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書籍と雑誌の要約と解説

酒及合成酒

製造従事者の常識として知るべき黴菌類とその試験法

装丁
酒及合成酒 酒及合成酒
庄治謙次郎
雄山閣
ASIN:B000JBLVV2
1942/05/15(1947/02/15)
¥70
目次
  1. 醗酵菌学
    1. 醗酵
    2. 黴菌の一般性質・性状
      1. 黴類
        1. 黴の形態
        2. 黴の構造
        3. 黴の繁殖
        4. 胞子の性質
        5. 黴の酵素
        6. 黴の栄養分
        7. 黴の成分
      2. 酵母類
        1. 酵母の形態
        2. 酵母の構造
        3. 酵母の繁殖
        4. 胞子の生産
        5. 酵母の酵素
        6. 酵母の自己消化
        7. 酵母の栄養分
        8. 酵母の成分
        9. 酒精醗酵の生理
      3. バクテリア類
        1. バクテリアの形態
        2. バクテリアの構造
        3. バクテリアの繁殖
        4. 胞子の性質
        5. バクテリアの酵素
        6. バクテリアの栄養分と発育条件
        7. バクテリアの生産物
        8. バクテリアの醗酵生理
    3. 黴菌各論
      1. 黴類
        1. ムコール属
        2. リゾプス属
        3. モナスクス属
        4. アスペルギルス属
        5. ペニチリウム属
      2. 酵母類
        1. サツカロミセス属
        2. ハンセニア属
        3. トルラスポラ属
        4. チゴサツカロミセス属
        5. サツカロミコーデス属
        6. サツカロミコープシス属
        7. ピヒア属
        8. ウキリア属
        9. シゾサツカロミセス属
        10. ミコデルマ属
        11. トルラ属
        12. モニリア属
        13. オイヂウム属
        14. ボトリチス属
        15. デマチウス属
        16. クラドスポリウム属
        17. エンドミセス属
        18. フザリウム属
      3. 細菌類
        1. 酢酸菌
        2. 乳酸菌
        3. 酪酸菌
  2. 醗酵試験法
    1. 黴菌試験法
      1. 培養基の調整
        1. 液体培養基
        2. 個体培養基
      2. 培養基
        1. 培養基の準備
      3. 培養方法
        1. 試験管及三角壜液体培養
        2. 平面培養
        3. 斜線培養
        4. 穿刺培養
        5. 嫌気培養
      4. 純粋培養法
      5. 酵母数の計算
      6. 酵母の発酵力試験
        1. マイセル氏法
        2. アインホルン氏法
    2. 分析試験法
      1. 比重
        1. 比重壜
        2. 比重計
      2. 酒精の定量
        1. 蒸留法
        2. エバリオスコープ法
        3. 蒸留と比重計による法
      3. エキス分及灰分の定量
        1. 比重計法
        2. 浴上の乾燥法
        3. 屈折計による方法
        4. 灰分
      4. 酸度の決定
        1. 総酸
        2. 揮発酸
        3. 不揮発酸
      5. 糖分の決定
        1. 指薬の調整
      6. フーゼル油の決定
        1. バニリン・硫酸法
        2. レーゼ・ヘルツフエルド法
      7. タンニン及色素物質
      8. 色調試験
      9. 混濁実験
        1. 蛋白質による原因
        2. 無機物による原因
      10. 清澄試験
        1. 清酒に応用される在来法
        2. 葡萄酒等に応用される方法
      11. 香気試験
        1. 主要香気成分
        2. 補助香気成分
        3. 悪臭性香気成分
        4. 味覚性香気成分
        5. 麻酔性香気成分
        6. 清涼性香気成分
        7. 粘稠性香気成分
        8. 防腐性香気成分
      12. 酵素力試験
        1. 炭水化物分解酵素試験
        2. 蛋白分解酵素試験
      13. 貯蔵試験
  3. 醸造各論
    1. 清酒
      1. 清酒概説
      2. 醸造用水
        1. 使用水
        2. 仕込水
      3. 原料米
        1. 原料米の品質
        2. 原料米の精白
        3. 精白米の処理
      4. 製麹操作
        1. 米麹
        2. 種麹
        3. 麹室
        4. 製麹操作
        5. 製麹の要点
      5. 酵母(酉元)
        1. 酉元の製造操作
        2. 酉元製造の要点
        3. 酉元の鑑定
        1. 醪の製造操作
        2. 醪の経過
        3. 醪製造の要点
      6. 圧搾・滓引
      7. 火入・濾過
      8. 清酒製造歩合・成分・火落
        1. 製造歩合
        2. 清酒の成分
        3. 清酒の火落
      9. 貯蔵・販売
      10. 酒造行事
        1. 醸造従業者
        2. 酒造年中行事
        3. 呑切・調整
        4. 桶洗ひ
    2. 味醂及その混成酒
      1. 原料酒精
      2. 原料粕取焼酎
      3. 仕込配合法
      4. 仕込操作・熟成・及清澄
      5. 味醂の処理
        1. 濾過及販売
        2. 混濁
      6. 味醂の成分
      7. 白酒其他
        1. 白酒
        2. 屠蘇酒
        3. 梅酒
        4. 保命酒
    3. 酒精
      1. 原料
        1. 原料
        2. 新原料
      2. 原料の洗浄
      3. 原料の蒸煮
        1. 乾甘藷
        2. 穀類
      4. 糖化
        1. 麹糖化法
        2. 酸糖化法
      5. 酒精醗酵
        1. 酒母の製造
        2. 酵母
        3. 醗酵
        4. 酒精牧量と仕込配合
      6. 蒸留操作
      7. アミロ法
      8. パルプ酒精の製法
        1. 製造方法
      9. 無水酒精
        1. 無水酒精の製造法
        2. 四方法の比較
      10. 酒精蒸留廃液の利用
        1. 酵素飼料の製法
        2. 製品の特徴
    4. 合成清酒
      1. 合成清酒の過去及現在
      2. 合成清酒の製造方法
        1. 合成清酒の原則
        2. 諸種合成清酒製造法
      3. 理研合成清酒
        1. 有機酸
        2. 糖類
        3. アミノ酸類
        4. 香気物質
    5. ウヰスキー・焼酎・其他
      1. ウヰスキー
        1. ウヰスキーの種類
        2. ウヰスキーの製造
        3. ボツトスチル及パテントスチル
        4. ウヰスキーの成分
      2. ラム
      3. ヂン
      4. アラツク及ウオツカ
      5. 焼酎
        1. 甘藷焼酎
        2. 泡盛酒
    6. 壺湾酒
      1. 米酒ビーチウ
        1. 白米曲ベイカ
      2. 紅酒アンチウ及糖蜜酒
        1. 紅酒
        2. 糖蜜酒
    7. 支郡酒及高梁酒
      1. 紹興酒シヤウシンチウ其他
        1. 紹興酒
        2. 黄酒フアンチウ
        3. 女及子酒
      2. 高梁酒
        1. 原料及その処理
        2. 麺子の製造
        3. 仕込及蒸留
        4. 製品及粕
    8. 果実酒
      1. 果実の選滓・採集・貯蔵
      2. 準備操作及潰砕
      3. 果実の圧搾及濾過
      4. 硫黄燻蒸及加熱殺菌
      5. 酵母の添加
      6. 醗酵
      7. 濾過・貯蔵・其他
        1. 濾過
        2. 貯蔵
        3. 蒸留其他
      8. 葡萄酒及林檎酒
        1. 葡萄酒の一般製法
        2. 赤葡萄酒の製法
        3. 白葡萄酒の製法
        4. 葡萄酒の熟成
        5. 葡萄酒の疾病
        6. 葡萄酒の清澄・濾過・包装
        7. シヤンパン
        8. 甘味葡萄酒の製法
        9. ブランデー
        10. 林檎酒(サイダー)
        11. 枇杷酒
    9. 混成洋酒
      1. ベルモツト
      2. キュラソウ
      3. アブサン
      4. シヤルトリウス
      5. ベネジクト
      6. ペパーミント
      7. チエリーブランデー
      8. 混成ウヰスキー
      9. 混成ブランデー
      10. 混成甘味葡萄酒(ポートワイン)

解説

『酒及合成酒』は合成酒に関する最古にして唯一の専門書である。
合成酒の毒性について明かされることを期待したが、
製造者の立場からむしろ合成酒を擁護し、さらには興隆を願う始末である。
題名に合成酒と銘打っているものの合成酒に関する記述は極わずかで、
その内容は当時の状況と著者の思想、そして具体的な製法が列挙されるに留まる。

内容

  1. 合成清酒をめぐる当時の状況と思想[P.169-171]

合成清酒をめぐる当時の状況と思想[P.169-171]

酒造米として戦前約500萬石が消費されてゐたので,
この一部或は半分を節約すれば國家としては非常に有意義のことと考へられ,
合成清酒は30年程前から幾多篤学眞摯の人士によつて研究されてきた。

その時分,学者側としては坪井工学博士,鈴木梅太郎博士,
高橋偵造博士,醸造試験所善田樽造氏等は学問的に研究を開始し,
民間では江井ヶ島醸造株式会社,摂津酒造株式会社などが率先して実地的に研究してゐた,
やがて,これ等が或る程度の製品を得るに到って製造販売されるに到ったが,
実に苦難の時代ともいふべく,一方に於て天然清酒は各地とも品質著しく向上し,
合成清酒の如きは異端者的取扱を受けた,尚数十年前,
米の品種改良の苦心が実を結び比較的多量に収穫し得る様になるなどで,
米があまるとさへいはれ,合成清酒の様なものは必要なしとまで叫ばれてゐた,
然し,いつかは米の不足を来たすであろうと,
國家的奉公の信念からこの攻撃の矢面に立つて耐へて来たのは
理化学研究所の鈴木梅太郎先生及その門下生の研究による理研合成酒であつた,
筆者は昭和4年4月発行の醸造学雑誌の一節に
次の様な説を掲げて合成酒の発達すべきを指摘した。

「天然品には人工で眞似の出来ないよい味がある,人造バター,人造絹糸等,
今日では数へきれないほどあるが,天然物と比較すると,
特に此等の事業に関係する人,或は特別の嗜好家は容易に見分け,
その決別を指摘することが出来るが,
現代の様に科学の進歩につれて人造品の流行は人口が過剰となれば勢ひ起るべきであつて,
人造品を以て時代に逆行すると考へるは
未だ人類の競争進歩を知らないものとせねばならぬ。
人造清酒も種々研究されてゐるが未だ天然清酒と少しも異らずとするの域には達してゐないが,
次第に改良されつゝあるのは事実である,
果して然らば人造清酒の運命は如何と考へると私は醸造清酒と相半ばするか,
それ以上になる時代が近き将来にあると考へてゐる,
其理由に二つの大きな問題がある,一は米である,
醸造清酒は米を使はねばならぬ,この米はこゝで述べる迄もなく,
邦人の主食物であつて人口の増加と共に不足してゐるから,
酒造米として年々4~500萬石もつぶす事は不合理であるといふ議論が喧しくなつて来る,
でこの論が高調に達すると酒造舞制限といふ時代が来るかも知れぬ,
他の一つは骨格の問題で,精神を使用することの激烈な現代では
総て精神がデリケートとなつて来て,昔の様に通院馬食流を誇る様なことがなくなる,
諸君が今日の青年を見られるならば直ちに酒量が昔日の如くないことに気がつくであろう,
一杯二杯は飲んでもその眞の味を知るものが少くなつて来ると同時に
少しく酔ふ程度に飲まれる時代となつて甘い清酒類似品で間にあふ様である,
然しながら嗜好家,これは年配を重ねるに従つて
眞の天然の味を理解するに至つた常習の飲酒家は人造清酒では満足出来ないであらうから,
一方醸造かは益々改良進歩の為に努力せねばならぬ,
その結果,値段は次第に高くなる,高くとも売れるものを造らねばならなくなる,
上述の様なことから次第に人造清酒と醸造清酒とは伯仲の間に競争する事とならう。」

以上の論は今日の統制経済から見ると多少訂正すべき別もあるが,合成清酒の発達を預言してゐる。
昭和になつて各々合成清酒も事業を始めるに至つたが彗星の如く現れて,
やがて消えて行つた,その間理研合成酒のみは,
世間の非難攻撃に堪えて事業を進展し年産15~16萬石に達してゐた。

昭和12年支郡事変勃発して14年になつて米不足から食糧問題が喧しくなり,
酒造米半量の節約となり,合成酒が当局から認められ,50萬石程度増石を許可さえるに至つた。

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