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書籍と雑誌の要約と解説

日本人と味の素

世紀のモルモット

装丁
日本人と味の素 日本人と味の素
郡司篤孝(元日本経済新聞社広告部長/元食品原料商会社長)
すばる書房
GTIN0077-60701-3740
1978/08/01
¥980
一読慄然りつぜん
お母さん、毎日の食事の味つけになぜ、
化学調味料なんかをつかうのですか、子供たちの健康とひきかえに。
WHO(世界保健機構)が一日の摂取許容量をきめているようないわば、
それは“毒”なんですよ!
目次
  1. 被害
    1. 人体実験
    2. 味の素とコーラ
    3. ホステスと味の素
    4. 女子大生暴行事件
    5. 被害を訴える書簡
    6. 痛風の記録
    7. ある巷説
  2. 謀略
    1. 御用評論家
    2. 生活学校
    3. 買収
    4. 言論に対する圧力
    5. 工場見学の教訓
    6. 消費者抱き込みのテクニック
    7. 泥棒の慈善事業
  3. はかなき抵抗
    1. 広告拒否
    2. 社内対策
    3. 味の素に訊く
    4. 凋落
    5. 敗北
  4. ネーミングにだまされるな
    1. ハイミー
    2. だしのもと
    3. インスタントスープ
    4. ポリを食べる(味噌)
    5. かまぼこの素
    6. マヨネーズ
    7. マーガリン
    8. 調理加工冷凍食品
    9. 食用油(サラダ油、てんぷら油)
文献
  • 谷村顕雄『食品添加物公定書解説書』[P.188_195_210]
  • 御巫清『痛風』[P.202]
  • 広川書店『毒物学』[P.205]
  • 味の素KK『化学調味料』[P.207/210]
  • 化学用語辞典編集委員会『化学用語辞典』[P.207]

内容

  1. M女子短大で行われた化学調味料の人体実験[P.33-35]
  2. コカコーラに味の素を入れて飲むとトリップする[P.38-40]
  3. ビールに化学調味料を入れて飲むと酩酊する[P.48]
  4. 他家を訪問して、着色ジュースだけを出され、飲まないと工合いが悪いと思われる場合、口にすることがありますが、コップ一杯のジュースで、はっきり神経痛の出ることを経験しています。[P.56]岡山市A・F氏が郡司篤孝に宛てた書簡
  5. 奈良市西大寺町吉田病院の痛風化学調味料説[P.66-67]
  6. 化学調味料工場の産業病[P.73-75]
  7. 東京都「グルタミン酸ソーダ(MSG)の使用状況実態調査について」[P.75-79]
  8. 役場は味の素㈱と通じている[P.90-93]
  9. 新生活事業センター『生活学校:化学調味料のすべて』昭和四七年三月号[P.95-96]
  10. 大正六年頃、『味の素の原料=蛇』説が流れた。[P.117]
  11. 味の素がいまだに石油原料を使っている疑惑[P.127-131]
  12. 味の素を告発する書籍は広告掲載を拒否される[P.140-146]
  13. 味の素社の社員を対象にした人体実験[P.153-154_175]
  14. 石油合成法の輸出を取り止め発酵法に切りかえたことから、中毒事件は少なくなった、ということがいえよう。[P.156]
  15. 昭和四八年一二月をもって、味の素株式会社は石油合成法による味の素製造を打ち切った。[P.182]
  16. 石油からエチルアルコールをつくる法は、ソビエトが開発したものといわれ、この特許を味の素が買ったものである。[P.192]
  17. 味の素の痛風動物実験[P.195-196]
  18. 味の素と視覚障害に関する動物実験[P.196-197]
  19. 過敏体質のヒトは5g以下で発症するとされている〔Schaumburg.H.H. & Byck R.:New Engl. J. Med.〕[P.198]
  20. 東大付属病院では痛風患者に化学調味料を禁じている[P.200-201]
  21. 事大思想といって、大きな会社が悪い食品をつくるはずがない。お上(厚生省)が有害な物を許可するはずがないという考えがありますからね。[P.222]
  22. ポリマー被膜加工食品[P.245-251]
  23. 良心的なカマボコ屋は廃業する[P.254-256]
  24. チバニッコー油からビフェニールが検出されたという事件が大々的に報道されたときだが、TBSで取材に行ったとき彼が会った食用油の技術者は、「人間が食べる食用油に、こんなにクスリを使ってよいのかと思いますよ」としみじみと洩らしたという。[P.271]

M女子短大生が行った化学調味料の人体実験[P.33-35]

私は化学調味料の人体実験をすることにしました。
母にそのことを話しましたら、母は平気な顔をして、
「うちでも昔からじゃぶじゃぶかけて食べているのだから、毒のはずはないよ。
妙なことを教える先生だね」と言います。
そのとうりで、私の家では漬物にも、味噌汁にもご飯以外の食物にはほとんどかけているのです。
だから私が、味の素を一〇グラムくらいでしょうか。
水の中に入れて、あっというまに飲んでしまっても、
「かえって頭がよくなるよ」と言って笑っているのです。

ところが私のほうは、笑うどころではなくなりました。

だんだん胸がむかむかしてきて、悪い船酔いのような気分になり、吐き気を催してきました。
しかしお手洗いへいって、もどそうとしても何も出ません。

そのうち意識がもうろうとしてきて、夢うつつといった感じになり、
こんどは空中ブランコをしているような気分になっていくのです。
そしてそのまま眠ってしまったようです。

その私の姿をみて、驚いたのは母のほうです。
眠ってしまった私を起こそうとして、
ゆすったり叩いたりしても、私はぴくりともしなかったそうです。

さあ大変です。母はあわてました。
このまま死んでしまうのではないか、と思ったそうです。
しかし私は眠っているだけで、泡を吹いたり、あばれたりする症状はでてこなかったものですから、
生まれつき楽天家の母は、あわてただけで救急車を呼ぶようなことはしませんでした。
そしてノーシンだか回効散だかしりませんが、
わけのわからぬ売薬を無理に私の中に注ぎこんだそうです。
つまり味の素を食べて、死ぬはずはないと信じこんでいたのですね。
実はそのとうりで、私は二時間くらい、
夢うつつの境をさまよっていただけでしょうか、そのうち正気に返りました。
その私の姿をみて、母は、けろっとして言うのです。
「ほら、言わんこっちゃないじゃないの。
頭をよくする味の素が、お前をゆっくり休ませてくれたのよ」と。

コカコーラに味の素を入れて飲むとトリップする[P.38-40]

埼玉県の若い読者から一通の郵便を受けとった。
熊谷の映画館に勤めている二一歳の青年で、
「去年まで私は非行少年であった。法すれすれの無法行為をして意気揚々と街をのし歩いていた。
いろいろな悪い遊びをやり、シンナー遊びもご多分にもれなかったが、
“コカコーラに味の素を入れる遊び”に、もっとも熱中した。
いうにいわれぬ恍惚状態という陶酔の境に入ってしまう。
値段も安く、どこでも入手することができて、
しかもシンナー遊びのように見とがめられることもないので、
たちまちに非行少年の間で流行をきたした。

しかし現在、私は悪夢から醒めて堅気の人間に立ち直ったけれども、
あのころの“味の素入りのコーラ”を飲みつづけていた自分を思うと、
身の毛もよだつ思いです。
どうか、このような悪影響を人体にあたえる“味の素”を
この社会から追放するようにがんばって下さい」

<中略>

西日本のある県で、消費者のための大会が開かれ、講師として出席した私は、
終了後、主催者の県庁の役人たちと夕食を共にすることになった。
そのとき、県の衛生部長が、ビールを飲みながら何気なく言った言葉が、
深く私の胸をさした。
「チンピラや非行少年は、日本中どこの町にもいるから、べつに大したことではないが、
夜、この市の盛り場を歩いてみると、コカコーラの瓶をもって、ふらふら歩いている。
近づいてよくみると、目がどろっとして完全に酔っ払いの状態になっているんだ。
はじめのうちは、シンナーでも吸った後なのだろうと気にもとめていなかったが、
そのうち、シンナーではなくてコーラを飲んで酔っているということがわかって愕然とした。
コーラで酔うわけはないというので、調べてみると、コーラの中に味の素を入れているのだという。

これにはじっさい弱っている。警察へ話して取り締まるわけにもいかない。
どこにも売っているものだし、どこの家庭にもある。
政府がどちらかを禁止しなければ、地方行政団体としては手の打ちようもない」

それから帰京して数日たったある日、文芸春秋社の記者と会う用事ができ、
先方の取材がすんでから、私はこの話をした。
その記者は、「なんだ、そんなことか」といわんばかりに――
「そのことは誰でも知っていますよ。あなたも実験してみたらいかがですか」と、
いたずらっぽい目に笑いを浮べて言うので、私が答えずに黙っていると、
「キャバレーかバーに閉店間際に行くんですよ。
そうしてボーイに、こっそりと一〇〇〇円くらいを渡して、
例のコーラを頼むよ、と言うんです。
ボーイは心得てますから、コーラを二本持ってくる。一本は女に一本は客にです。
客用のコーラは普通のコーラだが、ホステスに渡すコーラには味の素がたっぷり入れてある。
もっとも限度があって、たくさん入れるとコーラの味が変って、
女に気付かれるから、そんなに多量ではないでしょう。
看板近くで、女はもう酔っているから、
“味の素入りのコーラ”を飲むとそれこそうっとりとして恍惚状態になってしまう。
ああいい気持よ。お客さん、どこかへ連れていってよ、ということにもなりかねない。
一〇〇〇円の“味の素コーラ”で女を物にできれば安い買いものだというわけで、
一時はたいへんに流行しました」

ビールに化学調味料を入れて飲むと酩酊する[P.48]

「さらに六人は、同じ手口でわかっただけで十数人の客から、
普通の飲食料の倍近く水増し請求し、ビールに化学調味料を多量にまぜて悪酔いさせたうえ、
ホステスらがビールを飲んだことにして月に二百七十万円以上の荒稼ぎをしていた。
客が支払いを渋ると谷地、大島らが手足を押えつけるなど乱暴し、
時計、定期券、身分証明書などの所持品を手当たり次第に奪い取っていた。」

『朝日新聞』「ホステスに強盗罪」1972年12月14日

奈良市西大寺町吉田病院の痛風化学調味料説[P.66-67]

さきほど、病院の従業員のTさんが痛風だといわれ、検査をすると血中尿酸が増えていました。
しかし、本人は殆んど肉を食べないのにといって不思議に思っています。

ところがたまたま話の中で化学調味料“いの一番”を多量に使っていることがわかり、
これが犯人ではないかということになりました。
Tさんは5人家族で月に200グラムのいの一番を消費、漬物にもふりかけて使うそうです。
事実、“いの一番”には5′-ヌクレオタイドナトリウムが含まれており、
これがヒトの体の中で分解されて尿酸になるのです。

<中略>

いますぐ“いの一番”が痛風の直接の原因だときめつけてしまうのは尚早ですが、
ただ痛風が尿酸の蓄積によることと5′-ヌクレオタイドナトリウムの終末代謝物質が
尿酸であるということはまぎれもない事実です。
だから少なくとも痛風だといわれている人や、
その疑いのある人はこの種の調味料の使用をやめなければなりません。

今後、食品公害を追求する立場から、みんなで取り組んで、
この種の調味料と痛風との関係を化学的に明らかにしてゆかねばならないと思います。

(外科科長・検査科指導医) 紺谷 日出雄

化学調味料工場の産業病[P.73-75]

九州の、ある県庁所在地に住む読者から一通の手紙が届いた。
文面が長いので要約すると、

「この町に、化学調味料と他の物質を混合して製剤をつくっている小さな工場がある。
道路に面していて、自動車の往来で埃が入るので、いつも窓を閉めきって作業している。
作業員は女子だけである。

ある日、一人の女子作業員が目まいをおこして、ふらふらと倒れそうになった。
別室でしばらく休んでから、その主婦は早退手続をして帰っていった。
このときは、一人だけの現象であったから、別に警戒するはずもなかった。
そして毎日、作業は正確に進められていった。

しかし被害は一人だけではなかった。
二人三人と、目まい、しびれなどをおこす女子が増加していき、
やがて全員が同一症状におちいり、いつのまにか十人の女子全部が辞めてしまった。
代りの主婦が採用されて入ってきているが、
この人たちもいつか、つぎの犠牲になることはわかりきっていることである。
なんとか、化学調味料の害を防ぐ方法はないものであろうか。ご教示いただきたい」

このような文面であった。
私は簡単な返事を書いたあとで、暇をみつけて、ぜひこの町へ行ってみたいと考えていた。

このことを私が、友人の平沢正夫君に、
コーヒーを飲みながら何気なく話したところが、平沢君は急に乗り気になって、
「ちょうど九州へ行く用事があるから、僕に調べさせてもらえないか」と言う。
私が承知したのは、いうまでもなかった。

日本ではトップクラスに位置する、有能なジャーナリストの彼のことだから、
さだめし豊富な資料を集めてくるであろうと、私は大きな期待をかけていたのであったが、
数週間後、その期待はもろくも消えさることになった。
彼は寂しそうに、そして吐きすてるように言った。
「ぜんぜん話になりません。患者の主婦たちも会社の経営者も、
貝のように口を閉して語らんのですよ。
こんな小さな町のことだし、東京の大企業から手が回ったとも考えられないのだが、
保健所に報告したことから、口を封ぜられたのかもしれませんね」
「それはあり得ることです」と私は言った。

東京都「グルタミン酸ソーダ(MSG)の使用状況実態調査について」[P.75-79]

昭和四七年五月二五日
衛生局公衆衛生部食品衛生課
 (212)5111内線2611

グルタミン酸ソーダ(MSG)の使用状況実態調査について

昭和四六年三月より、酢こんぶや中華料理を食べて、
顔面のしびれ、額の帯状圧迫感などの症状を訴える苦情が、
散発的にではあるが、保健所に苦情として持込まれた。

当局では、苦情のつど原因と思われる食品を都立衛生研究所で分析してきたが、
いずれもグルタミン酸ソーダが多量に使用されていることが判明した。

このことから引き続き市販の酢こんぶおよび中華料理店の料理を調査した結果、
グルタミン酸ソーダの多量使用の傾向が見受けられたので、
関係者ならびに消費者に対し注意を喚起する。

MSG含有率(%) 検体数 構成比(%) 発症件数 発症率(%)
10   %未満 20 46.5 0 0
10~20 〃  3(1) 7.0 1 33.3
20~30 〃  6(2) 14.0 2 33.3
30~40 〃  11 25.6 2 18.2
40~50 〃  3 7.0 2 66.7

MSG含有率(%)/品名 タンメンのスープ ワンタンのスープ チャーハンのスープ ラーメンのスープ チャーハン 合計 構成比(%)
0.1   %未満 1 2 2 2 1 8 25
0.1~0.5 〃  6 3 6 6 21 66
0.5~1.0 〃  1 1 2 6
1.0~1.5 〃 
1.5~ %以上 1 1 3
合計 8 6 8 2 8 32 100.0

1 調査期間

昭和46年10月から昭和47年4月まで

2 検査結果

(1) 酢こんぶ 総検体数 43検体

※ 形態は①結びこんぶ ②板状酢こんぶ ③その他がある。
※※ 苦情者の食べ残し残品のあった事件(7例)
※※※ 検体内訳は
① 苦情者の食べ残し残品( )内のもの 4件
② 苦情者の食べものと同一メーカーの同用品(同一販売店から収去) 6件
③ ②の同様品(他の販売店から収去) 1件
④ その他一般収去 32件
※※※※
① 最高含有量 45・3%(1個当りMSG含有量 1.4g)
② 最低含有量 1.1%(1個当りMSG含有量 00・2g)

(2) 中華料理中のMSG含有状況 総検体数 32検体

※ 最高含有率 1・64%(MSG換算300mlにつき4・92g)ワンタンのスープ
※※ 最低含有率 0・07%(MSG換算300mlにつき0・21g)ラーメンのスープ

(3) 対策

MSGは食品衛生法により食品添加物として指定を受けているが、
苦情を提起されたのは、いずれも食品添加物として常識的な使用の範囲を逸脱して、
過量使用したものに限られている。最も極端な例として、
増量の目的で使用されていたものが数例あった。

このことにより

① 業者に対する指導強化

酢こんぶ業界に対しては、厚生省と協議のうえ、
酢こんぶ製造業者にMSGの使用量を3%以下にすること、
ならびに食品の製造、加工業者、飲食店営業者等に対しては都内各保健所で、
MSGの適正指導方を指導する。

② 消費者に対する広報

通常の調味料としての使用法を逸脱しない限り、
害は考えられないので、過量なしようをつつしむよう周知する。

③ なお、国においては、
4月25日厚生省通達をもって各関係方面に文書で注意を喚起している。

別添1
苦情の内容

(1) 苦情件数 13件

(2) 共通症状

潜伏時間 数分~45分
顔面のしびれ、後頭部や首筋のしびれや鈍痛、灼熱感、頭痛、こめかみ、
額の帯状圧迫感、手足のしびれ、たまには、はき気、又は、アルコール酩酊様感を訴える。

治癒までの時間、約一時間。

(3) 喫食状況

a・酢こんぶの苦情者は、いずれも空腹時’’’
5~10個(10~30gぐらい)を摂取している。(MSG換算1人3.3~14・3g)

(注) 1個平均重量 2~3g 1個平均MSG含有 0・9g(バラツキが多い)

b・中華料理の苦情者は ①中華スープ ②バイキング料理であった。

① 中華スープは、約300mlを飲んだ。(MSG換算量1人4.5g)
② バイキング料理は、詳細不明であった。

役場は味の素㈱と通じている[P.90-93]

ここ二年ばかり足が遠のいているけれども、それまで一〇年近い間、
私は毎年、延べ二ヵ月くらいを北海道で過した。

私の友人に今井タツ子さんという人がいて、
この人が北海道主婦連絡協議会事務局長(会員六万人)、
北海道教員組合家族会長(会員一万人)、
北海道自然食友の会会長(会員五千人)をしていて、
道内各地の講演に私を招いたからである。

<中略>

そうした何年か前、私は今井さんたちと、北海道夕張郡の小さな町に行った。
午後からその町の小学校で講演会が開かれることになっていた。

町といっても村に毛の生えたような所であったが、一〇〇人近い聴衆が集まった。

<中略>

開会の時間がきた。そうすると予定にないことが起こった。

大きな風呂敷包をかかえた男が会場に入ってきて、
包の中から一〇〇冊以上の小冊子を取りだし、二部ずつ一〇〇人の聴衆に配布をはじめた。
その本を見て、今井タツ子さんたちが、「あっ」と言った。
私もつられて、その傍らへ行って本を見た。私も、「あっ」と驚いた。

それは「生活学校」という、新生活事業センターの発行している
月刊雑誌昭和四七年三月号の別刷で“化学調味料のすべて”という題名がついていた。

<中略>

まさか地方の役場が、味の素から金を貰っていることはないだろう。
その代り新生活事業センターを通して味の素の宣伝文書を大量に貰っている。
同じことなのである。

その男に今井さんが訊いた。
「この本はどのくらい送られてきているのですか」
「さあ数えてもみないが、一〇〇〇部くらいはきているのではないかな」

今井さんも私も、とっさに計算ができなかった。

全国にはいったい何千何万の役場、市役所、
そして生活学校や、婦人学級消費者グループがあるのだろう。
その一つ一つに一〇〇〇部単位で本を配布したら、
おそらく天文学的大部数になるのだろう。
一部一〇〇円の原価として、いったい何億何十億円になるのだろう。
新生活事業センターの資金力はゼロに等しいから、
その費用は全部味の素株式会社が負担していることはまちがいない。

今井さんはさらに訊いた。
「あなたは今日の郡司先生の講演の内容が、どういうものかご存知ですか」
「さあ」

その男は何も知らないらしかった。
それだからこそ、味の素の有害性を話す私の会に、
味の素の宣伝文書を持ち込んできたのであろう。

新生活事業センター『化学調味料のすべて』昭和四七年三月号[P.95-96]

☆ 過剰摂取にもとずくもの

グルタミン酸ナトリウムを一時に大量に摂取したため起きた症状として、
次のものが知られています。

(1) 中華料理店症候群

ことの起こりは、一九六八年三月、
R.H. Kwok らが The New England Journal of Medicine, 
二七八巻七九六ページに発表した報告で、
中華料理店でワンタンスープを摂った後に特定の症状があらわれるというので、
このような妙な名前がつけられました。

翌一九六九年二月、ニューヨークアインシュタイン医科大学の Schaumbnrg らは、
science,一六三巻八二六ページに、
この原因物質は中華料理に多量に使われているMSGであるという発表をしました。
すなわち、起床直後の空腹時に一度に多量のMSGを与えると、
頭痛・灼熱感・額面圧迫感・胸痛などを感ずることがあり、
これは個人差が非常に大きいのです。
また、ほう骨あたりの圧迫感、ほう骨から眼窩のうしろにかけての痛みが
比較的長時間持続することもあり、
コミカミや顔に帯状の圧迫感を感ずる人もあります。

このような中華料理店症候群の症状の強さと持続時間はMSGの投与量に関連があり、
また、空腹時にはこの症状があらわれる人でも、
空腹でない場合には何ら異常を認めないことを報告されています。

以上の報告に対して、反論がすくなくありません。
バンデルビルト大学の F.R.Blood や
食品薬品研究所の B.L.Oser(この人はチクロの発ガン性を発見した人です)らは、
スープ一人前に五グラムものMSGを添加したときに、
まれに症状群があらわれたとしても、それは一種のアレルギーであり、
他のアミノ酸も用いて充分に管理された二重盲検法で研究する必要がある、
と批判的な立場をとっています。

米国アルバニー医科大学の I.Rosendlum は一九六九年、 
Food & Cosmetic Toxicology七巻七〇七ページに
九八名の志願者について行なった実験結果を発表して、
Schaumburg の実験結果に疑問を投げかけていますし、
また、セントルイス大学医学部の G.Bazzano らは、
一日に二五~一四七グラムのMSGを一四~四二日間
成人に摂取させた場合における種々の状況を観察していますが、
体重・食欲・過敏症その他、何らの変化も認めていません。

味の素を告発する書籍は広告掲載を拒否される[P.140-146]

昭和四七年に、私は「味の素を診断する」という本を書いた。
版元のビジネス社はさっそく新聞社へ広告掲載の申込みをしたが、いずれも拒否された。
味の素株式会社の手が廻ったことはいうまでもない。

<中略>

そのことは大新聞の広告掲載拒否ばかりでなく、国電の中吊り広告にまで及んだ。
広告をする媒体は完全に断ちきられてしまった。

困ったのは出版社である。本というものは広告をしなくては売れない。
そこで社長が、選挙ポスターのような立看板を、
都内盛り場の要所に立てることを考えついた。

一本で千円を要した。これを千本つくり、公安委員会の許可を得て、
東京の銀座、新橋新宿、渋谷、池袋などの盛り場の電柱にしばりつけた。
作業に従事したアルバイトへの支払も大きかった。

「これで少しは売れるだろう」と社長はほっとしていた。

ところがその翌朝、千本の立看板広告はものの見事に霞と消えていた。

許可を得てしばりつけているのであるから、
無断で撤去すれば軽犯罪法くらいには触れる。
だから巡査の目をかすめて千本の立看板を持ち去るためには、
一人が自動車を使って、二~三本くらいしか取り外せないだろう。
強風にも飛ばされないように、全部が針金で固くしばりつけてあるのである。

だから五〇〇人近くのアルバイトが、
深夜、自動車で盛り場を隠密のうちに廻って、素早く立看板を自動車の中に隠す。
たいへんな資金と計画力が必要である。

こうして立看板戦術も、数百万円の損失だけで完敗してしまったのである。

味の素社の社員を対象にした人体実験[P.153-154_175]

私は昭和四七年から一年間、「健康日本」という新聞の代表をしていた。
その紙面を使って「味の素に訊く」という特集を試みたことがある。
以下全文を掲載して参考に供したい。

なお味の素の説明のつぎの私の反論を読んでいただきたい。

<答える人> 味の素株式会社広報室副部長 久保田剛敏氏
<問・酢コンブ、中華料理での多量添加事件をきっかけに、
グルタミン酸ソーダの安全性が疑問視されている。
批判の本もでているが、貴社が安全であるとする根拠はなにか>

<中略>

私どもでも常時、調査をしていますので心配はないのですが、
念のため私どもの中央研究所千人で社内実験をやりました。
その結果四・四グラム以下では一件も起きないが八・七グラムの場合六%起っています。

*   *   *

酢コンブで問題になったのは、一度に空腹時に沢山とったという例外ですから、
吸収が普通の食品ですと、色々なアミノ酸が入ってバランスがとれているが、
ある一つのグルタミン酸、アミノ酸だけを大量にとった場合、
体の吸収スピードが合わなくなってしまったからだといえます。

味の素株式会社広報室副部長・久保田剛敏(健康日本新聞:味の素に訊く)

味の素の痛風動物実験[P.195-196]

――国立予防衛生研究所食品衛生部長宮木高明の発表(一九七三・六月、雑誌食品工業)

E・グルタミン酸ソーダの食品衛生学的研究

1 MSG(monosodium glutamate)による家鶏雛の腎障害

動物におけるNa中毒の一環としてMSGを取り上げ、
食塩に最も感受性の高い幼雛に生理食塩水と約等量塩水と
略等量の Na を含む2・6%MSG水を自由摂取させた結果、
迅速かつ正確に全身的尿酸沈着性を惹起し得た。
2日雛では致死率は100%に近く、生理食塩水群より遥かに高い。

また、 monopotassium glutamate 投与により Na の影響を除いた群は、
一ヶ月間の観察で何ら肉眼的、顕微鏡的病変を認めなかった。
経時的には、6~12週間で肉眼的人腫脹や尿管閉塞を認め
これと併行して血中尿酸値が上昇した。

顕微鏡的には食塩中毒がネフロン上部を侵すのに対し、
MSGの中毒では集合管に始まる尿酸沈着を primary な病変と認めた。
Glutaminase 阻害、尿酸生成促進、age gactor 等の考察を行った。

2 グルタミン酸ソーダ(MSG)の長期経口投与が生体に及ぼす影響

MSGの最大無作用量およびADIを知る目的をもって、
雌雄ラットを実験動物として昭和四十五年六月以来、長期飼育実験を行っている。
MSGは粉末飼料中に、Exp.Ⅰ : 20,15,10,5 および
0% Exp.Ⅱ : 10,7.5,5 および 0% 飼料および水は自由摂取とし、
その量を体重変化とともに記録。
経時的に臨床検査(六項目)および病理学的試験を実施した。
Exp.Ⅰは22ヶ月、Exp.Ⅱは13ヶ月経過し、現在なお継続中である。
負荷の大きい高濃度MSG投与群において全身的衰弱著しいことは当然として、
感染抵抗性の低下が認められる。

腎臓の機能的障害に特徴がある。

味の素と視覚障害に関する動物実験[P.196-197]

幼若動物に対する毒性、グルタミン酸ナトリウムの大量を
マウスの新生児に皮下注射で与えると網膜に変性がみられる
〔Lucas, R.D.& Newhouse, J.P.:Amer. Med. Assoc. Arch. Ophthal.
58 193 (1957);Olney, J. W. :J. Neuroputh, Explt.Neurol. 28, 455 (1969)〕.
この変性は急性であり、病理学的に不可逆なことが明らかにされている。
また幼児に高グルタミン酸状態が続けば、
成熟後に肥満症と神経内分泌障害がみられるとの報告もある
〔Redding, T.W. & Schally,A.V. : Fed. Proc. 29, 755(1970)〕.
このような現象はラット、ウサギ、ニワトリ、アカゲザルなどにもみられるが、
マウスが最も敏感で0・5g/㎏のグルタミン酸ナトリウムを経口投与しても
視床下部に損傷がみられ、この作用にアスパラギン酸との相加効果が認められている
〔Olney,J.W.OL.Ho : Nature 227,609(1970)〕.

東大付属病院では痛風患者に化学調味料を禁じている[P.200-201]

「あなたは今日から、絶対に化学調味料を食べないという約束ができますか」と訊く。
患者は妙な顔になって、「どうしてですか」と問い返す。
先生は、「どうでもこうでもない。約束できるかと訊いているのです」
患者は訳がわからないままに、「止められないことはありませんけど」
「かならず守って下さい。
そして半年もたったら、葉書か電話で病状を知らせて下さい。
今より悪くなることはないでしょう。
もっとも完全に治るということは請合えませんがね」

良心的なカマボコ屋は廃業する[P.254-256]

神奈川県小田原市の良心的なかまぼこ業者が二~三軒、
廃業してしまったという記事をローカル紙で読んだ私は、さっそくその業者を訪ねてみた。

なるほど大業者ではない。
小田原市の熱海寄りの海岸の崖にへばりつくような裾地に、その業者の工場があった。

来意を告げると、三〇歳代の主人が出てきて、
「スケトウタラが全然といっていいほど入らなくなりましてね。
グチやハモはもちろん入手できません。
イワシはいくらでもあるので、イワシかまぼこもつくってみたのですが、
私どものような零細業者には技術も設備もありませんから、
イワシではどうもおいしいかまぼこがつくれません。
それで思いきって転業することにしたのです」
「それは残念ですね。なんとかつづける方法はなかったのですか」
「それはあります。インチキかまぼこをつくる気にさえなれば」
「ほほう。それはどうしてつくるのですか」「仕掛けは簡単ですよ」

そう言って、若い主人は奥のほうから、一つの商品を持ってきてみせた。
それはつぎのようなものであった。
「つまり、“かまぼこの素”のようなものですな」
「そうなのです。これを使うと、魚肉を少なくしても、
おいしいかまぼこができるという仕掛けです」
「食品添加物の固まりではないですか。
かまぼこ一キログラムにたいして、どのくらい入れるのでしょうね」
「かなり入れますね。一〇%以上にはなるでしょう」
「そうすると、かまぼこの好きな人は、このクスリで病気になるかもしれませんね」
「それを心配して、私はかまぼこ製造を止めてしまったのです。
お客様の健康を害するような食品は、私の性格からいってつくることはできませんから」

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