笑いの種になったらしい。

郡司篤孝が食品公害の告発に至ったあらまし[P.269-270]

戦後、荒廃しきった東京の街を、私は毎日歩いていた。

終戦の前に、日本経済新聞社を辞した私に、適当な職などあろうはずはなく、
生活の糧に工業薬品をえらんで、毎日得意先をみつけるために、
工場から工場へと回っていたのである。
食品添加物も工業薬品であるから、取扱い商品の中に入っていたが、
そのころはまだ食品添加物という名称は普及しておらず、
識者の関心もきわめて低い時期であった。

営業は順調にいって、車も買い、社員も一〇人くらいに増え、
問屋の形態をなすまでに成長していったが、やがて私は妙なことに気がつくようになった。

その前から、神田あたりの問屋が、ズルチンにカルチンという有害増量剤を入れたり、
サッカリンに砂糖を加えて、暴利をむさぼっている事実をまのあたりに見て、
これは困ったことだ、といささか抵抗を感じていたころである。

得意先には各種の食品工場があって、そのころはもう、古い友人のように親しくなっていたから、
よく座敷へ上がって、昼食や夕食の接待にあずかったものである。
そこで妙なことというのは、どこの食品工場でも、
自家製品を食前に供しないことに気がついたのである。

これはどういうわけであろう。
不審に思って問いただすと、みな一様に笑いながら、
「君から仕入れている食品添加物が入っているものなど、
命が惜しかったら食べられないよ」

私は愕然とした。
それは一気に千じんの谷へ突き落とされたような強烈なショックであった。

私は店へ帰ると、ただちに、今日かぎり廃業すると宣言した。
妻も社員たちも呆然としていたのを、昨日のことのように記憶している。

それから私は一介のライターにもどった。
そして一本のペンをたよりに、不良食品の追放に全力をささげることになったのである。

食品理想化への道はあくまでけわしい。
しかしそれはどうしても成しとげねばならぬことである。

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